全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

125 / 132
第九十三話 巨獣ソラス討伐作戦(Ⅵ)

 

――京都府綾部市市街地――

 

「し、信じられん……。あれほどの攻撃を受けて、まだ動けるのか……!」

 

 仙崎は、見上げるほどの巨躯が黒煙を纏い、悠然と歩くソラスを目にし、に俄然としながら立ち尽くす。

 

「本部! 本部!! ……くそっ!! 轟砲……ネガ・ロンゴミニアドとか言ったか? あれのせいで電波が混乱しているのか……。あのれ、何もかも上手く行かんではないか!!」

 

 戦略的自壊型決戦用轟砲による攻撃が失敗した理由は不明だ。

 そもそもが実用に耐えられない兵器だ。何らかの不具合か計算違い、もしくは単純にソラスの耐久力が上回ったか、あるいは狙いを外していたのか。

 

 いや、思考を置くべきは既にそこに無い。

 今やるべきは……――

 

「とにかく、奴の脚を止める! いや、或いは……!」

 

 仙崎は、保坂が気を利かせて送り込んだ補給コンテナから拾った銃器を握る。

 それは、いかなる経緯で手に入れたのか、茨城博士の所属する先進技術開発部の試作兵器という触れ込みの三つの武器だ。

 

 一つは、携行火砲ゴリアスDC。

 ゴリアスの火力強化モデル・ゴリアスDDを更に強化した意欲作で、初期型ゴリアス弾頭の二倍の火力評価を持つ。

 S型に比べると三分の一となるが、小型弾頭を三発装填可能で、重量・取り回し等々こちらの方に軍配があがる。

 

 もう一つは、対物狙撃銃・試作型ライサンダー

 京都防衛戦でも活躍したライサンダー。その発射機構に改良を加えた次世代型への試作銃器だそうだ。

 なんでもEDFの狙撃銃開発部門はライサンダーでダロガの装甲を貫通する事を目標としているそうで、これはそのEDF開発部が次世代型への足掛かりとなるべく組み上げた試作型だそうだ。

 

 そして最後は、特殊擲弾スプレッド・グレネード。

 これに関しては仙崎も初めて触る全く新しい概念のグレネード弾だ。

 一応種別はグレネードに分類されるものの、グレネード本体の直径は僅か1cm。

 特殊袋に入ったそれを鷲掴みにして、対象に向かって投げる事により、より広範囲を攻撃できるのだとか。

 

 花火の一種である”かんしゃく玉”に着想を得て開発された冗談のような兵器である。その証拠に、スプレッド・グレネードと言う名は通称であり、正式名称は”かんしゃく玉1号”。

 1号……2号から先も開発する気でいるのだろうか、と仙崎は説明書を流し読みしたときに辟易としていた。

 一見ソラスの様な巨獣にはまったく向かない兵器であるように思えるが、”ある使い方”で一定の効果が期待できるらしい。本当か?

 

 などとまあ扱いやすそうなのから珍兵器まで色々掴まされた仙崎であるが、茨城博士曰く効果は保証するとは伺っているそうだ。

 

 正直、歩兵用の火器ではどんな大火力だろうとソラスには通用しない為、最初はむしろ実際に使わせて使用感をフィードバックする為の、体のいい実験台にされたかと勘繰ったものだが、

 

「いくら何でも、奴が無傷とは考え難い……。ならば、或いは──」

 

 仙崎はソラスの様子を子細に観察する。

 

 ソラスの全身は未だ黒煙に包まれている。

 始めは轟砲が発生させた爆発によるものかと考えたが、歩みを進めて尚この状態と言う事は、あの黒煙はソラスから発生していると見るべきだろう。

 

 そして仙崎は変化に気付く。

 ソラスは、轟砲が放たれた方面に一歩一歩歩みを進めつつ、立ち去った場所に何かを落としている。

 

「あれは、奴の外皮か……? 奴はまさか、歩きながら崩壊している……?」

 

 ソラスが一歩動くごとに、体から何かが零れ落ちている。

 今人類に出来る最大の一撃は、惜しくもソラスの息の根を瞬時に断つ事叶わなかったが、確実にダメージを与える事が出来た。そう見ていいのだろうか。

 

 そして、ソラスが崩壊の途上にある事が事実として、このペースでの体組織の崩壊では、恐らく戦略火器保管庫にも、まして大阪に辿り着くことなど無いだろう。

 

 ――と、素人考えで油断することなど出来る筈が無い。

 脱落しているのが外皮だとしても、回復しない保証がどこにある。

 ソラスがこうして活動している以上、それを止めるのが仙崎の役割だ。

 そして、

 

「轟砲の射撃による崩壊が進行中だというのなら――これはどうだ!!」

 

 仙崎は特に黒煙の激しい背後のうなじの辺りに狙いを定め、試作型ライサンダーの引き鉄を引く。

 ライサンダーに装填された12.8mmEDF特殊強装弾は、正確な精度でソラスの右腕付け根に着弾。

 狙撃銃弾は脆くなったソラスの外皮をついに砕き、肉に到達。濁った黄土色の体液が激しく噴き出し、ソラスが鳴き声を上げ体を捩る。

 

「き、効いている!? 効いているぞ!! これなら……!!」

 

 すぐにライサンダーを装填する。が、この銃は装填に少々コツがいる。

 そうしている間に、ソラスは南に向かっていた足を止め、仙崎へ振り返り、突進を繰り出してきた。

 

「ちっ! 引き付けたのは良いが、これでは……!!」

 

 ソラスの突撃方向から横に逃れようと仙崎は駆け出す。

 先程までのフェンサー装備と違い、歩兵の身でソラスの巨躯から逃れる事は難しい。

 ライサンダーの装填も走りながらでは厳しい、背中のゴリアスを使うか? もう間に合わない。

 

 考えている間に脚が迫る。

 住宅を粉砕し、舗装路を踏み砕く巨躯が迫る。当然ながら防御も困難だ。

 見た目以上の速度で、それは仙崎の目の前に来る。

 

「とぁっ!!」

 

 踏み潰される寸前、仙崎は思いきり、地面に飛び込むような勢いで飛び、前転に近い動きで距離を稼ぐ。

 いつしか陸戦ローリングやEDF式緊急回避、などと呼ばれるようになったEDF独自の体術である。

 瞬間、背後が巨大な脚に踏み抜かれ、爆発の様な衝撃と飛散した瓦礫が仙崎の背中に直撃。吹き飛び地面に投げられるも即座に受け身を取り、速度を殺し振り返る。

 

 同時にソラスも突進を止め仙崎を振り返っており、刹那に目が合った。

 ソラスは口内に黒煙を溜め火炎放射の発射態勢。対する仙崎は、銃器を構える余裕も防御する術もない。

 

 ただ、その右手に鷲掴みにした大量のかんしゃく玉を握っていた。

 

「ただの花火かどうか、貴様で試してやる!! 巨獣ソラス!!」

 

 EDFアーマースーツに内蔵された少量の人工筋肉をフル活用し、目の前のソラスの脚に大量のかんしゃく玉を全力投球。

 本来の運用思想は通称の”スプレッド”の名の通り広範囲にばら撒く用途で作られたものだが、それをあえて広がらないように至近距離で直撃させる。

 

 着弾の瞬間、当たりに響いたのはヘルメットの防音機能すら突き抜けるほどの耳を劈く破裂音だ。

 対象にほぼ同時に高速で密集して着弾したかんしゃく玉1号は、同時起爆によってその威力を乗算的に跳ね上げ、進行方向に指向性を持ちソラスの外皮と肉を抉る破壊的な爆発をもたらした。

 

 前に出していたソラスの右脚の一部が弾け、思わずたたらを踏んで火炎放射を中止して悲鳴を上げるソラス。

 

「効いている!? なんという発明だ! これなら!!」

 

 畳みかけるならば今しかない。

 仙崎は更に大量のかんしゃく玉を特殊袋から掴み出し、

 

「ふんぬぁ!!」

 

 思い切り投げた。しかし、ソラスが仰け反りたたらを踏んだことに寄り若干距離が離れ、かんしゃく玉は拡散してソラスに命中。

 その威力は、先ほどと比較にならない程まばらで本当におもちゃの花火だった。

 

「なんと!! ええいデカすぎて距離感が狂った!! ぐおッ――!!」

 

 花火に対しての報復は、ソラスによる踏み抜きだ。

 僅かの差の距離で直接プレスされる悲劇は裂けたが先ほどと同じく踏み抜きの余波で仙崎は吹き飛ぶ。

 特に真正面からのそれは仙崎に十分なダメージを与える。

 しかし仙崎も警戒だけは続けており最小限の被害で受け身を取って転倒は避ける。

 

「近づかなければ威力はだせんが、接近はリスクが高い! 護身用と割り切るべきだな! やはり本命は――君だ、ライサンダー!」

 

 装填し直したライサンダーをソラスに射撃。だが運が悪かったのかまだ健在だった外皮に弾き返される。

 

「ちっ! 全身弱点と言う訳ではないな!」

 

 ソラスは仙崎を見据えたまま、二・三歩下がる。そこで火炎放射の構え。

 ライサンダーを撃ったばかりの仙崎は素早くゴリアスDCに持ち替え、対戦車ロケット弾を発射。

 

「どうだ!?」

 

 真正面に命中。激しい爆炎がソラスの腹を包むが、同時に火炎放射が放たれた。

 街一帯を破壊するほどの火炎放射だ。直撃を受ければ命は無いだろう。

 

「おのれ……!! 貴様如きに……!!」

 

 最後に恨み言を残して、仙崎は炎に飲まれた。

 

「ぐああああ!! あ?」

 

 灼熱の炎が仙崎を包む。が、アーマースーツは耐えている。

 条件反射で顔を腕で守っているが、全身が即座に炭化するほどの火力は無い。

 やがて、炎の世界は終わりを告げた。

 堪らず、片膝を付くが、意識はある。呼吸も出来る。

 

「体中が焼けるようだが……、まだ、動ける。ふっ、やはり、先の轟砲の一撃は随分と堪えたようだな!! この程度の火炎しか吐けぬとは、消耗具合が察して余りあるぞ!!」

 

 人語を解さない異星の獣に挑発を煽る仙崎。

 とはいえ、仙崎とて無傷と言う訳ではない。

 顔を庇っていた左腕のアーマーは焼け焦げ、各所を重点的に守っていた対衝撃アーマーも脱落してしまっている。

 

 同じ火炎放射をあと二度も受ければ全身火傷で焼肉待ったなしだろう。そうなる前に決着をつける必要がある。

 

「そういう訳だ! 短期決戦で行かせて貰うぞ!!」

 

 啖呵を切る仙崎。

 意思が伝わった訳ではないが、ソラスの方もまだ体から出る黒煙は消えない。

 時間経過とともに、体の崩壊が始まっているようだ。再生出来る見込みがあるのかは不明だが、巨大生物と同様に、人や建造物を食べて回復する可能性は十分にある。

 これまでが殆どダメージを与えられなかった存在が故に、生物と同様に自然回復の機能を持っていると考えるのが自然だろう。

 

 何より、仕留められる可能性は今が最も高い。そこにたった一人の歩兵しかいないのであれば、彼がそれをやるまでだ。

 

 どういう技術なのか、あの火炎の中ほぼ傷付かなかった銃器を武器に、仙崎はソラスと渡り合う。

 ――しかし、時間経過とともに、状況は悪化していた。

 

 僅か五分程度の間だが、

 

「ちぃ!! 明らかに、先ほどよりも攻撃が通り辛くなったな!! 黒煙も減少している! やはり、外皮が崩壊から再生しているのか!? それに――がはッ!!」

 

 ソラスの突進を受ける。辛うじて、直撃で平らになるのだけは避けつつ、圧倒的な質量が生み出す破壊はその余波ですら体力を削る。

 

 仙崎側の体力や集中力の持続も怪しい。

 そもそも、搬入ゲート前の対人類間の攻防から多少の負傷や損耗を負っており、それに間髪入れず対ソラス戦での陽動だ。消耗していない訳が無い。

 

「――だが、それでも楽に焼かれたりはせん!! 最後の最後まで苦しめてやるわ!! はぁッ!!」

 

 轢き逃げの如く仙崎を通過して遠くに陣取るソラス。

 こちらへ旋回し振り返るのと同時に、仙崎はライサンダーを発射。

 丁度良く弾丸が肉に到達し、体液が飛び散る。直後、仙崎は武器をゴリアスDCに持ち替え、同じ場所へ引き金を引く。

 

 ゴリアスDCに装填された三発全てを同じ場所に連続で撃ち込み、ライサンダーによって開けられた僅かな穴が拡大する。

 その威力に、思わず大きな鳴き声を上げ、苦しむソラス。

 

 だが、まだ倒れる気配はない。すぐに正気を取り戻し、仙崎に向かって横に薙ぎ払うような火炎放射。

 

「避けられん! なら!!」

 

 覚悟を決め、出来るだけ火炎から逃れるように伏せながら、更にライサンダーの追加の射撃。

 効果を確認する余裕はない。仙崎も再び炎に巻かれ、EDF製アーマースーツの繊維が焼けていく。

 

「はぁ、ふぅ、まったく……! 根性で耐えるようなキャラではないのだが……!」

 

 もっと華麗に、華やかに勝利を勝ち取る事は出来ないのか。いつも思うが、結果は真逆だ。

 しかし、根本的な問題として、

 

「ち! また弾かれたか!!」

 

 戦況は、時間をかけるごとに差が生まれているように思う。

 仙崎は傷つき、ソラスは逆に回復する。

 

 今だ、今が唯一の好機なのだ。ソラスが轟砲によって傷つき、歩兵用の火器ですら攻撃が通る。

 今この瞬間に、航空爆撃やミサイルの飽和攻撃などを叩き込めれば勝負は簡単に決するというのに。

 そしてこの千載一遇のチャンスは、時が経つ事で目減りしていく。ソラスの回復が、仙崎には実感として分かり、これを放置する事は轟砲の一撃によって出来たアドバンテージの消失を意味する。

 そして、事前の説明通りなら轟砲は恐らく自壊してしまって、二度と同じ精度の射撃は不可能だ。

 

 更に、その轟砲の一撃で皮肉にも一切の通信が不能だ。しかも今となっては、ヘルメットの通信機能も熱で殆ど死んでいる。

 届いたとしても、ごく限られた範囲になるだろう。

 

 それは援軍要請や現状報告が出来ない事を示し、この状況は仙崎一人でカタを付ける必要があるという事に繋がる。

 

 しかし、当の本人はもはや限界。歩兵の火力にも限度がある。

 

「誰でもいい!! 誰か、誰か応答してくれ!! ――ええいふざけ抜かしおってクソが!! なんで毎回毎回こうなのだ!! いや今回は私が自ら飛び込んだようなものだが!! もうちょっと! あとわずか! という時に限って私しかいないとはどういう了見だ!! 死神隊長! 保坂!! なんか気を利かせて奇跡的に現れてくれたりはしないもんか!! うん! 無いな!! 私の運の悪さでは、そんな幸運来るわけがないか!! ちくしょうが!!」

 

 上手く行かない現状にイラついて訳の分からない愚痴を大声で通信に乗せる仙崎。

 彼も言った通りソラスへの陽動は自ら行った事なのでそれに対しての不満はないが、もう少しでここまで頑張ったソラス討伐のチャンスを逃してしまう、という焦りが彼から若干の理性を奪った。

 

 しかし、その叫びの結果は思わぬ方向へ転がった。

 

『――ちょーっと見ない間に随分面白い事言うようになったのね! じゃあ、アンタが諦めた幸運、アタシが拾ってあげるわ!! いや、アタシがアンタの幸運そのものよ! せいぜい目に焼き付けなさい!!』

 

 聞き覚えのある、勝ち気で傲慢だが、鼻につかない透き通るような強い声。

 壊れかけの無線機で拾った音声は途切れ途切れで掠れていたが、それでも確かに仙崎の耳朶を打った。

 

 どこからその声が。遠距離通信を行う出力は既に無い筈、と辺りを見渡すと、それは空からやって来た。

 

 見えたのは、高速で接近する一機のEDF攻撃ヘリ、EF-22バゼラート。

 バゼラートはソラスに接近し、両翼にある八門ものUT機関砲をソラスに向けて一斉に放った。

 どう見てもミサイルランチャーであるボックス状のそれから30mm機関砲弾を雨あられのように放ち、ソラス上空をフライパス。

 ソラスに少なくない機関砲弾が命中し、空を忌々し気に見るが、睨むソラスの反対側の空中に、”彼女”は居た。

 

『やっぱり、”話”どおり攻撃は通っているわね! だったらやっぱアタシの出番よ!! そこのレンジャー!! 見てなさい!! これがペイルウイング中隊の切り込み隊長よ!! たぁーーーーー!!』

 

 空に虹色の軌跡を描いて、一人のウイングダイバー兵がソラスに接近。

 バゼラートに気を取られたソラスは接近を感知するのが遅れ、ウイングダイバーはソラスの首筋にM2レイピア・スラストを照射する。

 

 レイピア――ゼロレンジ・プラズマアーク銃の発射する極短射程のプラズマアークの刃が、前方円錐(スラスト)型に集中照射され、ソラスの外皮を、肉を、体組織をズタズタに切り刻む。

 先程のかんしゃく玉の一撃に匹敵する、いやそれ以上の大量の体液が噴き出し、外皮が飛び散る。

 

 圧倒的戦果だが、それは一瞬だ。

 

『きゃあ! もう! 大人しくしてなさいよこの!!』

 

 ソラスは堪らず、腕で払うような動作をし、ウイングダイバーは機動力で回避し、ユニットの冷却の為に一旦地上へ降りる。

 降りた先は、仙崎のすぐ近くだ。

 

「――ファーーーーーーッ!! 瀬川!? 一体どういうことだ! 死に瀕して幻覚と幻聴が出たのかと思ったぞ!! とにかくなんか色々済まなかった! 前のことは謝る! でも助かった! 助かったんだが、色々と整理が追い付かない事山の如しなんだが!!」

 

 どういう経緯での援軍なのか、しかも瀬川一人、同じ小隊のウイングダイバーは居ない。あのヘリも見たところ単騎で来ている。瀬川達は三重県の鈴鹿市で待機命令が出ていた筈では?

 そもそも前回めちゃくちゃ喧嘩別れの如く最悪な別れをしているので尋常ではなく気まずい。

 コイツをどうにかして気持ちの整理をつけて瀬川ともう一度会って話をしよう、とか思っていたのに全く準備も整理も出来ていないまま来襲とかホントにじゃじゃ馬娘だなでもこの状況での援軍は本当に心強い助かったところでなんで一人なん?

 

 と仙崎の心の中は絶賛混乱中だったが、

 

「はいそこ難しい事考えない!! とりあえずアンタが生きててよかったわ、仙崎! アレのあと死んでたらさすがに後味悪いっていうか、なんかアタシのせいみたいで釈然としないもの!! でもそれはそれとして色々ちゃんと話があるんだからこんなツマンナイ敵に殺されたり勝手に死んだりしないこと!! いいわね!? 返事!!」

 

 瀬川は普段と変わらない調子で、喜怒哀楽の表情をころころ変えて何の気なしに応じる。

 

「は、はい!! ――ではないわ!! 突然現れて好き勝って言ってくれるな!! まあ、貴様の言う通り細かい事は良い! とにかく私が走り回って挑発して注意を反らす! で、貴様は奴に接近してそのレイピアで徹底的に切り刻んでやれ!! 得意だろう、そういうの!!」

 

 瀬川の態度の変わらなさに、仙崎もいつもの態度で応じ、簡単な作戦を立てる。

 

「まっかせて! もうただのレイピアじゃない、M2レイピアスラストと! 更にスプリガン隊長リスペクトのレーザーランスD(ドラグーン)カスタムひっさげて来たんだから! あんなデカブツ、目じゃないわ!!」

 

 勝ち気な笑みを浮かべ、冷却終了の合図とともに、瀬川は飛び上がる。

 飛び上がった瀬川をソラスが目で追うが、すかさず仙崎はライサンダーの射撃で注意を引いた。

 

「頼もしい事だな! 先程まで苦戦していたのが阿呆らしく思えてくる!」

 

「らしくないわね! レンジャー一人であれを押さえてたんなら大したもんでしょ! ま、アタシだってずっと飛び回ったり攻撃できるわけじゃないんだから、そこんとこフォローよろしく!!」

 

「手間のかかるじゃじゃ馬娘だ!」

 

「女は手間がかかるものなのよ!」

 

 瀬川はソラスの背後に回り込み、仙崎は正面からソラスを挑発。

 二人の共同作戦が開始された。

 ……の直後、2人の声に第三者の声が割って入る。

 

『――って綺麗に纏まりそうなところで口を突っ込むのも野暮なんだが、行きがけの駄賃、全部置いていくぜ! オラァァーー!!』

 

 仙崎は瀬川のインパクトですっかり存在を忘れていた上空のバゼラートに意識を向ける。

 バゼラートはまた八門ものUT機関砲で射撃。機関砲弾の雨が降り注ぐ。

 

「そうだ! 貴様にも礼を言わねばな!! 誰だか知らんが助かった。――いや、その声は記憶にある。貴様、サイクロン中隊の石田少尉か!?」

 

 第六攻撃ヘリ中隊、通称サイクロン中隊のバゼラートパイロット、石田少尉。

 京都の救護所でレイドアンカーが降り注ぐ中、両足を骨折していた石田少尉を、仙崎は拾った事がある。

 

『おお! 覚えててくれたんだな! 京都で救って貰ったささやかな礼さ! まァ、ホントの所は大尉にケツをひっぱたかれたからなんだが……ま、どうでもいいだろ』

 

「富山大尉か……! 確かに、何かあればサイクロン隊を頼れと言われた気はするが……。でも、脚はもういいのか?」

 

『なァに! あんたが気にする事じゃないさ! 本当はもっと一緒に戦いたかったが、燃料がやばいんでそろそろ戻るぜ! じゃあな! 仙崎さん!!』

 

 最後に再びUT機関砲の掃射を行ったのち、機関砲八門を搭載した不格好なバゼラートは去った。

 そして仙崎の予想通り、離れるとすぐに通信は途切れた。

 

「で? 他に援軍は無いのか?」

 

 瀬川に問うと、

 

「んー、無いと思う! アタシが来たのも割と正規の命令ではないって言うか、闇を掻い潜って来たというか……。まあ詳しい事は後でちゃんと話すわ! とりあえず、あれはアタシたち二人で仕留めるのよ!」

 

「いいだろう! 限界の体にもうしばらく鞭を打つとするか! 貴様の働きに期待しているぞ! 瀬川!!」

 

「やったろうじゃない! 仙崎!!」

 

 ――たった二人の、ソラスとの最終決戦が幕を開けた。




巨獣ソラス編、恐らく次で終了します!(多分……

※追記
対ソラス戦と言う事でEDF2出題の武器を持たせようと思ってて、最初レーザーランスRカスタム、名前が何となく好きだから持たせたんですけど、連射で当てるタイプの武器ってやっぱ対ソラス戦で映えなくて……
なんで、もうEDF2出題は諦めて、レーザーランスD(ドラグーン)カスタム、またの名をドラグーンランス!を持たせることに編集しました。
ドラグーンランスはEDF5系統からの出典になるけどまあ今更だよね。
こだわりよりも演出と派手さを優先します!!

……実際EDF2ファンの読者ってあんまし居ない気がするしね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。