ただ、己の為に   作:天澄

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#26.Sports festival:Towards the final competition

『さぁさぁ、次は第二種目……の前に一つお知らせだ!!』

 

 障害物競走を全チームがゴールし、数分の休憩を段階で、実況のプレゼント・マイクからそんな言葉が発せられる。

 よくプレゼント・マイクはそのテンションを維持できるよなぁ、と呆れながら、楽しそうに大声で喋り続けるプレゼント・マイクの言葉に耳を傾ける。

 

『これ以降の競技は全て第一競技で組んだチームで参加してもらう!無論、最終種目に出場するのに必要なポイントもチームごとだ!!』

 

「……は?」

 

 誰かがポツリとそう漏らしたのを皮切りに、会場内の生徒から戸惑いの声が上がり始める。確かに、事前情報なしなのだから戸惑うのも分かる。

 ただ自分に関しては、可能性の一つとして考えてはいたので、さほど驚きはない。わざわざチームメンバーを申請して、記録されたのだからどこかのタイミングで再び使われる、程度には考えていた。

 だからわざわざ物間とA組メンバーの間を取り持とうとしたり、心操の個性を褒めるような真似をしたのだ。普段であれば完全放置である。

 

『いきなりの情報に戸惑ってる暇はないぜ?なんてたって(ヴィラン)の襲撃は何時だって唐突だからな、何事も即時対応!!つーわけで次の競技いくぜ!!』

 

 そうして会場内の大型モニタに表示されるのは、『玉転がし』の四文字。競技自体は、一般的なものではある。

 

『基本ルールは玉を転がしてゴールへと持っていくだけ!ただし、スタート段階での玉は一つだけ!その玉をチームごとに奪い合ってもらうぜ!!参加人数は各チーム三人ずつで―――』

 

 プレゼント・マイクから告げられる競技内容を聞きながら、自分たちのチームから出場する選手を選んだり、作戦を立てたりしていく。

 その中核になるのは、自分だ。自分が集めたチームであるし、何より()()()()()()()()()()()()()()()

 

 この体育祭における自分の目的は、何らかの形で体育祭を見ているヒーローたちの記憶に残り、できることならコネを作ることだ。

 その場合、一番いいのは自分が有能であると示し、スカウトしたいと思わせることである。それに成功すれば、早ければ今日の体育祭終了後に声をかけられることすらあるだろう。何と言ったって、人材は有限であり、奪い合いになるのだから。

 

 そして、有能というのは何も戦闘能力に限った話ではない。

 支援能力の高さや、平時における個性の応用力。そして指揮能力の高さ。

 様々な要素でアピールする必要がある以上、できるだけ多くアピールの機会を作る必要があった。

 

 ―――そんな風に打算もありながら、いくつかの競技をチームで協力して攻略していく。

 

 自分なんかは綱引きに出場して、憑依召喚で力の強いものを憑依させることで勝ったり。

 あとはパンチングマシーン、とかいうイロモノ競技で、絆憑依でヤク中の個性を使ったりした。流石にクスリは怖いので、出力は落ちるが、煙草で代用になったが。

 

 そんな風に午前中いっぱいを使って、多くの競技を終わらせる。

 そして、その結果が集計され、今、発表の時を迎えていた。

 

『さぁさぁ、ここまでの結果発表だ!つっても最終種目出場者を決めるだけだからサクサクっといくぜ!!』

 

 最終種目だけは、毎年恒例で、トーナメント方式のシンプルな一対一の試合になる。

 その年によって、最終種目に出れる人数は変化するが、今回はチームごとの順位なので上位四チームの計二十人。

 そして出場する二十人の中から四人、教師陣の判断により一回戦のシード枠が決められる。

 だからまぁ、別に一位を取らなければならないわけではなかったのだが。

 

『一位は、〝ジロちゃんと愉快なヤベー奴ら〟チーム!いややっぱふざけたチーム名だなオイ!!』

 

「ほんと、なんでこんなチーム名が通ったのかな……!」

 

 恥ずかしさから顔を覆う耳郎を笑いつつ、会場の観客たちに向かって手を振る。

 まぁ面子的に一位以外ありえない、という話で。アピールという観点的にも、手を抜く理由がないということだった。

 

 ちなみに、チーム名は自分がチーム登録時にメンバーには黙って登録した。

 いや、だって心操は目つき悪いし、物間はなんやかんやで中身ヤバかったし。轟は天然で、自分は言わずもがな。存外、ピッタリの名前だと思うのだが、耳郎的にはお気に召さないようだった。

 

『二位は〝爆豪〟チーム!こっちは普通の名前で安心するようなつまらないような!!』

 

 そこから、最下位までチーム名が呼ばれていく。

 流石に、というか上位のチームは所属するA組の人数が多い。特に二位の爆豪チームなんて、メンバーが全員A組だ。まぁ彼の場合は、その性格に慣れているA組しか対応できなかったのだろうが。

 まぁこれは、実戦の経験、というのはそれだけで多大な経験値となるということの証左だろう。

 

『さて、次は午後からの最終種目!そのトーナメント表の発表だ!!』

 

 画面に表示されるトーナメント表から、自分の名前を探す……までもなく。一番左上、分かりやすい位置に自分の名前は存在していた。

 もちろん、予想はしていたが、シード枠に割り振られている。だから一回戦目は試合はなく、二回戦目からが自分の出場タイミングになる。

 そしてその相手となる可能性があるのは。

 

「緑谷か、心操か」

 

 緑谷の方はどうでもいいとして。早くも元チームメイトと戦うことになるとは。

 まぁ別に、元チームメイトだからといって遠慮とか、何かそういうのがあるわけはないのだが。敵になるなら躊躇いもなく潰すだけである。

 

 そして緑谷はクラスメイトであるため。心操も元チームメイトであるため、個性は分かっているし、メタは張りやすい。

 三回戦以降は、それ以前の試合を見れば対策は練れるし、充分優勝は狙えるだろう。

 

 そうやって最終種目について考えているうちに、プレゼント・マイクの説明も終わって昼休憩に入る。

 相変わらず、学校生活では基本的にルリには干渉しないスタンスを貫いている。そして同時に、特別親しい人間を自分は作っていない。

 故に、下手をすると発生するのはぼっち飯である。

 

「そしてそれは嫌だから、一緒にご飯食べようぜオールマイト!」

 

「相変わらず君の行動は読めないね!!」

 

 様々な人に聞いて回りながら、オールマイトを探せば、人気のない階段でその姿を見つける。

 オールマイトは目立つ分、少し聞き込みすれば分かるから楽だよなぁ、なんて思っているとオールマイトより奥。より暗い位置にで揺れる、炎に気づく。

 

「君は……」

 

「エンデヴァー……」

 

 オールマイトの次に強いとされる、No.2ヒーローのエンデヴァー。その個性こそソールの下位互換でこそあるが、それを補って余りある技量でNo.2の地位にいる、精神論のオールマイトとはまた別ベクトルの化物。

 オールマイトを精神の化物と称するなら、()()()()()。それが自分の知る、エンデヴァーというヒーローだ。

 

 エンデヴァーは事件解決数史上最多を誇るが、その苛烈とも言えるやり方から、嫌っている一般人も多い。

 しかし、スラム街出身の自分からすると、その目的のために最低限のルール以外は、手段を選ばないスタイルはシンパシーのようなものを感じるところがあった。

 

 そう、あくまで『シンパシーのようなものを感じるところが()()()』だ。

 

 今こうして、直接エンデヴァーに相対してなんとなく。本当になんとなくだがざわつきのようなものを覚える。

 直感的に、エンデヴァーとはどこか相容れない―――そんなものを感じながら、それでも味方に付けられれば強い手札となるので、あくまでにこやかに挨拶をする。

 

「え、っと。どうも、はじめましてエンデヴァーさん。体育祭見てたなら知ってるかもしれませんが、改めて。喚導想也です」

 

「……ん、ああ、はじめまして、エンデヴァーだ」

 

「喚導くん、私の時と態度違い過ぎない?」

 

 まぁオールマイトには遠慮しないと決めているし、と内心だけで呟きながら表面ではオールマイトにガン無視を決め込む。

 そんな様子のこちらに、エンデヴァーは何を思ったのか、一つ頷くと、こちらに背を向けて去りながら言葉だけを置いていく。

 

「君にも期待しているよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ブチッ、と。頭の中で何かが切れるのを自覚する。

 既にエンデヴァーの姿は、階段の先の曲がり角に消えている。しかしそうか、あくまでエンデヴァーにとって自分は、()()()()()()()()()()()()()

 基本的には他人からの評価など気にしない身だが、流石にここまで言われて黙っているわけにはいかない。

 轟には悪いが、もし試合で当たったら、ちょっと、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「フフ……フハハハ……」

 

「か、喚導くん……?おーい?」

 

 

 

 

 何故かやたらと大丈夫か、と問うてくるオールマイトと昼食を済ませ、会場へと戻る道すがら。ふと、聞こえてきた声に足を止める。これは、轟と緑谷の声だろうか。

 

「―――個性婚、って知ってるか」

 

 自分と同じように、偶然にも近くを通りがかり、思わず聞き耳を立てていたらしい爆豪を騒がないように抑えつつ、轟と緑谷の会話に耳を傾ければ、聞こえてきたのはそんな言葉だった。

 そしてそこから続けられるように語られたのは、実に胸糞悪い話だった。

 

 ―――轟焦凍は、オールマイトを超えるために作られた子供である。

 

 大雑把にまとめれば、そういう話だった。エンデヴァーがオールマイトを超えられなかったため、超えられる子供を作る。

 元々、存在の知られていなかったソールような個性を除けば、地上最強の炎熱系とも言われる個性だ。その上で、強力な個性、轟の個性から察するに氷結系統の個性を持った女性を妻とし、子供を作る。

 そうすれば、上手くいけば両方の個性を持った子供が生まれる。それが個性婚であり、その結果生まれてきたのが轟焦凍、ということだった。

 ああ、なるほど、確かに手段の一つではあるだろう。次世代に託す、それ自体はきっと間違った選択肢ではない。

 轟焦凍を生まれさせ、そこで願いを託したのなら、自分は気にしなかった。

 

 だが、エンデヴァーは()()()()()()()()。オールマイトを超えろと強制したのだ。

 

 子供はテメーの道具じゃねぇんだぞ。それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 自分に都合がいいように無理矢理教育する。自分に都合がいいように邪魔だから捨てる。

 子供に対してやったことが違うだけで、大元は子供を自分に都合が良いように扱っているだけだ。それで苦しんだ子供がどれだけいるか。

 

 エンデヴァーと相対した時、何故ああもざわついたのかを、ここで理解する。

 ああ、それは相容れないわけだ。自分の本気で嫌いなものの一つなのだから。

 スラム街で自分が苦労を味わい、そして同じく辛い思いをした子供たちを見てきた自分には、身勝手な親というのはどうしても許すことのできない存在だった。

 

「……予定変更」

 

 先ほどまでは轟と試合で当たった場合、八つ当たりするつもりだったが。今の話を聞いたら、そうも言っていられなくなった。

 やっぱり、巻き込まれる轟には申し訳ないのだが。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 なに、別に自分の価値観をエンデヴァーに押し付ける気はない。ただただ気に食わないから喧嘩を売る、それだけの話だ。

 

 流石の内容に、黙り込んだ爆豪を置いて、会場へと戻る。

 自分の実力であればまず負けはしないし、轟も同様。順当に行けば準決勝には轟とあたるだろう。

 とはいえ、それで油断して足元を掬われてはたまったものじゃない。だから二回戦、三回戦であたることになる人には悪いが、少しばかり本気で相手させてもらおう。

 

 なんせ―――珍しく、本気でエンデヴァーにはイラついているのだ。




無駄に長くやってもダレるんで、第二種目以降はばっさりカットで。
最終種目も主人公が関わらない部分はカットやね。 

と、いうわけで、次回からふぁっきゅーエンデヴァーな感じ。
ちょいちょい轟を出してたのはこれが理由。
まぁどう喧嘩売るかは、予想できる人もいるんじゃない?

あとTwitterの方でトーナメント表あげるから、気になる人は見てちょうだい。
https://twitter.com/Amazumi_creator
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