全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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読んでくれてありがとうございます。


第二話 異邦人来たる

――2022年7月11日 第228駐屯基地 地上第一演習場

『第45レンジャー中隊第二小隊”レンジャー2”』――

 

「なんだアレは……」

 

 突然現れた幾十もの飛び去る巨大飛行物体を見て、男は思わず火を点けたばかりの煙草を落としてしまった。

 

 唖然としている者、右往左往する者、頭を抱える者、さまざまだ。

 演習を間近に控えたEDF陸戦歩兵部隊が騒然とする中、一人の兵士がこちらに駆け寄る。

 

「ち、中尉! 大林中尉! なんなんですか、あれ!? まさか今回の火力演習の標的はあれだって言うんじゃないでしょうね!?」

 

 駆け寄った部下が取り乱した様子で捲し立てる。

 唖然とする男――レンジャー2小隊長、大林浩二中尉は、取り乱す部下を怒鳴りつけるように一瞥。

 

「そんなふざけた事があってたまるか! まさかこいつ等が、人類がかつて熱狂したあのフォーリナーだというのか?」

 

「この数……、もし攻撃されでもしたら、いくら228とは言え一瞬で滅びますぜ? どうせやるならこっちから……」

 

 別の部下がアサルトライフルを構える。

 火力演習用にその中身には実弾が装填されているが、むろん安全装置は解除されていない。

 

「あんな規格外の相手にどう立ち回る気だ? やる気があるのは良い事だが、するべきことを間違えるな。今は命令を待て」

 

「サー! イエッサー!」

 

 そう口に出しつつ、明らかな異常事態に逸る己が心を、部下への叱咤で落ち着かせている自覚があった。

 明らかな異常事態だ。空を覆う白銀の浮遊船、ハリボテのドローンの類には見えず、人類以外の勢力――平たく言えば、宇宙人の侵略そのものである。

 

 ”フォーリナー”。

 発見から半世紀経っても姿や痕跡を見せず、EDF設立の理由は立ち消えたかのように思えた近年。

 再来の日が今日であったとするなら、後に待つのは和平か、侵略か。

 

 そこまで考えて、はたと大林は気付く。

 空を覆うような数。

 これはこの地点だけの現象か?

 

 このような大規模な船団が、わざわざここを通過する理由は想像しがたい。

 であるならば、全ての軍事基地、或いは地球全土にこの光景が広がっている可能性は。 

 

 最悪の想像が頭を過ぎり、臓腑が締め付けられる思いをする。

 

 東京で帰りを待って居る、妻と子供の身を案じずには居られない。

 これから起こる事態の趨勢によっては、覚悟を決めなければならないだろう。

 

『こちら基地司令官の興田(おきた)だ! 地上展開中の各チームへ! 聞こえるか!?』

 

 228駐屯基地の司令官、興田准将から広域通信が入る。

 近距離通信であるにも関わらず、酷くノイズ交じりの通信だ。

 異常事態の元凶である、空の浮遊船を睨む。

 

『こちら第45レンジャー中隊、中隊長結城。全チーム待機中、聞こえています!』

 

 中隊長の結城大尉から応答がある。

 

『現在、原因不明の通信障害により長距離通信及び本基地地下施設との通信が完全に途絶している。よって我々は国連安全保障理事会、日本国政府及びEDF総司令部との通信が復旧するまで、基地の警戒を任務とする』

 

 EDFは国連安保理直下の国際軍事組織だ。

 行動、特に軍事行動には安保理の承認が必ず必要だ。

 

 それ以前に、例え異星文明であっても、仮にも人類はフォーリナーという存在の歓迎に湧いた時期を通っている。

 今更無下に先制攻撃する訳にはいかない。

 

 出方を待って先制攻撃で成すすべなく全滅では困るが、簡単に動くことも撃つ事も制限される状況だ。

 やり場のない思いに自然と銃を握る手に力が入る。

 

《当然の事ながら、火力演習は中止とする。全部隊、即応体制のまま待機せよ。なお、彼らがフォーリナーであるか否かは、国連の発表をもって判断する。以上の理由により、我々からの発砲はいかなる理由があろうと認めない。繰り返す、我々からは決して攻撃するな! 以上だ! 全チーム警戒に当たれ!》

 

 興田准将から全部隊への通信は終わる。

 

 国連と通信可能になるかは甚だ疑問だ。

 恐らく上空の白銀の船団が通信状態の悪化の原因である事は確定的だろう。

 であるなら、ここで何が起こったとしても上層部との通信再開の目途は立たないだろう。

 

 ここベース228は広大な地下格納庫を利用した旧式EDF兵器の墓場とも言われる後方の長閑な駐屯基地で、司令官の興田准将も退役前の余生を過ごされるような温和な方だ。

 まさか退役前にこのような大事件に巻き込まれるとは思っても見なかっただろう。

 

「まさか、現役の間に相見えるとはな。これは壮観だ」

 

 重機の起動音のような音を出して、パワードスケルトンを装備した兵士が近づいてきた。

 彼らは二刀装甲兵(フェンサー)と呼ばれている。

 

 そのうちの一人、深みのある低音で呟いたのは、

 

「……死神。驚いたな。どうしてここに」

 

 大林中尉が驚いて問うその相手は、漆黒のパワードスケルトンに身を包んだ、正体不明の特殊部隊、通称グリムリーパー。

 声をかけたのは、その部隊長”死神”だ。

 

「極秘の任務さ。戦闘ばかりしているわけではない。退屈だがな。お前こそ、今は中尉か」

 

 大林中尉とこの”死神”には面識があった。

 しかし、

 

「昔話か? さすがは特殊部隊、随分と余裕がある。まさかお前の雇い主は、この状況を予測していたとかじゃないだろうな?」

 

 大林中尉はやや棘と皮肉が混ざる応対を投げかける。

 

「面白い事を言う。そこまで全能ではないだろうが、そうであったとしても構わないさ。ここが戦場になるのなら、俺たちはここで命を捨てても構わない。棒立ちままやられるつもりはない」

 

 死神は大林から目を逸らし、上空の浮遊船を睨みつけ、無意識に盾を構える。

 その直後どこかからの秘匿通信を受けると、死神部隊は速やかに大林の前から姿を消した。

 

「……相変わらず、恐ろしい男だ。部下の命も勘定に入っていない」

 

 大林はその姿を、畏怖と嫌悪と憧憬の入り混じった表情で見つめた。

 死神と出会ったのは10年前、とある紛争地域での事だ。

 窮地に突如現れた黒いフェンサーの群れは、砲火の入り混じる戦場の中、部下の屍も気にせず戦場を蹂躙して去っていった。

 

 戦法は時代遅れの槍と盾。

 命知らずの超接近戦で全てを蹂躙していく。

 戦場での噂から”死神”の名をつけられるのに時間はかからなかった。 

 

 そんな風に、現実逃避のように昔の事を回想していると、突如状況に変化が訪れた。

 

『あれは何だ!? 何か降って来るぞ!! 伏せろ、伏せろぉーー!!』

 

 無線から、雑音混じりの誰かの声がした。

 咄嗟に片膝を付き身を屈める。

 次の瞬間、轟音と衝撃が響く。

 音は一度ではなく、複数回に渡って響いた。

 

「砲撃か!? どこだ!?」

 

「だ、第二演習場の方です! 土煙が上がっています!」

 

 部下の報告にその方向を見ると、確かに土煙が高く上っている。

 あの方向に部隊は居なかったはずで、目的は不明だ。

 

『今の揺れはなんだ!?』

 

 遅れて、興田准将から通信が入る。

 

『こちらレンジャー4! 空から落下物が激突しました! 第二演習場の方です!』

 

 土煙の方から最も近かったレンジャー4は、先ほどの砲撃をそう表現した。

 

『こちら司令部。レンジャー4、投射された物体を確認しろ。レンジャー1、2、3及び戦車隊第二小隊(ガルム)は前進してレンジャー4を援護しろ。ただしこちらから物体への攻撃は厳禁とする』

 

 興田准将の命令に、各部隊は了解を唱和する。

 大林中尉は、部下に命令を下達し移動する。

 

「レンジャー2各員、第二演習場でレンジャー4を援護する! 訓練じゃないぞ、続け!」

 

「「サー! イエッサー!!」」

 

 レンジャー達歩兵部隊と共に、EDF主力戦車(MBT)E550”ギガント”が前進する。

 

 まもなくして、レンジャー4からの通信が聞こえた。

 

『こちらレンジャー4。きょ、巨大生物です! 巨大生物を発見!』

 

《レンジャー4、巨大生物とは何か?》

 

『昆虫です、大きな昆虫です! ――ッ! こっちへ来ます!』

 

《総司令部から許可は出ていない! 攻撃は命令を待て!!》

 

『仲間が食われた!! やめろ! 勝手に撃つな!!』

 

『う、腕がっ! 助けてくれぇぇーー!!』

 

 ノイズ交じりの無線から、悲鳴と銃撃音が響き渡った。

 恐れていた最悪の事態だ。

 

《レンジャー4! 何があった! 応答しろ!!》

 

『こちらレンジャー4! 巨大な怪物に、仲間が殺されました! 死傷者多数! 駄目ですッ、交戦を開始します!! 撃て、撃てぇー!!』

 

《クソォ!! やむを得ん! 交戦を許可する! レンジャーチームへ。レンジャー4が巨大生物と交戦中だ! ただちに救援に向かえ》

 

「レンジャー2了解! 安全装置を解除しろ! 未知の敵との交戦になる、覚悟を決めろォ!」

 

「「サー! イエッサー!!」」

 

 レンジャー2は足を速め、武装のロックを解除し、戦闘態勢で急行した。

 

 

――第二演習場――

 

 

「ぐっ! 巨大生物だ! なんて数だ!! うわぁぁぁぁ!!」

 

「譲二が、譲二が食われたァァ!!」

 

「撃てぇ、撃てぇぇーー!! ぎゃぁあぁぁぁぁ!!」

 

 大林中尉が到着すると、そこには地獄のような光景が広がっていた。

 第二演習場の中央には異文明の巨大な塔が地面に突き刺さっており、衝撃波で土砂が捲れ上がった跡があった。

 

 だがそんな事よりも異常な光景は、見上げる程大きな”巨大蟻”が塔の周りに溢れており、その怪物にレンジャー4が食い散らかされてる凄惨な光景だった。

 

 一瞬言葉を失うも、直ちにやるべきことの命令を下す。

 

「交戦の許可は下りた!! EDFの勇猛さを見せる時だ!! 野郎共、怪物を駆除しろォーーー!!」

 

「「うおおおぉぉぉぉぉ!!」」

 

 EDF制式アサルトライフル”AS-18”が一斉に火を噴く。

 発射される6.66mmEDF弾は単発火力で7.62mmNATO弾を凌ぐ常識外れの破壊力だ。

 だが巨大生物の黒い外皮は数発の弾丸を弾く厚さがあった。

 

「レンジャー2に後れを取るな!! 各員射撃開始!!」

 

『ガルム1より各車! これだけデカければ狙うのは簡単だ! 歩兵に当てるなよ!? 各車輛斉射! ッてぇぇ!!』

 

 他のレンジャー隊、ギガンテス隊が到着し一斉に攻撃を始める。

 アサルトライフルの弾幕が広がり、後方から強力な戦車の徹甲弾が黒い怪物を貫いた。

 

「た、助けてくれ! がふっ」

 

 逃げ惑うレンジャー4隊員が、巨大な牙に噛み付かれる。

 

「奴を助けるぞ! 射撃集中!!」

 

 大林は部下に射撃を指示しつつ、巨大生物との距離を詰める。

 射撃が集中したその怪物の外皮は砕け、更なる着弾で黄土色の体液が噴出。

 しばらく悶えた後に巨大生物は倒れた。

 警戒したが、絶命したと判断。

 

「怪物一体を撃破! お前、大丈夫か!? ……出血が酷いな。井上、手当しろ!」

 

 噛み付かれていた兵士の怪我は酷い。

 腹がアーマースーツごと破かれていて、骨と内臓が少し見えている。

 EDFの開発した緊急治癒鎮痛剤でも長くは持たないだろう。

 

「他は――クソ! とにかく周囲を制圧を続ける! 勝てない相手ではない! 距離を保ったうえで、一体に射撃を集中し各個撃破!!」

 

 部下を一人残し、戦闘続行。

 負傷者も多いがそれ以上に巨大生物は数が多く、苦戦を強いられる。

 その上、

 

「コイツ! デカい割に素早いぞ!?」

 

「甲殻も厚い! なんとか倒せるが、とても生物の耐久力じゃないぞ!?」

 

 巨大生物は、大型トレーラー以上のサイズ感で、人間を遥かに上回る俊敏性を持った化け物だった。

 その上、従来軍の軽装甲車程度なら貫く6.66mm弾の直撃に耐えうる甲殻を持つ。

 

「くそ! 戦車とまでは言わんが、恐ろしい耐久力だ! 怪物め!」

 

 冷汗を流しながら応戦していると、射撃の合間を抜けた個体が素早く部下に接近する。 

 

「くそ! ちょこまかと……うわああぁぁぁ!!」

 

「杉田ァ!!」

 

 杉田一等兵は牙に食いつかれた。

 彼は断末魔を上げる間もなく下半身を咀嚼され、残飯のように無残な上半身だけを吐き出すように叩き付けた。

 

「怪物がァーーー!!」

 

『撃てぇぇーー!!』

 

 怒りに血が上った瞬間、戦車隊の援護射撃で、杉田の仇は吹き飛んだ。

 いかに強固な甲殻を持つ巨大生物とは言え、戦車砲の直撃には耐えきれなようだ。

 

「感謝する! その調子で全部片づけてくれ!」

 

『助けられなくて済まない。随分片付けたはずだが、不思議とそう見えないな!』

 

 戦車兵のその言葉に、少しの違和感を覚えたが、激しい戦場が思考を許さない。

 その間にも巨大生物は迫り、歩兵部隊は必死に弾幕を張る。

 

 銃撃に耐える巨大生物だが、EDF歩兵部隊のもつ携行ロケットランチャー”グラントM31”なら一発でかなりのダメージを与えられる。

 それでも即死しないのが恐ろしいが。

 そのグラントM31も、

 

「くそ、最後の一発を使い切った! 奴ら何体いるんだ! 多すぎるぞ!!」

 

「レンジャー4早く脱出しろ! こっちの弾薬がもう持たないぞ! 被害も出始めてる!」

 

 その言葉通り、半壊状態のレンジャー4はようやく混乱を抜け出し、指揮部隊のレンジャー1に保護された。

 

「救援感謝する……! だが、ここにいる奴らを何とかしなければ基地は終わりだ! あれを見ろ!」

 

 レンジャー4隊長は落下してきた巨大な塔の上部を指差す。

 塔の上部は淡い赤色の水晶のようであり、それが今発光し始めた。

 

 すると、その周囲が光り、何もない空中から突如大量の巨大生物が発生した。

 発生した巨大生物は地上に降り立ち、さらに多くの軍勢となってEDFを襲う。

 

「塔から巨大生物が!? あの塔、中に巨大生物を収容しているのか!?」

 

 仲間の兵士が口走るが、塔自体に収容力があるようには見えず、体積的にそうは考え難い。

 

「転送装置か作成装置ってところだろう……! ようするに、あの塔を放置しておけば、このクソの怪物は際限無く増える可能性があるという事だ! ここで破壊する必要がある! そうだな?」

 

「恐らく、そうだと思う!」

 

 大林の考察に、レンジャー4隊長が同意を示す。

 その時、大林達に基地司令部からの通信が届く。

 

《こちら基地司令部! そちらの状況はどうなっている!?》

 

『こちらレンジャー1結城! 現在巨大生物の群れと交戦中! 巨大生物は、空から降ってきた巨大な塔から出現しています!』

 

 怪物が大林の小隊に迫る。

 大林はEDF手榴弾HG-11Aを放り投げ、爆発。

 巨大生物の外皮を傷つける事に成功し、AS-18で追撃。

 

《ならば速やかに塔の破壊と巨大生物とやらの殲滅をし、こちらへ戻ってこい。こちらは更に第一倉庫の方に更なる塔の落下が発生し、別動隊を急行させている途中だ。そちらにも直ちに応援を送る。それと、出来ればその巨大生物の死骸を持ってきてくれ。直で確認したい》

 

『了解! まずは敵を殲滅します!』

 

 妙に周囲をうろうろする一体に照準を絞り、AS-18の集中射撃。

 焼け石に水だ。次から次へと押し寄せる。

 HG-11Aの爆風で巻き込んでも、敵自体が巨大なため複数体を仕留めるのは難しい。

 

「中尉ッ! コイツら素早いです! そのうえすぐ回り込もうとして!!」

 

「まずいぞ! 奴ら戦車の方に行った!」

 

 数体が歩兵部隊の脇を抜け、後方の戦車部隊に迫る。

 

『安心しろ! いくらデカい牙を持っているからって、そう簡単に食い破れる訳が……何!!』

 

「ガルム隊! 大丈夫か!?」

 

 砲撃しながら後退。

 しかし巨大生物数体はふらふらと左右に蛇行したり回り込む動きで砲撃を躱し、ギガントの履帯に喰らい付いた。

 

『コイツら……! まだ来るぞ! バケモンが!!』

 

 悪態を吐きながら12.7mm車載機銃で応戦。

 120mm滑腔砲では手数が足りない。 

 だが巨大生物は履帯や転輪を破壊し、更に旋回する主砲砲身を齧り、牙で圧し折った。

 

「まずいな! レンジャー2! ガルム隊を助けるぞ!」

 

 大林とレンジャー2の隊員は組みつかれているガルム3の元へ急行し、周囲の巨大生物を排除する。

 

「齧るのに夢中か!?」

 

「動かなければ!」

 

「今だ! 集中射撃!!」

 

 車体を齧るのに夢中だった巨大生物を背後から急襲し、車体は半壊のままガルム3を救出する事に成功した。

 

『こちらガルム1。部下を助けられたな』

 

 

「感謝は不要だ。ガルム1! あの塔を砲撃で壊す事は可能か!?」

 

『ガルム1よりレンジャー2、やってみよう! 各車目標変更! 正面の塔に斉射二連! ブチ込んだら後退して巨大生物の群れを引き剥がす!』

 

『『了解ッ!!』』

 

「俺達も一旦後退する! レンジャー4は救出した! この場所で粘る意味はない!!」

 

「「イエッサー!!」」

 

 大林ら歩兵部隊が塔から離れても、戦車部隊の砲撃は十分可能だ。

 レンジャー部隊は、塔を砲撃する戦車隊の護衛についた。

 

「中尉!! 塔からまた巨大生物が出現しています!」

 

「やはりな……。あの塔を破壊しなければ、怪物は増え続けるのかも知れん」

 

『心配するな! 今破壊してやる!! 一発たりとも外すなよ!? ってぇぇ!!』

 

 後方から振動と重低音が響き、高速で砲弾が塔に着弾する。

 EDF戦車小隊は4輛編成。

 一輛は横転しているので3輛現存。各車二回斉射で計6発の徹甲弾が命中した。

 

 だが……。

 

「レンジャー2よりガルム1! 塔は健在! 繰り返す、塔は健在!!」

 

『ちっ……、各車移動開始! レンジャー2! 着いてきてくれ! 演習場西側で再度砲撃を加える! それと目標を塔上部の発光部に変える! あそこから巨大生物は出現している。構造的に弱い部分があるとすればそこしかない!!』

 

 一方こちらには生み出された巨大生物が殺到していた。

 それまでに出ていた巨大生物は粗方片付けたが、これではキリがない。

 

「くそっ、大量に来るぞ!!」

 

「なんて数だ! 俺達だけでどうにかなるのかよ!?」

 

「戦車隊が塔を破壊する。それまで撃ち続けろォォーー!!」

 

「「うおおおおぉぉぉぉ!! EDF!! EDF!!」」

 

 向かってくる巨大生物に6.66mmEDF弾を叩き込む。

 アサルトライフルでは巨大生物を仕留めるのに時間がかかるが、これだけの弾幕があれば巨大生物は怯み、近づくことは出来ない。

 

「いいぞ! リロードの隙を各自カバーして、弾幕を絶やすな! 奴らの牙は脅威だが、近づかなければどうということはない!! 分かったかァ!?」

 

「「サー! イエッサー!!」」

 

『こちらガルム! 砲撃を再開する! てぇぇ!!』

 

 再び徹甲弾が放たれた。

 だが今度は塔は上部が大きく爆発し、そのまま全体が崩壊して崩れ去った。

 

「やったぞォォォ!!」

 

「ざまぁ見やがれ!!」

 

 部下からも歓声が上がる。

 

『こちらガルム! そのまま蟻共を砲撃する! 十字火網を形成して敵を一気に蹴散らすぞ!』

 

「レンジャー2了ォ解!! このまま一気に決めるぞ!!」

 

「「うおおおぉぉぉぉ!!」」

 

 その後は早かった。

 アサルトライフルの弾幕で巨大生物を足止めし、大林たちから見て右側面から戦車砲の斉射で撃破。

 そんな戦法で、ほぼ一方的なくらいの勢いで彼らは巨大生物を殲滅した。

 

「……終わったな。結城中尉、司令部へ報告を頼みます。私は興田准将への手土産を選んできます」

 

「頼んだよ。『司令部へ。こちらレンジャー1結城。巨大生物の殲滅に成功』

 

 その無線を聞き流し、レンジャー2は状態の良さそうな巨大生物を探すことにした。

 

「しかし、こうして落ち着いてみてみるとこの怪物、本当に蟻ですね……」

 

「こいつらって、本当にフォーリナーなのか?」

 

「さあな。どう見ても知的生命体には見えないが……。隊長、アレいいんじゃないですか?」

 

 部下の一人が状態のいい巨大生物を発見する。

 

 ――その後、巨大生物の死骸をワイヤーで結び、戦車に牽引してもらい、演習場から基地敷地内まで移動した。

 

「これが、大きな昆虫、巨大生物か……。なんという大きさだ」

 

 興田准将はこの目で巨大生物を見て戦慄していた。

 いや、准将だけでなく、他の兵士やその場にいた人間すべてだ。

 

 結局、レンジャー4は10名中半数の5名が戦死。

 他の兵士は4名戦死、2名が突き飛ばされて負傷。

 戦車一輛は大破して戦車回収車でなければ戻せないので放棄したが、乗員は無事なので人的損害無し。

 

 大林の部下は一名が戦死した。

 

 また明かされてはいないが基地の別方面に落下した塔は、特殊部隊であるグリムリーパーが処理したそうだ。

 

 その結果、一時的に周辺の敵戦力は殲滅された。

 しかし、その静寂はこの後の嵐のような激戦の前触れでしか、無かったのだった。

 




あとがきのような人物紹介

大林浩二(おおばやしこうじ)中尉(37)
 第45レンジャー中隊第二小隊”レンジャー2”小隊長。
  
▼死神
 EDFの特殊部隊”グリムリーパー”隊長。
 素性は明かされていないが、大林曹長と過去に面識がある。

興田(おきた)准将(60)
 第228駐屯基地司令官。
 後方基地であるベース228で退役を迎える筈だったが、大事件に巻き込まれて陣頭指揮を執る。


部隊編成解説

自分でも混乱しそうなんで簡単に解説します。

軍曹チームを例に挙げると、
第一陸戦歩兵大隊
という数百人規模の大部隊がいて、

その下に
第44レンジャー中隊
があります。
隊長はだいたい中尉から大尉くらい。

中隊はレンジャー以外にも、ストークやフラウンダーなど多数の愛称を持つ部隊があり、精鋭部隊であるストームチームは作中ではまだ編成されていません。

そしてその下に
レンジャー8
があります。

これは通常の軍隊では”小隊”に当たります。
隊長は少尉から中尉くらい。

その下にレンジャー81
という隊があり、これは分隊相当です。
隊長の階級は軍曹から曹長。

小隊は、複数の分隊からなっていて、
レンジャー82
だとレンジャー中隊第8小隊第2分隊
という意味になります。

……え? 荒瀬軍曹は軍曹なのにレンジャー8小隊の指揮官だった?
実は、軍曹の所属するレンジャー8は巨大生物の襲撃を受け、小隊長以下数名を失い、小隊の指揮を荒瀬軍曹が預かったのでした!

ごめんなさい!
ぶっちゃけツメが甘かったので後出し設定です!
後で編集して加筆するかもしれませんごめんなさい。

さて長くなってすみません。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
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