守銭奴がいく!   作:トルソー

3 / 8
3話です。
前話が短くなってしまったので今度は少し長めに。
今更ですが、主人公の名前は高堂透(コウドウ トオル)♀ です。
超今更ですみません。

では、今話もお楽しみいただけると幸いです....


3

なんとなく前々からそんな気はしてた。

だんだん、「父さん」が減っていっているような。

だんだん、「おかしい方の父さん」の方が強くなっているような。

 

それでも、受験勉強に道場にバイト、と詰め込めるだけ予定を詰め込んで、あえてずっと先のこととかは何も考えずに淡々と日々をこなしていた私は、きっと大事な「父さん」からのサインをたくさん見落としていたんだと思う。

 

いつもの通り道場に行く前に父さんの日雇いバイトの成果を受け取りに帰宅して、ドアを開けるとそこにいたのは

 

 

 

「いつも通り」じゃない父さんだった。

 

 

 

「グルルルルルルッ」

大きな肉食獣のように喉を鳴らし荒い息を吐いて、血走った目でこちらを見る父さんは「人間」ですらないようだった。

近くを大粒のホコリのようなものが舞い、腐敗したような匂いが充満して、ボロ畳はミシミシと音を立てる。

 

「皆には見えないもの」は昔から見えていた。ホコリのようなものもそれだ。

でも、アレはなんなんだろう?

父さんは何になってしまったんだろう?

 

『....とう、さん?』

一歩、一歩と後ろに下がろうとする自分の足を押し留めて、震える両手を握りしめて、そっと声をかけてみた。

 

「グルルルルルルッ ウゥゥゥゥゥヴゥゥ」

相変わらず唸り、荒い呼吸をするだけだ。

不意にギョロリと目が動いて、意味のある音を紡いだ。

「トオ、ルゥゥゥウウウ、シュ、ナ、ツ...コォオオオ、グルルルッ」

父さんだ!父さんは()()()()

 

どうすれば「父さん」を引っ張り出せるだろう?

 

ー「今出ている方」の「父さん」を気絶させたら?

 

今はそれしか思いつかない。

でもどうやって?

実吉さんの檄にも動揺しなかった自分が、呼吸音だけで押されかけた相手をどうやって気絶させる?

丸腰で?

 

頭の中でウダウダやっている内に、畳を軋ませながら一歩、一歩と「おかしい方の父さん」が近づいてくる。

 

どうする?手刀か?いや、身長的にも手が届く前に腕を取られる。

何か武器になるもの...台所の包丁?いやいや、それじゃあスプラッタな尊属殺傷事件になりかねない.....父さんの肉体は極力傷をつけない方がいいはず....やっぱり手刀?......今日体育でやった支え吊り込み足からの袈裟固め...?

 

いや!あった!タッパがあって鈍器になるもの!

N○K受信料請求に来た奴を脅すように竹刀を内側のドアノブに下げてある。しかも重い黒檀の芯入り。

 

すぐさますり足で後退して後ろ手に竹刀を取る。

 

構えは最上段。

ギエェェエッという怪獣ばりのビックリ声をあげた「おかしい方の父さん」の頸に

『御免!』

迷いなく鋭い一刀を振り下ろす。

 

「グウッッ」

九年間研鑽を積んだ一刀は、的確に「おかしい方の父さん」の意識を刈り取った。

どうと倒れた父さんの体に、背中から異常は確認できないけれど、警戒して中段で構えたまま少し近づく。

 

「うぅ、夏子...透....」

スースーと寝息を立てながら時折日本語らしい発音で寝言を言う父さんは、どうやら「父さん」の方らしい。

 

フッと足から力が抜けて、台所に座り込む。

父さんが目覚めたときにまた「おかしい方」である可能性があるから、不用意には近づけない。さて、どうすればいいか。

まずはバイト先にドタキャンの謝罪を入れないと(もちろん携帯やら固定電話やらは我が家にない)。

 

 

セーラー服の上に羽織っているパーカーのポケットの財布を探ったとき、何かがカサリと落ちた。

 

 

南十字教会 神父 藤本獅郎

 

 

バイト帰りに怪しい神父にもらった名刺だ。

「何かあったら」頼れ....。

これは頼ってもいいんだろうか?

教会に連れてってコ○スタンティ○みたいなエクソシストにこの「おかしい方の父さん」を「悪魔」としてお祓いなんかして貰えたら、サイコーなんだが。

さっきのなんてすごいコ○スタンティ○の悪魔っぽかったし。

 

ん?お祓い?祓、“祓魔師”

祓、魔、師.....

祓魔師(ふつまし)って、“祓魔師”(エクソシスト)なの⁉︎⁉︎

 

じゃあ、母さんはエクソシストで、仕事の関係の火災事故っていうのも「悪魔祓いに関する火災事故」ってこと⁉︎

じゃあその時の怪我がきっかけで私に見えるようになったっていうでかいホコリとか「皆には見えないモノ」は「悪魔」⁉︎

じゃあやっぱり「おかしい方の父さん」も「悪魔」⁉︎

 

おちけつ、ん“ん“っ、いや落ち着け、整理しよう。

祓魔師→エクソシスト

エクソシスト→悪魔を倒す

∴祓魔師→悪魔を倒す

 

母さん→祓魔師

祓魔師→エクソシスト

∴母さん→エクソシスト

 

母さんは仕事で事故にあった

母さんの仕事は祓魔師

∴母さんは祓魔中に事故にあった

 

私の怪我は母さんの事故によるもの

私の異常(異物が見える)もこれが原因(らしい)

母さんの事故は祓魔中のもの

祓魔中ということは悪魔によるもの

∴私の怪我および怪我に伴う異常(異物が見える)は悪魔によるもの

 

仮定

おかしい方の父さんの状態が私にしか見えない→おかしい方の父さんは悪魔にまつわるものである

 

そしてもう一つ

正十字学園町およびその管轄の宗教団体は祓魔師と関係が深い(c.f.うちの道場の相馬寺は正十字学園とつながりがあった。)→南十字教会とやらも祓魔師と関係がある

 

........うん。

よし、まずはバイト先に連絡して、それからこの教会に電話しよう。あの生臭神父に頼るのはちょっと、いやかなり嫌だが、苦肉の策という奴だ。

 

決心してまだ寝言を言っている父さんを古紙回収用のビニール紐で軽く拘束して、家近くの公衆電話に急ぐ。...ビニール紐で大丈夫かって?大丈夫だ、問題ない。きっと。

 

バイト先からは絶望の叫びが聞こえた。ごめんなさい、身内の窮地なんです(マジで)。

少し緊張しながら、名刺の名前の下に小さく印字されている数字をなぞり、教会に電話する。

 

数回のコール音の後、おどおどした男性の声が応対した。

「は、はい、こちら『南十字の教会ですか?』...え、ええそうです。」

『以前、そちらの藤本神父にお会いしたことのあるものなんですが、火急の用事がありまして。お取り次ぎ、願えますでしょうか?』

バイトで鍛えた電話応対術は伊達じゃない!敬語はちょっとアヤシイけど...。

「は、はい!少々、少々お待ちください!」

 

....待つのはいいんだけど、なんで取り次ぎを待たせる間の音楽がトルコ行進曲なんだ?逆に気が急いてきた.....

 

20秒くらいの間を空けて、居酒屋前で出会った男の声とたしかに一致する声が答えた。

「ハーイ、こちら藤本。」

『....以前、居酒屋前でお会いして名刺をいただいたものです。』

「ンー?あぁ!あの違法就労のねーちゃん!!」

うわぁ、なんだか一気に頼る気持ちが失せていく....。

 

『...その件はもう流してください。実は身内が大変なことになってて。前々から予兆?というか、前兆?はあったんですけど....。』

「はぁ、ビョーキとかか?それじゃあ悪いが力には慣れねェ。」

全くやる気のない応答に、頼る筋を間違えたかとも思ったけど、散々お世話になった相馬寺のみんなにはこれ以上迷惑をかけたくなかった。何より、同じ「十字」を掲げているのだ。組織として同じ屋根の下にあるだろうこちらに頼った方がスムーズという判断は誤りでないと信じたい。

 

『病気といえば病気ですけど。教会なら、“祓魔師”と関係があったりしませんか?多分、悪魔がついてるんです、父さんに。』

「...悪魔?」

おや?なんか食いついてきたぞ??

 

『ええと、少し話逸れるんですけど約15年前他界した母が“祓魔師”で。私もその時の事件で怪我をしたらしくて...。ヒトに見えない不可解なものが見えることがありました。今回の父さんの様子は明らかにヒトに見えない方のものです。だから、“祓魔師”と関係のありそうな

「俺の方にコンタクト取ってきたってわけか。」

長ったらしく説明してるとぶった切られた。

 

『...そう、ですけど。』

「ハァー、お前ホントに中坊か?頭の回る奴だなー。」

『いやそういうのはいいんで、“祓魔師”とコンタクトが取れるかどうかだけ、教えてください。』

持ち上げの気配を察知したのでお断りして問えば、またため息。

 

「言ったろ?お前の頭はいい。つまり、その判断はあってたってことだ。」

『うぇ...?』

「ココから祓魔師にコンタクトが取れるどころか、俺が祓魔師なんだよ。」

『は...?....それなら早く言ってくださいよ!こっちは火急なんですよ⁉︎ていうか名刺に書けやコラァ‼︎』

おっと、ついつい乱暴な口調になってしまった。バイトの電話対応を思い出せ...定型文定型文...

 

「マァマァ、うーん、で?親父さんの様子はどうなんだよ。」

『なんか、家帰ったら牙生えて爪伸びてグルグル唸ってました。あと周りにすごいいっぱいでかいホコリみたいなのが飛んでました。』

すると電話線の向こう側に緊張が走る。え、なんかやばいの⁉︎

 

「ッ何⁉︎お前今どこにいるんだ⁈」

『え、家の近くの公衆電話...。』

「親父さんはどうした⁉︎」

『身の危険を感じたので、竹刀で気絶させて手足をビニール紐で縛って置いてあります。』

「鬼かお前は⁉︎ 親への愛はないのか⁉︎」

『えー、だってまた暴れられても困りますし...。』

「ハァー、わかった、不安にさせるようで悪いが、だいぶ高位の悪魔が憑いてる可能性が高い。俺が急行するから、住所教えろ。」

『分かりました、中学校のすぐ近くです。公園のところを右折して....』

 

ツーツーツー

道案内が終わった瞬間に小銭が底を尽きた。

アッブネエ...

とりあえず、生臭神父が来るまでは自宅のドアの前で待機しよう。竹刀持って突っ立ってる女子とか不審以外の何物でもないだろうから。

さっきまで不安だったけど、生臭神父に電話したら一気に自体が動いたような気がする。

やるじゃないか、生臭神父。

 

 

 

 

 




途中、論理式(モドキ)で思考整理をしていますが、あくまでモドキですので深くは突っ込まないでくださいませ....。
剣道とかも、深く突っ込まれるとど素人なんでゔっってなります...調べが甘くてすみません....。

祓魔師=エクソシスト!?の下りは、透さんの頭の中で「ふつまし」の意味が理解できてない&「エクソシスト」に結びついていなかったが故の事件です。
本作オリ主透さんは一応頭の回転が速い人種な設定なのですが、こういう変なところが抜けている子でもあります。

読んでくださりありがとうございました!楽しんでいただければ幸いです!
また更新頑張ります!
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