―――――つまらなかった
―――――ひとりだった
―――――“何か”が欲しかった
「やあ、私はみんなの頼れるお兄さん! そしてこれはお供のアンリたん」
「フォウフォーウッ!(cv.寺◯拓篤)」
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「おはようございます、先輩!」
「おはよう、桜」
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「じゃじゃじゃじゃーん! ここで抽選結果の発表です」
「ふんだんに含まれた依怙贔屓と好みと趣味で選ばれた
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「私が悪い子になったら―――――どうしますか?」
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「ばーん! ここで飛び出てジャガジャガー!」
「ちなみに今のは『ジャジャジャジャーン』と『ジャガー』をかけていたのであった…分かったかな?」
「えっ、私二番煎じ? うっそー!」
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「―――――君に決めた!」
「ヒューヒュー! やるじゃねえか豪運ボーイ! んえ? ああ、
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「むむむっいい匂いです…シロウ、今日の晩御飯は何ですか?」
「おっと、危ないぞセイバー。えっと、今日は貰い物のタケノコを使って…」
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「選ばれたアナタには豪華景品をプレゼント!」
「テッテレー、『片道切符』!」
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「あなたが欲しい」
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「テッテレー! リベンジよ!」
「古き良き効果音による場面の転換を狙える最高のパフォーマンス…キてるわこれは!」
「え? マジで? 既出?」
「もはや分かり合えぬ」
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「きゃーっ! ちょ、ちょっと衛宮君! この機械壊れてるわよ、どうすればいいのよ!」
「いや、それは壊れてるんじゃなくて今遠坂が壊したんじゃ……」
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「今どこからか野生の怒りのようなものを感じたような気がしないこともないようなあるような気のせいなような………まあいっか!」
「それより何だよその胡散臭さそうな顔はよ~、豪華景品なんだから喜べよ」
「切符には見えない? そりゃあ、『切符の役割を担う手紙』だからね。え? いらない? ふふふ、実は君の意見は聞いてないぞう!」
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「悔やむのはここまでよ。悩んでいる暇があったら行動するのが私の信条」
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「おっ! そろそろ順番来るかしら?? ジャガーの華麗な出番の気配を察知!」
「いや~困っちゃうわ~! あまりの華麗さと大人の色気と野生の雄々しさでリスナーのみんなをメロメロにしちゃうかもしれないわね~!」
「えっ、出番ないの?」
「もはや通じ合えぬ」
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「ねえシロウ、また明日も会ってくれる?」
「ああ。……イリヤの好きなもの、たくさん作ってやるよ」
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「渡してもどうせ君は読んでくれないだろうから私が今ここでご開帳さしあげよう! 何なら音読サービスも今なら無料さ!」
「俺も中身までは知らねえんだよな~」
「えーっと…」
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「そうよ。好きな子のことを守るのは当たり前でしょ」
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「え? あの子のことよく見てるねって?」
「うーん、なんか気になるのよねぇ。ジャガーの野生にビビビっとくるのかしら」
「なんとなーく、責任みたいなものを感じるのよ」
「けど、ここにいるあの子は楽しそうだから」
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「『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その
「ヒーッ! ヒャハハハ!」
「う~む、あそこで転げまわってる彼は放っておいて、うん、これは実に『少年少女』によく刺さるだろうさ。年頃の子供にとって、ままらない不満や承認欲求を満たしてくれることへの希望は馬鹿にできないからね」
「ヒッヒヒ……ん゛、はーっ、笑った笑った! ケケケ、面白い口説き文句だったが…これは不相応じゃねえか?」
「うんうん、これは『君』へ贈るにはちょっと変だね。よし、書き換えようか!」
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「よぉ~坊主! 今日の晩飯、俺の分も作ってくれよ! 材料費はちゃんと出すからよ!」
「いって! ちょ、分かったから背中叩かないでくれよランサー!」
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「アンだとコラ!」
「躾がなっていないと言ったのだが…理解できんかね?
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「『
「なんか厨二感増してね? って、お? その顔はやーっと気づいたか。そうそう、これは俺らの独断専行じゃねえってことだよ」
「土台はもともとあった。そこに種がまかれて―――――ようやく芽が出たのさ」
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―――――それは人類史を守る戦いの中での話。
「―――――こんな遅くまでご苦労だな、ドクター」
「ひょえっ!? びびび、びっくりしたぁ」
―――――とある静かな、夜の会話。
「夜食のデリバリーだ。食べられるかね?」
「えっ! いいの? やったぞぅ、ありがとう!」
―――――いずれ消える男が、それでも確かに存在していた話。
「ところでドクター、とある筋から君がもう3日ほど満足に休息を取っていないとのタレコミがあったのだが」
「むぐっ! むぐぐーっ」
「ちょっ、ええい! 一気に詰め込むからだ! 大丈夫か!?」
「ごっくん! げほっ、だ、誰がそんなこと…レオナルドの奴だな!」
「まあタレコミがなくともめったに食堂に姿を見せない様子から、時間がないか味付けが好みでないかだと思っていたが。…その様子だと、君、後者だな」
「ぎっくぅ! い、いやまさか、今日だってほら、こうしてマイルームに帰ってきているわけだし…」
「マイルームでこんな夜中まで仕事をしていることを、医療界では『休息』と呼ぶと?」
「呼びませーん…」
「……君が、何を考えているのか。何を抱えているのか。何を、望んでいるのか」
「………」
「正直、君は不審な点が多い。『なぜか英霊に辛辣な態度を取られる』ことについても」
「え、いやそれは彼らの好みじゃないかなあ?」
「様式美のように毎回罵られておいてか?」
「うっ」
「―――けれど」
「………」
「信じよう、君を。少なくとも、私は。―――――『あの子たち』を見る君の顔を見て、疑い続けるのはあまりに難しい」
「、君は」
「
「……ああ、君、……君、お人好しだよねえ」
「ただの職務分担だ。好都合にも私はキッチンを預かる一人に据えてもらっているのでね。職員や英霊の様子はよく見える」
「君のご飯は好評だよ。職員にもね」
「光栄だな。まあ、めったに食堂に来ない人間に言われたところで嫌味に聞こえるが」
「ハイすみません」
「『何か』があれば、『私がしよう』。君は少し、背負いすぎに見える。生きている人間が背負うには多すぎるだろう。こういう時は使えるものをよく使うといい」
「―――――
「? ああ、容量を超えたものを抱え込みすぎだ。君に何かがあれば、君をよく慕っている立花もマシュも、悲しむだろう。もう少し自分を大切にしたまえ」
「うん―――――うん、ありがとう。ところで、わざわざこんな話をするためにお夜食を持ってきてくれたの?」
「まさか、ついでだとも。その夜食は君への善意と好意のものだよ。まあ、こんな皮肉屋に気遣われたところでうっとおしいかもしれんがな」
「君ってたまに自虐入るよね……」
―――――なんでもない夜の、些細な会話だった。
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「君はきっと怒るかな。けど―――――君だからこそ、この選択を否定しないだろう?」
「自分を大切にするようにと―――――言ったはずだったのだがな」
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「そうそう、ねえ、君。君って実は、ロマンくんのこと嫌いだっただろう?」
「うわっ、ブッこむなあんた」
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「人に負けるのは仕方がない。けど自分には勝てる。諦めろと囁く自分にだけは、いつだって抗える」
「理想を抱いて溺死しろ」
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「おっと時間だ! それじゃあ堪能してきてくれたまえ」
「じゃ~な~」
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―――――唐突な暗転。そして明転。
「、は…?」
―――――ビュオオオオオオオオオオ!!!!!
頬を噴き上げていく風
重力にかき回されるような内臓の不快感
眼下に広がる謎の都市と、それを覆うように広がる天幕のような何か
そして地球の理論に正面から喧嘩を売っているとしか思えない、断崖絶壁の地平線
そこは―――――
「―――――なんでさ!!!」
―――――どうあがいても完全無欠の異世界だった。
だってきれいだと思ったから。
―――――だから憧れたんだ。
たとえ選び歩いた道を間違っても―――――この理想だけは間違いじゃない。