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一日遅れの前書きで大変申し訳ありませんでした!
今回と次回、少し内容が原作と異なります、ご注意を!
放課後となり、気分を入れ替えようとシャルと共に先に帰宅したシスティを見送ったアステルとルミアは、方陣構築の復習を行う為に魔術実験室へやってきていた。
そこの準備室はほぼアステルの城となっており、魔導工学教授であるオーウェル=シュウザーの認可の下自由に往来することが出来るようになっているため、彼は準備室へ到着して早々にルミアへと温かいカフェオレを出し、方陣構築に必要な触媒の厳選、素材の精製などを終えて一息吐いていた。
まさにこういった実験室こそ白衣に袖を通したアステルに似合う部屋だと、マグカップ片手に方陣構築の教本と参考書に目を通している彼を見てルミアは実感する。
彼と自分とでは住む世界が違う気がしてならなかったルミアは、幼い日に城へやってきたアステルとシャルと共に中庭を走り回った頃を思い出す。
彼女の母は彼らを認めていたが、母の付き人である男性からは、平民の子供と遊ぶなど、と怒られてばかりだった。
あの頃は自分の存在が上に在り過ぎて、手の届かなかった存在だった少年が、今は、目の前で自分と同じ飲み物を口にしながら共に勉強に励んでいる。
そして、自分は今一介の平民であり、魔術学院の生徒。彼も同様だが、彼には研究者の助手としての肩書きがあり、周りの見る目も違ってくる。
もちろん、アステルが助手として一定の評価を受ける前は、復習をするためにルミアが実験室の鍵を盗むといったやんちゃっぷりを見せたが、今はそんな事をする必要もなく堂々と入室できるようになっていた。
(いつの間にか、抜かされちゃったなあ……)
当時とは百八十度異なる寂しさを感じていたルミアは、両手で持ったマグカップを口元に寄せて傾けた。
薫りのいいコーヒーの苦みはミルクと砂糖によって若干中和され、まろやかな舌触りの中、未だに参考書に視線を傾け、細く白い骨ばった指先で自分の顎を数回つつく癖を見せた彼を見つめ続ける。
視線を感じて振り返るのはいつだろうか。目が合った時に彼はどんな表情を見せてくれるのか。ルミアは内心で色々な期待を持ちながら、頁をめくる音だけが響く準備室で待ち続けた。
……だが。当のアステルは。
(う~ん……ルミアは魔力円環陣を試したかったみたいだけれど、僕としてはこの冷熱置換陣や錬成陣での金属錬成も捨てがたい……いやいや、今はルミアが主役だ。彼女の方陣構築の練習なのだから、あまり危険な方陣は……ううんでもやってみたい……)
自分の目的をルミアの復習にとどうにかして混合させようと企んでおり、お互いに全く違う方向で淡い期待を胸の内に秘めていた。
結局、アステルも理性が利いたのか自分の興味本位で彼女を巻き込むのはよそうと考え、魔力円環陣を作成することに決め顔をルミアへ向けると。
「………(ジィィ)」
「……えっと、僕の顔、何かついてる……?」
「う、ううんっ!? なんでもないよ!?」
彼女はまじまじとアステルの顔を見つめていたからか、それにようやく気付いた彼は若干顔を赤くしながら後ろ頭を掻いた。
ルミアの慌て様から(随分待たせちゃったなぁ)と心の内で反省するアステルは、準備室から予備の水銀が入った壺を手に実験室へと出ると、ルミアが待ってましたとばかりにアステル監修のもと、方陣構築に取り掛かる。
監修とはいっても、ルミアの指定した教科書のページを開き、方陣構築の参考になりそうな書籍のページも両手で開きながら彼女がいつでも見ることができるように自分の胸の前で掲げているだけなのだが。
彼女はアステルの抱える教科書を見ながら水銀で床に円を描き、五芒星を描く。さらにルーン文字を五芒星の内外に書き連ねてゆき、霊点に触媒を配置してゆく。
しかしその手は緊張の為か震えており、流れ落ちる水銀も糸の様な細いものから猫の尻尾の様に太いものにまでなっていた。
「ルミア、第七霊点が少し解けかけてる。って水銀が流れてるよ壺を傾けてっ……」
「あ、アステル……」
別に失敗しても爆発などはしないが、それでも過保護気味にルミアの方陣構築に口を出してゆくアステルに、ルミアは壺の取っ手を持ちながら苦笑いを浮かべる。
自分がこうも細かい性格だったのかとアステルは自分に少し憤りを感じたが、不意に笑ったルミアに呆気を取られた。
「ど、どうして笑うの?」
「ふふっ……ううん。こういうアステルを見られるのも、
「う、うう……」
方陣を描く手を止めて、この魔術実験室を見渡すルミア。
比較的広い間取りとなっている実験室の壁には、髑髏やトカゲの瓶詰めなど、怪しげな魔術素材達が並び、並ぶ机の上には羊皮紙やフラスコなどが綺麗に置かれ、奥には大きな魔力火炉や錬金釜までもが置かれており、胡散臭い雰囲気が漂いながらもしっかり手入れされているところを見るに、彼の性格が表れている。
「まるでアステルの部屋に居るみたいで、ちょっと安心する」
「さ、流石の僕も自分の部屋に髑髏なんて置いたりしないよ……。仮にも下宿中の身だからね?」
「でもこの前骨粉は持ち帰って来たよね? あれは何だったのかなぁ?」
「うぐ、そこを突かれるとなんとも申し訳ない気分に……。でもあれはあの、肥料になるから……」
「そ、そうなんだ……ごめんね、あれは流石にびっくりしちゃって」
朝の鍛錬のあと、彼は必ずフィーベル家裏手にある自分の畑で作物を育てている。丁度摘み終えた薬草など種類を変えるために元肥として使っていたのだが、シャルには気味悪がられ、彼の部屋を掃除して発見してしまったセラには恐怖のあまり真っ青になった顔で「そんなもの部屋に置かない! 悪趣味だよっ!」と叱られる始末。
「……お叱りはちゃんと受けました。はい」
「セラさん、怒らせると怖いもんね……」
アステルは申し訳なさげに苦笑を浮かべると、ルミアはくすくすと口元に手を当てながら笑っていると。
ばんっ!
「「!!」」
突然実験室の扉が外から乱暴に開けられ、二人は思わず飛び上がった。
他人の悪口はこういった場所でするべきものではないと二人は思いながら、現れた人物を見て二度驚く。
「グ、グ、グレン先生!?」
「……相変わらずボロいんだな、ここ」
その人物――グレンは仏頂面のまま、後ろ頭に手をやりながらつかつかと入室し部屋を見渡しながらつぶやいた。
「ど、どうしてここに……?」
「そりゃこっちの台詞だ。生徒による魔術実験室の個人使用は原則禁止のはずだろ?」
「そ、それは……」
口をもごもごさせながら言い渋ったアステルは、きろっと向けられたグレンの視線につい目を逸らしてしまう。
ここは正直に自分がこの実験室の物品管理を先生から任されていると言ってしまえば済む話なのだが、彼の性格上、あれだけキツい事を言われては口を噤まずにはいられないのである。
「アステルは、魔導工学を専攻されているオーウェル先生からここの備品管理を任されているんです。だからこうして自由に実験室を利用できています」
「へぇ……。そういやお前、変わった服装してるもんな。学生って感じがしないっつーか……」
「ど、どうも……」
アステルは声をどもらせながら会釈すると、グレンは彼の後ろにあった方陣を見つめた。
「もうほぼ出来上がってるじゃねーか。いーよ、最後までやっちまいな。崩すのはもったいねーだろ」
「「え……」」
グレンは入口の壁へ寄りかかり、二人は驚いた様に目を見開いて彼を見た後、互いに視線を合わせて頷き合う。
それから方陣を書き上げてゆくルミアへとアステルは細部までアドバイスや己も水銀を動かす手袋を嵌めフォローを行ってゆく。
そして出来上がった方陣を見たアステルとルミアは納得のいった表情で頷き、グレンはふっと笑った。
彼が笑ったことが意外だったのか、二人はついグレンへ振り向いてきょとんとした顔を浮かべたが、グレンは照れ隠しするように「なんだよ。教科書の通り五節だ。横着して省略すんなよ?」と言うと、二人は小さく笑いながらも手袋をその場に置いてルミアが法陣の前へ立つ。
ルミアの横で見守っていたアステルはすうっと深呼吸をした彼女から数歩下がり、詠うように涼やかな声で呪文を唱えるルミアの後ろ姿を見つめる。
「《廻れ・廻れ・原初の命よ・理の円環にて・路を為せ》」
その瞬間、法人が白熱し視界を白一色に染め上げた。
「――っ!」
「――よしっ!」
息をのんだルミアと、思わず控え気味にガッツポーズをしたアステルは、光が収まり鈴鳴りのような高音を立てて駆動する七色に光る法陣が視界に現れたことでより一層嬉しくなった。
「うわぁ……綺麗……」
「うん……」
ルミアとアステルはその七つの光と輝く銀が織り成す幻想的な風景を前に、感極まったようにじっと見つめていた。
「やーれやれ……そんなに感激するようなもんかね?」
グレンは冷めた目で腕を組みながら法陣を一瞥するが、ルミアは顔を縦に振る。
「だって……今まで見た誰の法陣よりも魔力の光が鮮やかで……それに繊細で力強い……。やっぱり、アステルは凄いなぁ」
「いやそんな。僕はよく水銀を使うことが多かったからほんの少し慣れただけで……。そもそもこれを組んだのは殆どルミアなんだから」
「きっと精製した素材や触媒の質が良かったんだろうな。良かったじゃねーか」
「……え、先生?」
アステルとルミアは実験室をそそくさと出て行こうとするグレンの背中に気付いた。
「帰るわ。あばよ」
「ま、待ってください!」
彼は慌ててグレンの後ろ袖を掴んで引き留める。
「……なんだよ?」
「あの……ええと」
「用がないなら帰っちまうぞ?」
「……あの……えと……」
胃がキリキリする。ふつふつと胃の中のものが沸き上がってきそうな感覚を覚えたアステルは、なんとかそれを抑え込んで、意を決してグレンへ言う。
「先生にどうしても、見て欲しいものがあるんです」
「……はぁ?」
引き留めてしまうことに申し訳なさを覚えながら、アステルはお願いします、と頭を下げた。
そこにルミアもやってきて、「私からも、お願いします……!」と彼と同様に首を垂れる。
そんな二人をグレンは一瞥したあと、はぁぁ~っと大きな溜息を吐いて、
「……わーったよ。んで、何を見せたいんだ?」
頭をがりがりと掻き毟りながら、やけくそ気味に付き合うのだった。
◇
それからルミアはグレンを連れ屋上へ、アステルは自分の開発したものを台車に乗せて屋上へ辿り着くと、すでにその場に居た二人の雰囲気は少し楽しそうだった。
メルガリウスの天空城をどこか遠い目をしながら眺めていたグレンを見たアステルは、無自覚に「何かいいことでもあった?」とルミアへ尋ねると、「秘密♪」と口元に人差し指を当てながらウィンクされてしまった。
「……ってうおぉ!? なんじゃこりゃ!?」
ようやくアステルの方へ向き直ったグレンは目の前にあった物体に思い切り仰け反る。
そう。これは彼がこの数年間で歩んできた軌跡。言わば彼の人生。
「驚きましたか? これが僕なりの魔術の役立て方です。左の名前を《
物々しい、鋼鉄の魔導具。それを見て目を白黒させるグレンは、ちょんちょんとその物体達に触れた。
「こちらの《魔導噴流推進器》は以前飛行テストを行ったところ、大気中に燃焼されたマナが溢れ出してしまって、吸った人物のマナ・バイオリズムに若干の支障を来たしてしまうことから、排管の構造を見直し極限にまで排気マナを薄め、内部で暴発しないよう工夫したものです! また箒の座り心地も悪かったということでサドルを採用し、グリップを取り付け加速時の点火具合を調節するレバーも作成しました! どうですかこのスラッとしながらもしっかりと乗り手を支える力強いフォルム! そしてこの肌触り! 美しいでしょう!?」
「ほ、ほーん……? 飛べんのかよ?」
「それを、今から証明するんですっ!」
アステルは目を輝かせながらグレンへ熱く語り終えると、意気込んで改良された箒へと接続してゆく。
台座といっても、箒の穂の部分を本格的に《魔導噴流推進器》、そして製作中の《魔導浮揚器》の接続をするために改造したものであり、最早箒の原型は留めておらず、言うなれば“杖”といったところだろうか。
金属製のシートの中に綿を詰め皮を張り、滑り落ちぬよう工夫され、角度を付けて拵えている。
跨ったあと、方向を取るのは杖の先であり、微調整することで高低差も制御可能となったが、使用者は前かがみになりながらの操縦となるため、こちらも未だ改良の余地はあるだろう。
だが、アステルの開発した《魔導浮揚器》によって上昇するに当たってのGは風の魔術によってほぼ抑制され、疑似的な足場を設けることで人体への負荷を格段に軽減されていた。
簡単に言うのなら、疑似的な強化ガラスを周囲に取り付けた魔導バイク、と表現すれば理解できるだろうか。
すべての部品接続を終えたアステルは、逐一レポートを取りながらの作業だったために、それなりに待たせてしまったグレンは欠伸を噛みしめていたので、彼はすぐに謝罪する。
「すみません、お待たせしました!」
「おう……。……けっこーゴッツいなそれ」
「はい! 僕の趣味ですからっ! ……ふむ、ですがあまり一般受けはしませんか。考えていたことではありましたが僕の感性はやっぱりほんの少しだけズレているんでしょうか……」
「あはは……」
輝かしいばかりの笑顔を浮かべたアステルにルミアは額に脂汗をにじませながら、また彼の悪い癖が出始めたと思い、彼の加速していく思考を止めようと彼の名前を言いかけたところで、グレンが彼へ歩み寄りその杖を握りしめた。
「んで、完成したらこれ一式で発表すんだろ? 名前はなんだよ」
「……へ?」
「もうそっちにはれっきとした名前が付いてんじゃねーか。なら、
「…………あっ、盲点でした」
「えぇええっ!?」
「……はぁぁっ!?」
ルミアとグレンは彼の真顔に思わず声を上げてしまう。何を隠そう彼は杖の名前など考えたこともなかったのだ。
アステルにとっては《魔導噴流推進器》と《魔導浮揚器》さえあれば現状では十分だったため、試験的に採用した『杖での飛行試験』などには目もくれていなかったのである。
つまり
「確かにこの杖自体にも各部品の圧力や負荷などの力学に耐えうる頑丈さにするために強化魔術を刻印していましたが、まさかこれにも名前を付けることになるなんて思ってもみませんでした」
ハハッとジョークを混ぜたように笑うアステルだが、その額には脂汗が大量に浮かんでおり、ルミアは彼のその表情で全てを察していたために「アステル……」と半ば呆れがちに半笑いを浮かべた。
グレンはただ茫然と目の前に居る発明馬鹿を見つめており、視線が気になったアステルは話を切り替えるべくシートへと跨る。
「そ、それではお待ちかねの飛行試験といきましょう! 二人とも、少し離れてください!」
「どうして離れる必要が?」
「内部機構はすべて把握して安全を確信していますが、もしものとき爆発したら二人も吹っ飛んじゃいますから!」
爽やかに笑うアステルだったが、彼の発言に不安しか感じ得ない二人はそそくさと彼からかなり距離を取り、ようやく飛行準備に移る。
「よし、行きますよ……《ニンバス》!!」
キュィィイイイ――――……という魔導具特有の機械音が《
「凄い……アステルの足元に風が集中してる……」
「いやそれだけじゃねえ。アイツは魔術すら発動していなかった。つまり必要最低限の黒魔を、あのヘンテコな魔導具だけで制御を成立させて飛ぼうとしてるってことだ。だが、飛び立ったあとの衝撃はどうだ? あれだけ圧縮した風だ、モノだけ吹っ飛んで自分は落下すんじゃねーの?」
それを眺めていた二人は息を呑み、グレンは腕を組みながらも彼の組み上げた魔術式はどれだけ高度なのかを理解したが、すぐに冷めた目に戻る。
そしてアステルが地を軽く蹴ったと同時、そのまま垂直に中空へふわりと舞い上がった。
離陸直後の反動すら感じさせない安定した上昇。その感動にアステルは目いっぱいにその亜麻色の瞳を開きながら、喜びのあまり口元を歪めながら息を吐き出し、自分の予想を大きく外したグレンは口をあんぐりと開けながらさらに上昇してゆくアステルを眺めている。
アステルは手元のレバーを操作してグレン達の周りを高度を変えることなく集会飛行を開始。ぐるぐると回ってゆくアステルを目で追ってゆく二人の一方、ルミアは興奮しているのか頬を赤くしながら目を輝かせ、不意に彼女達の前で停止したアステルが叫ぶ。
「このまま学院を一周します! 徐々に速度を上げるので、見失わないでください!」
「わーったよ、途中で落ちんなよ?」
「気を付けてね、アステル!」
二人の言葉にアステルはこくっと大きく頷くと、再びゆっくりと、反時計回りに飛行し始めた。
現在居るのは西館の屋上。彼は東館目掛けて放物線を描くように飛んで行き、徐々に前傾姿勢へなってゆく。加速する気だとグレンは彼の体勢変更で察し、ルミアへと説明する。
東館の中心までやってきたところで更に加速してゆき、アステルの《飛行杖》から蒼銀の軌跡が生まれ、茜色の空によって黄金色に輝く。
「綺麗……!」
「完璧な魔術式が作動してるってことだな。一切の綻びもなし、魔力の漏れもない。……アイツ、いい腕してやがるぜ……!」
それからは一瞬の様だった。彼の姿が徐々に接近――ではなく、まるで瞬間移動でもしたかのように自分達の真横を通り過ぎ、背後でギュンッッッ!! という激しい魔導駆動音が聞こえ、振り返れば。
「ふふっ、どうでした?」
「早過ぎだろ……ヤベェ」
「み、見えなかったよ最後。アステル」
純度が高いマナが蒼銀の鱗粉の様に周囲を舞い、その中で白髪を微かに揺らしながらシートに足を掛け、立った状態で飛行しているアステルの姿があった。
彼は杖を握ったままシートから下り、その場で着地すると思ったが、
「ほー……」
風の黒魔術によって浮遊した状態を維持、レバーを絞りきることでゆっくりと着地したアステルを見て、グレンは思わず感嘆の声を上げる。
肩にかかった三つ編みの髪を後ろへ払ったアステルは、強い意志の籠った瞳でグレンを見つめながら告げた。
「――グレン先生。これが僕の魔術の使い方です」
と。
◇
それから三人で帰路に付き、アステルとルミアは二人の目標をグレンへと告げながら諭してゆく。
アステルは「船を空に浮かべ、親友が目指しているあの《メルガリウスの天空城》まで送り届ける」こと。ルミアは「盲目のまま魔術を忌避するよりも、知性を以て正しく魔術を制する魔術師になりたい」ことを語り、グレンの暗い瞳も二人の強い意志によって、徐々に明るさを取り戻していった。
そして彼らが初めて居合わせた十字路まで辿り着き、アステルとルミアは足を止める。
「あ、先生。私達こっちです。システィの御屋敷に下宿しているので」
「そうかい。じゃあな、気を付けて帰りな」
「大丈夫ですよ? アステルもいますし、もう近いですから」
ねっ、とルミアにウィンクされたアステルは少し顔を赤らめながら「う、うん……」と照れくさげにうなずいた。
「そうか。だが、万が一ってこともある。一応、気をつけな」
「あはは、先生って意外と心配性なんですね?」
「バーカ。それだけお前らが危なっかしいっつーコトだ」
「ふふ、気を付けます。それじゃあ先生、また明日!」
「失礼しまーす!」
「……ん」
グレンは次第に小さくなっていく二人の背中を、なんとなく眺めていた。
二人は途中何度も振り返り、グレンの姿を見つけては嬉しそうに手を振っていた。
「……犬か、あいつらは」
何気なくこぼれた言葉だが、それはなんとなく的を射ている気がした。
あの二人が――三人が犬だとしたら、あのシスティーナとかいう奴は猫かね、と考えてしまう。
「しかしまぁ……ぼ~っとしているようで色々考えてるんだな、あいつら」
グレンは先ほど、二人が入っていたことを胸中で反芻した。
「……『考えないといけない』……『どうして向き合わないのか』……か……」
そしてグレンは懐から辞表を取り出し、それを空に掲げ、中身を透かすように眺めた。
「さぁて……どうしたものかね?」
そんなことを呟いていると、不意に後ろからコツコツと革靴が路を叩く音が聞こえ、グレンは舌打ちをして振り返る。
「………。……なんか用でもあんのか?」
「ううん。なんとなく、ここに来れば貴方がいるかなーと思って」
「……働きだして早々、逃げ腰になってる俺を笑いにでも来たか?」
「――笑わないよ。だって私の知っているグレン君なら、なんだかんだ言ってもちゃんとやる子だもの」
「姉貴面は相変わらずだな――」
穏やかに微笑みかけているのは、その穢れなき新雪のように白い髪と、雪をも欺く白い肌、風の精霊のように神秘的に整った顔立ちの
グレンは彼女の姿を見ると一瞬複雑な表情を浮かべたが、すぐにニヒルな笑みを浮かべ、
「――白犬」
彼女……セラ=シルヴァースをそう呼んだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます! いつの間にかUAが1000近くいっていてビックリしました・・・!
さてさて、約二話ぶりのあとがきのコーナー!
飛び込んでみよう!(
グレン:ほーい、っつーわけでバトン代わって原作主人公のグレン=レーダスと
セリカ:メインヒロインに昇格した(大嘘)セリカ=アルフォネアだ
グレン:嘘つけ! 第一お前第二話以降一切出てきてねーじゃん!?
セリカ:何を言う第一話にも出ていたぞ!?
グレン:なにィ!? 俺よりも登場が早いだとォ!?
※詳しくは第一話『Side???』参照です※
セリカ:あれは間違いなく私だ! 絶対そうだ!
グレン:って作者公認じゃねーのかよ! なんだったんだよ今の自信あり気なカミングアウトはよぉ!?
セリカ:だってお前、この小説に何が足りていないかわかるか?
グレン:そりゃ俺の出番じゃねーの?
セリカ:私が足りない
グレン:……はーい、っつーわけで今回登場した《飛行杖》について説明していきまーっす
セリカ:ええい畜生めぇ! 出番をよこせェ! イクスティンクション・レイだァァァァ!!
グレン:ちょおおおお前ぁあああああああ!?
・《魔導浮揚器》・・・マギウスレビテータ
《魔導噴流推進器》の技術を転用・改変した、飛行杖の上昇・降下システムの根幹であり、《魔力供給器》内の魔晶石から供給される魔力を使用し、浮揚力場を発生させる。
・《飛行杖》・・・ニンバス セリカ:2000
アステルが発明した《魔導噴流推進器》、《魔導浮揚器》と刻印などで改造した杖の総称。当初彼はこの杖に名前を付けていなかった。
グレン:おいばかやめろ。ってか飛行杖はともかく、《魔導浮揚器》とかいう奴は正直俺じゃあサッパリなんだよなぁ……
セリカ:ふっふっふ。ならば私が教えてしんぜよう!!
グレン:おおぅキャラ変わりすぎじゃねお前?
セリカ:《魔導浮揚器》とは《魔導噴流推進器》から発生する風の黒魔を収縮させる機能があり、作中でも語られた使用者本人にとって必要最低限の黒魔で上昇させることが可能だ! ちなみに離陸直後に反動が来なかった理由は学院制服に永続付呪されている【エア・コンディクショニング】からヒントを得て『同一の空間ごと移動する』という点に着目し、杖のシートにまたがった時点で《魔導浮揚器》内部のセンサーが本人の身体情報を感知・解析することで実行が可能だ! つまり《魔導浮揚器》の起動条件は二つあるわけだ。一つは本体に跨った時。もう一つは離陸・着陸時だ。ほかにも緊急停止などにも使われるが、そこまでは私もわからん。アステルに聞け
グレン:……なんかイマイチパッとしねぇなあ。結局どういうことだよ?
セリカ:要は《魔導噴流推進器》が前進と後退、方向転換を受け持ち、《魔導浮揚器》は上昇と降下、また反動制御など使用者本人を保護する役目を持っているわけだ。……これでいいじゃないか。どうしてあそこまで説明文を長くしたのだ……
グレン:文字数稼ぎとかだろ。大人の事情ってヤツ
セリカ:とまあ、とにかくアステルの課題は決まったわけだが、何やら最後は少し雲行きの怪しい終わり方になったな?
グレン:まっ、なんとかなるだろ
セリカ:投げやりだなぁ~。振られたら私の胸に顔をうずめてもいいんだぞー?
グレン:しねぇよっ!! っつーわけで今回はここまで! あばよ!!