全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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どうもこんにちは!
戦闘書くのノリノリ過ぎて展開が進まな過ぎて苦情が来そうです……。

話の展開が遅いとタイトル結構思いつかなくて、EDF4.1「巨人たちの戦場」とEDF5「魔獣の宴」の合体みたいな感じのタイトルになってしまいましたが内容は掠りもしていないです。


第八十一話 狂人たちの宴

 

 ──日本国陸上自衛隊、特殊作戦群。

 

 所謂、日本の軍隊における特殊部隊。

 米陸軍のグリーンベレー、ロシア陸軍のスペツナズ、イギリス陸軍のSASに相当する特殊作戦のプロだ。

 EDF設立以前より対テロやゲリラ戦などの特殊作戦を念頭に世界でも有数の厳しい訓練をこなす、一流の特殊精鋭部隊。

 

 EDFの設立、フォーリナー襲来の危機が叫ばれる情勢において、彼らの在り方も変化した。

 対フォーリナーを目的とし、異次元の力をつけるEDFという、絶対的な強権を保持する軍事組織に対する、カウンターとしての役割を、日本政府は彼らに求めた。

 

 歪な方針ではあった。

 日本政府は親EDF政策を実施しながら、その裏でEDFを信用しきっておらず、ひそかに対抗戦力を作っているのだから。

 ただ、同様の政策は日本だけでなく示し合わせたように世界中で行われており、EDFを歓迎しながら水面下でEDFの技術を裏ルートから習得し、対抗兵器を隠れて生み出し、実験と訓練を繰り返す。

 

 連携を取っていないにもかかわらず親EDF国家で行われたその動きは、EDFが暴走するという万が一の事態を考え、備えずにはいられない人の性とでもいうべき性質が浮き彫りになった結果だ。

 

 とにかく、そんな動きによって新たな任務を求められたのが陸上自衛隊特殊作戦群である。

 要するに――彼らはEDFに相対する可能性をも念頭に置いて組織された、日本国主権の防人集団である。

 

「外れだ、手強いな。あの男は任務の障害になる。中に入られる前に、射殺しろ」

 

「――ッ! 狙撃手かッ!!」

 

 頬を掠めた弾道を、忌々しく睨みつける仙崎。

 アーマースーツのヘルメットなら、従来の対物狙撃銃の直撃でも脳震盪を起こす程度だろう。

 が、前述の通り対EDFを念頭に考えた特殊作戦群が、そんな旧世代の装備を使っているとは考えづらい。

 

 EDF以外の所持が認められない”全地球防衛条約兵器”、その基準をギリギリ掻い潜った最新兵器は、各国で開発運用されている。

 EDFへの不信感、そして人間本来の闘争心が行きついた結果だった。

 

「要するに、当たる訳にはいかぬという事だな! ええい射殺承諾とは恐ろしい! しかし――」

 

 意識を集中し、知識と勘を研ぎ澄ます。

 姿の見えない狙撃手だが、飛翔音と掠めて分かった弾道である程度の位置を割り出した。

 この周囲に高い建物は少ない。弾道から見て水平射撃か。

 瞬時に目を凝らすが判別不可能。擬装しているだろうし、一か所に留まる愚考はないだろう。

 

 だが、居ると分かっているのなら、それを意識して動けばいいだけの事。

 気配を探れ、死の予感を感じろ。

 木々を盾に、草木に伏せ、飛び込み、走り、跳ね、転がり――妙な感触を踏んだ。

 

「――ッ!!」

 

 一瞬のうちに脳細胞が過熱する。

 踏んだのは地雷だ。間違いない。

 瞬間の爆発は無い。足を離した時が終わりか。

 そして、その場の棒立ちは、狙撃弾に撃ち抜かれる事を示す。

 負傷すれば、脚は離れるだろう。

 

 故に――。

 

「ぬおお南無三ッ!!」

 

 仏教徒でもないのに、仏頼みの言葉が出てしまったのは、日本人故か。

 仙崎は、EDF製手榴弾”HG-15A”を真下に放り投げ、同時に足を離し、対ソラス用になるまいかとして持ってきた、新型広角ショットガン”ガバナーS”を真下に発射。

 

 理論的に考えたわけではない。死に物狂いで何とかしようと咄嗟に思いついた出鱈目な行為だ。

 だが、結果的にそれは功を奏した。

 

 地中の死は炸裂し、真上の愚者を炎と熱と衝撃で粉々に砕かんとするが、その勢いを、グレネードの爆発と、100以上の散弾のシャワーによって相殺され、反動で仙崎は背を上に大きく跳ね上がった。

 

「ぬぁはは!! やって見るものだな! これでぬがががが」

 

 空中で尊大を見せたものの、余りにも咄嗟の出来事と、地面が見た目以上に傾斜が付いていたことにより、無様に転げ落ちる仙崎。

 いや、それは傾斜というより、着地の瞬間地面が陥没したかのような地形の変わりようだ。

 

 仙崎がそんな無様を晒したのも無理はない。何せここは――

 

「まったく何だと言うのだ!! 地面まで私をいたぶる気か許せん!! いったい――……。なるほど。そういう事か」

 

 憤慨から一転、落ち着き冷静さを取り戻し、目の鋭さを増す仙崎。

 彼の目の前には、四基の陸自製自動銃座(セントリーガン)。そしてそれに守られるようにして小さく構える、地下へ続くであろう鋼鉄の門。

 

 ――ここはそう、EDF戦略火器保管庫への物資搬入ゲート。

 この場の全員が目指していた場所に、仙崎は辿り着いたのだった。

 

 侵入者を感知し、四基が待機状態から一斉に起動する。

 銃口が一斉に仙崎を向き、マズルフラッシュと共に飛び出す銃弾――起動から発射までの僅かな時間で、仙崎は脚の筋肉を爆発させ、意識を研ぎ澄ます。

 

――――

 

「ぬおおおお!! それで私を、捉えたつもりかぁぁ!!」

 

 目的地を目の前に、仙崎は足踏みせざるを得なかった。

 何せ、四基の自動銃座、それの排除から行う必要がある。

 幸いと言うべきか、狙撃は一時止んでいた。

 

 ここは周囲の地形から目を隠すように、窪地になっていた。更に欺瞞するように草木が生い茂っており、正直物資搬入ゲートとしては利便性に欠けるとか言うレベルではない様相に見えたが、搬入するときはもう少々使いやすくなるのだろうか。

 

 とにかく、そのお陰で却ってここを護る側の援護が飛んでこないと言う珍妙な状況になっている。

 が、頑丈な自動銃座に守られたこの状況を考えれば、それほど妙でもないと言える。

 何せ、並みの侵入者であればとうに肉塊に成り果てているからだ。

 

 だが――

 

「獲ったッ!!」

 

 センサー認識による銃口の視線を潜り抜け、懐に入り、ガバナーSの接射を行う。

 大口径の銃口から、100発に上る散弾が吹き飛び、自動銃座の基部を破壊する。

 

「――これで、残り一基!! EDFを舐めるなよ、自動銃座如きが!!」

 

 常人であれば、1分と経たずに蜂の巣になるであろう自動銃座四基の銃撃の嵐を、仙崎は見事掻い潜る。

 のみならず、狩人と獲物の立場を逆転させ、既に三基の自動銃座を沈めるに至った。

 

 視線に対する研ぎ澄まされた意識と、うなじを焼き焦がすような死の予感、それら二つに即座に対応出来得る反応速度と、それを可能にするアーマースーツの人工筋肉。

 それら全てを駆使して、この逆境に臆さない並外れた精神の強靭さが、勝利を手繰り寄せた。

 先の地雷によるダメージは浅くは無いが、それを差し引いてもセンサー式自動銃座程度では、この男を止める事は出来ない。

 

「ふっ、しっ!!」

 

 細かく呼吸を刻みながら、センサーの認識速度と可動域を超える。

 銃弾の速度はさすがに超える事が出来ない。故に、その銃口の先を読む。

 特殊部隊の訓練と、自身の戦歴による経験を駆使し、再び仙崎は自動銃座の懐に入った。

 

「――はッ!」

 

 声に力を籠めて、引き金を引く。

 大口径の散弾は、見事最後の自動銃座を沈黙させた。

 煙を上げて、佇む銃座が四つ。辺りに動くものは無くなった。

 

「これで──ちッ!!」

 

 銃座の沈黙に安堵して一歩踏む出すと、背後から死の気配。

 即座に体をずらすも、首筋を銃弾に裂かれる。

 反応が少しでも遅れていたら、頸椎を持って行かれただろう一撃に戦慄しながら、仙崎は敵の認識と同時に迎撃態勢を整える。

 

「貴様、特戦群の指揮官かッ!」

 

 この森林に溶け込む迷彩服やフェイスペイントを施したその男、黒部直明は、まさに暗殺者(アサシン)の様な気配の遮断と身のこなしで仙崎を襲撃する。

 まるで――いや意図的に、木々にカモフラージュされているこの場所は、視界が確保し辛く、迷彩装備である事の利便性をこれでもかと仙崎は痛感した。

 もちろん、EDFレンジャーのアーマースーツも迷彩風にはなっているが、本気の対人戦を想定した陸自特戦群とは次元が違う。

 

 動かなければ死ぬ。フォーリナーとの戦争や、先の自動機銃とは違う、生身の人間に相対する事への緊張が仙崎の体を駆け抜ける。

 筋肉の動きを読め。銃口から目を逸らすな。それ以外にも狙撃手、伏兵に気を配れ。

 何より、茨城尚美の後を追い、自爆をさせるな。

 自分の体に命令し、意識を研ぎ澄ます。

 

 そのまま射手――黒部二佐は駆け抜けながらハンドガンで二射、三射。

 人間の殺意など容易く避けるのが仙崎誠だ。だが三発目を避け切れず、腕を盾にして直撃を防ぐ。

 

 激痛と同時に視界が遮られる。

 腕を避けると、そこに黒部二佐の姿は無い。

 咄嗟に、腰のEDF製電磁ナイフを抜き、背後を振り向く。

 ――首筋を狙った黒部二佐のコンバットナイフと打ち合い、弾ききった。

 

 黒部二佐は引かない。

 アーマースーツの耐衝撃性に優れた部分を避けてコンバットナイフを差し込むような斬撃を繰り出す。

 仙崎はその全てを避け、または打ち払う。

 が、意識がナイフに集中したところで、仙崎が苦悶の表情を浮かべ、血が舞った。

 

 神業的な速さで抜かれたハンドガンにより、左脇腹を撃ち抜かれたのだ。

 

 実際の所、最新のアーマースーツはより対フォーリナーに特化しており、通常の銃弾への防御力はそこまで高くはない。

 致命傷となり得る箇所に高性能のアーマーを配置し、動きやすさと防御力の両立を得ているが、それ以外の場所の防御力は意図的に下げられている。

 それでも、特殊繊維で編んだスーツは従来の戦闘服とは比較にならない防弾性を誇るが、至近距離であったことや、対EDFを意識したハンドガンだったことにより、傷を受けた。

 

 漏れるぐももった声を抑え、直ちに繰り出される二発目を紙一重で回避し、追撃で繰り出されるナイフを避け切れず、右頬が裂かれる。

 

 が、逆に距離を詰めて渾身の蹴りを繰り出し、打撃を与えた。

 声すら漏らさず、黒部二佐は受け身を取って離れる。

 

「――格闘戦まで熟すとはな。貴様、一体何者だ」

 

 距離を空けた黒部二佐は、警戒の強い声色と共に、射抜くような見定めるような目線で仙崎を捉える。

 単騎での自動銃座四門破壊の後でこの動きだ。EDFレンジャーは皆厳しい訓練課程と充実した装備を武器としているが、皆こうと言う訳ではないだろう。故に、この男の異常性は警戒すべきであると黒部二佐は結論する。

 

 対する仙崎は、負傷による憔悴を隠すように不敵な笑みを浮かべながら、

 

「なに、今はしがない一般歩兵さ。避けるのが得意の筈が、この様では、もはや何を売りにしたらいいか分からぬくらいには、な」

 

「抜かせ」

 

 小馬鹿にしたような態度には取り合わないとばかりに、再び黒部二佐が影の様に動く。

 仙崎が迎撃に神経を研ぎ澄ませた瞬間、僅かばかりの気流音と上方の端に何かを捉え、反射的に飛び退く。

 

 瞬間、地面が爆ぜた。

 回避した仙崎はしっかりとその上方の物体を仰ぎ見る。

 橙色の噴跡を残して滞空するのは、保全局の”黒翼”と称されていたジェットリフター兵だ。

 彼らが複数、仙崎に銃口を向け囲っている。

 

 ジェットリフターの専用兵装”ジャギリシステム”は、小型の誘導弾をばら撒く面制圧型の仕様だ。

 数人に銃口を向けられては、仙崎であっても完全なる回避は困難だろう。

 

「──彼が何者か。それは、こちらでも気になる所ですねェ~。ええ、まったく。ホントウに」

 

 その後ろから悠々と、腹部と右腕を血に染めた白衣の老科学者、ドレフニコスが仙崎に歩む。

 得体の知れなさと詰んだ状況にどう対応しようか一瞬迷うと、彼は続けて、

 

「この”フォーリナー戦争の裏側”、いわゆる組織間抗争の真っただ中に居ながら、貴方、一体何がしたいんですかねェ? 凡庸な(ワタクシ)には理解が及びません」

 

 彼は両手を大げさに広げながら、仙崎という男を見極めようと、件の男に歩みを進める。

 仙崎は未だ出方を伺っている。ドレフニコスへの返答ではなく、銃口を突き付けられたこの状況を脱し、一刻も早く保管庫内部へ侵入し、茨城博士を止める手立てを組み立てる。

 ドレフニコスは、仙崎の思考が自分に向いていない事を知りながら目を見開き、口から軽薄な言葉を早口で捲し立てる。

 

「戦略情報部の死神部隊! 陸自特戦群の暗殺者! 異端技術を操る我が手足、黒翼(アラ・アートラ)諸君! 加えて漁夫の利を狙う浅ましいテロリストども! これらの錚々たる面子の中にあり、しかしアナタはそのドコにも属していない!」

 

 ドレフニコスの指摘は的を射ていた。

 その証拠に、周囲で争っている黒部二佐、保坂誠也に、ロイグ大佐とアヴィス大尉ら四名が、激しい戦闘の最中に聞き耳を立てる。

 

「にィもかかわらずゥ、我々の敵意殺意を一手に受けながら、体捌きと勘のみで生き残っているのは尋常ではァありませんねェェ。しかも我々に対し、明確な敵意を向けていない! ンン~~? アナタ、一体ナンの為にここに来たのですかァ? 現場を掻き回すだけ掻き回す。それが目的の道化と言うなら、アナタの雇い主も想像が付きますが。なんにせよ、これ以上荒らされる前にご退場願いたいのですがァ?」

 

 道化を演じているのはどちらだ、と大仰な身振り手振りと大袈裟な口調でのたまうドレフニコスに言いたくなる気をグッと抑え、雇い主、という言葉に反応する仙崎。

 なる程。余りにも目的が見えな過ぎて外界からはそう見えるのか。

 雇い主――そう聞いてすぐ頭に浮かぶのは、ここには居ないが関係の深そうな組織としてEDF先技研や対外情報課が考えられるが、それらの差し金だと考えているならば、既に大きな的外れである。

 

「これが、知略謀略の権謀術数魑魅魍魎に飲まれた暗部組織の思い込みか……。フッ、甚だ残念だ。貴様も、私を見る目が無いようだな。嘆かわしいことこの上無い」

 

「ハァ?」

 

 予想の斜め上の返答を受け、ドレフニコスは無理解を示すしかない。

 完全にこちらを舐め切っている態度に、逆に子気味良いものを感じながら、仙崎は一歩踏み出す。

 

「ならば刮目し聴くが()い! 栄えある我が名は、仙崎誠なり!! EDF陸戦歩兵部隊の尖兵にして、地球防衛を最前線で担う人類守護の防人(さきもり)、その一兵卒である!! 故に、我が目的は地球防衛であり、あの炎の怪生物の撃滅に他ならない! ――そして、諸君らに良い言葉を送ってやろう。EDFは決して、”仲間”を見捨てないのだ! ぬぁーーはははははは!!」

 

 その奇異な目的開示と耳に残る高笑いに、一瞬ではあるが周囲の者は絶句――有体に言えば、ドン引きした。

 

「――呆けたな!? 馬鹿め!」

 

 その意識に隙を縫って、仙崎は身を低くし、包囲網を抜けた。

 芝居がかった大見得を切り、隙しかない高笑いに呆気にとられた周囲の黒翼部隊(アラ・アートラ)は引き金を引く指が遅れる。

 

 爆発を背に駆ける仙崎。目指すは今や目前に迫った物資搬入ゲート。

 

 

 遅れて飛んでくる誘導銃弾の爆発を背に受け、一心に駆け出す仙崎。

 目的地であった物資搬入ゲートとの距離が急速に縮まり、黒翼と遅れてやってきた特戦群隊員の顔に焦りが浮かぶ。

 が、事はそう上手く運ばない。

 なにせ、仙崎には閉じたゲートを突破する手立てはない。にもかかわらずこうしてゲートを突破するように振舞うのは、他の勢力に頼る為だ。

 

 その仙崎の狙い通り、窪地の外側から入り口を勢力が続々と登場する。

 

「手こずった。乗り遅れたらしいけど、まだチャンスはある。チャーリ、デルタ両隊は突入してゲートを開錠してくれ。ブレイブは窪地外側から援護射撃」

 

 曙光會ゲリラ戦力を率いる保坂誠也が窪地を華麗に駆け下りつつ指示を出す。

 小銃部隊とアマツバメ部隊が保坂の後を追い突入し、ニクス三機が彼らを射撃支援。窪地はリボルバーカノン砲撃による土煙で視界が悪くなる。

 

「どうやら我々が最後のようだな。主戦場はここか。それで、ゲート解放と敵の殲滅。どちらを優先する?」

 

「ど、どちらも優先! と言いたいところだが、この乱戦のゲート解放は危険だ! 先に敵戦力を殲滅しろ!! まったくこの状況を作られるとは、口ほどにも無いな死神!! さっさと命令を実行しろ!!」

 

 相変わらず試すような余裕のある物言いの死神に、ロイグ大佐は焦りと苛つきを表しながら命令を飛ばす。

 任務である以上、死神部隊は手を抜いている訳ではない。どの勢力も死神部隊と実力が拮抗するほどの手練れである事も間違いとは言えないだろう。

 だが、死神の態度にどこかロイグのわがままに付き合っているような雰囲気が出ているのは事実だ。

 それはロイグも理解しているが、その上で死神を上手く使って目的を達成しなければならないという思惑がある。

 そういった二人の関係性から推察できる事は、

 

「ここへの襲撃、戦略火器保管庫の接収は、EDF最高司令部の正式な決定ではない……? よもや対内情報課課長の独断暴走という訳でもないだろうが、EDFの総意という訳ではないな。ならば、付け入る隙はあるか……!」

 

 恐らく、これは緊急的に実行された行動であり、日本で自由に動かせる情報部直下の特殊部隊がグリムリーパーだったというだけでだろう。

 それは他の勢力も同様であり、秘匿性と即応性を重視して集められた最低限の戦力だ。それが一堂に会した結果、こうして奇妙な拮抗状態が演出された。

 

「拮抗状態……。いや、あるいは」

 

 この状況、意図的に再現されたとは考えられないだろうか。

 根拠はない。だが偶然にしては出来過ぎていると少し違和感を覚える状況だ。

 そこについて深く考えるには時間も情報も足りない。問題は、仮にそうだとして誰が何のためにこの状況を作ったのかという事だ。

 得体が知れず、EDFに深く根を張り、一連の事件の起点となりうる人物に心当たりはある。

 

「だが、一体何のために――ちっ」

 

 思考を中断したのは、僅かに振り返った先に目に入った構えられた拳銃。

 引き鉄の指を銃口から弾道を予測し、予備動作無しのEDF式ローリングを行って回避する。

 回転中、乱暴に口で抜いたピンを吐き捨て、手榴弾HG-15Aを放り投げる。

 

 EDF製らしい派手な爆発が周囲を視界不良にする。

 仙崎はその爆風を背で受けるように吹き飛び、受け身を取って物資搬入ゲートへ向かうが、

 

「ちっ、しつこいぞ! ドレフニコスとか言ったか! 貴様、何故私を狙う!? 貴様は保管庫の中身に用があるはずだ! さっさとゲートを空けて中に入ったらどうだ!?」

 

 異端技術保全局長官、アレフリー・ドレフニコスが爆炎と土煙の中からナイフを飛ばす。

 自身のナイフで打ち払う仙崎だが、ナイフに気を取られた一瞬のうちに距離を詰められ、拳銃による射撃が顔面に迫る。

 アーマーの入っている左腕で弾いたが、骨まで響く衝撃に顔が歪む。

 

「ッハッハァ! その手には乗りませんよォ? アナタ、我々の中の誰かがゲートを開けるのを待って居ますねェ? ンンいけませんねェェ。他力本願、ここに極まれり。浅ましく漁夫の利を狙うテロリスト共と同じ思考だ。ついでに(ワタクシ)からも質問ですが、曙光會とアナタ、本当にお仲間ではないのですか?」

 

 距離を詰め、眉間に突き刺さる勢いでドレフニコスが銃を向ける。

 予想していた仙崎はナイフで拳銃本体を弾き飛ばすが、それもまた見え見えのブラフであり、手品のように同じ手に電磁ナイフが現れ、喉元を切り裂く軌道で仙崎を狙う。

 アーマースーツも容易く斬り刻むと思われるそれだが、仙崎は同じナイフでそれを抑え込む。

 二人の間に、電磁結合と微細振動を繰り返す刃の火花が散る。

 

「何度も言わせるな! 私は正真正銘、貴様らとは一切関係のないEDFレンジャーだ! だが、だからと言ってこの不毛な状況を見過ごすことは出来ん! 貴様らの敵は何だ!? 人類の敵は、フォーリナーではないのか!? 同胞に銃を向け、児戯にも等しい内輪揉めに興じる贅沢が、この人類存亡の危機にあるとでも思っているのか!?」

 

 力任せに打ち払う。

 火花の応酬は終わり、大きく飛び退いた二者。仙崎はAS-20Dを、ドレフニコスは懐からサブマシンガンを取り出し、乱暴に斉射。

 

「――アナタに! 全地球防衛戦略を真っ先に乱したアナタ方極東11軍に! それを言う資格はアリませんねェ!!」

 

 サブマシンガンから放たれた銃弾は蒼い軌跡を帯び、着弾時に弾けて地面を大きく抉る。

 

 ――異端研究用特殊短機関銃”ブルーローズ”。

 EDF異端技術解析保全局が技術解析用に造り上げた試製短機関銃であり、一切世に出回る事は無い特殊中の特殊兵器。

 極小型でありながら内部構造には大きくフォーリナー由来の超技術が使われており、既存の銃とは全く仕組みが異なる。

 放たれた銃弾は極低温で飛翔し、対象への衝突による温度上昇に応じてエネルギーを発し、周囲を巻き込んで消失――原理は異なるが、傍目には対消滅のように映る。

 

 銃弾一発数千ドルはする弾丸の嵐に、仙崎は木々や岩の障害物を利用して防御を試みたが、その盾は一瞬で粉々に砕けて度肝を抜いた。

 しかし同時に弾が尽き、ドレフニコスのリロードと同時に仙崎は距離を詰める。

 仙崎に向けて雑に弾幕をばら撒きつつ、ドレフニコスは悲嘆や落胆の表情で語る。

 

「日本政府が陥落を正式に認めれば、保管庫の所有権はEDFに返還される予定だった。非常に愚かな事です。この終わった戦線に未練がましく残る極東11軍も、それを見て身の丈に合わない技術を手放す決断も出来損なった日本国臨時政府も。到底、人の足並みなど揃える事すら出来ない。人は、悉く愚かなのですよ」

 

「――グッ、悔しいが正論だ……! だがな、それはここで一級の戦力を揃えて足の引っ張り合いをする言い訳にはならんぞ! 例えそのきっかけが我々極東11軍の独断行動であろうと、貴様が持つ、その銃の様な強力な武器や戦力を、人類という種の同胞に向け愚かな殺し合いをしているという事実は変わらん! 脅威がすぐそこまで迫っているというのに、何故協力出来んというのだッ!!」

 

 どちらの言葉にも理があり、主張と銃撃は激しくぶつかり合う。

 

「フフ。やはり、アナタの言葉は軽い。理想論。楽観主義。他力本願で現実がまるで見えていない。余りの戯言に耳が腐り落ちそうデス──」

 

 静かに無表情で口走るドレフニコスは、戦闘中にもかかわらず一瞬俯き、両手を白衣の中に仕舞うと、

 

「――気に入らないッ! 気に入らない気に入らない気に入らナイだが気に入ったァッ!! その破綻した理想論で何が出来るか、是非ゼヒ(ワタクシ)にお見せ下さいィィ! センザキマコトォォ!!」

 

 好戦的で獰猛な狂気に顔を染め咆哮する。

 何かが来ると身構えていた仙崎に襲い掛かったのは、赤い奔流だ。

 

 言うまでも無く射線を見極め回避を試みた仙崎だが、光に近い初速で放たれたそれは触れたもの全てを爆発に包み込んだ。

 ドレフニコスの直線状に破壊的なエネルギーの爆発が起こり、それは仙崎を巻き込んで保管庫の防護ハッチにも直撃。

 

 直線状を灰塵にするほどの威力が一瞬で放たれ、仙崎を含む何名かが巻き込まれた。

 だが、肝心の防護ハッチは破られておらず、仙崎もまた命は落とさなかった。

 

「チッ!! 何なのだそのデタラメな兵器は!! アーマーの殆どが吹き飛んだぞ!!」

 

「まだ生きていましたか……しぶといお方ですねェ。まァ、(ワタクシ)の方はこれにて万策尽きましたので、後は我が黒翼(アラ・アートラ)の皆様にお譲りしマスよ」

 

 アーマーが脱落し、スーツが焼け焦げ、多数の出血を伴いつつ歯を食いしばって迎撃態勢を整える仙崎だが、彼に向かうのは複数のジェットリフターで構成される黒翼部隊。

 

「ギャハハァ!! 局長ォ! お気に入りらしいがオレ様がヤっちまっても構わねェのかァ!? ――あっそォかい、なら今からここはテメェの肉塊バーベキュー会場だァーーーー!! 無様に大自然の肥やしになりやがれセンザキマコトォォーーー!!」

 

「血の気が多すぎるだろう貴様はァ!! 言ってることが支離滅裂だしどこから突っ込んでいいのか分からん!! だがそう簡単にッ──!?」

 

 負傷と同時の状況急変に理解が追い付かない仙崎。追い付いた黒翼部隊の隙間なき空中包囲と、今度は容赦の無い徹底砲火でさしもの仙崎も追い詰められる。

 先の爆発で損壊したAS-20Dを放り投げ、ガバナーSを対空弾幕代わりに叩き込むが、手数が圧倒的に足りない。

 

 マイクロミサイルとチェーンガンで付近が爆薬と硝煙の嵐と化し、重なる負傷で意識が朦朧とする。

 それはγ型やドローンの大群に囲まれた時の感覚と似ており、包囲を脱するための味方の存在もない。

 

『どりゃあぁぁぁーーー!! 邪魔なんだよてめぇらッ!!』

 

 若く生意気そうな声が戦場に割って入る。

 派手な赤色を纏った高機動コンバットフレーム:レッドシャドウが黒翼部隊の中心に飛び込み、対空砲弾が装填されたリボルバーカノンを乱射する。

 

 とても狙いがつけられていない、乱暴で適当な射撃だが、近接信管が良い仕事をし、空中で炸裂。重装備のジェットリフターにとって致命傷にはならないものの、怯ませるには十分だ。

 

黒翼部隊(アラ・アートラ)だぁ!? カッコイイ名前しやがって、やってることは手負いの獣によってたかってタコ殴りか!? 名前負けも良いトコだな! ザコがよ!! 見ててイライラすんだよお前ら!! コイツの方が、よっぽど燃える事言ってんじゃねぇか!! なぁ、これでいいんだろプレアデス!!』

 

『そうそうそんな感じで頼むよブレイブ6。彼は重要な要素の一つだ。ここに来たからには、役立ってもらわないとね。――そんな感じで仙崎君、安藤君と協力して、良い感じに戦場を掻き回してくれ。あ、治癒剤はニクスの多目的ラックに入ってるのを使っていいから~』

 

 やたらテンションの高い若者と、途中から個人通信を送ってくる保坂誠也。

 突然の援護に頭が混乱するが、ここに仙崎を読んだのが保坂の狙いの一つなら矛盾はない。

 そして気になるのが、

 

「き、貴様もしや安藤和真とやらか? 厚木市の戦いのとき、保坂誠也が連れて来た民間人パイロットの!」

 

『あ~、あんときどっかで会った系? わりいけどオレあんたの事知らねぇ! でもま、多分あってるぜ! 訂正すると、民間人凄腕超絶天才スーパーパイロットな!! で、なんでアンタはここにいる全員から狙われてんだ? なんか、あれか? 凄腕エージェントか何かなのかお前』

 

「買い被りが過ぎる!! ただの一般レンジャーだ!! なんでか知らんが癪に障ったらしい! そして貴様は何故曙光會に身を墜としている!? 反EDF組織に与しているのなら、理由は何だ!?」

 

『うっせぇな今そんな事離してる場合じゃねぇだろ! こっちにだって事情があんだよ事情が! とにかく、こんな包囲さっさと脱出して――』

 

 対空砲弾を放っていたリボルバーカノンが、突如一門爆ぜた。

 

『うわぁ!? なんだ、暴発か!?』

 

「違う! よく見ろッ!!」

 

「――余所見とは、嘗められたものだな」

 

 低い声の殺意がレッドシャドウを捉える。

 鋭い機動で死角に回り込み、一撃を打ち込む。

 ブラストホール・スピアはレッドシャドウの右脚関節を破壊し、反動で返す更に強力な一撃が立て続けに腰部に直撃。

 

『ってッめぇ、死神かぁぁーーー!!』

 

「見直したかと少しは思ったが、やはり視野の狭さは治っていないな。投降しろ。ここは貴様の死に場所ではない」

 

『ざけんなッ!! 桂里奈を一人に出来る訳ねぇぇだろッ!! それにまだ、動けんだよこっちはぁぁーー!!』

 

 損傷部を無理やり動かして散弾砲を叩き込む。

 改造OSによる出力の細かい制限により、最低限の動きに絞って機体を動かす。 

 吠える安藤は再び死神との一騎打ちを行う。

 

 一方、護衛が居なくなった仙崎には、

 

「きゃはははっ、きゃはっ!! こんなに避けるのが上手いのに、どうしてそんなにボロボロなの~? ウケる~。でもあーし、ボロボロのズタボロで擦り切れちゃいそうな男もタイプだから安心して! うふふ。うふふへへへへへははは。こっちに来てぇ……? もっとあーしの好みに仕立ててあげるからさぁ!!」

 

「くそっ、変な奴ばっかりで帰りたくなってきた……!」

 

 アマツバメを無作為に振り回し、周囲を切り刻みながらじりじりと仙崎ににじり寄る。

 遺伝子強化研究体――朱燐華が恍惚とした表情で歯をむき出しにし、口が裂けるかと思うくらいの笑みで狂喜を露にする。

 

 不幸な青年は何処までも、厄介者に目を付けられる。




ブルーローズはEDF:IRからの出展です。
本来は炎上効果のある二挺サブマシンガンですが名前的に青→冷たいという印象でそれっぽく改変しました。
名前は出てないですがドレフニコスが撃った赤い奔流もEDF:IRのエキゾチックレイ・ルドラをイメージして出しました。まあ試作品ってところです。

EDFは通常の軍隊の数世代先を行ってますが、先進技術研の試作兵器がその先、異端技術解析保全局が更にその先を行っている、という滅茶苦茶なインフレゲーになっています。
まあ、保全局まで行くと天文学的コストや困難な再現性、量産不可技術、限定的性能なんかでもう一般兵器として使うのは不可能なものばかりなのでホント研究目的やその技術にどんな可能性があるのか、というのを調べるために作った感が強いです。
とは言え強いので、現時点で割と強すぎる武器がちらほら出ちゃってますね。
その辺り、EDF:IRの濃厚なフレーバーテキストと歴代本家と一風変わった感の武器が絶妙にマッチしますのでお気に入りです。

とは言え、そんな事よりフォーリナーとの戦い早よって思ってる人が多そうだなぁ~と思う今日この頃です。
頑張って早いとこソラス倒します……もうしばらくかかりそうですが、頑張ります……!
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