魔法科高校の楽園の巫女 作:にゃんくる
みなさんご覧いただきありがとうございます。
現在私、四葉霊夢は今までにない問題に直面していた。
「うぅ……」
私は今ベッドの上で唸っていた。
弁明しよう。まず前提として私は生まれてから十五年、ほとんど部屋の中で過ごしていた。たまに魔法を教わったり運動をすることもあった。しかしこのひ弱ボディではこの二日間の過酷な労働にはついていけなかったのだ。
と、いうわけで今日は休もう。筋肉痛なら仕方ない。
「霊夢様、本日は登校時も車を手配しましたのでご安心ください」
うつ伏せで横たわる私の太ももやふくらはぎをマッサージしてくれるメイドさん、今日は休もうよ。一日くらい休んだって平気だよ。ちょっと勉強すれば追いつくよ。
あからさまに不機嫌な表情を作ってみせても全く相手にされず、いつも通りお世話され、シリアルを食べさせられ、制服に着替えさせられ、赤いリボンで髪を結ばれる。
私が動かないという最強の抵抗を見せても、このメイドさんは極度の世話好きで喜んで世話してくるため、打つ手もない。
「メイドさん、今日は……」
「申し訳ありません。奥様より高校の欠席は私の判断で決めるよう仰せつかっております」
その判断とやらで欠席許可いただけないのだろうか、いただけないのだろうね。
私は逃げられないと判断し、大人しくメイドさんにより一高へ出荷されるのであった。
「……霊夢!霊夢!」
声をかけられている感覚がしてふと意識を覚ます。
筋肉痛があまりにもひどすぎて途中から軽く瞑想状態に入り、痛みから解放されるという手段を使っていた。
思っていたよりも時間が経っていたらしく授業が始まる前に戻るつもりがすでに昼休憩の時間になっていたようだ。
「霊夢!聞いてるの?」
声の主、深雪へと振り向く。
「生徒会室に行きましょう」
そう言えば昨日あの生徒会長に呼び出しを受けていたのであった。
正直行かなくていいかな?と思っていたのだが無理やり連れて行かれるみたいだ。
「今朝登校中に会長と会って、私とお兄様も生徒会室でのランチに誘われたのよ」
なるほど、それで私のことも頼まれていたというわけか。今日のように筋肉痛とかじゃなければ喜んで行くんだけど、本当、筋肉痛でさえなければ。
そのまま私は何事もなかったように机に向き直る。
「霊夢?なんで無視するのかしら?」
怒っていらっしゃる。
「……行きます」
人に怒られると逆らえない質なのであっさり降伏します。
「深雪、おんぶ」
教室を出て数歩ですが、霊夢はもう歩けません。背負って運んでください。
「歩いてください」
深雪の怒っている声はとても怖いです。
「ようこそ生徒会室へ、どうぞ掛けてください」
途中達也と合流して生徒会室の扉を開くと生徒会長に空席へと誘われる。
生徒会長以外にもメンバーは三人いて、上座にいる生徒会長の向かって右側に一列に座っていた。生徒会メンバーと隣り合うことがないのはありがたい。
「失礼します」
深雪が綺麗なお辞儀をして入室する。それを見て私も礼をして入る。
「ご丁寧にどうも、ランチは
お話はお昼を食べながらにしましょう」
そう言われて目線をやると初めて見る自動配膳機の姿があった。
自動配膳機は主にレトルトなどの食品があらかじめセットされており、選択したメニューに応じて料理を出してくれる自動販売機のすごい版だ。
これまでキチンとした食事しか食べてこなかったため、どうしてもジャンクなものが食べたくてしょうがなかったのである。
と思っていたのだが、ここには肉、魚、精進料理しか種類が無かった。ハンバーガーセットはなかった。悔しく思いながらも魚を選ぶ。
「まずは紹介しますね
手前から会計の市原鈴音、通称リンちゃん
真ん中が風紀委員長の渡辺摩利
それから書記の中条あずさ、通称あーちゃん」
一人だけあだ名がなく、ボッチ度数が高そうだと判断した渡辺先輩を仲間を見るような目で見つめる。
「私のことをリンちゃんなんて呼ぶのは会長だけです」
「私にも立場がありますから、下級生の前であーちゃんはやめてください!」
あだ名で呼ばれた二人は抗議するが、渡辺先輩は一人静かにお弁当を食べている。
やっぱりかわいそうだ!
「渡辺先輩、そのお弁当はご自分でお作りになられたのですか?」
そこに深雪のナイス話題トスが入る。私では『今日は天気がいいですね』レベルの低いトスしか出せないだろう、流石は一学年の前で答辞を述べた学年主席だ。
「そうだが、意外か?」
「いえ少しも
普段から料理をしているかどうかはその手を見ればわかりますから」
達也が横からスパイクを決める。完全に決まったようで渡辺先輩は恥ずかしそうに自分の手をテーブルの下に隠した。
「そうだお兄様!
わたしたちも明日からお弁当にしましょうか!」
「深雪の弁当はとても魅力的だけど
二人になれる場所がね……」
確かに昨日のようなトラブルが起きるならばお昼はお弁当にしてどこかで食べるのも良い手だろう。
さっそく私も明日からメイドさんに頼んでお弁当を作ってもらい、一人で食べられる場所を探すべきか。
「兄妹というより恋人同士の会話ですね」
「まあ確かに、血の繋がりがなければ恋人にしたい
と考えたことはあります」
まさかの妹ラブ宣言であった。
私は深雪がお兄様ラブなのは本人から充分聞いていたが、まさか両想いだとは思っていなかった。
先ほど紹介された三人も、のろけられるとは思っていなかったようで恥ずかしそうにしていた。
「もちろん冗談ですよ」
達也……真顔すぎて冗談かそうじゃないかがわからない。
中条先輩と深雪も冗談だという発言に強い反応を示していたので二人も冗談だとは思わず本気で受け取っていたのであろう。言葉にならない言葉が口から洩れている深雪、あなたのその反応は少しまずい気がします。
「では、そろそろ本題にはいりましょうか」
それまで面白そうに会話を聞いていた生徒会長が切りだす。
「当校は生徒の自治を重視しており、生徒会は学内で大きな権限を与えられています。
生徒会は伝統的に生徒会長に権限が集められています。
生徒会長は選挙で選ばれますが生徒会役員は会長が選任します。
そこで司波深雪さん、四葉霊夢さん、私はあなたたちの生徒会入会を希望します。
引き受けていただけますか?」
え?嫌だ。絶対嫌だ。三年間帰宅部で過ごしたい。
どうにか私を救う先ほどのような完ぺきなトスを上げてもらえないかと期待を込めて深雪の方を見ると何か伝わってくれたのか頷かれた。
「会長は、兄の入試成績をご存じですか?」
「七教科平均96点のダントツトップ、すごいですよね」
「有能な人材を生徒会に迎え入れるというのなら、わたしよりも兄の方がふさわしいと思います!
わたしを生徒会に加えていただけるというお話は大変光栄です。喜んでお引き受けしたいと思います。
ですが……
兄もわたしや霊夢と一緒に、生徒会に入るわけにはいきませんでしょうか?!」
!?
現在、私も達也も鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
兄は優秀、兄は生徒会にふさわしい、霊夢の代わりに生徒会に入れよう!
という完ぺきな流れだと途中までは思っていたのだが、最後の最後に肩透かしをくらった。
どうやら先ほどの頷きには完全に認識のすれ違いが起きていたようだった。
「残念ながらそれはできません。
生徒会役員は一科生から選ばれると制度で決まっています」
「現行の体制が正しいとは思っていないのだけれど、
ごめんなさい」
市原先輩も生徒会長も申し訳なさそうに言う。
「……いえ、申し訳ありませんでいた。
分を弁えぬ差し出口をお許しください」
深雪は本当に悲しそうにそう言った。
私もその気持ちはわかる。
私も家から出るのはつらいし早く帰ってお布団に還りたい。
深雪も大好きな兄と離れたくないのだろう。
そう他人事のように感慨を覚えていた。
「では深雪さんと霊夢さんは書記として今期生徒会に参加していただきます」
「はい、精一杯努めさせていただきますのでよろしくお願いします」
待ってください!
私は受け入れるなんて言っていません!
勝手に入ることになっていたことに絶望感を覚える。
「ちょっといいか?」
完全にお開きになりそうな雰囲気のところに渡辺先輩からの助け船が入った。
「風紀委員の生徒会選任枠がまだ決まっていない」
「そっちはまだ人選中よ」
「一科の縛りがあるのは生徒会メンバーだけ。
風紀委員は二科の生徒を選んでも規定違反にはならない」
そこまで聞くと生徒会長は立ち上がる。
「ナイスよ!摩利!
風紀委員なら問題ないわ!
生徒会は司波達也くんを風紀委員に指名します!」
助け舟は助け舟でも、深雪への助け船であった!
絶望の海に溺れる霊夢であった……
私は先日の夢想封印が生徒会長に確実に見られていたというのは直感で理解していた。
魔法によって起こされた現象に触れればそれを問答無用で吹き飛ばし、人に当たれば一定時間魔法を封印することができる私しか使えないであろう特別な魔法、夢想封印。これは私の判断で使用してもいいが説明はしないこと、と厳命されている。
そのため、とりあえずの言及から免れることができたのはラッキーだったということにしよう。うん、それで充分だ……
改行について感想でアドバイスいただきましたが、
たぶんこういうことであってます、よね?