全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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第七十二話 すれ違う過去の想い

――2023年 4月10日 大阪 第三EDF軍病院――

 

 ……話を整理しよう。

 

 私こと仙崎誠は、フォーリナー侵略から数える事数年前、EDFレンジャーとして戦場にいた。

 士官学校などという迂遠な手は取りたくなかったので、EDF陸軍兵学校の門を潜った。

 つまり、階級は二等兵からのスタートとなる訳だが、行く先々でとんでもない不幸に巻き込まれ、生き延びるついでに武勲を立てて居たら、いつの間にやら少尉となっていたのだ。

 

 通常、兵学校からのスタートではよくて軍曹や曹長どまりだが、EDFはその辺を通常の軍隊より緩く設定している為、有能な者に門が開かれる事は珍しくない。 

 

 だがフォーリナー襲撃を受けたあの日、再びEDFに入った私は、一度除隊している事と、緊急時だったことを鑑みて伍長からのスタートとなった。

 しかし、やはりバゥ・ロードへの陽動と足止めを無事成功させたことが大きかったのか、此度少尉を再び拝命する事になった。

 

 最後に最も重要である人事を言い渡して、結城大尉は去っていった。

 その流れで桜、用事の終わった香織さん、香織さんと共にやってきた茉奈君、治療がある細海、飽きた鈴城軍曹が帰った。

 

 病室に残されたのは、私と瀬川の二人だけだった。

 

 なんとなく、無言の気まずい空気が流れる。

 

「き、君は戻らなくていいのか……? 瀬川」

 

 私の馬鹿野郎!

 そうね、じゃあねーとか言って帰ってしまったらどうするのだ!

 話したいことはたくさんあるだろう!?

 

「……あ・お・い。アタシの事、次から名前で呼びなさい! ま、誠!! みんなばっかりずるいのよ!!」

 

「お、お、おう。よろしく頼む、葵」

 

 なんだか改めて呼ぶと緊張するものだ。

 

 それは向こうも同じようで、向こうから名前で呼べと言い出したくせにドギマギしている。

 よし、少しからかってやるか。

 

「どうした? 先手を打ってマウント取れたのに満足じゃないか?」

 

「う、うっさいわね! アンタに主導権握られる訳にはいかないのよ!」

 

「負けず嫌い過ぎるであろう! い、行っておくが告白は私からだからな! 好意を向け始めたのが私なら……貴様は全てにおいて後手に回る運命なのだ!」

 

「なんでよ! アンタ振られる可能性を想定してないわね!? 勘違いしているようだけど、アンタの態度によってアタシは振るも自由振らぬも自由なのよ! つまりアンタは、常にアタシの手のひらの上で踊っているも同然!!」

 

「いいや違うな!! 追う側と追われる側、攻撃側と防御型、突撃戦と迎撃戦! どちらが主導権を握っているかは軍人なら言うまでもないだろう! つまり私は、貴様の油断の隙を縫っていつでも好きな時にアタックを掛けられる立場にあるのだ! 貴様に出来る事は唯一つ、私の行動を待つのみである!」

 

「分かってないわね! アンタはどう行動しようと、その結果は全て私の一存で決まるのよ! 惚れた方が負け、そう言うでしょう!」

 

「確かにその通りかもしれん。だが、貴様のその要塞の様なプライドを陥落せしめるとっておきの策が、私にはあるのでな!!」

 

「へぇ~。それはそれは楽しみじゃない。じゃあさっさとそのとっておきの策とやらを披露してもらおうじゃない」

 

「その前に、貴様には吐かなければいけない約束事があるはずだが?」

 

 勝ち気な笑顔を浮かべる彼女に、ここぞとばかりに叩き付ける。

 約束事とは、”付き合ったことがあるか”という質問についてだ。

 私はない、とはっきり答えたが、お茶を濁し回答を”無事での再会”と条件付けた彼女には、これに応えて貰う義務があるのだ。

 

「へ? あぁ~、アレね。うん、確かにあった。でも……き、気分のいい話じゃないわよ?」

 

 困ったように苦笑い。

 別に、無理をして聞き出したい訳じゃない。

 過去の事を掘り下げてあれこれと言うつもりは全くないし、それを言ったら私の方が言えない事が多すぎる。

 なのに、この時の私は、何故か”聞かなければいけない”と、そんなエゴの様な何かに突き動かされていた。

 

「君が話してくれるのなら、何だって聞くとも。だが、本当に嫌なら断ってくれていいんだぞ? なに、別な条件を突きつけるだけさ」

 

 だが、無理やりエゴを押し付ける事だけはしたくない。

 逃げ道を用意する、が。

 

「それは逃げるみたいで癪だわ。……どのみち、アンタにはいつか話す必要があるって思ってたのよ。自分から振ったのは完全に墓穴だったけど、いつまでも話さないのは私が耐えられない。でも、この関係はここで終わってしまうかもしれない。それでもいいの?」

 

 なんだ、やけにシリアスだ……。

 

 この言い方、普通に考えれば浮気か? とか思うがそもそも正式に付き合っている訳ではないし他に好きな奴がいて、彼女がそれを選ぶなら大人しく身は引くつもりだ。

 だが仮にそうであっても関係が終わる程ではないだろう。

 関係の終わりを彼女が望むならそれもやむなしだが、そういう風には見えない。

 

 そもそも、”終わってしまうかもしれない”というからには私の反応如何で結果が変わるという事だろう。

 ならば、いかなることがあろうと私から関係を断つ事は無いだろう。

 あり得ないが、仮に悪事に手を染めていたとしても、罪を許すなり正しい道に導くなり如何とも出来るだろう。

 なんか、あれか、凄い変人な性癖を持っているとか、変な趣味があるとかだろうか。

 

 ……いや、この雰囲気は、恐らく人の生死に関わる類の話だ。

 直感で察する。

 

 それでも。

 

「溜め込むことで君が辛いなら、尚話して欲しい。それに、この結果がたとえどう終わろうとも、行動は必ず結果を生む。結果とは、人が歩んだ証だ。良い事も悪い事も、戦いを生き延びた生者に許された特権だろう。……私も人間だ。どんな話でも君の印象が悪くならないとは言えない。だが、どんな話だろうと、君が真剣に話すなら、私も真剣に受け取ろう」

 

 これが、今話せる最大の私の胸の内だ。

 それに一切の偽りはない。

 

「……分かったわ。じゃ、話すわよ?」

 

 意識してか軽い口調で言った後、大きく深呼吸をし、その重い口を開く。

 

「むか~しね? 中学1年頃の話よ。あれはー、そう、私から告白してね、付き合ってる人、いたの。多分初恋ね」

 

 記憶を思い出しながらか、病室の窓の方を向いて、努めて明るく話す。

 だが、その表情は一転しどこか悲しげで、重たい。

 

「やはりな。この流れでいなかったなどと言われた方が意外だ。どんな方だったのだ?」

 

「アタシの幼馴染の兄で、別の中学の先輩だったのソイツ。一コ上ね。小さい頃からよく遊んでて、いやーなんて言うか、昔から地味で根暗でどうしようもないヤツだったんだけど。下校中、アタシが別の男子に絡まれた時あってさ、虚勢張ってたけどホントはマジで怖くて、そんな時にねソイツ、普段からは想像もできないような声でその男子に威嚇してさ、撃退してくれたんだ。まぁ~、そんな事されたらこっちとしてはもう惚れるしかないって訳で」

 

 その男の事を思い出し、振り返って少しはにかみながら楽し気に話す。

 だが、彼女の雰囲気から影は消えない。

 きっと、この先に話の根幹がある。

 

「……して、その男は今どこに?」

 

「亡くなったわ。交通事故よ」

 

 ピシャリと言葉が返った。

 

「なんと……。 それは……辛かったな」

 

 正直、こうまで口が重いと勘繰らなかった訳ではない。

 だが、実際に聞くと、こうも言葉が出ないものか。

 

「付き合ってからすぐの、中一の夏だったわ。大型トラックに轢かれて、一緒にいた三人が亡くなったって。アタシ本当に耐えられなくてさ、学校もしばらく休んだし、病院にも通うくらい病んじゃって」

 

 困ったような笑顔を見せる葵。

 その儚げな笑顔も美しいが、私にとっても交通事故は嫌な思い出がある。

 思い出したくも無いが、脳裏に浮かぶ。

 

「……そうか。さぞ、辛く、苦しかったろう。話していなかったが私も、事故で友人を失った事がある。気持ちは、痛い程分かる」

 

 あの時の私は、まともな人の感情を失う程に追い詰められた。

 自らを殺す為に、わざわざ戦場に赴き、人を殺す。

 いかれている。まともな思考ではなかった。

 

 だが葵は私の話を意にも介さず、ぽつりと話す。

 

「……、……。事故の時、一人、無事だった生徒がいたの」

 

 ……妙に胸騒ぎがする。

 

「君の彼氏の友人か、それはよかっ――」

 

「――その生徒、その場で真っ先に轢かれかけたにも関わらず、傷一つ無かったんだって」

 

 私の声を遮り、葵が驚くほど冷たい声を出す。

 

「不思議よね? 異変に気付いて、友達を押しのけて真っ先に逃げ出した。そう聞いたわ。ねぇ、凄くない!? 音もなく危険を察知し、友達たちがトラックに気付いた時には、ソイツはもう直撃圏外だったって! ……目撃証言やニュースや週刊誌も見たけど、そんな風に書いてあったわ! ねぇ――」

 

 震える声の早口は徐々に激しさを見せ、そして急にゾッとするような声で。

 

「――アンタだったんしょ? 仙崎誠」

 

 ナイフを喉元に付きつけられたような、悍ましい寒気を感じた。

 

――――

 

 私は現在27歳、瀬川は確か一つ下の26歳だったはずだ。

 瀬川の先輩が私と同学年というのは、つじつまが合う。

 そして彼女にとっての中学一年の夏は、私にとって中学二年生だ。

 

 中学二年のあの夏……私は夏休み前最後の下校中、暴走トラックに襲われた。

 何も、考えることが出来なかった。

 危険に気付き、命の危機を感じ反射的に体が動いた。

 ……気づけば、友人三人は無残な姿となっており、私は何をすることもなく、その場に呆然と立ち尽くすしかなかった。

 ああ、まただ。

 これは、私がやったのだと、罪の意識と、逃れようもない絶望感が深く私を襲った。

 人と、関わってはいけないのだと、人並みに生を謳歌する事は許されないのだと、幼心にそう思った。

 

 斃れた三人の、掛け替えのない友人の一人。

 地味で根暗……大人しく、それでいて内に秘めた熱を持つ。

 思い当たるのはただ一人――。

 

「……佐々岡、春樹」

 

「――ッ!!」

 

 瀬川の反応は明白だった。

 目の色を変え、半身を起こしていた私の胸倉を掴み、押し倒す。

 

「……ねぇ、なんで春樹の名前知ってるの……。偶然なんでしょ……? 全てアタシの間抜けな勘違いで、アタシが空回りしてるだけなんでしょ!? そうだって、言ってよ……!!」

 

 胸倉を掴まれた私に、熱い雫が零れ落ちる。

 ああ、そうか。

 私は、許されていなかったのだ。

 

「……偽ることなど、許されない。……話は聞いた事がある。君が、春樹と付き合っていた彼女だったのだな……。すまなかった」

 

 すまなかった、などと端的な言葉しか口に出せない自分に嫌気が差した。

 中学一年生時、初恋の恋人をいきなり奪われた悲しみは、筆舌に尽くしがたい。

 そして、それに加担した男が目の前にいるのだ。

 

 だが、そんな私の想いそのものが、彼女の望む回答ではなかった。

 

「すまないじゃないわよ……。……作戦前、一緒に海鮮丼食べた時は、ただ単に重い話になるからと思ってやめた。でもそのせいで、一人だけ逃げ出したヤツと、アンタの危険を避ける素質が重なったのよ。……もちろん作戦中はそんな事考えてられなかった。けど終わって、アタシも怪我してたから病院でゆっくり治療してるとき、そんな考えが浮かんでしまったのよ。だから、考えすぎだと、そう言って欲しかったのに……アンタはそれを、否定するって言うのね……?」

 

「……ああ、否定する。君の恋人を殺してしまったのは……私だ。すまなかった……ッ!」

 

 事実だ。

 考えすぎだと無責任な事などとても言えない。

 

 だが瀬川は激昂して私を揺する。

 

「馬鹿ッ!! そんな事自分で言わないでッ!! アタシの気持ち、分かってる!? アンタを……事故の直前一人だけ逃げ出した薄情者を恨みたい気持ちと、悪いのはトラックで逃げたのは本能だから仕方ないって気持ち、どっちもあるのよ!! アンタが本当にあの場にいたのは、やっぱりそうだったんだと認める。でも! その場で一人だけ生き残った、春樹の友人を恨みたくなんてない! けどアンタは! 春樹たちを押しのけて逃げ出した! だからアンタは、それは誤解だって、ただ偶然生き残ってしまったって、そういうだけで良いのよ……。良いのに」

 

 涙ながらの懇願。

 だが、嘘をついて瀬川を納得させるなど、そんな卑怯な真似が出来る筈がない。

 

「……反射的であったが、確かに押し通った感覚は残っている。……その感覚が、ずっと手から離れないのだ……。あの時、私が彼らの手を引いて、声を上げていれば――」

「──やめて!! そんな後悔聞きたくない!! アンタ何がしたいの!? 私に、アンタを恨めっていうの……!? アンタが罪を告白するほど、アタシはアンタを許せなくなるのよ……! どうして? どうしてあの日アタシから春樹を奪って、アンタはアタシに告白したの!?」

 

「……すまん。だが、君が何と言おうと、私はあの日の事故を罪だと思っているし、無かった事には出来ない。例え、それで君が楽になろうと、それはまやかしに過ぎないのだ」

 

「まやかしだっていいじゃない!! アタシは、全ての出来事を真正面から受け止められるほど強くないのよッ!! ……前に言った事覚えてる? 過ぎ去った事は考えても、どうにもならないのよ……」

 

「覚えて、いるさ。あの言葉が、どれほど私の気を楽にしてくれた事か……」

 

「……アンタの、罪を自覚し、正直に認める事が立派な事なのは分かる……。それでも、それが他人を傷つける事もあるのよ……ばか……」

 

 私の胸倉から手を放し、また窓の外を見ながら静かに語る。

 もう、日が沈みかけている。

 

「……最後に聞くけど、アンタ、殺意があった訳じゃないのよね?」

 

 瀬川が振り返る。

 表情は、幾分落ち着いており、引きつった表情でこちらを見る。

 ……目は、合わせていない。

 

「当然だ!! 信じて貰えないかも知れないが、私は最期の瞬間も彼らを本当の友人と思っていた。本当に、もっともっと永く、良い友人であれた筈なのに……」

 

「……その言葉を聞けただけでも、良かったかな……」

 

 独り言のように、小さくつぶやいた後、

 

「でもごめん。アンタの顔、しばらく見たくないわ……」

 

 また背を向けて、そう言い放ち、彼女は退出した。

 

「……奇遇だな。私も、しばらくまともに話せそうにない」

 

 彼女がいなくなった部屋で、静かに、私も呟いた。

 

「もう、分からん、何も……」

 

 思考が何も纏まらない。

 様々な種類の罪の意識で、どうにかなりそうだった。

 

 負傷から回復する為の肉体疲労、そして此度の精神的疲労。

 意識を手放すのには、時間はかからなかった。

 

――翌々日 4月12日 早朝――

 

 瀬川と最悪のすれ違いが起こってから、二晩明けた。

 私や数名の重傷者を残し、第三師団主戦力は既に三重県鈴鹿市に移動。

 瀬川とはあり得ない程の最悪の別れ方をし、私は大阪に残された。

 

 近い所だと、残っているのはレンジャー2-2の軍曹と青木、馬場、千島の三人、それに腕の生体義肢を馴染ませ治療している細海だ。

 つまり、指揮官を命ぜられた私こと仙崎誠少尉の部下達という訳になる。

 

 そう言えば、晴れて瀬川と同等の階級となった訳だが、今は彼女の事を考えるだけで頭痛がしてくる。

 

 ……最悪の別れから一夜明けた昨日の事はほぼ記憶がなく、殆ど無意識に過ごしていた。

 とりとめもない自責と自己嫌悪だけで丸一日無駄にしてしまったのは痛手であるが、本日はまだ思考がクリアだ。

 ……とはいえ、本日を以って退院が決まり、原隊復帰し我々も鈴鹿へ行く予定だが……些か気が重い。

 

 いかんいかん!! まずは生きて、会って、話す! それから全ては始まるのだ。

 また言い合いになってしまうかもしれない、だが、二人とも大人だ。なんとか妥協点を見つけ合い、話し合える筈だ。

 ……まだ、何をどうしていいかはまるで分からないが、なんとか元通りに戻りたいという意思はある。

 向こうもきっと、きっとそう思っている筈だ。

 もし違うなら、割と終わりだが。

 

 いかんいかん!! 悪い考えはまずは捨てよう! 大事なのは歩み続ける意思――

 

 ――突然、ベッドで半覚醒の私の耳に、けたたましい警報が鳴り響く。

 

「な、なんだ!?」

 

 病院の自動音声が流れる。

 

『緊急EDF警報発令!! 種別:第三級! 種別:第三級! 周辺区域に攻撃の可能性あり!! 軍病院職員は速やかに患者移送の準備を整え、状況の変化に流動的に対処せよ!』

 

 聞きながらベッドから飛び出し、上着を羽織い、急いで支度をする。

 

「まさか大阪が攻め入られるとはな!! 私の不幸もなかなかのものだ! くそったれ!!」

 

 誰も聞いていないのをいいことに、暴言を吐く。

 最悪の時に最悪の事が起こるものだ。

 

 私は急いで廊下に飛び出し、軍病院のエントランスに向かう。

 何かあった時に集合する手はずだ。

 だが、それより先にある人物に出会った。

 

「仙崎少尉!! もう動けるか!?」

 

「ハッ!! 体調万事抜かり在りませぬ!!」

 

 理知的で、思わず背筋が伸びるような張りのある美声。

 姿も声の印象と遜色なく、長身に切れ長の瞳で、縁の無い華奢だが聡明な印象をプラスする眼鏡をかけた男性は、我らが第一陸戦歩兵大隊の大隊長、須賀幹也(すが みきや)少佐であった。

 

「須賀少佐!! 状況は!?」

 

 少佐など雲の上の様な階級だが、そうも言ってられん。

 そもそも、第11大隊の伊勢原少佐とも何度か話して慣れている。

 

 二人そろってエントランスに階段を下りながら話す。

 警報と自動音声が煩いのと、急いでいるので大声になる。

 

「私も知らん!! 色々ゴタついたが正式な少尉任命の辞令を渡そうとしたらこの有様だ! 受け取れ!」

 

「今ですか!?」

 

 辞令と階級章を受け取った。

 これで正式な少尉となった。

 とはいえ、戦時中のみ許される特別な事例だ。

 本来であれば厳密な審査と試験が課される。

 

「して、なぜこんなところに!? 部隊は既に鈴鹿の方へ行ったと行きましたが!」

 

「なぜも何もない。貴様たちレンジャー2-2を含む部隊の、大幅な再編成が極秘で進んでいてな。言えるのはここまでだ。後はせいぜい邪推していろ」

 

「なんと! 私小隊長に任命されたばかりなのですが!?」

 

「――待て、通信だ」

 

 須賀少佐は左耳の無線機に手を当て聞き取ると、驚きの表情。

 須賀少佐は、私内容を話す。

 

「仙崎少尉、まずい事になった。歩行要塞どころの話じゃない。……超抜級怪生物第一号、巨獣ソラスが、京都府舞鶴市に上陸した。海上自衛隊舞鶴基地と、EDF第425駐屯基地は壊滅した。奴はまっすぐここ――大阪に向かっている」

 

 新たな絶望が、守り切った後方地、大阪へ向かっていた。

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