前回勢いでソラス編終わりっ!休憩っ!
と言いましたが、あれは嘘だ。
やっぱちょっと後の事書き足りないというか全然書いてなかったので、まあおまけの様なその後の様なその後の戦いに続くお話です。
2023年4月11日11時21分。
超抜級怪生物第一号:”巨獣”ソラス――討伐完了。
その衝撃は、瞬く間に世界に駆け抜けた。
4月11日0時14分の舞鶴市への上陸から、僅か11時間と7分。
2023年1月5日に台湾近海に着水し、台湾、そして中国の沿岸都市を焼き払い、多くの命を奪った宇宙生命体。
出現から三か月に渡って未曽有の被害を与え、核の炎にも涼しい顔を見せた最強の侵略生物は、日本に上陸してから僅か11時間程度でその息の根を完全に断ったのだった。
むろん、日本が受けた被害も軽微なものではない。
舞鶴市は完全に焼失。後方地として機能していたこの地には平時よりも多くの人口や補給物資が運ばれていたこともあり、その被害は日本戦線で決して軽視できるものではない。
しかし防衛と効率化のため、人口と都市機能を限られた都市に集中させていたおかげで、ソラスの侵攻ルート上の農村や小都市は完全に放棄されており、舞鶴市以外の目立った被害はない。
だがそれは結果論だ。
フォーリナーはより人口の多い所や活動が活発な都市を優先して狙う傾向がある。
舞鶴市付近で最も活動的な都市であり、現在の日本戦線の生命線である大阪・神戸へ向かうのは必然だった。
ソラスは舞鶴市を一通り焼却した後、ほぼ一直線に大阪・神戸へのルートを通った。
大阪・神戸には両都市を跨ぐようにしてEDF極東第一工廠が存在している。
EDF総司令部の指揮系統から離反し、極東11軍がこれほど強気な作戦を継続できているのが、EDFの惜しみない支援によって開拓された地下資源と工業力。すなわち、東シナ海の豊富な海底資源やプレート境界面の海底レアメタル・レアアース鉱床と、それを工業力に変えている大規模EDF工廠の存在である。
故に、日本存続の為にはEDF極東第一工廠を落とされる前に、ソラスを討伐する必要があった。
そこまでは誰でもわかる。だがそれを本当に成し遂げた結果には、世界中が驚きを越えて畏怖を覚えた。
――しかし、その過程は謎に包まれたものだ。
ソラス討伐成功に湧いた各国軍やEDF現場指揮官たちはすぐにその作戦詳細を求めたが、帰ってきた返答は具体性を欠くものばかりだ。
多くの軍事機密を含む作戦内容であったため為、とても参考になるものではなかった。
分かる事は少ない。
だが多くの情報が重要機密として伏せられた中で、唯一明記されている事が一つあった。
それは――
「――私を、ソラスを単騎で撃破した”英雄”になれ。だとぅ?」
「そうだ。君のことだ。それくらいの覚悟があってあの無茶な行動に挑んだのだろう? 少なくとも、そうでなくては我々が困る」
仙崎の向かいに座ってそう提案しているのは、顔も名前も素性も分からない謎のEDF高官。
――仙崎は今、EDF軍警察に身柄を拘束され、どことも分からぬ場所で尋問……もとい、取り調べを受けていた。
ソラス討伐が完了した後、駆け付けたキャリバン救護車輛に瀬川と共に救助された仙崎は、大阪の軍病院へ急行搬送。
搬送された二人は程なくして意識を失っていた。
危篤状態という程では無いが、少なくとも処置を急ぐべき重傷だ。
仙崎は全身に浅い火傷と多数の裂傷。瀬川は全身の複数骨折と裂傷、それに治癒剤投与による副作用。
応急処置として仙崎にもすぐに治癒剤の投与が行われ、二人は大阪の軍病院で治療を受けた。
――それからの仙崎の状況を説明する前に、ソラス討伐後の日本戦線の戦況に触れておく必要がある。
巨獣ソラスの討伐は成功した。
だが、日本戦線にはもう一つ重大な脅威が存続している。
そう、四足歩行要塞”エレフォート”だ。
巨獣ソラス討伐作戦中、極東第11軍の主戦力は名古屋で歩行要塞を相手にした”轟雷作戦”の失敗と潰走に追い込まれていた。
原因は二種の敵新型兵器。鏡面円盤”ミラーリング・ドローン”と自走防御スクリーン発生装置”シールド・ベアラー”だ。
攻撃の完全防御と反射の二つを行うこの二種の敵に対し、EDFは有効な対策を取れず歩行要塞攻略自体を中止にせざるを得なくなり、ソラス上陸に触発された巨大生物群の活性化の対処に追われる形となった。
予備の軍団まで全て投入し、滋賀県、京都府、奈良県に広く部隊を配置し大阪への巨大生物再進撃を防ぐ。
京都防衛戦で多くの敵戦力を撃滅した筈のEDFだが、その上で更なる再進撃に敵の物量の恐ろしさを知る。
更に歩行要塞は徐々に巨大プラズマ砲を修復し砲撃を行い、名古屋周辺の都市・EDF基地・前線司令部・物資集積所などを破壊し、大阪に向かって西進した。
一方EDF極東第11軍作戦指令本部は、ソラス上陸と同時に大阪・神戸全都市域の地下シェルターへの避難を命令しており、都市機能はほぼ停止。
ソラス討伐が正式に発表され、市民に歓喜の声が鳴り渡った直後、遂に大阪近郊にプラズマ砲撃が着弾。
一撃で数百mの範囲が吹き飛び、爆風と衝撃波が大阪市街を破壊する。
シェルターに避難できていた市民の被害は軽微だが、事ここに至って作戦指令本部は二択を迫られた。
すなわち、歩行要塞攻略作戦の再開か、大阪の放棄か。
だが攻略作戦の再開は難しい。
対ソラスに使用した禁忌兵器の分析にかなりの時間的人員的リソースを割いたため、歩行要塞を護衛する二種の敵新型兵器への分析及び対策が十分ではないのだ。
加えて、ソラス上陸を受けての各戦線での巨大生物活性化の影響が無視できない。
作戦指令本部、司令官の榊中将は苦渋の決断を迫られた。
4月12日。ソラス討伐の翌日にEDF極東第11軍作戦指令本部は、大阪・神戸両都市、及びEDF極東第一工廠の放棄を決定。
市民の完全避難、及び都市機能の可能な限りの搬出が行われ、それと並行して歩行要塞への陽動攻撃・及び侵攻阻止作戦が決行された。
それを受けて、仙崎と瀬川を治療中だった大阪の軍病院も当然避難を行う事となる。
だが、意識の回復した仙崎を迎えに来たのは輸送部隊ではなくEDF極東方面軍直轄の軍警察だった。
仙崎は軍警に拘束され、目張りのされた軍用トラックに載せられ、どことも知れぬ建物に連れていかれ、明くる日の4月13日、尋問と取り調べを受けていた。
容疑は軍事機密情報漏洩・介入の疑い、命令違反、脱走、無許可戦闘行為、指揮系統逸脱行動、軍秩序の撹乱、など複数の軍法違反に抵触したことだ。
また、仙崎の過去の経歴の何から何まで洗われ、その辺りの関連性も徹底的に問いただされた。
ただ、与えた影響の重大さと、現戦況の厳しさから簡単に拘束し続ける訳にもいかず、仙崎本人の口の上手さや榊中将を始めとする作戦指令本部のフォローもあり、結果的にそれらはほぼ不問、或いは直ちに罪に問われない事が決定した。
その次は、此度の事件に、どう収集をつけるのかの話もあった。
仙崎らが共同して行ったソラス討伐はもちろん対フォーリナー史における快挙だが、或いはそれ以上に上層部を混乱させたのは、ニコラヴィエナの禁忌兵器が明るみに出た上、実戦で使用されたという事実だ。
それともう一つ、仙崎が口八丁手八丁で対抗勢力を丸ごと丸め込んで宣言した、日本京都府山中某所にあるEDF戦略火器保管庫を、国際共同の禁忌兵器研究所にしてしまおう、という突飛な案がなし崩し的に通ってしまった事、だ。
もっとも、その二つはどちらもこれまで議論の上では上がって来たことではあり、必ずしもそう荒唐無稽な話ではない。
EDF内部でも、禁忌兵器に関しては意見が分かれている議題であり、内部勢力の政治的パワーバランスもあって話は全く進んでいなかっただけ、という話ではある。
この事件を大きな後押しにしたのは、当然ながら禁忌兵器左派、積極使用派である。
積極使用派はこの追い風に乗り、法的・実務的・研究的・軍事的な整備を既に進める方向で話はまとまりつつあり、日本への国際共同研究所設立の流れもスムーズに進むだろうという見方だ。
禁忌兵器反対派や燻っている反EDF組織も、この期に及んで反対工作をするほど果敢でもないと思われており、それほどまでに今世界は追い詰められている。
そう言った禁忌兵器の是非を含めて今回の立役者と言うべき仙崎誠であるが、これが上から見たら扱いが難しい。
彼が犯した数々の罪は考えようによってはEDFの軍秩序自体を大きく揺るがすものだ。
一介の陸軍少尉として行使できる範囲の権限を軽々越えてしまっているし、今回仙崎の行動にはいかなる命令も介在しておらず完膚なきまでの独断専行だ。
重大な戦争犯罪人として拘束・処罰する事に疑いようもない。
しかしながら、手繰り寄せた功績もまた絶大なもので、EDFの辿る今後の趨勢を大きく可能性を秘めたものだ。
処罰するには惜しい人材であり、経歴から考えても拘束しておいておく余裕が今の人類には無い。
更に、彼はレイドシップを世界で初めて撃墜した部隊の一員であり、バゥ・ロードを出現から1日と経たずに撃破した張本人だ。
今回のソラス討伐もそうだが、仙崎のみの力ではないとはいえ、単体で残す戦果としては十分すぎるくらいだ。
そんな人物を戦争犯罪人として拘束するのは、戦力低下と共に現場の士気低下にもつながる。
――故に、EDF上層部は、彼を”英雄”として祭り上げる事に決定した。
「君を英雄として祭り上げる事で、民衆や一般兵士を、禁忌兵器の使用から目を背けさせる。それが上の考えさ」
「待て。禁忌兵器の使用は、既に公表されているのではないのか? 世界中の科学者に協力を要請した。日本に国際共同研究所を建てると、日本の首脳部とも話した。それでもまだ隠す必要があるのか?」
ニコラヴィエナの作った禁忌兵器が、研究が進み通常運用が可能になればもはや”禁忌”ではなくなる。
それこそが、EDFが勝利の為に目指すべき極地だ。
であるなら、闇雲な機密の保持はするべきではない。そう思うが。
「
逆光で顔も見えない壮年の、冷ややかな声が突き刺さる。
「お前に選択の自由は無い。お前は自ら道を切り拓いたつもりだろうが、敷かれたレールが少し切り替わった程度に過ぎない。故にお前の意見は求めない」
「はっ。そんな事で悔しがるとでも思ったのか? 間抜けめ。後からなら何とでも言えるわ。貴様らがやろうとして出来なかった事をやった事には変わりない」
挑発に対し、仙崎は自らの起こした行動に誇りをもって答えるが、
「そうか。ならその誇りをもってせいぜい”英雄”として振る舞ってくれればそれでいい。我々がやろうとして出来なかった、大事を成した英雄として、な」
「ぐ……。まさか、乗せられたというのか? この私が」
「まだまだ青いな。若造」
とまあ、そんなやり取りを経て、仙崎はソラス討伐の功績を全て”押し付けられる”形となり、それはおぼろげな形で世に広まった。
すなわち――重要機密で何が起こったかよくわからないけどとりあえずソラスを討伐したその男の名は、仙崎誠! と言うらしい!!――という情報だけが全世界に広まったのである。
――その後。
仙崎は無事釈放され、丸一日の拘束期間を経て4月14日に徳島県鳴門市のEDF第515駐屯基地にて原隊復帰を果たした。
そこで仙崎は、衝撃の辞令を受け取る事となった。
――2023年4月14日 徳島県鳴門市 EDF第515駐屯基地 会議室B――
「あ! まことんだ! やっほやっほーー!! 元気してたー?」
仙崎が部屋の扉を開けると、呑気で騒がしい声が開口一番に飛んできた。
「おお、桜か。なにやら会うのは久方振りの気がするな。まあ、元気かと言われるとどうにも答え辛いが」
結城桜の満面の笑みに対して、苦笑を浮かべる仙崎。
それはそうだ。
ソラスとの激戦から意識不明の中治療、ある程度の負傷と疲れが癒えたかと思えば要塞急襲により病院ごと移転、その最中軍警に拘束され丸一日の尋問、解放後数時間の睡眠を経て”会議室Bで原隊復帰と新たな辞令を受け取れ”という命令が下されたのだった。
慌ただしい事この上ない。
「よぉ。”英雄様”のご帰還だぜ? とりあえず、お疲れさん。入院先でまさかああも派手にやるとはなぁ」
からかうような感心したような声をかけるのは浦田和彦だ。
どうやら、レンジャー2全員がここには揃っているようだ。
浦田に声をかけるより早く、二ノ宮沙月が割って入る。
「ふふ、奈良の前線で整備兵連中から聞いたときには大層驚いたさ。まさかキミが、巨獣をも手玉に取る格闘術の使い手だったとは」
「……なぬ?」
仙崎は珍しくキョトンとした間抜けな表情を見せる。
それを皮切りに、小隊の仲間たちた矢継ぎ早に様々な話を始めた。
「だから違うっすよ二ノ宮軍曹。看護兵たちの話だと、超極秘のパワードスケルトンを装着して、足首を掴んでジャイアントスイングでぶっ飛ばしたとか」
「あ、あんたたちよくもそんな荒唐無稽な話を信じられるわね……? 噂なんか当てにならないわよ。ど、どうせ公表されてない新兵器かなんかで一発ドカンと吹っ飛ばしたんでしょ? そういう話、よく聞くもの」
「バーカおめぇだって噂話に翻弄されてんじゃねぇか。こういうのはな? とりあえず面白けりゃそれでイイんだよ。アタシは果敢にもソラスの大口の中に飛び込んで、内部からショットガンを連発して腹を突き破ったって話が好きだぜ」
「それ、鈴城軍曹がやりそうっすね」
「んだと水原ぁー! そんな常識外れのバカは仙崎だけで十分だろーが!!」
「私もそれやっていないのですけど!?」
二ノ宮軍曹、水原、細海、鈴城軍曹が次々に様々な説を唱える。
”ソラスを倒した英雄”と祭り上げられるのは、事実と違うものの真実の隠蔽には仕方のない事、と割り切ってはいたが、まさかこんな面白話になっているとは。
予想外の方面から殴られ、辟易とする仙崎。だがそのふざけたような空気に、疲弊していた自分の精神が落ち着いていくのが分かった。
「皆、歓迎はその位にしてやれ。仙崎。色々と言いたいことはあるが、憲兵共に絞られた後だろうから、そこは割愛してやろう」
レンジャー2指揮官、大林中尉の声で、弛緩した空気が引き締まる。
小隊長である大林中尉には、当然命令違反その他複数の罪状は、全部では無いもののある程度把握しているだろう。
「まあ、ひとまずだ。よくやった、仙崎少尉。貴様の行動は、日本を確実に救った。独断専行であっても、それには違いない。例え事実がどうあれ、真実がどこにあっても、EDFは貴様の事を”英雄”として扱う事に決めた。それは、貴様の行動が掴み取ったものだ。公表されていない事実があるとしたら、貴様にはそれも纏めて背負っていく義務がある。貴様が堂々と”英雄”として振る舞う事が、関わった者全てに報いる結果となる。それを肝に銘じておけ」
「はっ!」
大林中尉の厳しくも柔らかい眼差しに、両足を揃え敬礼で返す仙崎。
そう言われて、初めて実感が湧いてきた。
真実は軍事機密として秘匿される。
科学者たちの協力と努力、それぞれの思惑を持った勢力の協力は決して明るみに出る事はないが、それも含め、仙崎は結果を背負って行かなければならない。
「とはいえ、命令違反を含めた数多の軍規違反は決して褒められた行為ではないぞ。貴様も軍人なら、規律の中で成果を出す事に誇りを持て。いいな?」
「はっ! 重ね重ね、苦労を掛けました」
負傷離脱により直接の指揮を握っていなかったとはいえ、小隊長である大林中尉や中隊長、大隊長の責任も全く追及されなかった訳ではないだろう。
仙崎がこの扱いだ。不問となった可能性が高いと見てはいるがあまり勝手をしないように気を付けなければ軍人として長生き出来ない。
「まァそう固くなんなよ仙崎。戦場じゃよくある事だ。とはいえまさかこんな大金星を挙げて帰ってくるたァ思わなかったがな! 同じ部隊として鼻がたけーってもんだぜ。で? 実際あのデカブツとヤリあってどうだったよ? なんせ、日本にはまだ二体ほど怪生物ってヤツが存在しってからよォ」
「こら! ワシちゃん! その話は聞いちゃだめって言ったでしょ! 軍事機密に抵触するんだからさ!」
「うるせーなわァってるよそンぐらい仙崎のヤツが多少融通聞かしてくれンだろ。お前、オレが上官だって知ってる?」
「ふんだ。ホンット危ない橋渡るの好きなんだからワシちゃんは……あ、嘘です大林中尉ちゃんと上官への敬意は払ってます命令には従います敬語使いますぅ……」
鷲田少尉にめちゃくちゃタメ口を使った桜は、大林中尉に無言の圧力を受けてしゅんしゅんと小さくなった。
「まったく……他の部隊が居ないから見逃すが、せめて俺が見てる前だけでも意識しろ。士気に関わる」
「まあまあ。締め付けすぎるのも良くないですよ。特に二人の行く末には、個人的な興味もあるものでして、ね。ふふふ」
桜と鷲田の二人をうすら笑いで見守り大林をなだめるのは、ゆらりと現れた二ノ宮沙月。
少し見ていない間に何かあったのか? と勘繰る仙崎だが、目線で釘を刺されたので何も言わない事にする。
そんなやり取りをしていると、扉を開けて誰かが入って来た。
「すまない。少し遅れた」
荒瀬軍曹と、細海を除く分隊の部下三人だ。
「軍曹。まだ五分前です」
「みんな揃ってるみてぇだな!」
「馬場さんが珍しいビークルがあるから見に行こうって言うから……」
青木、馬場、千島の三人も入室する。
どうやらこれで、現在生存しているレンジャー2は全員出揃ったらしい。
「仙崎。話は聞いたぞ。多くを語る事は禁じられているが、頑張ったな」
「同じEDF兵士として、誇りに思う。大勝利だな」
「おォ! クソみてぇな戦場に連れて行かれた時はどうなる事かと思ったが、まァ結果オーライってヤツだ!」
「うぅ、馬場さんが口を滑らせないか不安すぎる……。いえ、とにかく、貴方の事は本当に尊敬しています。仙崎少尉殿」
軍曹を始め、三人がそれぞれそう仙崎を労った。
同じ部隊と言うのもあるが、現場の反応はそれぞれそのようなものだ。
何らかの重大軍事機密がこの討伐作戦に関わっている事を重々に察しながら、それでもそれを成した仙崎と、関わったであろう全ての人間に対する礼は欠かさない。
かと言って、必要以上に探りを入れたりもしない。
たまに興味本位でからかう人間もいるが、まあその程度だ。
そして仙崎がそれを成したというプロパガンダは、彼のこれまでの活躍を知る人間から見てほぼ真実であると考えられている。
……実際の所、ソラスへの
故に仙崎はソラス討伐における自身が占める成功要素はそれほど大きくはなく、むしろ最後のほんの少しの後押しをしただけだと考えている。
普段の尊大な態度と裏腹に、不必要なまでの自身の過小評価。
仙崎が抱える歪みがそこに在るが、その主観評価とは裏腹に、実際仙崎が果たした仕事の部分は大きい。
単純なダメージソースの話になって来ると轟砲が、そしてその後の戦いでもソラスの体力の大半を削ったのはレイピアを持つ瀬川になって来るが、どちらも仙崎無しでは成立しえなかった。
加えて、未来の事を視野に入れたこのタイミングでの禁忌兵器使用の上でのソラス撃破、という大局的視点に立ってみても、仙崎の功績は計り知れない。
今の日本戦線の状況を整理すると、結果的に大阪・神戸を放棄してしまった現状から、ソラスを必死になって撃破してその二都市を守り切った事にさして意味は無かったようにも見える。
だが、ソラス撃破によって稼いだ時間によって、大阪・神戸の人員・設備・物資の多くが難を逃れた事は間違いが無い。
もう一つ。
このタイミングでの禁忌兵器使用は、人類に新たな可能性を示すものとなった。
人類がより高度なフォーリナー由来技術の積極活用に踏み出したことは、最終的に人類に勝利を運ぶ上での重要な分岐点になる。
仙崎はそれを、人類により有益な方に進む舵を切ったのだ。
「……それで、我々は一体、何のためにここに集められたんですかね?」
仙崎への近況報告が粗方終わったタイミングで、千島がぽつりとつぶやいた。
その言葉には、皆明確な回答を持っていなかった。
「さぁな。新たな辞令と言う事だったが」
大林中尉が辞令書を開いたところで、新たな客人のノックが響いた。
ようやく上官のお出ましか。そう思ったところだが。
「失礼します。第一降下翼兵団第二中隊第二小隊。現着しました」
入室したのは、ペイルウイング2――瀬川が所属するウイングダイバー小隊だ。
小隊長の冷泉中尉、部下の瀬川少尉、白石少尉、仁科少尉が部屋に入る。
「失礼します! 第105機械化歩兵連隊スティングレイ1。柳中尉以下三名、入室致します」
また新たな部隊が到着。
現れたのはフェンサーのスティングレイ1小隊。
メンバーは小隊長の柳中尉と、部下の御子柴少尉、栗宮少尉、神谷少尉。
そのうちの御子柴少尉とはバゥ・ロード討伐に同席した事もあり、何かと縁がある。
ちなみにウイングダイバーもだが、今は室内なので装備は外している。
ノックは更に続いた。
「やあやあ失礼するよ。前の二人に倣って、堅苦しい自己紹介は必要かな? 第四師団直属、独立第2エアレイダー小隊の保坂少佐以下五名、呼ばれて来たよ。うん、時間ピッタリだ」
仙崎と先の事件で相対したばかりの胡散臭いエアレイダー兼曙光會幹部、保坂誠也が薄っぺらい笑みを浮かべて入室。
その後に続くのは、無表情の副官鏑木、おどおどする運転手宮藤、まだ見たことも名前も分からない二人に続き……。
「きゃははっ! マコっちゃんじゃーんお久~~! 首、元気してた~? あーし戦いたくってしょうがないよ~~きゃはっ!」
「げぇぇぇ!! きっ、きさっ……――いいや貴様の事など知らん! 断じて知らん!! おい保坂どういうことだっ! 何故あの殺人首狩り女が!?」
知らんと言った割に即座に保坂を問いただす仙崎に、瀬川は仙崎をまた知らん女かとじーっと睨み、桜と二ノ宮と浦田と鈴城は面白そうな事が起きたと目を輝かせ、大林と軍曹はまた面倒そうな事が起きたと頭を抱えて深い溜息を吐き、馬場と千島はおいあいつってこの前のあれか?みたいですね、えっ仙崎少尉と知り合い?と顔を見合わせ、その他の人間は我関せずか理解が出来ずひとまず見守る姿勢、と言った具合の空気が辺りを包んだ。
そんな微妙な空気の中、
「遅くなって悪かった。全員揃っているな? 生憎多忙の身でな、時間が無い。労いたい気持ちは山々だが、長々とした前置きは嫌いでな。さっそく本題に入らせて貰おう」
入室して、礼も挨拶も早々に行ったのは、EDF極東方面第11軍、作戦指令本部の司令官を務める、榊中将だった。
中将直々の、しかも副官も付けずにたった一人でのブリーフィングに、四つの小隊は何が起こるのかと身を固くした。
最高階級がせいぜい中尉止まり(保坂は変人なので例外とする)のこの集まりから見たら、まさに雲の上の軍人、文字通り日本のEDFのトップの存在に緊張で震える。
その中で直接やりとりをしたことがある仙崎、個人的に親しい荒瀬、そもそも礼節がぶっ壊れている保坂以外は、皆何事かと身を構え緊張の空気に包まれる。
「貴官ら四小隊を集めたのは、新たな人事異動命令に従って貰う為だ。それぞれ、レンジャー、ウイングダイバー、フェンサー、エアレイダーの兵科の中から、私の判断で最も最適だと思う小隊に、集まってもらった。この中から更にメンバーを選別し、独立特殊遊撃小隊、通称――ストームチームを新たに結成する!」
はいーーーと言う訳で、やっとこストームチーム結成の話が書けそうです!
長かったね!
相変わらず雰囲気ブチ壊しなメタ的話をすると、ストームのエアレイダー枠はずっと門倉大尉にしようと思ってそのつもりで活躍ちょいちょい入れてたんだけど、
キャラのバランス、ネームドの部下、インパクト、後の展開に繋げられる可能性、関係性、などなど考えた結果まあ保坂が最適かなと
ストームチームがずっと同じメンバーとも限りませんし(意味深)
前にも言ったかもだけどEDF5原作だとストーム3グリムリーパー、ストーム4スプリガンなんだけど彼らは部隊名がかっこよくて消したくないので少なくともこのタイミングではまだ独立部隊として頑張ってもらいます。
そんなわけで、ストーム結成話を次回にやるのでまだもうちょっと続きます!
その後は瀬川と仙崎の話、ニコラヴィエナの反応の話、榊と戦略情報部と総司令部の話、科学者たちやEDF暗部勢力のその後の話、なんかの小話をちょろっと短めに(出来れば)やってから次の歩行要塞編へ向けて頑張りたいですね!(全部出来るかどうかは不明……)
あと設定集とかも書き直したり作ったり本編に反映させたり要所要所書き直したり編集したりしてぇのだ……!