魔法科高校の楽園の巫女 作:にゃんくる
今日めちゃくちゃ暑いです。
入学式が行われる講堂に入ると既にちらほらと生徒が席に座っていた。とりあえず達也についていこうとするが達也は講堂に入ってすぐに立ち止まって振り返ったためぶつかってしまう。
「霊夢、悪いがここからは一人で行ってくれ」
「!?」
知り合いもいないなか一人で行動しろと申すか!そう非難の目を浴びせるが、ものともしない態度にこちらがおじけづく。
「座席の指定はないが一科生と二科生で分かれているようだ。あえて逆らって目立つのも良くない」
そう言われて初めて気付く。そういえばエンブレムがあるかないかで差別意識があるとメイドさんに教えられていた。そして、達也の左胸にはエンブレムが無く、私には有る。これだけはっきりと席が別れているのにわざわざ逆らえば、それはもう目立つだろう。
「わかった」
つい先ほどまでは裏切られた気分であったが、明らかに自分にとっても達也の言い分の方が正しいと感じ、先ほどの自分の態度を恥じ、速足で達也を抜き去り、講堂の前半分を目指した。
霊夢はちょうどよく見つけた一番通路側の席に座る。ここならば隣接する椅子は右一つだけなので、ストレスも半減すると思い選んだ。
「お隣いいですか?」
式が始まるまで二十分ほどの頃、私に対して話しかけてきたのはどこから見ても無害そうな女生徒であった。私の隣の席はまだ空いており、結局は誰かが隣に座らなくてはならないのだから彼女のような人が隣に来てくれるのは大歓迎だ。そう考えて私は小さくうなずき、通りやすいよう一度席を立つ。どうやら二人組であったようで、ちょうど空いていた二席を見つけてここに来たのだろうと察した。
彼女たちが座ったのを見てから再び私も座る。我ながら完ぺきな対応であったと感じたのだが、二人はしばらく内緒話をしていた。何か私がおかしなことをして陰口を言われているのではないかと気が気じゃなかった。
「あの!私、光井ほのかです!よ、よろしくお願いします!」
心を無にして何も考えないよう努めていると突如隣に座った子に自己紹介をされた。訂正しよう。無害そうに見えたが彼女は有害だ。主にコミュ障に対して。初対面の相手にいきなり自己紹介するなんて難易度の高いことができるなんて、だまされた!
「あ、あの、名前聞いてもいいですか?」
しょんぼりした顔でこちらをうかがってくる彼女、ほのか。自己紹介されたら例え初対面でも自己紹介し返さなければならないのか、いや、初対面だからこそ自己紹介するのか?なんて考えているとほのかは涙目になっていた。自己紹介?そんなもの練習も想定もしていなかった。何と言えばいいのかわからない。名前を聞かれていたのだから、名前を答えればいいのだろうか。
「……霊夢」
「霊夢さんですね!よろしくお願いします!」
「よろしく」
名前を言うだけでぱっと花が咲いたように笑顔になるほのかを見て、緊張が解ける。今まで常に私を知っている人が近くにいたため、自分で自己紹介をする機会はなかった。これからも自分一人で知らない人と会うことがきっとあるだろうからこのような時なんと言えばいいかメイドさんと一緒に定型文を作成しなくては。
「私は北山雫です。ほのかが霊夢さんのすごいファンで……」
「へっ、やややめてよ恥ずかしい!」
二人組のもう一人、ほのかの向こう側に座る少女、雫が顔を出してきたが慌ててほのかが雫の肩を抑え、戻そうとする。そして今、すごいことを言われた気がする。
「私は、アイドルとかじゃ、ないけど……」
「うん、だから良かったら友達になってくれますか?」
ほのかとの競り合いに勝った雫が再び顔を出す。
「……よろしく」
ファン、というのはよくわからないがともかく無事同級生との初コミュニケーションを取ることに成功したと言っても過言ではないだろう。
入学式は深雪の答辞以外はだいたい聞き流した。そのため入学式後、何をしていいかわからなくなってしまった私はほのかに任せ、ついていくことにした。
「ここでIDカードを受け取るみたいですね」
それ用の窓口で個人認証を行い、IDカードを受け取る。
「これで今日は全部おしまいですね、霊夢さんはクラスはどこでしたか?」
「A組」
そう答えると二人とも反応して少し笑顔になる。その時点で二人とも同じクラスなのだろうと予想がついた。もしかしたら彼女たちには長いことお世話になるかもしれない。
「私も雫もA組だったよ!よかった!一年間よろしくね!」
「ん」
一科生のクラスは四クラスあるので、三人して同じクラスというのは一桁パーセント、すごい確率であろう。二人とも優しそうだし、もし深雪が違うクラスなら二人にくっついて一年間過ごそう。そう考えていた。
「私もほのかももう帰るけど、霊夢さんももう帰る?」
その問いに何も考えず頷いてからふと気付く。現在自分は一人で家に帰ることもできず、達也たちとも待ち合わせをしていない、いわゆる迷子予備軍なのではないかと。
「途中まで一緒に帰りましょう」
うつむいているとほのかに手を引かれ、校門の方へと進んでいく。私としては外出歴数週間であるため仕方ないのではないかと考えられるが、この年にして迷子というのは世間一般から見て恥ずかしいだろう。何も言い出せず、どうしていいかわからない私は引かれるがまま歩いていたが、ふと視界に見覚えのあるものが映る。
「霊夢様、お迎えにあがりました。車をご用意してあります」
つい先ほど途中で別れたメイドさんであった。確かに行きは途中までと交渉したが、迎えについては何も言っていなかった。けど今はどうしていいかわからない迷子状態であったため助かった。
「お迎えきたんだ!霊夢さんの家ってもしかしてすごいとこ?」
一般家庭にはメイドさんはいないであろうことはわかっていたので目立つことは避けられないが正直一人で帰るのは難しいのでこれからもしばらくは迎えが必要かもしれない。
「初めまして、私は四葉霊夢様の専属メイドを務めさせていただいております。桜井美波と申します」
「よ、四葉?!」
私は驚いた。そういえばこれまでずっと世話をしてもらっていたにもかかわらず、メイドさんの名前を知らなかったのだ。これからはメイドさんではなく、桜井さんと呼んだ方がいいのであろうか。
「ほのか、雫、またね」
なぜか固まっている二人に対して、友達として無難であろう別れの言葉を告げ、メイドさんに連れられ無事帰路についた。
霊夢をメイド好きからコミュ障迷子へ軌道修正。
それにしてもテンポ遅すぎますかね?他のハーメルン小説ならきっと今頃ラスボスと病室で対峙してる頃ですよね?