全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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書くのにめちゃくちゃ時間かかりましたが、なんとか出来ました!



第七十七話 EDF戦略火器保管庫

――4月12日深夜 EDF極東第11軍-京都作戦司令本部――

 

『こちら、EDF第426空軍基地! 本部、直ちに応援願います!! 舞鶴市が炎上しています! 既に我が基地航空隊は壊滅! 駐屯基地も火災で近寄れません!!』

 

「こちら本部! 現地残存戦力では組織的阻止戦闘は不可能だ! 行動可能なものは一人でも多くの市民を救助し、直ちに撤退せよ!!」

 

 第六軍団本部にいた榊中将は、既に京都に設置した第11軍作戦司令本部へ移動していた。

 

『ぐああああ!! 火が、火がこっちまで!! あづいッ!! 焼け死ぬのは、嫌、だぁ……――』

 

「エアベース426応答せよ!! くそッ!」

 

「舞鶴市は、壊滅状態です……」

 

 通信オペレーターの鹿島中尉が絞り出すような声で報告する。

 数々の悲鳴のような報告を聞いていた彼女は、少なくない精神的打撃を受けているが、決して任務を放棄する事は無い。

 

 副司令官の秋元准将が低い声を唸らせる。 

 

「まさか後方地を目聡く狙ってくるとはな。しかも用意周到に発電所を潰してからの攻撃だ。果たしてこれは偶然か……」

 

 発電所の破壊と、再上陸時による局地的大地震。

 この二つによって、本来助かったであろう多くの命が失われている。

 

「考えたくはないが、敵にも頭の回る奴がいると仮定すべきだろう。それは分かっていた……だが、四つ足やエルギヌスに対応する為、不確定要素は排除して考えた。……その私の長期戦略が裏目に出てしまった。失った人命や装備の全ては、私の責任だ」

 

 過労で倒れてから幾ばくも無い間に、既に憔悴しきった顔になっていた。

 

 これは、ある意味では必然とも言える事態でもあった。

 誤解を覚悟で簡単に言ってしまえば、防御戦力を全て無くして、攻撃に全振りしていたのが今までの戦略だ。

 当然、後方地を襲われればひとたまりもない。

 

「恐らく、人類史上、これほど規模の大きい博打に失敗した人間は居ないだろうな。歴史に名が残るな、最悪の愚将として」

 

 榊中将は、自虐的に小さく零した後、

 

「第11軍、戦略砲兵旅団に通達! これより巨獣ソラスに対し、弾道ミサイル攻撃を行う!! 全ミサイルサイロ開け!! 座標の諸元入力が完了し次第、全地球弾道ミサイル、テンペスト発射を許可する!!」

 

 榊中将は、戦略砲兵旅団と、その固定基地である戦略ミサイル基地へ命令を下した。

 

 EDF製全地球弾道ミサイル・テンペストは、通常の弾道ミサイルとはケタ違いの火力搭載量を誇る大型の弾道ミサイルだ。

 ”全地球”の名の通り、座標設定とモジュール化された噴射ユニットの組み合わせによって、地球上の全ての場所に距離を問わず着弾する究極の弾道ミサイルだ。

 

 第11軍の持つ唯一の戦略砲兵旅団、未だ健在の群馬県山中にある戦略ミサイル砲兵基地のミサイルサイロ内に眠る、十数基のテンペストに火が入る。

 

 テンペストの弾頭には、レクイエム砲に使用された電子励起爆薬セレウコスが用いられている。

 等級はS-1であり、S-2クラスに分類されるレクイエム砲より旧世代ではあるが、砲弾に比してその搭載火薬量は大幅に上回っている。

 

 その威力は、着弾付近の都市市域を吹き飛ばすほどの威力であり、軍司令部級の権限で行使できる最大級の威力を持つミサイルとなる。

 

 余談だが――来るべき未来、技術の進歩と共に、S-11弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル、テンペストATSやN6宙域弾道ミサイルが洋上の秘匿要塞(バレンランド)に配備される事になるが、それはまた別の話である。

 

 弾道ミサイル行使に当たり問題となるのは民間人の保護だが、舞鶴市は既に炎上し、生存者は残っていても極僅かだろうと推察される。

 その数人を殺してでも、極大火力を叩き込み、祈るような思いでソラス討伐を試みる。

 

『こちら、第11軍付戦略砲兵旅団! テンペスト、発射準備完了!!』

 

「こちら本部! 極東方面第11軍司令官、榊玄一中将の命にて、発射を許可する!!」

 

『了解ッ!! テンペスト、発射ァ!!』

 

 群馬県山中の戦略ミサイルサイロから、四発のテンペストが発射された。

 テンペストは高度300km程度まで一気に上昇し、そこから弾道軌道を取り、地上に向けて秒速数km程度まで加速し、舞鶴市を蹂躙したソラスへ向けて突き進む。

 

「――!? 目標に高エネルギー反応!? 空を見ています!!」

 

 ソラスの状況をモニターしていた鹿島中尉が、緊迫した声で告げた。

 

「視認された!? 馬鹿な!! 秒速数キロで進む高高度飛翔体だぞ!?」

 

 榊中将は確認するが、付近にソラスの目を引くような飛翔体は存在しない。

 テンペストとソラスの距離はみるみる縮まり、ついに、

 

「火炎放射、発射されました!! ――ッ!?」

 

 偵察ドローンの映像では、ソラスが火を噴くと同時に、周辺を覆う巨大な爆発が巻き起こっていた。

 

 現地では、ソラスを中心に街が吹き飛ぶほどの爆発が夜空を赤く染め上げていた。

 知識の無い者が見れば、核ミサイルと見紛うような、悍ましいキノコ雲が舞鶴市を包み込んだ。

 

「効果は!?」

 

「テンペスト、二発が被迎撃。二発着弾! 効果規模、確認中です……」

 

「これで少しでも足止め出来ていれば……」

 

 祈るように榊はドローンの映像と戦域情報マップを見つめる。

 

「目標、移動開始! そんな!? 効果、認められません!!」

 

「馬鹿なッ!? 無傷だと!? そんな事があり得る筈が無い!! なんて強靭な生命体なんだ……! あれを倒すことが可能な兵器は存在するのか……?」

 

 思わず指揮台を叩き、歯ぎしりする榊中将。

 額には汗が浮かび、追い詰められた状況に打つ手を考える。

 

「司令。可能性があるとすれば、開発中の電磁投射砲(レールガン)原子光線砲(E M C)のどちらかでしょうが……、まず、間に合わないでしょうな」

 

 秋元副司令も悔しげな声で現実的な可能性を提示した。

 

「どちらも、実戦投入間近ではある。我々に出来る事は、それまで何としても延命する事だ……。致し方ない、付近の空軍を搔き集め、予定通り空爆で奴の動きを止める! その間、大阪、神戸を含む進路付近の全都市に緊急避難命令を発令! 全ての生産工場の稼働を停止し、作業員に至るまで、直ちに避難開始せよ!!」

 

 それは、日本戦線の補給計画に大幅な遅れを生むものだった。

 だが、とても背に腹が返られるような局面ではない。

 この決定により膨大な犠牲と致命的な戦局の穴に繋がろうとも、こうする以外の選択肢はない――そんな榊の極限の心境は、思わぬ横やりで急展開を迎えた。

 

「待ってください! 榊司令! 司令宛に、B3クラスの秘匿通信が届いています!」

 

「B3クラスだと? 総司令部や戦略情報部から、核攻撃の指令でも来たか……? こちらに、繋いでくれ」

 

 榊の個人端末に通信を転送する。

 この回線を使用してくる人物は、EDF総司令部や各方面軍司令官、戦略情報部や地球規模戦略軍など、物騒な所ばかりだ。

 

 このタイミングで、いったいどういう指令なのか、固唾を呑んで通信に応答する。

 

 

「……こちら、EDF極東方面第11軍司令官、榊玄一陸軍中将だ」

 

 丁寧に応答する。

 しかし、返ってきたのは良く知る声の一つだった。

 

『本当に繋がりおった……。えー、ごほん。本部、応答願います! こちらEDF陸戦歩兵部隊、第88レンジャー中隊所属。仙崎誠少尉であります!!』

 

 最高レベルのセキュリティを持つ回線に侵入してきたのは、一介の陸軍歩兵である仙崎誠少尉であった。

 

 

――――

 

「……仙崎少尉か。大層な連絡手段だな。この回線にアクセスする事は出来ないはずだが。……何が目的だ」

 

 一介の少尉(になったばかりの男)に、この回線の存在は知る事すら出来ないはずだ。

 

 仙崎誠という名は、戦略級巨大外来生物β――バゥ・ロードの討伐に多大な貢献をし、最後に見事討伐した事で、その名は作戦司令本部内では、十二分に認知されている。

 だが、それが故に榊は警戒の色を強くした。

 

 EDF深部に食い込んでいる特殊部隊か、或いはこの回線にすらハッキングする技術を持った特殊工作員なのか……。

 

『非常時に付き連絡方法はご容赦を! 現在舞鶴市に上陸し、進撃を続ける巨獣ソラスなるフォーリナーの討伐に、一計考案する用意があるのです! 上手く行けば、ソラス討伐も十分可能な筈であります!』

 

 だが、彼が言い出したのは、純粋な作戦の事であり、そして突拍子もない提案だった。

 

「なんだと!? バゥ・ロードのみならず、ソラスをも仕留めるというのか!? だが、あの時の様に付近に戦力は……」

 

 榊が難色を示すと、仙崎の不敵な声が遮る。

 

「戦力ならば、この地にあるのです! ですが詳細を話す前に、榊中将には、ひとつ、頼みたい事があります」

 

「……なんだ」

 

「――――」

 

 仙崎は、榊に”頼み事”をすると、榊は目を見開いてこう語った。

 

「可能だが……、一体何をする気なんだ……?」

 

「ぬぁはははは! 決まっているでしょう? 人類の叡智とやらを、奴に叩き込んでやるのです!」

 

――十数分後――

 

『――いやあ人生何がどう転ぶか、分かったものじゃない。まさかこんなものが役に立つかもしれない時が来ようとはねぇ』

 

 この一瞬の予断も許さない緊迫の状況で、くつくつと不敵に笑う情景が想像できるこの人物は、茨城尚美博士だ。

 

 あの後仙崎は一旦通信を切り、再び掛かって来た時には開発部第一室室長の茨城尚美少佐に代わっていた。

 

「……博士の差し金か。……あの回線を仙崎に教えたのも貴方か」

 

 少しだけ嫌そうな顔をした後、警戒の色を更に濃くする。

 

『今、そんな話をしている余裕があると思っているのかい? 今はとにかく、巨獣討伐の話さね。生憎、説明にそう時間も取れない』

 

 警戒する榊を尻目に、茨城博士の口調は平常運転の気怠さだ。

 

「……いいだろう。策を話してくれ」

 

 完全に納得した訳ではないが、優先順位の問題だ。

 榊は観念して、聞く姿勢を取る。 

 

『その前に、場所を変えてくれるかい? そこは作戦司令本部内だろう? 私としても不本意だが、そのレベルの人間が知るべきではない情報を、今からキミに話さなくては行けなくてね』

 

 電話の向こうの声に、榊は表情を硬くしつつも応答する。

 

「いやにきな臭いな。……分かった。少々待ってくれ」

 

 要求は呑む。

 裏でどんな暗躍が行われているのか、茨城博士の意図は全く読めないが、どんな工作を考えていたとしても、ソラスをこのまま放置し、大阪が炎上するよりはいい。

 

 電話の向こうの声と同じで、権謀術数など知らないところで勝手にやっていろ、というやっつけな思いだった。

 勝手に秘匿回線を使われようと、有益な情報は少しでも吸収したい。

 

 そんな高級軍人らしからぬ思惑に、

 

『助かるよ。キミが話の分かる軍人で良かった』

 

 茨城博士は心から安堵の声を漏らした。

 

――――

 

「場所を変えた。第三会議室だ。ここなら聞かれる心配はない」

 

 榊は上級司令部からの秘匿通信だ、と適当に言い訳して作戦司令本部を出た。

 

 幾らでも嘘がつけるその言葉に、茨城博士は特に気にする様子もなく話し出す。  

 

『ふーっ。――EDF戦略火器保管庫、という名を聞いた事はあるかい?』

 

 煙草の煙を吐き出し、声を一段下げて話す。

 いつもの軽薄な感じはそこにはない。

 

「……、いや、無いな。何のことだ」

 

『だろうね。A2クラスの軍事機密だ。握っているのは総司令部各軍トップ連中と、一部の将官、方面軍司令官クラスだけだろう。生憎、詳細を説明する時間はない。秘匿されていた、EDFの危険武器封印場所、とでも認識していてくれ』

 

 A2クラス――EDFが秘匿する軍事機密をランク分けした際、その上から二番目に当たる。

 

「準最高機密に匹敵する情報だと……。とんでもない事を言ってくれる。それで、そんなものが日本にあるというのか?」

 

『あるとも』

 

 半ば冗談のつもりで言った言葉が、あっさり肯定されて面食らう榊。

 

『それも何の因果か、ソラスが大阪へ侵攻した場合、その直線上に位置する形でね』

 

「……それは、なんとも因果な話だな。まさかフォーリナーを手の上で操った訳ではないな?」

 

 余りに話がうまく繋がり過ぎる。

 軽く意趣返しのつもりだったが、軽くあしらわれた。

 

『ほお? なんだ、冗談言う余裕があるとは驚きさね。まあいいさ、とにかく、ワタシはその保管庫で、”魔女の遺産”を物色していたら、ソラス襲来の凶報を聞いた訳さ。さて、そこで一つギリギリ役に立ちそうなモノを見つけたんだ』

 

 いろいろと無理がある言い訳を榊は意図的に無視し、話を進める。

 納得できない事を問い詰めていては話が進まないし、茨城博士もそれが分かって誤魔化しているだろう。

 

 だが、”魔女の遺産”――ルフィーナ・ニコラヴィエナが関連している辺りで、大方想像は付く。

 既にEDFが殺害している筈だが、その取り巻きが彼女に接触してきたとか、そんな話だろう。

 大方、大事な保管庫が侵攻ルート上にある事を分析して、慌てて接触してきたか。

 

「それを使ってソラスを討伐すると? だが、問題が無いわけではないだろう」

 

 物騒な保管庫に封印され秘匿され続けていた程の兵器だ。

 穏便に行かない事は分かる。

 

『察しが良くて助かるよ。”魔女の遺産”の一つ――戦略的自壊型決戦用轟砲。魔女のヤツは”ネガ・ロンゴミニアド”とか呼んでいたらしいがね、とにかくそれを使う。ま、問題は山積みなんだが、特に厄介な個所を説明させてくれ』

 

 やや疲れたように、ため息交じりに説明が始まった。

 

 ――EDF全地球防衛条約:戦略規格外”禁忌”指定兵器。

 兵器名:戦略的自壊型決戦用轟砲(ネガ・ロンゴミニアド)

 

 南極に古代から眠る超文明の遺産、不明遺物構造体”OVUM-68”の材質を加工・圧縮し作った砲弾を撃ち出す為の砲台。

 砲弾のみならず、砲身の各所にもOVUM-68の解析不能技術が用いられており、再現・量産は不可能。

 

 製造に成功した砲弾は三つあるが、砲台が発射に耐えられず、一発撃つと耐えられず自壊する。

 また、砲弾自体が生物に有害な、重度のフォーリニウム線放射物質であり、人力での装填は作業者の重度汚染を伴う。

 機械式の装填が望ましいが、装置は長らく稼働していない為故障個所が幾つも存在する。

 また砲弾の汚染から作業者を護る為、砲弾保管庫は地下深くに設置されている。

 

「つまり……、砲弾の運搬と、装填装置の修理者は、被爆が必至という訳か」

 

『その通り。犠牲を覚悟で装填する必要がある欠陥兵器さね。まあいい、次の問題だ。ま、第一がこれなら、自ずと分かるだろう』

 

「それを発射したとして、ソラスに着弾した瞬間、周囲に重度のフォーリニウム汚染が拡散する、か」

 

 第二の問題。

 着弾した際の汚染物質の飛散。

 これはどうやっても防ぎようがなく、影響力も未知数だ。

 

 フォーリニウム汚染とは、人類が研究の末発生させてしまったフォーリニウム放射性物質による汚染の事で、周囲にフォーリニウム線をばら撒き、生命体の細胞をボロボロに砕く。

 原理は難解で、性質的にはウランやプルトニウムなどの放射性物質と似たようなものであるが、まだ研究は進んでいない。

 

 少なくとも、多くのEDF研究所の爆発事故や、被曝し死亡した実例を上げると、安全ではないのは明白だ。

 

 その物質が着弾の際周囲に飛散すれば、その土地は調査と安全が保障されるまで住むことは出来なくなるだろう。

 

「……核兵器を使うようなものではないか。狭い国土で、そのような汚染物質を撒き散らす訳には」

 

『その通り。当然、効果が予測できない分核なんかよりもよほど深刻さ。だが、もっと根本的な問題もある』

 

「まだあるのか……」

 

 少々顔がやつれた気がする榊中将に、容赦なく問題を提示していく。

 

 第三の問題。

 それは、肝心の砲台の整備が不確かなせいで、精度やそもそもの安全性に不安があり、にも拘らず、発射は手動操作――つまり発射シーケンスを理解している人間でないと不可能な事。

 通常の砲弾と違い、重フォーリニウム汚染砲弾は、臨界に達する寸前を読んで発射する操作が必要になる。

 

 当然、失敗すれば射手は汚染どころかその場で保管庫が爆散し死亡する。

 そして、精度が不安定という事は、肝心のソラスに当たらず意味を為さない可能性があるという事だ。

 

 話を聞いた榊は、最初に聞いた通りの難題に顔を顰める。

 

『以上が最も深刻で対処が難しいタイプの問題さね。ま、これ以外にも問題は山積みさ。そもそも、こうした運用上、倫理上、戦略上の問題があったからこそこうして”禁忌”指定兵器として封印されてる訳だがね。……仙崎誠クンに、火を点けられたようでね』

 

 遠い目をして語ったのを、榊の方からは見ることが出来ない。

 代わりに。

 

「来たぞ。その仙崎少尉に頼まれて呼んだ――貴方に匹敵する優秀な科学者たちが」

 

 榊のいる第三会議室の扉が開いて、続々と科学者たちが入室していく。

 

「――巨大生物の甲殻と比較し、怪生物級の岩石の様な皮膚を砕くには……」

 

 資料を読みながらブツブツと入室する、生物学の権威、小原敏夫。

 

「――試験中のタイタンを全て集めるのだ! 何? オーバーホール? クソッ! この絶好の機会に何というタイミングの悪さ!!」

 

 通話で嘆きながら派手な身振り手振りで入室する、ガプス・ダイナミクス主任、ヘンドリック・オストヴァルト。

 

「――ソラスを討伐など馬鹿げてる!! これほどの科学者を集めて、一体何をするつもりなのか!」

 

 特色の無い常識的な反応を見せる、フーリガンブラスター開発者、アルフレッド・アシュレイ中佐。

 

「――失礼しますっ! おおお、お役に立てるよう頑張りますっ!」

 

 少々緊張しながら元気いっぱいの入室をする、戦略情報部オペレーターにして数学の天才、アドリアーネ・ルアルディ中尉。

 

「――ここが、第三会議室かな? おっと、どうやら僕が最後みたいですね。皆さん、宜しくお願いします」

 

 丁寧で礼儀正しく入室と挨拶を行う、結城桜の父にして電気工学の権威、結城聡大尉。

 

「――皆様お揃いですね。では戦略情報部から正式に認可されたデータを転送します。この情報が、EDF戦略火器保管庫、及び内部に保管されている、EDF戦略規格外”禁忌”指定兵器群の全情報になっています」

 

 中央のモニター右に映っているのは、EDF戦略情報部、対外戦略情報課のエレナ・E・リーヴス少佐だ。

 

「――やれやれ。もう対外情報課も動いたのかい。事が事だとさすがに情報が早い。ま、いい。……とにかく、わざわざ集まってくれたことに感謝する。ワタシの力不足を、助けておくれ」

 

 モニター左に映るローテンションだが誠実に頼み込む白衣の科学者は、極東EDF最大の研究機関”先進技術開発部”の主任研究員にして、元ニコラヴィエナの右腕とまで称された天才物理学者、茨城尚美少佐。

 

 以上七名の天才科学者たちが、ソラス討伐の唯一の希望にして人類兵器史の汚点、戦略的自壊型決戦用轟砲(ネガ・ロンゴミニアド)の運用方法について、会議を始めた。

 

 一方、その頃、仙崎は――

 

「ぬおおぉぉぉーーーッ!! 私はこちらだぞ! 巨獣ソラスめッ!!」

 

 まるでEDF戦略火器保管庫を目指すかのように進撃するソラスに対し、仙崎は肉薄していた。

 

「煙!! 火炎放射が来るか! ぬぇぇいっ!!」

 

 左へスラスターを強め、ブーストジャンプ。

 同時に、右腕のハンドキャノンを発射。狙いは両目のどちらかだ。

 

「どうかな!? 貴様にとっては豆鉄砲だろうが、さすがに顔面への攻撃はウザかろう! ぬぁはは!!」

 

 そうして得意げに煽る、仙崎の顔は外からは拝めない。

 

 そう、仙崎は今、パワードスケルトンを装着し、フェンサーとして戦場を駆けていた。

 全ては、ソラスの足止めと引きはがしの為に。

 

「……しかし、いくらフェンサーとはいえ長くは持たんな。茨城女史よ、早い所頼むぞ……!」

 

 そう思いつつ、しかしこれも己が立てた作戦なのだから、最も危険なところを担当する羽目になったのも、道理であるな、と。そう思う。

 そも、どうしてこのような奇異な状況になったのかと、頭を巡らせる。

 

 ――時は、ソラス出現から数分前に戻る。

 




という訳で、EDF:IRより取り入れた、「戦略的自壊型決戦用轟砲」の登場になります!
この仰々しい名前の武器を何とか登場させたかったので……名前に相応しく設定をモリモリにしましたw
本当は超強くて一回しか撃てない狙撃銃、みたいな武器なんですけど、こちらの世界では大砲のイメージで。

そしてそれに引っ張られるように周りの設定を色々考えてたらめっちゃ時間かかりました……すまぬ。
という事でなんだか長くなりそうな巨獣ソラス編、どうかお付き合いください!
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