ただ、己の為に   作:天澄

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#37.A pleasant interview.

「―――それではこれより面接を始める」

 

「何をやってるんですか」

 

 呟くと同時、部屋に入ってきた黒霧がそうツッコミをいれてくる。だがしかし待ってほしい。何をやっているかなど、たった今言ったのだし、加えて現状を見れば分かるはずだ。

 一つだけ置かれたパイプ椅子。その椅子とは長テーブルを挟んで反対側には四つ椅子が並び、一つが空きで残りに自分とルリに死柄木が座っている。更に長テーブルの上には紙媒体の資料が複数。どこからどう見ても面接会場でしかない。

 喚導想也が責任者の喚導想也による立案、そして喚導想也による設営によって用意されたイベント。

 

「そう、俺による俺の為の俺の面接……!」

 

「いや、あなたは面接官なんですから、あなたの面接ではないでしょう」

 

 せやな、と頷きつつ黒霧を手招きする。そこにどういう意図があるのか察したらしい黒霧は、はぁと呆れの溜息を吐きつつも、そのまま空いている椅子へと座ってくれる。

 なんやかんやで乗ってくれるから黒霧ちゃん好きやで、と思いつつ、手元の資料を確認する。

 しっかりと四人分コピーして用意してきたそれは、言ってしまえば履歴書だ。今回、何やら死柄木たちの組織〝(ヴィラン)連合〟の方に新たな仲間を加えるにあたって、希望者が多過ぎるのである程度絞り込みたい、という話を死柄木の方から自分は聞かされた。

 どうやら、ステインは敵連合の方に所属していたらしく、派手に活動したステインの影響で希望者が増え過ぎたらしい。なので、だったら面接で絞り込めばよくないか、と自分が提案し、じゃあそれで、と死柄木から全部丸投げされたのが現状だった。

 

 ……いや、待て。冷静に考えたら幹部でも何でもない自分が面接を仕切るっておかしくないか……?

 

 これ以上考えると敵連合のガバガバっぷりというか、適当さが露呈する。やめておこう。

 

「死柄木、これってあくまで主力部隊に入れるかどうかの面接でいいんだよな?」

 

「ああ。主力か、下っ端かの分類だけしてくれればいい」

 

 オッケー、と死柄木に返事をしつつ、最初の面接対象が来るまでに改めて資料を確認しておくことにする。そしてついでなので、資料の段階である程度主力行きかと、下っ端行きかを判断しておく。

 敵連合はその活動上、どう足掻いても主力には強さが求められる。なので、個性や過去の実績から先にある程度のアタリなら付けられるのだった。無論、実際に面接をして使えそうだったら評価を修正はするが。

 それでも、同日に複数人を捌くという都合上、事前の整理は必要なことだった。

 

 そんな風に自分は時間を潰し、黒霧もまた資料を読み込み。ルリは気分よさげに鼻歌、死柄木は椅子に寄りかかって眠ることでそれぞれ時間を潰していく。半数がこのあと面接官をやるとは思えない時間の潰し方をしているが、これでこそ敵連合みたいな気がしてしまうあたり、自分も洗脳済みなのだろう。

 いや、スラム街もこんな感じだったし、元からだった気もするのだが。

 まぁ何はともあれ、そうこうしているうちに最初の面接対象がやってくる時間となる。

 

 

CASE 1:蜥蜴男

 

 

 コンコン、と部屋に扉をノックする音が響く。それに自分がどうぞ、と返すと、失礼します、という声と共に、一人の青年が部屋へと入ってくる。

 

「真面目過ぎ。ヴィランらしくない。減点」

 

「うーん、理不尽な気もするけど、我らがリーダー死柄木が言うんじゃ仕方ないよね!というわけで慈悲はない、早速減点です」

 

「えっ」

 

 ショックを受けた、というよりかはこちらの対応に戸惑っているかのような顔をする青年。手元の資料を確認すれば、ヴィランとしての活動名はスピナーであり、また資料にある写真と目の前の青年の姿が一致することも分かる。

 全身を鱗に覆われた、蜥蜴を擬人化したような見た目に、各所に巻かれた包帯や首元のマフラー。資料の写真を見た段階でも思っていたが、分かりやすくステインに影響を受けているらしい。

 また、ステインに影響されてヴィランになったためか、明確な過去の実績というべきものが存在しない。だからこの面接で判断したいところなのだが。

 

「さ、とりあえずはまずはそこの椅子に座りなさい。あと今のやり取りで分かっただろうけど、ヴィランだからまともな面接にはならないよ?」

 

 それにえぇ、という顔をするあたり、まだネジが吹っ飛んでいないらしい。まぁステインに影響されただけの新米ヴィランならそれも仕方ないのだろう。

 とりあえず頭の中でスピナーのことは哀れな被害者に分類しつつ、まだまだ何人もいるので手早く面接を進めていくことにする。

 

「それじゃあ、本格的に面接を進めさせてもらうけど。とりあえずスピナーくんはステインに影響されてヴィランになったんだな?ということは、あくまでステインの思想に共感しているのであって、うちのリーダーに全面的に従う、っていう認識でオーケー?」

 

「……まぁ、そうだな。俺はあくまでステインの夢を引き継ぎたいだけだ。だからステインの主義主張に沿わないようなら聞く気はないな」

 

 なるほど、とスピナーの資料にメモを取る。ある程度の主義があり、場合によってはリーダーの言うことを聞かないだけの気概もある。ただし、その主義はあくまでステインのものであり、自分のものとして昇華できない限りはブレを持つ可能性もあるだろう。

 

「次は戦い方についてだな。事前に提出してもらった資料には近接戦がメイン的なことが書いてあるけど。実際のところどれだけ自身がある?」

 

「元々ある程度は鍛えていたとはいえ、本格的に鍛えたのはステインを見てからだからな。あんたと真正面から渡り合うのが精一杯ってところだろう」

 

 憑依召喚をしていない時のこちらと渡り合える程度、となるとそれなりには使えるだろう。少なくとも、雄英の教師陣とは勝てずとも時間稼ぎ程度はできることになる。それに歩き方や体幹を見たところ、虚偽申告だとも思えない。

 ここに個性も加えれば戦力的はアリだな―――そんな風にしばし、自分がメインで偶に黒霧からの質問を加えつつ、面接を続けていく。

 そしてこちらから聞きたいことがある程度出尽くした段階で、最後にざっと現状での評価を伝えておくことにする。

 

「この後他の人と比べて決定するから絶対、とは言えないけど参考までに現状での評価を。黒霧から頼む」

 

「そうですね……。戦力的には申し分ないですし、思想に関しても途中までは我々と同じ目的となるので問題ないでしょう。あとは実戦経験が少ないというのが気になる程度でしょうか」

 

「次に死柄木」

 

「面白味がない。個人的にはつまらなくてアウトだが、まぁ喚導が戦力になると判断したならまぁいいだろ」

 

「誰だよこいつ面接官に呼んだやつ。や、まぁ俺なんだけど。んじゃまぁ続いてルリ」

 

「私、トカゲさんってじっくり見ると意外と可愛いと思うんだ」

 

「うーん、そんなこと言っちゃうルリちゃんが可愛い。というわけで個人的にはルリがお気に入りのようなので前向きに検討したいと思います。本日はありがとうございました」

 

「……大丈夫なのか、この組織……?早まったか……?」

 

 まともさを求めていたのなら、早まったのだろう。そんなことを思いつつ、部屋から出ていくスピナーを見送った。

 

 

CASE 2:制服女子

 

 

「おっ邪魔っしまーす!」

 

 何人かの面接を済ませたあと、やたら軽いノリで入ってきたのは一人の女の子だった。カーディガンにプリーツスカート、一般的な女子高生のような恰好をした少女だ。団子状にまとめられた髪に、特徴的な瞳孔を持った可愛らしい少女だとは思う。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。はて、と首を傾げつつ、それでも少なくとも狂気が見え隠れしているあたり、真っ当そうな人間ではなさげなので、飛び込み参加の可能性も考慮して対応することにする。

 

「えっと、君、お名前は?」

 

「トガです!トガヒミコ!」

 

 トガ、トガ……。はて、何やら覚えがあるぞ、と資料を確認すれば、丁度次面接予定の人物と同じ名前だ。だが、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「トガちゃん、資料の写真と見た目が違うようだけど?」

 

「はっ、そーでした!その資料の写真、個性で変身してた時に撮ったんです!うっかりしてた……」

 

 大きな身振り手振りを交えて喋るトガちゃんに、これまた愉快そうなのが来たなぁと内心笑いながらも、資料に記載された個性の内容を確認する。確かに、細かい条件は書いていないが、変身系の個性だとはある。

 無論、嘘の可能性もあるが……そこら辺の危険性は最初から織り込み済みのこの面接だ。とりあえずは目の前のトガちゃんであろう人物の面接を行うことにする。

 

「じゃ、とりあえずはそこ座ってもらえる?」

 

「はーい!……あ、でもその前にいいですか?あなた、喚導くんですよね?」

 

「ん?そうだけど―――」

 

 返事をし、資料の方からトガちゃんへと視線を戻そうとした瞬間。()()()()()()()()()()姿()()()()()

 いいや、無意識の領域へと入られたのだ、と同系統の技術を持つが故に感覚的に理解し、そのまま呼吸を奪い返してこちらへとナイフを振るおうとしたトガちゃんの腕を掴んで抑え込む。

 

「……あり?」

 

「どういうつもりかな?」

 

「あわわ、まさか対応されるとは。結構自信あったんだけどなー」

 

 こちらの質問をガン無視してそう呟くトガちゃんは、腕を掴まれ捕らえられていることを気にした様子もなく、呑気に口を尖らせている。

 この子、あまりにマイペース過ぎて大物では……?と内心ちょっと慄いていると、唐突にトガちゃんは私知ってるんです、と切り出してくる。

 

「実はステ様と喚導くんが戦ってる近くにいて、お二人の戦い見てました」

 

「マジかよ」

 

「二人ともとってもとっても素敵で、ゾクゾクしちゃいました。―――あぁ、あなたとも一つになってみたいなぁ」

 

「やっべ、こいつマジもんのサイコパスだ」

 

 だがそれでこそ面白いと思う。これには死柄木くんもニッコリ。

 

 予想外なところでヴィランらしいヴィランが出てきてちょっと楽しくなってきた。実力に関しては今の攻防で申し分がないことが分かったし、また実績も資料にある過去、彼女が起こしたらしい事件を見る限り問題ない。

 即戦力級の当たりヴィランだろう。ちょっと自分が付き纏われる恐れがあるが、まぁ彼女程度の実力であれば捌けるだろうし、もし失敗して死ぬことになっても、そこら辺は負けた自分が悪いということで。

 

「即採用だと個人的には思うんだけど、そこらへんどうよ」

 

「まぁ私はアリだと思いますよ。負担は喚導くんに行きそうですし」

 

「面白いからおーけー」

 

「ちなみに死柄木、一応言っとくと芸人の面接じゃないからね?」

 

 あと何気に黒霧もこちらに対して容赦がない。まぁトガちゃんに最初にオーケーサイン出したのは自分なので、今回に関しては責任は持つのだが。

 

「ちなみにルリ的には……ああ、いや、オーケーっぽいわな」

 

「ルリちゃんっていうの?名前も見た目もカァイイねぇ」

 

「あなたも笑顔が凄い素敵だと思うよ」

 

 既に大分仲良くなり始めた二人に、呆れの溜息を吐く。現状、未だにトガちゃんは自分が取り押さえたままなのだが。いや、だってこのまま離したらルリの血を吸おうとしそうだし。何が怖いって、友達だからとあっさりルリが血を差し出しそうなことだった。

 まぁとにかく、ルリからも採用の判定しか出なさそうなのを確認したし、とりあえずトガちゃんに関しては採用の方向で。何とか説得をして部屋から出ていってもらう。

 

 はぁ、と溜息を一つ。何人もの面接を済ませ、疲れが溜まってきていたところにあのテンションが高い子だ。どれだけ面白い相手だろうと、多くの人間の相手をしていれば自然と疲れは生じる。自分が企画したとはいえ、流石にちょっとキツイところはあった。

 それでも敵勢力だったりヒーローの潜入がある可能性も考慮すると、主力メンバーはこうして直接顔を合わせて選ぶしかない。

 故に軽く頬を叩き、気合を入れ直して。そして大柄な男でありながら、どことなく女性的な仕草の写真という、もはや資料添付の写真から伝わってくるキャラの濃さに絶望した。




敵連合がどんどん愉快になっていく……。

というわけで面接回、もちろんこの後には荼毘くんやトゥワイスなど面接も行いましたとさ。
無駄に伸びてもダレるからばっさりカットだけどな!
次回から仲間が増えるわよー。
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