全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

126 / 132
あの、前話のあとがきにも遅れて追記したんですけど、
「レーザーランスRカスタム」→「レーザーランスDカスタム(ドラグーンランス)」と変更しております。
やっぱソラス戦の描写考えた時、ドラランの方が映えるな~と思ったんで

ライサンダーも試作型だし初期型と2の間の威力って設定だしなんか中途半端なんだけど、ゴリアスDCとかんしゃく玉みたいにEDF戦記初出の武器にしたかったからなんかこうなっちゃった
変えるとしたら、アイアンウォールの時の武器を全部試作型にするとかになるんだけど、それはめんどいし気が向いたらワンチャンやるかもって感じで

今回の話、EDF2出典の武器だけで乗り切りたかったんだけど、微妙に無理だった。ライサンダー試作型は2には無いしね


第九十四話 巨獣ソラス討伐作戦(Ⅶ)

――京都府綾部市市街地――

 

「たぁぁーーーー!!」

 

 一気呵成に飛び出す瀬川は、素早くソラスの背後に回り、M2レイピア・スラストをソラス背面に照射。

 

 レイピアは本来、前面角度120度ほどの範囲に無数のプラズマアークの刃をパルス照射する銃器だが、スラスト型はその角度を60度、凡そ半分の範囲に集中させる。

 

 射程は変わらないが、狭い範囲に刃が集中的に照射されている。

 つまりその分、同じ出力で破壊力の向上に繋がる。

 

「こんな外皮、削り取ってやるわ!! ってちょっと、じっとしなさいよこら!!」

 

 瀬川の照射したレイピアは、損傷部分ではない背中の外皮を僅かに削ったが、ソラスが身じろぎを起こすと照射点がズレる。

 

 ソラスは轟砲の影響か、人間でいう胸元から首回り、背面のうなじ辺りまでを大きく損傷しているように見える。

 

 理想的にはその個所に攻撃を集中するべきだが、近接攻撃で真正面はリスクが高い。

 当然背後を狙うべきだが、ソラスもじっと止まっている訳ではない。

 ただでさえ40mもの巨体だ。ちょっとした動作が数mの距離を生む。

 

「瀬川! 損傷部分への攻撃を意識しすぎるな! とにかく外皮を削れれば奴へのダメージとなる! ヤツは再生するかもしれんが、それを抑制する効果もあるだろう! ともかく、少しでも傷を付ける事に集中するのだ!」

 

 ソラスが照射から逃れるように駆け出す。

 轟砲の衝撃で半壊した建物に突っ込み、崩壊による土煙が巨体の姿を隠す。

 

「ふん、それで隠れたつもりか!」

 

 仙崎はゴリアスDCを発射。

 あの巨体だ。煙で姿が見えなくとも位置は容易に掴める。

 ヘルメットは損傷しレーダー機能は死んでいるが、問題はない。

 

 宣言通り弾頭はソラスに直撃し、周囲の煙ごと吹き飛ばす。

 仙崎はそのまま3発目まで連続で発射、直撃させ、弾倉を交換する。

 

「瀬川! 今だ行け!!」

 

「はいはいやったるわ! でも誤爆には気を付けなさいよ!」

 

「無論だ!」

 

 爆風を煩わしく手で払い、仙崎へ向かって炎を吐き出す準備。

 

「足を止めたわね! なら遠慮なく!!」

 

 それはソラスとの対峙で仙崎が気付いたヤツの隙だ。

 ソラスは、火炎放射の最中とその前後には必ず動作を止める。

 それだけでなく、巨大で勘違いするが、一つ一つの動作には大きな隙が生まれる。

 

「その隙を突ければ、討伐は決して不可能ではない!!」

 

「アンタとアタシなら、やれるわ!!」

 

 火炎が吐き出されるよりも速く、瀬川は高速でソラスに接近しレイピアを照射。

 留まらず、体真正面から背後に向かって鮮やかに通り抜け、ソラスの体を横断するようにプラズマアーク光の断裂が駆け抜ける。

 そこへ、

 

「はッ!」

 

 ビルの影から、仙崎がライサンダー試作型を伏せ撃ち。

 狙撃弾はソラスの損傷個所を撃ち抜き、体液が大きく噴き出る。

 

 が、ソラスも負けじと火炎放射を開始。

 仙崎に向かって炎が吐き出された。

 

「仙崎!」

 

「心配いらん!!」

 

 仙崎はそのままビルを盾に伏せた状態で待機。

 火炎は容赦なくビルを焼き払うが、その威力は明らかに全盛期に対して低下している。

 

「やはりな……! もう一吹きで都市全域を焼き尽くすほどのエネルギーは無いようだな!」

 

 さんざん暴れ回った事も影響しているのかも知れないが、明らかに轟砲直撃からソラスは弱体化している。

 

「瀬川! 改めて言うが、ソラスを倒す好機はやはり今を置いて他にない! 必ずここで仕留めるぞ!!」

 

「そうみたいね! 畳み掛けるわ!!」

 

 再び接近する瀬川に、ソラスは反応し逃げるように距離を取る。

 仙崎を正面から外せば、その隙は逃さず射撃。

 反対に仙崎を追えば瀬川がレイピアを照射し、二人は前後からソラスの隙を徹底的につく。

 

 その連携は一見恐ろしいほど嵌っていたように見えた。このまま勝利も遠くない――そんな風に思える程、甘くは無い事も二人は知っていたが。

 

「だめ! 仙崎! もうユニットが持たない! 一旦冷却しないと! レイピアへのエネルギー補給もしなきゃ……!」

 

「分かった! こちらで引き付ける! うおおこちらだソラス!!」

 

 瀬川はユニット冷却の為に一度使用を控え地上に降り立つ。

 だが、降り立った場所がまずい。ソラスとの距離が近い。

 

「ああもう! 深追いしすぎた……!」

 

 プラズマ・エネルギーユニットの熱量はオーバーヒート寸前だ。

 これ以上の連続使用は強制冷却を起こし一定時間ユニットが使用できなくなる。

 瀬川はユニットを小刻みに吹かし強制冷却ギリギリで跳ねるように移動を行うが、ソラスの火炎放射が彼女に狙いを定める。

 

 そこに遮蔽物は無い。ウイングダイバーの薄いアーマーではソラスの火炎放射に耐えきれるか不明だし、距離が近い分火力は侮れない。

 

「やっば! 距離が離せない……!!」

 

「瀬川、強制冷却しろ!! その間は私が! うおおおお!!」

 

 仙崎は素早く瀬川とソラスの間に滑り込み、手に目いっぱい握ったかんしゃく玉一号を、至近距離でソラスの腹部に投擲。

 

 損傷部を狙って放り投げられたかんしゃく玉は、拡散する前に集中して同時起爆。

 重なる壮絶な破裂音と共に外皮が剥がれ、肉が弾け、体液が飛散する。堪らずソラスは仰け反り、火炎放射を中断。

 仙崎は投擲直後に前転し距離を稼ぐと、側面からソラスの顔面に向かってゴリアスDCを叩き込む。

 

「どうした!! 私はこちらだ!!」

 

 挑発の意味も込めた攻撃で、ソラスの双眸が仙崎を睨み、その巨躯で矮小な人間を踏み潰そうと脚が持ち上がる。

 

「うおおおお!!」

 

 ついに弾の無くなったゴリアスDCを放り投げ、全力の側転。

 直撃でぺしゃんこな肉塊になるのは避けたが、体重の乗った踏みつけは地面を破壊。爆撃の様な衝撃を辺りにばら撒き、仙崎も吹き飛ばされる。

 

「ぐぁッ……! そうだ、それでよい……こちらを向け害獣!!」

 

 己を振るい立たせる意味も込めて、ソラスを挑発。

 使えるかんしゃく玉は目いっぱい掴むことを考えたら残り一回ほど。

 ソラスへの隙が作れるところから温存したい一回ではあるし、吹き飛ばされた今では距離が開き過ぎている。

 つまり。

 

「頼れるのは、お前だ! ライサンダー!」

 

 吹き飛ばされた体勢のまま、伏せ撃ち。

 弾丸は首元に直撃、体液が激しく散る。

 瀬川のレイピア照射により、今やほとんどの部位で攻撃が通るようになってきた。

 ソラスの再生能力を、レイピア照射が上回った結果だ。

 目に見えて損傷も酷くなっている。

 あと一息、そう思ってはいるのだが、

 

「それが、なかなか遠いな!!」

 

 二発目を射撃。弾倉が空になった。立ち上がり、ソラスの正面から逃れるように走りながらリロードを行う。

 

「ええいくそ! なんだこの無駄に複雑な機構は! リロードがしにくい!!」

 

「仙崎! ありがと! 冷却終わった! またしばらく斬り刻めるわ!!」

 

「そうか! それは――」

 

 よかった、と二の句が繋げなかった。

 

 目は離していないつもりだったが、ライサンダーのリロードと瀬川の復帰、そしてもうすぐ倒せるかもしれないという油断と疲労、負傷による注意力の散漫から予備動作を見逃した。

 

 とはいえ、見ていてもどうにもならなかったかもしれないが、とにかくソラスは仙崎に突進を繰り出しており、姿は目前に迫っていた。

 

「――不覚すぎる!! ぐぉあああッ!!」

 

 側転での緊急回避。真正面からの直撃は避けたものの、ゴツゴツした脚の外皮が削るように仙崎を弾き飛ばし、大きく吹き飛ばされ仙崎は地面に墜落、転がった。

 

「が、はッ……。なかなか、やるではないか……」

 

 いくら対衝撃性に優れたEDFアーマースーツであっても、かなり損傷が激しくなり、仙崎本人へのダメージも大きなものとなった。

 骨は何本か折れ、頭や手足、腹部にも裂傷が見られた。

 それでも、まだ立ち上がれない程ではない。武器もある。

 

 そう言い聞かせ、仙崎は脳震盪を起こした頭を押さえふらふらと立ち上がり、敵を探すが、

 

「仙崎ぃぃ!! 何やってんのよぉーーー!!」

 

 瀬川の声と同時に、ソラスがこちら目掛けて火炎放射の予備動作をしている事に気付く。

 気付いたが、どうしようもない。動作を見るに縦型の火炎放射か。

 横に避けられれば回避できるが、中途半端に距離があるせいでそれも難しい。

 そして、今一度火炎放射を喰らえば耐えられるか自信が無い。

 

 だから、瀬川は回復したばかりのユニットを限界まで酷使し、黒煙を溜めるソラスの顔面目掛けて真っ直ぐに飛んだ。

 

「アタシのせいで囮になって、目の前で焼かれちゃ後味悪いってもんじゃないわよ、この――!!」

 

 M2レイピア・スラストを顔面に連続照射。

 ソラスの顔面がプラズマアークに切り裂かれ外皮が弾け飛ぶ。

 顔へのダメージが効いて仰け反ったが、火炎放射はキャンセルされず空中に向かって不規則に放たれた。

 

「うわ!! あっつ!! でも!!」

 

 瀬川は空中でロール機動を行い巧みに火炎を回避する。

 が、回避機動はプラズマエネルギーをより多く噴射する。今までの量と合わせてすぐにユニットが強制冷却を起こす。

 

「その前に――もってけっ!!」

 

 空中で強制冷却に入り自由落下する最中、武器を持ち換えレーザーランスDカスタムの引き鉄を引く。

 

 レーザーランス――正式名称、ショートレンジ収束レーザー砲。

 これはその出力強化モデルであり、ついたあだ名が”ドラグーンランス”。

 

 射程を犠牲に極限まで出力を束ねた高収束レーザーが突き刺さるようにソラスの肉体を抉る。

 

 翼の空力で比較的緩やかに着地する瀬川だが、無防備なユニットの強制冷却で、身動きが取れない。

 それを逃すソラスではない。近距離であるため、突進による踏みつけが瀬川を襲う。

 

「そうなるの、分かってたけど……っ!!」

 

 全力で駆け回避を試みるが、ユニットの重量が思った以上に枷となり、避け切れない事は明白だ。

 

「──だから、ここは私の出番だ!!」

 

 ソラスの脚が破壊的な突進を繰り出す中、仙崎は瀬川に向かって飛び込み、強制冷却中のユニットごと瀬川を抱きかかえ、緊急回避を行った。

 ソラスの爆発的な踏み込みの威力をしっかり食らいつつ、またも寸前のところで踏み潰されるケースは避ける。

 

 仙崎は瀬川を抱いたまま地面を転がり、手を放す。

 

「……助かったけど、意外と大胆ね……」

 

「照れ隠しと受け取るぞ。それより、次が来る!」

 

「ええ! 強制冷却完了! 飛ぶわ!」

 

 瀬川がまた飛び立ち、仙崎は狙撃でそれを援護。

 ライサンダーの空を割く発砲音が響き渡り、ソラスの首元に着弾。

 それだけでソラスは後ずさり、確実に射撃が効いている事の証左となる。

 

「今度こそ、畳みかけるぞ!!」

 

「ええ! もういい加減、終わりにしたいわ!!」

 

 瀬川は今度はユニットの出力を調整し、地面を跳ねるように小刻みに移動。

 ソラスは小刻みに動く瀬川を狙い、薙ぎ払うような火炎放射を行うが、

 

「ペイルウイング隊を舐めない事ね!!」

 

 ユニット出力をバーストし、前転するように炎を飛び越えると、直ぐにその巨体が迫る。

 

「いい加減に、倒れなさい! この!!」

 

 もっとも損傷のひどい真正面を捉え、空中からレイピアを照射。

 ソラスは暴れ、両腕で彼女を撃ち落そうと振る舞わすが、

 

「そんな動きで、捉えられないわよ!!」

 

 続き、側面から仙崎のライサンダーの援護射撃。

 首筋を穿ち、その頭の角を振り回しとにかく瀬川を追い払おうと暴れる。

 

「いちいち避けてたら危ないしエネルギーを喰うわね。だったら……!!」

 

 瀬川はソラスを飛び越えるように移動し、背後に回ってその背にそびえる背びれの様な突起物を掴み、

 

「これなら、安定してアンタを斬り刻めるわね!!」

 

 もう片腕に握るM2レイピア・スラストの引き鉄を引き、一点集中連続照射。

 ユニットの翼は折り畳み、通常冷却を行いながらレイピアをひたすら照射。

 

 レイピアのエネルギーは内部貯蔵式となっており、ユニットからの供給は一定照射ごとで構わない。

 よって、照射中はユニットの冷却に専念可能だ。

 

「ちょっと! これ、最強じゃない!? このままお腹までブチ抜いてあげるわ!! 暴れても無駄よ!!」

 

 ソラスは目に見えて苦しみ、周囲を走り暴れ回る。

 急激な移動によって何度か引きはがされるが、その度に瀬川はユニットを巧みに操り常にソラスの背中に張り付いた。

 

 ソラスの攻撃方法は今のところ火炎放射と突進による踏みつけくらいだ。

 後は空中に向かって繰り出した腕の振り回しと頭部の角による攻撃か。

 そのどれもが、背面に向かって繰り出すことが出来ない。

 

 まさに、完全なる”安全地帯”からの一方的な攻撃だ。

 

「瀬川!! 油断するな! 奴の尾が暴れ回っているぞ!!」

 

「分かってるわ! 引き離された時、叩き落されないように気を付けるわよ!!」

 

 ソラスの尾には、背びれと同じような素材――岩石の様な更に硬質化した皮膚の様な物質で出来た、太い不格好な槍のようなものが先端についていた。

 それでなくとも、巨大な尾だ。背後にまわる時に十分脅威となり得ると警戒していたが、幸いにもその打撃が繰り出される事は今までなかった。

 

 だが瀬川が背中に張り付いて攻撃を仕掛けると、尾が空中を不規則に暴れ回っていた。

 それは、痛みに悶えているだけにも見えるし、背中に張り付く虫を取り払おうと試みるも、痒い所に手が届かずもどかしい思いで右往左往しているだけにも見える。

 

 実際、瀬川が空中に居る間に叩かれでもしたら、相当なダメージになりそうではあるが、

 

「でも、ここでユニットを冷却出来てれば、避ける機動力に問題は――」

 

「――まずい! 瀬川ぁッ!!」

 

 次の瞬間、遠目から見ていた仙崎は目を疑った。

 ソラスは、自身の尾を大きく振りかぶり、躊躇い無く自分ごと瀬川に叩き付けたのだ。

 

「がっ!? は、ぁ――ッ!!」

 

 一瞬だ。ほんの一瞬、仙崎の声で瀬川が気付く方が早かった。

 その一瞬の差で辛うじて直撃は避けたが、瀬川は背中から完全に払われ、打撃の余波で負傷する。

 

 意識が朦朧とし、サイオニックリンクによるユニット出力が安定しない瀬川を、今度は確かにソラスの掌が捕らえた。

 

「きゃあ!! この、離――」

 

 言わせる間もなく、ソラスは瀬川を勢いよく地面に叩き付ける。

 

「――ぐぁはっ!! が、……ぁ、くっ……!」

 

 弾力の無いボールを叩き付けたような軌道で、瀬川は地面を跳ね転がる。

 

 腕力はさほど無いのか、体が一撃で潰れるほどの衝撃ではなかったが、それでも地面が変形するほどの打撃力が瀬川を襲い、数か所の骨が折れる。

 肋骨が数本に加え、右腕と脇腹、右足が重度の裂傷と打撲。

 

 機動力を重視した軽量化を行っているウイングダイバーのアーマースーツは、レンジャーのタイプより明らかに華奢で薄い。それを如実に現す結果となった。

 

 肺も損傷しているのか、うめき声の様な声しか出せない瀬川は、それでも体を仰向けからうつ伏せにし、歯を食いしばって立ち上がろうと試みる。

 同時に震える手でファーストエイドキットの治癒剤を探し、首筋に乱暴に打ちこむ。

 

 痛みが瞬時に和らぎ、視界が明瞭になるが、目の前には既に炎が迫っていた。

 

「――ぁ」

 

 焼け死ぬ。これはちょっと無理かもしれない。さすがに死んだかも。

 治癒剤で明瞭になる意識が理性的にそう判断した。しかし、論理的でない思考が希望を探す。

 そうだ。仙崎だ。きっと、アイツが何とかしてくれる。

 その儚い希望は――

 

「――EDFはッ!! 決して!! 仲間を見捨てないッ!!」

 

 瀬川の前に仙崎が立つ。

 どういうつもりなのか、直ぐに分かった。

 

 仙崎はパワードスケルトンごと四散したもの――貸し出されたグリムリーパー・シールドを地面に突き刺した。

 瀬川が近接戦闘で飛び回っている間に、一度くらいなら炎を防げるだろうと考え、ゴリアスDCの代わりに背中にマウントしていたものだ。

 

 仙崎はシールドを突き立てると片手で支え、もう片手で瀬川を抱き寄せシールドからはみ出さないように身を縮める。

 

 同時に炎が到達し、シールドが膨大な熱量で溶け始める。

 ディフレクション・フィールドが作用していない状態だ。ただの鋼鉄の塊に等しい。

 炎の持続は今回に限って長く感じ、こればかりは仙崎も人事を尽くして天命を待つとばかりに、火炎放射の終わりを祈って待つばかりだった。

 

 ――そして、運命の天秤は人類に傾いた。

 

 余波で軽くない火傷を負ったものの、焼き殺される前に火炎放射は終わった。

 しかし、それでソラスの攻撃は終わらない。

 

 火炎放射が効かない相手に、再び突進を仕掛けるソラス。

 この突進に、何度も仙崎は傷つけられた。

 そして今回、最早華麗に回避する余力は二人のどちらにも残されていない。

 

 ならば――

 

「迎撃、するまでだッ!!」

 

「叩き、こんでやる……ッ!!」

 

 ソラスの突撃が接触する直前、仙崎は最後の一粒まで掴んだかんしゃく玉一号を、瀬川はドラグーンランスの限界を超えた最大出力を――同時に全力で叩き付ける。

 

 凄まじい音と閃光が、辺りを包んだ。

 ソラスの肉体は大きく損壊し、肉と体液が激しくばら撒かれた。

 突進の途中で大きくバランスを崩し、ソラスは二人を踏み潰す事無く轟音を立てて地面に倒れる。

 

 ソラスに、これでようやく地面を舐めさせることが出来た。

 これで、終わりと思いたかったが、

 

「仙崎っ、……、あいつ、まだ……!」

 

 ソラスは鈍い動作で起き上がり、口内に黒煙を溜める。

 いや、黒煙はもはや、ソラスの全身から溢れ出ていた。

 体内に残ったエネルギーを、全て仙崎と瀬川の焼却に使う。その意思が、はっきり感じ取れた。

 

 それが故に、仙崎たちの勝利は――

 

「――終わらせてやる。超抜級怪生物、第一号……」

 

 静かに、ライサンダーを構える仙崎。

 ソラスの炎は今にも溢れんばかりであったが、引き金を引くだけの動作の方が、僅かに速かった。

 

「――巨獣、ソラス」

 

 引き金は引かれた。

 威力向上の試作型、という文言だったが、ライサンダーはその性能を最後の一発まで全うし、特殊狙撃弾は正確に放たれた。

 

 狙撃弾は寸分の狂いなく吸い込まれるようにソラスの胴体に命中。外皮や肉体を見事に貫通し、脆くなった体内を破壊しながら進む。

 その貫通経路は衝撃波でズタズタに切り裂かれ、血が、肉が弾け飛ぶ。

 そしてついに狙撃弾は、ソラスの体内の発炎器官や蓄炎臓器をも破壊し、エネルギーは急速に霧散していった。

 

 ソラスは、最後に断末魔の叫びを上げ、その目から光を消すと、巨体は力を失い、地面を揺るがし、倒れた。

 

 今度こそ、ソラスは動かない――仙崎と瀬川は、EDFは、人類は、遂にやったのだ。

 

「ようやく……って、感じかしら」

 

「ああ……。私と瀬川、この戦いに携わった皆の――人類の勝利だ! 頑張ったな、瀬川」

 

「アンタほどじゃ、ないけどね。まあ、ざまみろって感じ」

 

 負傷して傷だらけの二人は、小さく拳を合わせて微笑んだ。

 

 

 2023年4月11日11時21分。

 超抜級怪生物第一号:”巨獣”ソラス――討伐完了。

 




はい!という訳で巨獣ソラス編、これにて無事閉幕!お疲れ様でした!
次は幕間としてその後の話とか次の四つ足攻略編のとっかかりとかを書きたいんですけど、しばらくゆっくりしたいかも知れません……!

改めまして、ここまで読んでくれた方々本当にありがとうございました!
色々感想もらってて本当に感謝感激雨あられです!(死語か?)

読んでくれてて本当に嬉しいんでもっと更新頻度上げたい気持ちはあるんですけど、サブカル系も色々消化したいので勘弁してくだせえ!
気が向いたら頑張ります!

ではまた!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。