何気に朝の投稿は他作品含めて初めてという……。自分の悲惨な生活事情がばれてしまったっ(苦笑)
そして悠斗@花音推し様、お気に入り登録ありがとうございます! UAも5000突破! いつもお読みいただき、ありがとうございます!
前回はカッシュ×アステル。今回はギイブル×アステルです。軽めのBL要素入りまーす!!(歓喜)あ、ちなみに作者は腐男子ではないです(笑)説得力がないね、うん。
前々回あたりにアスシャルなど語呂が悪かったので、髪色などからカップリングの名称を考えてみました。
アステル×ルミアは『白金』、アステル×システィは『白銀』、アステル×シャーリィは『盾剣』に落ち着きました。うん、盾剣コンビは髪の色関係ないね!?(爆)
浸透できればいいなぁ……。というわけで今後もよろしくお願いします!
魔術競技祭に於ける練習期間の日々が過ぎてゆく。
アステルを指令塔に置いた二年次生二組の生徒達は実に士気が高く、勝つために一生懸命魔術の練習と勉強に励んでいた。
そこには最早他クラスの成績上位陣に対する負い目も気後れもなく、『女王陛下の前で無様に負けるかもしれない』ことに対する恥も何もない。
みな一生でたった一度の、二年次生の部の魔術競技祭に対して。そして、二組の中心となっているアステルの落第の危機を回避するべく必死だった。
本人が口外したわけではないというのに、先の一組生徒、クライスとのやり取りの件がクラス中に知れ渡っており(恐らく男性陣はカッシュ、女性陣はウェンディの呼びかけに因る)、学院からの依頼によって彼の手が回らない折はグレンへ群がるほど貪欲に勝利を求めている。
陰ながらに話を聞いていたグレンも生徒達の有り余るやる気に応じ、どこか鬼気迫るような熱心さで生徒達の勉強と練習に付き合っていた。
カジノで金をスッたわけでもない彼が何故ここまで必死なのかと尋ねられれば、「俺の昼メシが無くなる……」とどこか遠い目をしながら答えられる始末。生徒達は首を傾げるが、事情を知っているフィーベル家の子供達は苦笑いを浮かべていた。
そしてアステルも、依頼中に何もしないわけではなかった。
放課後の教室にて、アステルは学院からの依頼で、学院校舎までの敷地で行われる一般開放向けの露店についての書類仕事などを片付けていると、開かれていた窓からぬるりと黒と赤が交じり合った様な模様をした蛇が部屋へ入り込み、アステルの許まで寄る。
「――アステル」
「あぁ、スネーク……。ごめんよ、偵察なんてお願いしちゃって……」
その蛇――森の住民であるスネークの声に気付き、アステルはペンを握りしめ作業を続けたまま詫びる。
スネークは頭を左右に振りながらも、少々顔色が悪くなってきている彼を心配げに見つめていた。
「なに、気にすることはない。……顔色が悪いぞ。大事ないか?」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「そうか……。森のみなも心配していた。落ち着いたらまた顔を出すがいいだろう」
「うん、そうする。――それで、状況は?」
「一組は私が。三組から六組まではジャン、ケン、ポン。その他はゼオとシーダ、そしてジークに交代で見張らせている。別段それぞれに特殊な動きはないが、そなたの組に比べると練度が高いと見える。が、ここ数日でも技術が上がったとは言い難いだろう。《グランツィア》では結界の展開までの秒数を計測しつつ調整を行う程度だった」
事細やかに報告するスネークの言葉を一つ一つ拾い上げ、アステルは手元に控えていたメモ帳にそれを控えてゆく。
グレンも使い魔などで他クラスの偵察をさせているが、その場合複数のクラスの練習光景が見えてこない。練習メニューがある場合その切り替えのタイミングなどを見損なう可能性もあるからだ。
だからこそ、アステルはこうして森の民達に協力を仰ぎ、フルタイムで各クラスの偵察を頼んでいる。
そして裏では彼らの存在も知っている為に警戒し、正規の練習メニューをこなせなくさせるという牽制の意味合いも込められていた。
『やる事が腹黒いぞ』と
「――報告は以上だ。そろそろ私も一組の偵察に戻る」
「ああ。くれぐれも気を付けて」
「フッ……。紛い物と呼ばれようとも、私は《シャドウサーペント》だ。相応の仕事をしてみせるさ」
スネークは魔獣と呼ばれている《シャドウサーペント》と通常の蛇とのハーフである。しかし魔獣としての特性を受けておらず、一族から追放された身。
こうして影に交じり標的を偵察、もしくは暗殺することに特化した存在であり、森の民として彼に与えられた仕事は、ゼオとジークと協力し住み家周辺の警備と外敵への牽制などを行うこと。所謂『森のお巡りさん』なのである。
「心強いよ。でも、流れ弾なんかもあると思う。用心はしておいて損はないからね」
「承知した。心して任務にあたる」
「よろしく」
そして再び窓から抜け出してゆくスネークをアステルは見送り、彼は「シーダも仕事してるんだなぁ」と呟きながら、友人(?)の成長を嬉しく思いつつも再び視線を机に落とすのだった。
◇
早々に依頼を終えたアステルは足早にクラスメイト達の許へ向かう。
通常の練習は学院の中庭で。そして更に一段踏み込んだ練習をする時は学院の敷地内にある森の中で行っている。
元は熊のアレックスの嫁であるメアリーの住んでいた熊の集落であり、魔術競技祭の練習期間中のみ、という形でその場を借りていた。
移動はもちろんアステル考案の《飛行杖》であり、運べるのは一度に一人まで。燃料としては往復六回といった程度な為にグレンを含めると二人しか運べないのが難点である。
その為、アステルとグレンは相談し、対人戦などの多い競技の生徒に限りローテーションを組んで個別に練習させているのだ。
本日はカッシュとギイブルの二名であり、先着していたグレンとカッシュは集落の長、ロイと共にはちみつ茶を飲みながらくつろいでいた。
ギイブルはビキッと額に青筋を浮かべながら眼鏡のブリッジを持ち上げると、『弛んでいる』と二人をけしかけるがアステルがフォロー。
「いいかアステル。これはお前の今後も関わっている重要な事なんだぞ? 僕はお前の事を心配して――」
「うん、分かってる。その気持ちは有難いけれど、ギイブル君はそこまで気を張り詰めないで欲しい。真面目な君のことだし、夜中まで魔術の本を読み耽っているのは分かる。けれど今からそうなっていたら、本番に糸が切れちゃうよ?」
「だが……」
「真剣に向き合ってくれてるんだよね? その目の隈を見れば一目瞭然。……今日は緑を見て、ゆっくり休んで欲しい」
「お、おい……?」
不意に伸びたアステルの手が親友の目の下にくっきり出来上がっていた隈を優しく撫でると、彼は怪訝そうに目を細めながら声を上げた。
しかしアステルの手は暖かく、血行の悪くなった血管がじんわりと解されてゆく。
アステルにとってはマッサージはお手の物であり、鍛錬や仕事で筋肉痛になったシャルとセラのケアをしたり、ギイブルと同じく本を読み耽った所為で徹夜し目に隈を作ったシスティのフェイスマッサージも行っていることから、熟練度が高いのだ。
「とにかく、君は今日はお休み。調子を整えておいて」
「……分かったよ」
根負けしたように肩の力を抜いてグレン達のもとまで歩み寄り、ごろりと横になったギイブル。その様子を見ていたグレンとカッシュはアステルに説得されたことに対してゲラゲラと笑い、目を閉じ彼らに背を向けたギイブルは「うるさい」と言って寝息を立て始める。
それを確認した三人は頷き合い、彼の安眠の妨害にならないよう少しばかり声量を抑えて膝を突き合わせ会話を始める。
「前にも言った通り、先鋒中堅大将と三人で編成される《決闘戦》だが、俺とアステルはカッシュに先鋒を任せる事にした」
「まっ、妥当ですよね」
「けれど、一番大事な所でもあるんだ。先鋒が相手と対峙することで相手の力量などをある程度推測できる。中堅、大将と力量が上がっていくのが定番だけれど、裏を掻いて先鋒から強力な人員を配置する事で最初から勝ち数を取っていく作戦もあり得る」
「要は一番の強敵とぶつかる可能性もある、ってワケか」
「そういうこと」
話を察したカッシュはパンッと意気込みながら握りしめた拳を片手で受け止め、アステルは頷きながら腰元のバッグから数枚の紙を取り出し、地面に広げた。
記されているのは各クラスの《決闘戦》出場メンバー。殆どのクラスが他競技との使い回しであり、《決闘戦》は魔術競技祭の中でも一際盛り上がる競技でもある。故にプログラムでも一番最後なのだ。
「他競技とのローテーションで出場生徒達も若干は消費、回復を繰り返す。僕ら二組の《決闘戦》メンバーの強みは疲れが来るプログラム最後まで、選手の
「なっ……細っけぇなあこれ!?」
「すげぇ……。これ全部手作りかよ、アステル?」
「まあ、ちょっとした助力があってね」
目を剥くほどに驚きの声を上げる二人に、アステルは照れくさげに頬を掻く。
一枚目の裏から二枚目の紙を取り出して広げると。二枚目には森の住民達の偵察で受け取った情報による各選手の推定魔力総量と、各競技に於けるそれぞれの魔力消費量のペースを推測で配分し計算され、グラフ化されたものだった。
「あくまで推測の域に過ぎないけれど、これをベースにして、感情の振れ幅に於ける各競技の魔力消費配分を再計算してみたものがこれ。あと、こっちは皆にも公開するけれど、各競技での魔術使用時に於ける展開速度や威力をデータ化してみた。……貰うとまずいって攻撃くらいは、これで分かると思うんだけど。どうかな?」
グレンは手を震わせながらそれぞれの書類に目を通してゆく中で、額から首筋までダラダラと脂汗を流してゆく。
(ここまで精密なデータはなんだ?
いや、違うと判断するグレン。少なくとも今日この日まで、アステル=ガラードという少年が偵察を行うほどの時間配分などなかったはず。しかし、だというのに此処まで事細やかに記された
(助力……。セリカの奴が手を出す理由もねえ。……内通者? ありえん、今回は二年次生だけの戦い。それも女王陛下の御前試合だ、内通して手前のクラスを負かす奴なんかこの学院にゃ一人もいねえはずだ………)
グレンはゆっくりと顔を上げ、目の前の白髪の少年を見つめる。
「アステル。お前は一体……何者なんだ?」
「一人だけシリアスにならないでくださいよ先生。こっちがビックリします……」
いつも通りのおどおどした表情を浮かべるアステル。その表情の裏に何かがあるわけでもなく、そこにあるデータは純粋な努力と信頼、そして絆の結晶体。
確かにここまでの情報量ならば誰もが疑いたくもなるだろう。しかし、彼は正攻法で(ちょっぴり裏技は使ったが)手にした情報。『卑怯だ』と言われる筋合いはこれっぽっちもないのだ。
「流石だぜアステル! なぁ、俺たちのデータとかはないのか!?」
「ああ、あるよ? ……見たい?」
「……あッ、ゴメンなんか寒気がしてきたから遠慮しとく」
アステルは意味深に髪を下げ表情を隠し、ニタリと上がった口角を見てカッシュは引き気味に辞退。「仕方ない」と苦笑いを浮かべたアステルは、クラスメイト達のデータをグレンへと託した。
そのデータは他クラスよりも精密に取れており、伊達に一年彼らと同じ机に向かったわけではないというのが判ったグレンは、思わず乾いた笑いをあげる。
(こりゃ、コイツをセコンドにしておいて正解だったな……)
担任講師である
クラスとしっかりと向き合っているグレン以外にも、旧友たちと向き合い、広く接し、深く知り合う生徒がいる。そんな
「っし、戦略ちっとばかし弄るぞ。アステル、ペンをよこせ――」
「っ! はいっ!!」
(……ったく、そんな顔見せられちゃあ、俺も黙ってはいられなくなっちまうだろうが――)
いつも自分の授業を聞いている、アステルの輝かしいばかりの期待と羨望の眼差しを受けたグレンは、彼の書き記した紙の裏へと新しくペン先を落とす。
クラスを知る為に動いていた自分よりも先をゆく生徒へ追いつこうと、グレン=レーダスという魔術講師は、歩く速度を速めてゆく。
彼らの『先生』であり続ける為に。
その後、グレン達は寝ぼけたギイブルを叩き起こして学院まで戻った。
すでに練習を行っていたクラスメイト達はわらわらとグレン達の元まで駆け寄り、それぞれの競技に於けるフォーメーションの見直しや修正点などを上げてゆき、アステルが対応してゆく。
捌き切れない生徒はグレンが対応しており、それぞれの目はみな真剣そのもの。偵察の生徒などさえ気に掛ける素振りもなく、自分の役割を全うせんとばかりに知識と技術を身に付けて行った。
……そして時は過ぎ、いよいよ競技祭前夜。
◇
一杯の水を飲みにキッチンまで降りていたアステルは、自室の窓淵に腰かけ、夜空を見上げていた。
群青色の空に、満点の星空が煌めいている。そしてそんな空を一際明るく照らす月光は、《メルガリウスの天空城》を照らしており、見れば見る程幻想的な風景に感じ取れる。
「―――……」
「……眠れないの?」
「……ルミアこそ」
月明りだけが屋内を照らしており、彼の髪は蒼銀色に輝いている。そして薄暗い室内の奥から、ルミアの落ち着いた声が聞こえて来た。
アステルは静かに自室へと入って来た彼女へと振り向き、苦笑いを浮かべる。
「いいのかい、明日は大事なお祭りなのに?」
「ふふ、私だって緊張してるんだよ? でも……なんだかよく寝付けなくて」
「そっか……。もう明日、だからね………」
アステルは目を伏せながら窓の淵から降り、ルミアは瞳を閉じてこの一週間の日々を思い返す。互いに早かった、と呟きを漏らし、その呟きが耳に入ると顔を見合わせて笑い合った。
恐らく彼にとってはもの凄い速さで駆け抜けた七日間だったのではないだろうか。突如として今回の魔術競技祭から、校舎までの区域に限り一般開放を行い、二年次生以外の学年の生徒達が露店を出す事になったのだから。
魔術界としては先のテロ事件の後、学院は此処まで復旧したことを知らしめるためのポーズであり、宮廷魔導士団を動員することで今も尚ルミアの拉致の為に影で
外部協力者への手回しは会長のリゼ=フィルマーが行い、アステルへと毎度の事ながら帝国政府の要請を与えに来る男性、レクター=アランドール特務大尉(本人は二等書記官の資格も有している為、『書記官』と呼ばれることを好んでいる)率いる情報統制部隊がオブザーバーとして監視に当たる事になっていた。
また、グレンの話では彼の古巣である『特務分室』から数名の人員が導引されるという情報もあったために、より強固な体制で本番に臨むことができたのである。
そしてセラ生存の報告はされていないため、レクター書記官による情報統制の能力が異なる部署、それも帝国魔導士団にさえ振るわれている事を知り、舌を巻いたのは記憶に新しい出来事だった。
「ねぇ、アステル。……また無理してない?」
数日前の出来事を思い返していたアステルの表情をうかがう様に、ルミアが下から見上げてくる。
アステルはそんな質問を疑問に思いながら、彼女を心配させまいと振舞った。
「え? いや、そんなことは……。睡眠もちゃんと摂ってるし」
「はい、ダウトー」
「ああ~……」
しかし彼女は悪戯気にウィンクすると共に、柔らかい手の平がアステルの顔をしっかりとホールドし、親指で目元を擦られた。
風呂から上がった事で落ちてしまった、セラから借りていたファンデーションでなんとか誤魔化していた真っ黒に変色した隈を撫でられ、アステルは苦笑を浮かべてしまう。
「……その、みんなにはこの事は」
「言わないよ。人知れず努力するのが貴方だもん」
むぎゅむぎゅと頬をこねくり回されたアステルは困ったようにルミアへお願いすると、ルミアは天使の様に微笑んだあと、「でも」と付け加える。
「でも、私が……ううん。シャルやシスティ、セラさんも知っているから。貴方がずっと頑張り続けていることを。……『自分にも手伝わせて欲しい』って、みんなも同じように言っていると思うけれど。こうして隠しながら努力されちゃったら、いくら私達でも気付けないんだよ?」
「隠し……――いや、そうだね。化粧なんてしている次点で、みんなに隠しているのと一緒だ。でも、いつから気付いていたの?」
なんとか反論しようと言葉を上げたところで、誤魔化しがきかないと悟る。
もう、ルミアにはバレてしまっているのだ。今更取り繕ったとしても、この目元の
アステルは肩を竦ませながらいつからこの化粧に気付いていたかを尋ねた。
「二日くらい前、かな? アステルが身体を動かす作業をした後、目元の色が少し違って見えたの」
「……それだけで?」
「気のせいだとも思ったし、アステルがお風呂に入るのはいつも私達が自室に入ってからだから……。半分憶測だったけれど、当たってよかった」
ほうっと彼女が胸を撫で下ろしたことで顔の拘束が解け、アステルは困ったように笑いつつ、後ろ頭を掻いた。
立ったままではこれ以上落ち着いて話も出来ないだろう。互いにベッドの端に腰かけ、本題というようにルミアの表情に険しさが加わり、アステルを見つめた。
「ねえ、アステル。私って……そんなに頼りない?」
「え」
久々に見る彼女の怒りの相貌は、それでも美少女故に愛らしさがにじみ出ており、アステルは一瞬だけ顔を驚きに染めた。
しかし彼もそこで表情を緩ませるわけにはいかない。ましてや先ほどまで「私達」と言っていた彼女が、友人達を盾にするでもなく「自分」を出して来たのだから。
彼は真剣な表情で彼女の気持ちを聴く。
「たしかに、私は攻性呪文も平均的な威力しか出せないし、アステルやシャルみたいに鍛えているわけではないけれど……。白魔でなら、役に立てるところはあると思う」
「ルミア……」
「だから、教えて欲しいの。今、非常時において、私はアステル=ガラードという一人の魔術師にとって必要とされているのか、どうなのかを」
「………」
アステルは目を伏せ押し黙る。確かに、ルミア=ティンジェルという少女は彼にとって命を賭けてでも守らなければならない対象であり、自分の過去を知る数少ない幼馴染であり、親友……。
しかし、彼女を護らなければならない場面に遭遇した時、彼は彼女を“共に戦う仲間”として認識できるのだろうか? 『護らならなければならない』という意識が率先して、彼女を戦闘から遠ざけてしまうのではないか?
考えれば考える程に、ルミアの存在が大切な人として遠ざけるべきだと思えてきてしまう。それも彼なりの優しさであり、当たり前の事なのだろう。自分は彼女にとっての“盾”であるのだから。
だが。並行して『もしも』という考えが巡ってゆく。彼の中でそれは最早癖のようになってしまい、先の講演会と同様に『もしもの世界』を想像してしまう。
もしもルミアを自分達と同様に考えられたのならば、恐らくサポート役となる。しかし、果たして“剣”として前に出るシャルと連携を組みつつ、“盾”である自分が後方に居るルミアとの間で上手く立ち回れるのか。
……長い沈黙の後、アステルは言葉をひりだすように口にした。
「……確かに、ルミアの白魔は心強いし、居てくれたらかなり助かる場面もある」
「それじゃあ――」
「でも。今の僕に……果たして前に立つ君を護れる力があるのかどうか……。そう考えると――」
アステルは先日負った右腕の傷痕を掴みながら、「不安になる」と告げようとする。
その言葉は、彼女が不意に出した指先によって阻まれた。
不思議そうな顔を浮かべるアステル。そんな彼をルミアはくすっと微笑みながら、彼の脇両腕を回して抱き締め、こつんっと自分の額を彼の肩に当てたルミアは静かに語った。
「ヒューイ先生から私を救ってくれた時……あなたが私に言ってくれたこと、覚えてる?」
「……もちろん。『絶対に君を守り抜いて見せる』と……そう言った」
「……正解」
「今でもその言葉に嘘偽りはないし、自分もそう在りたいと思うけれど……」
「その気持ちは嬉しい。でもね、アステル? あなたは大切な事を一つ、見落としてるんだよ?」
「大切な、こと……?」
「アステルは一人で戦っているわけじゃない、ってこと」
「………ぁ………」
凝り固まっていた彼の考えが、彼女の一言で解されてゆく。
――そう。何も自分一人で戦っているわけではない。“盾”としての役割も、前衛と後衛の間を右往左往するばかりのものでも、ただひたすらに前へ立ち続ける事でもない。
どの戦闘でも必ず『状況』というものが存在する。味方が一人も居ない状況もあるだろう。自分達だけでどうにかしなければならない時もあるだろう。
けれど、そこに『達』というものがある以上、誰かが居るという事。
その場に居合わせた偶然。なんとか状況を打開したいという意思が集まれば、その人々は『仲間』だ。
別の理由が含まれようと、それは『味方』でなくとも共通した目的を持つ『仲間』なのである。
ルミアはそれを改めてアステルへと伝えたかったのだ。
彼は目を見開き、顔を上げたルミアを見ると、彼女もその表情に驚き、ふふっと目を細めて微笑を浮かべる。
「……自分がどれだけ無茶なことをしていたのか、ようやく分かったって顔だね?」
「ああ……。なんというか、とても回りくどいやり方をしていたような気がする。……ははっ、馬鹿だなぁ、僕は。……本当に………」
胸のつかえが取れたような、晴れた表情を浮かべたアステルはベッドの上に横になり天井を見上げた。
そんな彼をルミアは笑みを絶やさずに傍で見守りつつ、彼へ手を伸ばす。
「それで、結論はどう?」
「……うん」
アステルは目を伏せつつ、その手を取りながら起き上がると、
「僕達には――……いや。
開かれた亜麻色の瞳に新たな光を灯しながら、彼女へとそう言った。
待っていた彼の言葉を受け取ったルミアはより一層輝かし笑みを浮かべると、彼の手を両手で握りしめる。
「――はいっ」
魔術競技祭前夜は、長く連れ添った幼馴染の関係を新たな形に変えながら更けてゆく………。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます!
森の仲間達が登場しましたね。スネーク(CV:大塚明夫さん)……一体何者なんだろう(すっとぼけ)
最後にアステルがポンコツっぷりを見せましたが、大天使ルミア様によって浄化されるという……(笑)※ちなみに二人は付き合っていません。
もう一度言います、二人は付き合ってません!!(チクショーッ!! 早くくっつけェェェ)
次回はいよいよ魔術競技祭に入ります……! その前にアステルの過去をちょびっとだけ入れます。ドンッと重々しい始まりになってしまうとは思いますが、次回もよろしくお願いします!!