──EDF戦略火器保管庫 大型地下構区火器保管エリア──
分厚い図面を捲って書き込みしながら、結城博士の荒げた声が地下構区内に響く。
「違う! そこのケーブルはN103からC257だ! いや分かった待て待て、ほら図面だ! 図面は読めるはずだろ? ここが、こうで、そうだ! よし分かったら急ぐんだ! 時間がないぞ! ケーブルの移動にはウインチを使う! ウインチだ! ほらあれ、そう、あれだ。使い方は説明した筈だ。さあ行って!」
現段階の作業の中で、最も多忙を極めたのは結城博士だろう。
魂無き兵士計画の産物であるクローン兵士──”ライカ”。そう仕様書からの名前でそう呼んでいる彼女ら(性別は無いが、名前から判断し皆そう呼んでいる)都合15人の指揮を一手に担っていつつ、自らも轟砲と、接続ケーブルの移動元である”
そしてもう一方、残り16人はというと、オストヴァルト主任の声が煩いくらいの指示を出す。
「よしいいぞ! 次はブロックB-1-58の整備だ! お前はどうだ! なに? 鋼材に亀裂が? よし分かった修復作業急げ! 少しの亀裂や不具合も逃すのではないぞ!! そうだ! うん? そこはグリスを差し替えておけ! レーザー照射装置は? 問題ない? よし! 動作テストをしている暇はない! ぶっつけ本番だ! ああ待て精密な部分には触るな! 専門家を呼びたいが時間がない、下手な調整にかかる時間は避けたい! 砲腔内の清掃は終わったか!? 塵一つ残すんじゃないぞ! まったく! 最低限の状態は保たれているとはいえものの数十分でメンテナンスを終わらせる必要があるとは!!」
残りのクローン達にはオストヴァルトが陣頭指揮を執り、”
総勢31人のクローン体”ライカ”は、呑み込みが早く器用かつ力もあり、案外メンテナンス要員としては最適ではあったが、いかんせん教える側の時間が無さ過ぎた。
その横で、ドレフニコスとアシュレイが、
「使えるコンデンサはこれで全部か!? よし、分解完了した! すぐ引き上げてくれ!」
「ンンーーー、了解です。ウインチ、引き揚げますよ」
”
「しかし、規格がこうもピッタリ嵌るのは、この状況も想定しての事なのか……? 本来、轟砲に内蔵されていた小型のエナジーコアが稼働していれば、こうも苦労する事は無かったんだが……」
「”彼女ら”の永久凍結が決定したとき、轟砲内部のエナジーコアは綺麗に取り外されたようですねェ。それがドコに流れたのか、ある程度推測は出来ますが……まァ良いでしょう。それに、エナジーコアが稼働状態にあったとしても、発射可能状態になるにはおよそ丸一日を要す可能性があります。それを見越して!! 先生は!! アア、この触れる事も許されない程危険な”彼女ら”の分解再構築までも計算に入れて全てを設計したのです!! そうつまりは、この状況こそ”我が先生”が想定していた状況に他ならないのですッ!
「うわああ急に振るな!! 出来れば一人で勝手に盛り上がっていてくれ!! 私は魔女の事なんか知らん!!」
狂人ぶりを披露するドレフニコスを前に慌てるアシュレイ。
そんな二人の前に、汗だくになった小原敏夫が戻って来た。
「はぁ、ふぅ。指示通り、超特急でエーテル転換炉に火を入れて来たぞ! まさか轟砲の動力炉ごと抜き取られているとはな! 凍結処理の事をすっかり忘れていた! む? 安心しろちゃんと送電ケーブル接続も確認してきた! 十数分後には大電力がこちらのコンデンサに流れ込んでくる! 接続を早くするんだ! ああそれと、この汗は運動で出たものではない。フィールドワークには慣れているからな。だが地下のエナジーコアはかなりの高温だ。このままでは後十数分で炉心融解を起こすだろう。電力供給と同じ時間だがまだエーテル転換炉の方が早く終わる見込みだ。轟砲への電力供給さえ終わればすぐにでも大型エナジーコアは停止出来る。茨城博士、そちらはどうだ?」
茨城尚美は、轟砲脇に設置された簡易的な轟砲内粒子制御レーザー操作室に陣取っていた。
「まったく! ニコラヴィエナってのは本当に天才かい!? 馬鹿なんじゃないか!? まさかこの粒子制御の精密なレーザー操作プログラムが未構築とはね!! ……おっと失礼。いや、かつての師とは言え世界的犯罪を犯した重罪人を口汚く罵っても何の問題もないとは思ったがね。ふーっ」
この禁忌兵器は、砲弾に見せかけた”耐圧密閉砲弾殻”とでも呼ぶべきものの内部にフォーリニウム原子やエーテル粒子を密閉している構造だ。
更にその”耐圧密閉砲弾殻”の内壁に超精密の素粒子レーザー照射装置があり、それの精密操作によって素粒子を一定数臨界可能な状態に維持するシステムなのだそうだ。
『私もまさかこんな重要なプログラムが未完で終わっているとは驚きました。でも、完成です! そちらに今転送しますね! 転送の課程でバグが混ざるといけないので、送った後もう一度精査と動作確認をお願いします!』
ルアルディ中尉が遠隔でプログラムの構築、再送信を行い、さしもの茨城博士も度肝を抜く。
「もう出来上がったのかい!? いやはや全く、計算やプログラムにかけてはキミも間違いなく人類の誇る天才の一人さね」
『いえいえそんなぁ。それに、実は基礎はかなり完成度の高い状態で組まれていたので、私はその上にのっかっただけですよ。案外、基礎だけ組み立てて後は現場でちょうど良い感じに組み直そうと思ってただけなのかも』
ルアルディ中尉の発言にも嘘はない。まるで構築完了まで丁寧に誘導されたような気分だった。
もっとも、ルアルディ程の技量が無ければその事にすら気付かず構築にはひと月ほどを要すだろうが。
「まあ本人の意思はどうあれ、EDFはコレを使わせる気は無かったみたいだからねぇ。しかし、キミが居なかったらここまでやって詰んでいたところだった。恩に着るよ」
『えへへ。ありがとうございます!』
「データが来た。さて、試運転と行こうじゃないか。一応、粒子制御の経験は件の彼女と共に居た時に経験している。今回も上手く操って見せるさ。ふーっ。さて、リーヴス少佐はさっきまとめた発射までの具体的プロセスと全体作戦を榊中将と練っておいてくれ。何か変更があった際にはこちらからまた通信を送るよ」
『了解しました。ご武運を』
それだけ言い残し、通信先のリーヴス少佐は、更に通信を介し作戦指令本部とソラス撃破までの詳細を煮詰めにいった。
──EDF戦略火器保管庫 地表部分 資材搬入ゲート付近──
「──軍曹か。厚木市での戦い以来になるな。京都では、前線で随分派手にやったらしいな?」
死神──アヴィス大尉が、援軍にやって来た荒瀬軍曹に反応し、前の戦場を思い出す。
実際、京都では死神部隊も活躍していたのだが、同じ戦場で遭遇する事は終ぞなかった。
「お前たちこそ、名古屋で戦力を半減させる程戦ったと聞いたぞ? 健在だったとはな。まあいい。で、どういう状況だ」
大尉と軍曹。階級差を感じさせない長年の友の様なやり取りだが、こう見えて、彼らはそう多くの言葉を交わしていない。
だが、少ない邂逅での互いのスタンスのようなものに、一定の共感を得ていたのは確かだ。
それは言葉に出来るような確たるものではないが、自然とそうなっていた。
「喜べ。愉快な状況だ。見ての通り周囲をレイドシップに囲まれてすり潰されている。それだけならどうとでもなるが、背後の施設を守らなければならなくてな。それに、場を仕切っていた”
端的に言って、最悪に最悪を重ねた状況だ。
軍曹は知る由もないが、対ソラスや轟砲の解明と運用までの道筋がかなり明るくなってきているが故に、この地上戦の悪化が救われないものに感じる。
むろん、死神は全力を尽くしている。
だが特殊部隊とは言え、アヴィス大尉も当然のように、グリムリーパーという部隊で戦う為に研鑽を重ねて来た。
部隊そのものの戦略的配置は上の仕事であるし、その場の統合的な部隊運用方法など、秘匿的組織であったグリムリーパーには不要なものだ。
そしてそれは、どの部隊でも言える事だ。
統合的な作戦指揮能力は、それ相応の立場と役割の人間が、必要に応じて獲得するものであり、現場の部隊長が兵科間を越えた指揮の能力も権限も与えられていない。
──が、その常識を超える能力があれば別であり、その能力はこれからの対フォーリナー戦争では重要なものである。
「──聞いてくれ! 状況を完全に理解したとは言えない。だから飽くまで提案と言う形で受け取ってくれ。この状況を変えるには、戦線奥から怪物たちを無限に排出するレイドシップを叩き落すしか方法はない! その力を貸してくれ! 俺たちは四人で行動する。その他に、フェンサー二人、そこのウイングダイバーのような飛行兵二人、それとエアレイダーによる航空支援が欲しい! その戦力があれば、周囲を覆うレイドシップ6隻、叩き落す事は可能だ!」
その声は、短距離通信を介し地上戦を行っていた全兵士に伝達された。
それを聞いた皆は、ひどい既視感を覚える。
この直前にも、対立していた各組織を鶴の一声で纏めて見せたEDFレンジャーが居たはずだ。
『──ったくよォ! EDFレンジャーってのはどいつもコイツも偉ッそうなヤツばっかりだな!! 階級差ってモンを一度しっかり教育した方がいいぜェ!! ──しくじれねェ任務だ。オレとダルシットで行く! レヴェント、部隊指揮任すぜ!』
「レイドシップを人類で初めて叩き落した男の言う事だ。異論はない。こちらも俺とサイードで行こう。後はエアレイダーだが?」
『やれやれ。少佐を顎で使う軍曹が居るとはね。ま、榊中将肝入りの君なら従ってあげよう。何より、この状況で攻勢に出るなんて……悪くない作戦だよ。勇猛果敢と言う話は嘘じゃないらしい』
スムーズな全員の賛成を受け取り、荒瀬軍曹は直ちに動きだす。
「時間がないという話だったな。やるなら速攻だ! 搬入ゲート北側、最も距離が近いレイドシップを
従来のNATOフォネティックコードで言う所の
「そこから時計回り、連続で叩き落していくぞ! ──お前達、用意はいいな!?」
周囲の部隊へ指示を飛ばすと同時に、部下三人にも声をかけた。
「我々は、どこまでもついて行くだけです! 軍曹が行くところなら!」
「あの死神隊長との共闘かよ!? 変なことして逆に命を狙われねぇように気を付けねぇとな!!」
「とにかく、一人のレンジャーとして恥じないように全力を尽くします! EDF!!」
「そうだ! 己に恥じない戦いを完遂しろ!! 行くぞ!! うおおおぉぉぉーーーーー!!」
「「うおおおおぉぉぉぉぉーーーーー!! EDF!! EDF!!」」
航空支援もそこそこの中、四人のレンジャーは真っ先に過酷なレイドシップの真下へと、雄叫びを上げて突撃していった。
──京都府綾部市市街地──
京都府綾部市は、人口約三万人ほどの小都市だ。
2022年7月以降にフォーリナーのレイドアンカー落下により被害を受けており、防衛が間に合わない事から早々に退去命令が発令され、この地の住民は故郷を後にした。
日本はその防衛戦力を大都市や軍事基地に集中させる、いわば”逆疎開”とも言える戦略で住民と防衛戦力を集中させ、少ない戦力で多くを守っていた。
故に、完全に占領された関東方面以外にも、防衛の手が回らず放棄された都市はいくつもあり、綾部市はそのうちの一つに過ぎない。
そんな綾部市の無人の街並に、巨躯の獣が侵入する。
その歩み一つで大地を割り、アスファルトを砕き、建造物を踏みつぶす。
背の高い建造物の少ない綾部市において、40mという巨躯はそれだけで破壊の嵐を巻き起こす。
その巨獣の目的は綾部市の破壊ではない。
が、”それ”は目の前に広がる無人の都市を見て、おもむろに歩みを止めた。
口内にドス黒いガスを溜め、それを一気に放出。
大気と混ざり合ったガスは引火し、都市を呑み込む大火として放射される。
住宅街が吹き飛び、公園や林が焼き払われる。
その巨体が何を思うのか定かではないが、少なくとも”それ”は、都市や人工物を見ると確実に焼き払う。
大都市も、頑強な軍事施設も、岩盤に守られた地下施設も、例外は無かった。
奴のせいで、幾つもの街と人が灰になって来た。
フォーリナーの送る生物兵器であり、地球上のどんな生命体よりも強く、大きい。
奴に人類の常識は通用せず、常識の埒外からの討伐方法を考案するより他はない。
故に、
「ようやく追いついたぞ、巨獣ソラス!! 茨城博士!! 用意は!?」
『少し予定外のトラブル続きだが……まあ、問題はないさね。今、そっちの状況をモニターしている。だが……おっと、言っている間に早速問題が』
「なに!? 自分で考案して丸投げした作戦だが我ながら不安しかないな! ソラスをこの場にとどめておくにも限界が……ぬおおぉぉぉ!? クッ、こちらに狙いを絞って来たな!!」
ソラスの火炎放射の余波を、シールドで受け流す仙崎。
先の吹き飛ばしの失敗を繰り返さぬように、フィールドによる防御を最低限にし、攻撃を受け流す機動を取る。
ソラスは逃げ回る獲物を仕留めるため、仙崎に突進を行った。
「くっ、スラスターの残量がそろそろ──ぬお、突進か!? 避け切れ──」
40mもの巨躯は、建造物を薙ぎ倒すように破壊し、建材をも撒き散らしながら突撃。
その歩幅と合わせて感覚よりも凄まじい速度で地面を踏み抜き、衝撃で仙崎を吹き飛ばす。
シールドとスラスターによる受け身を試みるが、衝撃を殺しきれず派手に建物に衝突。
「──ぐはぁッ!! この、程度……! はッ!」
フェンサーという鋼鉄の鎧の直撃でオフィスの支柱は破壊され、そのまま仙崎はオフィスの崩壊に巻き込まれる。
が、瞬時に状況を理解しスラスターとパワードスケルトンの膂力で脱出。
スケルトンの損傷を最低限に収めた。
「ぐ、とはいえ蓄積ダメージが馬鹿にならんな……! で!? 問題とはなんだ!?」
火炎放射が迫る。首を低くしているのでまた横方向に薙ぎ払うが如くの火炎が迫るだろう。
タイミングを見計らい、放物線を描くような軌道で火炎を飛び越える事を試みる。
『ああ、単刀直入に言うと、これ以上ソラスに火炎放射をさせないでくれ。どうやらその火災には、微量のフォーリニウム線が含まれているらしくてねぇ。多分この感じだと……非電離放射線に相当する筈だ。分子を励起状態にするくらいしか出来ないから、イオン化の心配はないが、これを撒き散らされるとこちらの計算が狂う恐れがある。すぐに消火してくれ』
「無茶を、言うな!!」
戦闘中にとんでもない事を言われ、さすがの仙崎も理性が飛びかける。
禁忌兵器の積極使用を提案した仙崎だったが、この街の消火が必要ならもう詰んだかも知れない。
「というか、フォーリニウム線だと!? これから使う兵器は、それが原因で一度撃ったら粉々に崩壊するという話ではなかったか!? フェンサーの鎧ごときで私の体は大丈夫なのか!?」
既に何度か火炎放射をパワードスケルトンに受け、少なくないダメージを負っている。
ソラスの体表にある残留放射性物質から身を護る為の防護機構がこの死神仕様のパワードスケルトンには備えられているが、フォーリニウム由来の放射能に対策はされているのだろうか?
『ああ、このタイプの放射線は電離などの光化学反応やラジカル反応を促進させ、体組織内では非突然変異効果をもたらし──』
「ようするに!?」
『──火傷とかするだけさね。天然の電子レンジみたいなもんと思ってくれればいい』
「なるほど完全に理解した! で!? 炎を消す以外に方法は無いのか!?」
さしもの仙崎も、ソラスとの戦闘による疲弊と状況の逼迫さ、責任の重さと茨城博士のあんまりと言えばあんまりな平常運転度合に精神の平衡を保てず声を荒げる。
『そんなものは──いや、ある。あるね。今思い付いただけだが……うん。いけるだろう。むしろ、着弾点のフォーリニウム線バーストによる土地汚染被害はどうにかしなければならない問題だった。……これと”
彼女の脳内で、どのような高速演算が行われているのか。
常人では測りようもないスピードで理論を飛躍させ、新たな解決法を模索し始めた茨城博士。
一方仙崎は、
「専門的な事は任せるほかあるまい! それより、こちらは!!」
横薙ぎの火炎放射が迫る。
仙崎は炎から遠ざかり身を隠すように頑丈そうな駅を遮蔽物にする。
当然建造物などあっという間に炎上崩壊するが、それでもないよりはマシであり、多少なりとも火炎放射の勢いを殺すことが出来る。
特に、仙崎の回避能力を学習したソラスは、広い範囲を炎上させるべく首を横に振ってこのように横薙ぎの火炎放射を多用するようになった。
直線状に放たれる火炎と違い、層の厚みが薄い為このように距離を取って遮蔽物を利用すれば、辛うじて生き残れるくらいには立ち回る事が出来るようになっていた。
もっとも、
「これでは碌に攻撃する隙が無いな! 攻撃しても効かんのは分かっているが、隙のひとつも作れんと回避にも限度がある! まあそもそも隙が無いから火砲も使えんのだが!」
推進剤の消耗が激しい。
消耗を少しでも減らす為に攻撃を行いソラスに隙を生ませるべきだが、攻撃そのものに隙が必要なのが現状だ。詰んでいる。
攻撃兵装を全て投棄すれば多少は浮くだろうが、実はこれでも、この地には過去に飛来した多数のレイドアンカーが残っており、先ほどから少々巨大生物とも矛を交えていた。
思わぬ形で死神から受け取ったブラストホール・スピアが役に立ったが、砲弾切れで投棄したハンドキャノンの代わりに受け取った”もう一つの火砲”の使いどころは難しかった。
鈍重に見える巨獣ソラスだが、歩兵が一か所に留まって何かをするほどの隙も与えてくれない。
フェンサーだろうと、歩兵がたった一人であれを相手に立ち回る事そのものが理不尽に等しいのだから。
『──仙崎君。意見がまとまったよ。単刀直入に言うと、今から数分以内に、ソラスに隙を作り君自身もそこを離脱してほしい。具体的には、ソラスの発生させた炎を中心に半径500mほど距離を取って欲しい』
「無茶を──言っている自覚はあるな……! リミットは!?」
『出来ればあと、5分以内に。合図をくれれば、奴の撒いた炎によるフォーリニウム放射線を完全に無効化する手筈だ。ただしそこに君がいると全生命活動が停止する恐れがある』
「遠回しに死ぬと言っているな! ええい分かった! なんとかして見せる! だから合図を聞き逃さんようにな!!」
『無茶を言ってすまない。こちらは任せてくれ』
茨城博士の謝罪を聞き届け、仙崎は瞬時に戦術を組み立てた。
敢えて、ソラスの真正面に陣取る仙崎。
本来であれば、そこは一番危険な領域だ。
口を開けば火炎放射、脚を動かせば先ほどの様な強烈な突進。
何が起こるにせよ、起こってしまえば逃げ場はない。
しかし、
「もう推進剤の残量は心持たない。無くなれば、パワードスケルトンなど木偶にも等しい! であれば!!」
シールドを、ソラスによって破壊された地面に突き立て、それを支えに”巨大な火砲”を構える。
狙うは、一点。
奴が火炎放射の為に口を開ける、その瞬間だ。
その瞬間に、砲弾を叩き込み、怯んだ隙に全速離脱を行う。
怯まない場合は──
「──はッ!!」
無意識の掛け声と同時に、引き鉄が引かれた。
仙崎が構えた火砲は、30mmガリア重キャノン砲だった。
向こうを出た時には装備していない武装であったが、展開能力に余裕が出た保坂とノーブルが、気を利かせて投下した補給コンテナの中に入っていたのだ。
本来そこで推進剤と弾薬も補給する手筈だったが、ソラスの妨害により、回収できたのはこの武装たった一つだ。
おかげで重量が嵩み、推進剤の消耗が更に悪化するなどあまりいい事が無く捨てようかと本気で考えていたが、こんな時の為にわざわざとっておいたのだ。
通常兵器で、ソラスの撃破は不可能に近いという結論は既に出た。
気を引く程度にしかならない。
だが、口内など弱点箇所へのピンポイント狙撃ならどうだ?
そういった狙いで放たれた、30mm徹甲砲弾は──口内への狙いを逸れ、首元に着弾した。
──当然と言えば当然の結果だ。慣れない上に精度がそう高くなく反動の制御に技量が居る武装の初使用で、初弾命中などあり得ない事だった。むしろ首元に当てた時点で相当なものである。
30mm砲弾は分厚い外皮に阻まれ粉々に粉砕し、ソラスは何も動じる事は無く、火炎放射を行う。
「ファーーーー!! まあそう上手くは行かぬよなぁ!! クソがぁーー!!」
仙崎らしからぬ奇声と罵声を上げ、仙崎は再びシールドを手に取り、最大出力。
同時に砲撃の対ショックから強引に抜け出し、推進剤を全て使い切る覚悟で全力噴射。
「次善の策であったが、もはやこうなれば!!」
成功するかどうかの保証はない、計算もない、運がない仙崎は出来るだけ取りたくは無かった手段。
──ソラスの火炎放射が放たれた。
今度は直線に、仙崎だけを中心に狙う殺意の高い火炎放射パターンだ。
仙崎はその炎の進行方向中心に捉えられないように上手く盾を逸らし、全力の右上方噴射跳躍を行う。
炎によっての反発を殺さず、スラスター噴射によって反発方向を変えたことにより、仙崎は炎を真正面に捉えた状態から右前方上空に大きく打ち出された。
更にスラスターを枯渇状態まで噴射し、仙崎はソラスから見ての右後方上空に投げ出されている。
ソラスの炎は、ソラスの侵攻方向を大きく燃やした状態だ。
「今だッ! やれ!!」
『──聞こえたよ。”
その時起こった出来事を、仙崎は目にしている余裕は無かったが、もし見ていたらそれはまるで魔法や魔術そのものだったと語った事だろう。
ソラスの起こした火災元から500mの範囲に、黒か紫、人類の感覚では形容しがたいような色の空間が発生。
煌めく何かの物質も突然発生し、途端に火災が消え、そこは大地を含め灰色の謎の物質の塊に代わり、次の瞬間には元の大地へ戻った。
この間、僅か数秒の出来事だ。
或いは仙崎が目にしていたとしても、瞬きの間の錯覚か何かのように見えただろう。
だが、事実としてソラスの起こした火災は、この周囲に限り跡形も無く消失していた。
「これは──!? ぐおぁ!!」
目に映った、炎が消えている状態に驚く仙崎だが、推進剤が切れた状態で自由落下して地面に墜落。
EDFのアーマーは対衝撃性能に優れたものである為肉体に実質的ダメージは無いが、推進剤が無い上にパワードスケルトンは完全に破損してしまった。
「捨て身だったとはいえ、まずい……! パワードスケルトンが無くなれば、残留放射性物質が──」
『やあ、無事に生命活動を継続中のようだね。生憎だが、その心配は君のお陰でしなくて良くなったよ。見るがいい』
指などさされた訳ではないが、必然的にソラスを見る仙崎。
そこには、火炎放射の体勢でありながら、口から火炎を吐き出せていないソラスがいた。
「あれは……?」
『物質の化学変化をまったく起こさず、妨害する物質を散布した。ソラスの火炎や活動に効くように調整したから、短時間ではあるが、奴は火炎を吐き出した傍から鎮火されているのさ。もっとも、こちらの攻撃に影響が残るようでは困る。効果は限定的だから、決して過信しないでくれたまえ。──さて、こちらの準備も最終段階だ』
僅かではあるが、茨城博士の声色が変わる。
『”
状況は、十分以上に整った。
この無茶で無謀な作戦の総決算が、今幕を開けようとしていた──
軍曹と死神絡ませたくてウッキウキで書いたんだけどあれコイツら最後に会ったのいつだっけって思い読み返したら結構前だった……。
しかもあんまり絡みなかった……でもゲームのノリで前話気軽に死神!とか呼ばせちゃったなぁ。
でもそこ変えたくなかったので、しょうがない、厚木市の戦いの軍曹と死神のやりとりを囲改変するか……。
あんときはねぇ、まだ軍曹×死神の解像度がまだそんな高く無くてね……反省反省。
そもそもEDF5 M40苛烈なる戦場でのグリムリーパーと軍曹隊の絡みとかもぜんぜんやる予定だったからそこで絡ませようと思ってたしね。
まあでもあそこ厳密に二人は会話してなくて、なんなら公式初絡みはEDF6になってからなんだよな。
でも妄想が先行き過ぎてEDF5でもう絶対お互い意識してると思ってるからね俺はそう言う事にしとくんだよ。
それはそうと記念すべき公式初絡み&激熱展開なEDF6の激突する平原後のタイタン救助作戦みたいなのもどっかでやりてぇなぁ……!