全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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なんか難しい話になった
科学齧った人や現役学生さんからはツッコミどころ満載だろうけど、知らん!
相変わらずなんか雰囲気が伝わってたらええやろの精神


幕間2 北米戦線⑤:EDF攻撃衛星砲レーヴァテイン

 ――4月9日。

 『オペレーション・オービタルストライク』の作戦前日。

 決死の遅滞作戦にも関わらず、歩行要塞は遂にサンフランシスコへのプラズマ砲撃を行った。

 1000万人規模のサンフランシスコ広域都市圏にクレーターが出来上がり、高層ビル群が爆発によって蒸発・炎上する。

 都市圏内の人口は避難によって60万人ほどまで減少していたが、それでも多くの犠牲者が現れた。

 アメリカ太平洋艦隊第三艦隊、稼働可能な最後の第33空母打撃群、第35水上戦闘群を投入し、歩行要塞の注意を引いた。

 注意を引くという事は、都市が守られる代わりに艦隊に砲撃を受けるという事だ。

 同様の方法によってアメリカ太平洋艦隊第三艦隊は稼働可能な艦艇を殆ど失ってしまうという事態に陥った。

 約半数がプラズマ砲の直撃により轟沈、半数が余波により航行不能もしくは戦闘能力を喪失し、残存艦艇はパールハーバー海軍工廠やサンフランシスコ海軍工廠で修理中だった。

 実際、サンフランシスコに残っていた市民の殆どは海軍工廠の関係者であり、ここを陥とされる事はビージェットサウンド海軍造船所を失ったアメリカ太平洋艦隊とって大きな痛手となる。

 

 海軍工廠の設備、停泊中の軍艦、それを直すべく決死の修復作業に当たる作業者、彼らの衣食住を支える者。

 それら全てを失わせない為、アメリカ軍は総力を挙げて歩行要塞の侵攻阻止を行った。

 それらの攻撃は歩行要塞に全く傷をつける事は叶わぬが、それでも彼らは死力を尽くして踏みとどまった。

 

 ――4月10日。

 作戦決行の号令が、全軍に響き渡った。

 遠く離れた地、中東アルケニア共和国首都ディラッカ近郊に建設された、ディラッカ軌道防衛基地のEDF衛星指令本部(サテライトコントロール)が信号を送信する。

 衛星軌道を周回するEDF攻撃衛星砲レーヴァテインは信号を受信。

 レーヴァテインは基本的なメンテナンス要員以外は無人となっており、制御は全て地上のサテライトコントロールから送信される信号によって行われる。

 地上で入力された姿勢制御・照準情報の通りに制御噴射口と砲身が微動し、グラインドバスターが装填される。

 EDF宇宙軍司令官から発射の合図が下され、コントロール要員が移された映像の照準に向かって引き金を引く。

 軌道に漂う衛星砲レーヴァテインからフォーリニウム貫通弾グラインドバスターが放たれた。

 

 ――フォーリニウムとは、あらゆる攻撃を耐えたフォーリナー空母、レイドシップなどの装甲素材に使われる人類未発見元素の呼称であり、基本的には地球の金属元素に近い性質を持つ。

 

 レイドシップを撃墜・破壊した時点で回収した目的の装甲素材は機能を喪失しており、人類が直ぐに無敵の装甲を得る事は叶わなかった。

 しかし、残骸の回収はレイドシップの装甲貫通弾を開発する事に極めて重要であり、人類に多くの科学的進歩を与える。

 

 撃破したレイドシップの装甲に使われたフォーリニウムは、驚くべきことに全て単一原子で構成されており、数多くの同位体*1によって無数の性質を持つよう設計されていた。

 同位体の一つ、フォーリニウム136*2は斥力反応を引き起こし、エネルギーを与えると更に強力な斥力場を作り出す事が分かった。

 同極の磁石の様な性質を持つ同位体であるが、特筆すべきはこれが万物に作用する事だ。

 この性質の同位体を組み合わせた事により、あらゆる外部からのエネルギー・物理作用を反発――跳ね返すシールドとして機能していた。

 

 また別の同位体、フォーリニウム81は与えた物理運動エネルギーを増幅させて進み続けるという、エネルギー保存の法則に反する性質も見せ、科学者たちを驚愕させた。*3

 その物質で出来た塊を、指で押しただけで、その塊は無限に加速し進み続けるという恐ろしい物質だ。

 抵抗には弱く、例えばフォーリニウム81を空に向かって投げれば無限に加速し宇宙へ向かうが、地面に投げれば当たった瞬間に地面の抵抗に負けて土を激しく抉った所で停止する。

 当初はこれ自体を砲弾に利用する案が主流だったが、熱に強くないフォーリニウム81は空気抵抗により融解する為に、斥力場で空気抵抗を0に近い値にするフォーリニウム136との合金が考えられた。

 また重力落下の影響を受けず直進する性質から曲射が不可能であり、直接照準で狙うと着弾時の衝撃から身を守れない事から、フォーリニウム81系砲弾の地上発射は見送られるに至った。

 この問題は、フォーリニウム81の配合比や制御方法が確立されれば解決すると考えられており、将来的にはフォーリニウム81系砲弾を搭載した兵器も開発されていく事となる。

 

 フォーリニウム81は、マザーシップやレイドシップなどの浮遊船の動力機関ではないかと考察されており、制御できれば何も消費することなく無限の動力が手に入る。

 永久機関の夢が大幅に縮まったかに思えるが、速度の制御は極めて難しく、推進・発電に利用しようして幾つもの実験場が爆発事故を起こすことになる。

 爆発事故はその他多くのフォーリニウム関連実験場で起こっており、フォーリニウムそのものが人類の手に余るものだと証明している。

 しかし、人類は犠牲と比例して着々と技術を向上させており、グラインドバスターなどはその最たるものだと言えよう。

 

 余談だが、同位体の種類によってその原子が持つ物理的な性質が極端に大きく変わる事から、フォーリニウム原子はフォーリナーが生み出した人工原子ではないかという仮説が立てられている。

 フォーリニウム原子は、それ単一体で一つの装置の様に作動し、複数のフォーリニウム元素*4を組み合わせるだけで、機械的な構造を持たずとも、複雑な動作をする機械や兵器が完成する。

 ダロガやヘクトルを解体しても、配線や駆動システムなどが見当たらなかったのは、フォーリニウム元素自体が個々の装置の役割を果たしているからであり、フォーリナーの技術体系がそれを可能にする人工原子を造り上げたという考えが最も整合性が取れる。

 とはいえ、人工か自然発生か、そのどちらであっても、今の人類生存にとってはどうでもいい問題にすぎない。

 

 フォーリニウム81や136の他、様々な特性を持ったフォーリニウム同位体がレイドシップ残骸から回収・分析されており、フォーリニウム原子を構成する素粒子の一部――電子や陽子が、攻撃に転用されるエーテル粒子やプラズマ粒子だという事も新たに判明した。  

 不明遺物構造体”OVUM-68”の動力機関と思わしき超技術プラズマコアから半永久生成される、電離した原子*5の正体がようやく明らかになった瞬間だった。

 とはいえ、フォーリニウムにしてもプラズマエネルギーにしても、未だその詳細は不明な点が殆どで、人類に解明できる日は遠いと言わざるを得ない。

 

 しかしプラズマコアの様に正体が分からなくとも利用する事は可能であり、EDF先進技術研究開発部と先端科学研究局は世界中のエリート科学者を集め、斥力反応を利用し白銀装甲を貫くに足る砲弾を開発した。

 (一説には、匙を投げた科学者の中、真に理論を完成させたのはニコラヴィエナただ一人だったとも)

 

 そのフォーリニウム砲弾グラインドバスターは今、衛星砲レーヴァテインの長砲身から放たれた。

 斥力反応を持つフォーリニウム原子同位体、フォーリニウム136の斥力作用によって火薬を使わず打ち出された砲弾は、

 慣性増幅性質を持つフォーリニウム81によって、その推進力を爆発的に加速して大気圏へ突入する。

 フォーリニウム136の斥力作用により空気抵抗を切り裂くように進み、砲弾はほぼ抵抗を受けずに加速を続ける。

 やがてグラインドバスターは四足歩行要塞のほぼ真上から直撃し、周囲は激しい光と衝撃波に包まれる。

 

 その内部では、ごく短時間でEDF科学者たちの計算した通りの事象が起こっていた。

 斥力作用を起こすフォーリニウム136が、同じ斥力場に接触する。

 より強い力を持つのは歩行要塞側の斥力場だが、グラインドバスターは速度と重量を武器に、その斥力場を切り裂くよう強引に突破する。

 砲弾の先端ごく少量化合されたフォーリニウム125が、速度と重量により白銀装甲と超高圧接触したことにより対消滅を起こし、激しい白光と共に装甲に大穴を開ける。

 フォーリニウム125の対消滅反応に刺激された砲弾内部のエナジージェム小型反応炉が急速に臨界点に達し、半液体状となったエナジージェムがモンロー/ノイマン効果*6に近い形で円錐状に外部に放出され、周囲を破壊してゆく。

 外部に放出されたことにより急速に温度が下がり粉末状になったエナジージェムはパウダードエナジージェムと呼ばれる物質になり、砲弾後部に残った通常爆薬の点火により、一斉にイオタ爆発*7を引き起こし、歩行要塞内部で爆炎と衝撃波を発生させる。

 

 歩行要塞を観測していたスカウトチームの目には、内部から爆発し黒煙を上げる歩行要塞が映ったが、歩行要塞は行動を停止していない。

 しかし、それも予測していた科学者ニコラヴィエナは、砲弾の5発製造を指示しており、その全てを撃ち切った。

 5発等間隔で放たれたグラインドバスターは歩行要塞の胴体部を完全に爆破し、歩行要塞は黒煙を上げて炎上しながらその巨体を倒し、強烈な振動と共に、ついに地に倒れ伏した。

 行き場を失った砲塔のプラズマエネルギー、動力と思われるプラズマコアやエナジージェム反応炉が次々と連鎖爆発を起こし、付近は近づく事が出来ない程の激しい爆炎がしばらく立ち昇った。

 

 オペレーション・オービタルストライクは成功を収め、四足歩行要塞エレフォートはサンフランシスコ都市圏内に侵入することなく完全撃破に成功した。

 サンフランシスコ海軍造船所で働いていた人々や、その場にいないEDF軍人たちも歓声を上げ、この日はアメリカ戦線史上最大の戦果を上げたと報道された。

 

 ――4月11日。

 オペレーション・オービタルストライクは成功し、歩行要塞は撃破された。

 これにより、アメリカ西海岸の戦力は東海岸へ投入され、旧ニューヨーク跡地の通称北米インセクトハイヴの攻略が本格的に準備される。

 

 EDFの公表する情報には存在せず、歴史に名を残す事は無いが歩行要塞撃破を行ったグラインドバスターそのものの開発や、発射角度・彼我の強度から算出される必要砲弾数などの計算は間違いなく彼女がいなければ成り立たなかったものだ。

 

 ――ルフィーナ・ニコラヴィエナ。

 ロシア人科学者であり、人類最高峰の頭脳を持つ科学者。

 クラスノヤルスク地方の閉鎖都市ディクソンに、独自の研究拠点を構えていた事から”極北の魔女”と呼ばれ、現地研究者はおろか、ロシア政府からも危険視されていた。

 EDFが彼女の誘致を持ち込むと、ロシア政府はあっさり許可を下し、彼女は極北から南極へと移っていった。

 彼女は自らを魔女ではなく神と呼称し、神の子……すなわちEDF攻撃衛星を次々に開発し、打ち上げて行った。

 その傍ら、”余暇”で作り上げた様々な技術がEDFを成長させ、瞬く間にEDFは世界最大の軍事技術を持つ組織となった。

 しかし――彼女を表舞台から消し去った事件が起こる。

 それが、アルケニア首都ディラッカで起こった、ディラッカ軌道防衛基地サテライトコントロール占領事件に端を発する、ディラッカ事変とEDF総司令部攻撃未遂事件であった。

 ニコラヴィエナはEDFに射殺されたと表向きに情報が発信されたが、その実彼女はEDF南極総司令部の地下深くに幽閉されていた。

 

 そして、フォーリナー襲来が起こる。

 ニコラヴィエナを解放した総司令官バートランド・F・グレンソンは、ディラッカ事変以降管理AIの応答を拒否されていたEDF衛星兵器群の稼働を要求し、同時にアメリカ西海岸で歩行要塞が上陸した。

 レイドシップへの攻撃兵器であるフォーリニウム装甲貫通弾の初運用前の転用が決まり、総司令官は状況分析と決定をニコラヴィエナに一任し、そしてそれはこれ以上ない成果と共に幕を閉じた。

 

 そして本来の彼女の仕事である、AI搭載型統括衛星ライカによる北米インセクトハイヴ攻略作戦が本格始動する。

 統括衛星ライカは、彼女の打ち上げた神の子――EDF攻撃衛星ノートゥングを統括管理する照準集積衛星であると同時に、自身も大型の原子炉を内蔵した原子力精製レーザー搭載型の攻撃衛星である。

 かつて南極総司令部を崩壊させようとしたこの兵器の名こそ、ルール・オブ・ゴッド。

 ”神の戒律”の名を冠する極大のレーザー照射口が、今北米インセクトハイヴを狙おうとしていた。

 ライカは他に、連装レーザー砲”スプライトフォール”、EDF版神の杖とも言われる”スプートニクⅡ”、核搭載宙域ミサイル”テンペスト・ガリレオ”を装備し、その威容はまさに”軌道上の怪物”と呼ぶにふさわしかった。

 

 余談であるが、その名前”ライカ”はかつてソビエト連邦によって打ち上げられ、地球軌道上を周回した初の生物として知られるメスの犬の名前であり、その犬を乗せた人工衛星/宇宙船がスプートニク二号である。

 人工衛星と乗っているものが逆であることに何のこだわりがあるのか常人には知る由もないが、一説には親しい人の名前であったという噂もあり、人工AIでもあるライカに異常な親しみを覚えている事の理由は、判然としない。

 

 ――4月15日。

 ミシガン州デトロイトのEDF北米第三工廠でギガンテスⅡの量産体制が整ってから一週間が経過した。

 ダロガとの戦闘に十分耐えうる装甲と火力を手にし、全米から機甲戦力と兵士、戦闘機を含む軍用機、そして戦艦や空母などの軍艦戦力が集中し、北米インセクトハイヴ攻略作戦は秒読みとなった。

 作戦名:アルティメット・ストライク。

 究極の一撃が今、北米インセクトハイヴを打ち砕こうとしていた。

 

*1
原子核内部の中性子の数が異なる原子。放射線を放つ放射性同位体と安定同位体が存在する

*2
元素記号136Fo。数字は質量を意味する。この場合の質量とは原子量を指す

*3
エネルギー保存の法則が正しいと仮定した場合、別位相からエネルギーを取り込んでる事になり、フォーリナーの転送技術がミクロレベルで行われている事になる

*4
元素とは、元素記号に分けられる性質を持つ原子であり、フォーリニウム(Fo)元素カテゴリの中に、中性子数の違うフォーリニウム原子が存在し、それぞれ性質が異なる

*5
プラズマとは、原子核の外周を周回する電子が飛び出し、同様の状態が複数ある雲の様な状態で電気的に中性を維持する気体のような状態で、フォーリニウムによって構成されるこれは大気中で霧散せずエネルギー投射を行える不可解な性質を持つ

*6
対戦車榴弾などに使われる。すり鉢状の内側に薄い金属を貼り、内部で起爆させる事により金属噴流が発生する効果

*7
粉末状になったエナジージェムから引き起こされる、粉塵爆発に近い現象。次世代の火薬と言われ、イオタ爆発を利用した弾薬PEG弾がS&Sアテリアルズによって現在開発されている




はいーーーー!アメリカ編終了ーーー!!
いやーー長かった!
しっかしアレやな、いろんな新たな設定が生まれてしまったなぁ
生んでしまったからには、設定集として一つに纏めたいと思うのが人情だよなぁ(?)ただその前に、一旦過去話の設定矛盾箇所&新規加筆&その他もろもろ編集を行いたいと思います
うーん、次に最新話更新できるのは……一か月後くらい?
ちょっと時間かかりそうですし、結構変わるところもあるかもですので最新情報は活動報告やツイッターの方に乗せて行きながら頑張りたいと思います!
では!
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