彼女の笑顔が好き。
まるで、満開の桜の花が咲くように、パァッと明るく咲くから。
「マスター、このおかしとっても美味しいです!」
なんて言って無邪気に笑う彼女を見ていると、釣られてこっちも笑顔になる。
彼女の怒った顔も好き。
コロコロ変わる表情を眺めているのは、退屈しないから。
「もー、沖田さんは怒ってますからね!」
だからつい彼女をからかってしまうのも許して欲しい。
沖田のいろんな表情を見てると、小さな幸せを感じる。
これを守るために頑張ってよかったな、と思える。
彼女の剣筋が好き。
剣術の天才と称される彼女の剣技は、素人目にも凄さがわかる。
「━━━無明三段突き!」
その洗練された太刀筋に、視線を奪われたことは一度や二度ではない。
それ程までに、美しい。
彼女の本質が好き。
普段の無邪気な彼女ではなく、無機質な人斬りとしての側面。それこそが彼女の本質だ。
「戦場に事の善悪なし……ただひたすらに斬るのみ」
彼女にとって、剣技は目的ではなく手段に過ぎない。剣技を高める為に人を斬るのではなく、人を斬るために剣技がある。
彼女にとって、戦場にあるのは正義などではなく、生と死だけだ。斬り合いの前に、主義主張など意味を成さない。
彼女にとって、オレのしていることは正義ではなく、『最後まで共に戦う』という彼女自身の悲願を果たす為のものだ。何のための戦いか、などということは彼女にとって重要ではない。
沖田総司という英霊は、人斬りの英霊だ。これは揺るがない。
であるが故に、そうでない存在であるオレとの先に、幸せなんて待っていないのかもしれない。
けれどそれが、それこそが。
オレが美しいと思った、オレの好きな彼女だ。
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彼の笑顔が好き。
まるで太陽みたいに、ふわっと明るくなるから。
「沖田、おかし貰ったから一緒に食べない?」
彼が笑うと、空気が柔らかくなる。見ていて、心が暖かくなる。
彼は太陽みたいな人だから、みんなを照らし出している。
笑いかけてくれるのは私にだけじゃない。私にそんな笑いかけてくれるのは貴方しかいないけれど、貴方は誰にだってその表情を見せてる。
それは私には眩し過ぎるくらいで。
でも私は分不相応にも、その表情に惚れてしまったのです。
彼の声が好き。
耳に心地良くて、聞いていて思わず頰が緩むから。
「ごめんごめんって!」
私と遊んでる時の楽しげな声とか。
病弱な私を気遣ってくれる時の優しい声とか。
普段の、年相応の声も。
戦闘中の、マスターとしての声も。
召喚されてからきっと一番聞いたその声を。
全部、私は聞いていたいんです。
彼の在り方が好き。
『最後まで共に戦い抜きたい』という私の願いを大事にしてくれるから。
「いこう、沖田!」
英霊になってもなお、私は病弱で、足を引っ張ることもある。
マスターには他にもサーヴァントがいて、彼らはみんな強力だ。それこそ、私に力を借りなくても済むくらいには。
でも彼は、私の願いを知っているから、いつも私を頼ってくれる。最後まで共に在ろうとしてくれる。
私が倒れても、見捨てずに手を引いて、一緒に居てくれる。
だから私は、貴方にお仕えしているのです。
彼の本質が好き。
私のような人斬りに対しても、在り方を否定しないどころか、一緒に居てくれるから。
「『生きる為』だ━━!」
彼は、他人の為に行動できる人だ。それでもし自分が傷つくとしても、他人を助ける為に動くだろう。
彼は、生きる為に足搔ける人だ。それでもし自分が危険な目に遭うとしても、可能性があるなら努力するだろう。
彼は、どんな相手にも踏み込める人だ。それが私のような存在であったとしても、それを許容した上で、一緒に居ようとするだろう。
彼は弱い。剣士でもなければ魔術師でもない、そもそも戦う人間ではない。だからたくさん傷つき、痛みを伴う。
けれど彼は、歩き続けるのだ。
それがどんな痛みを伴うものでも、決して歩みを止めることはなく。
ひたすらに、生き続けるのだ。
藤丸立香という人間は、凡人だ。これは揺るがない。
であるが故に、人斬りである私と共に在ろうとしたところで、叶わないかもしれない。
けれどそれが、それこそが。
私が愛した、私のマスターなのです。