いやいやシンプルイズベスト!
今回は戦闘無しの場繋ぎ回みたいな感じです
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レイドシップを撃墜したバレイル3小隊は、独断で動いた在日米軍部隊、第二ストライカー旅団戦闘団の常識外れの敵地極低空飛行空中投下策戦によって救出され、無事最寄りのEDF基地である前哨基地2-6へ移送された。
移送した部隊とは別に敵地へ残った米軍部隊はそのまま墜落地点を確保し、巨大生物を迎撃し続けた。
直後、応援として駆け付けた第7歩兵師団の二個連隊が戦闘を開始し、たまたまレイドシップのいなかった戦線を大きく押し上げる。
そして米軍輸送部隊が残骸の一部を回収し、座間キャンプまで退却に成功する。
一方EDFはレイドシップ一隻を撃墜するものの同様の作戦を行える余力は無く、JR横浜線に新たな防衛線を築き上げるに留まった。
これにより、スチールレイン作戦は一応の終結を迎えた。
作戦終了後、残骸を巡ってひと騒動起こるかに見えたが、在日米軍司令官バーグス中将がEDFへの無償譲渡を表明したことにより事なきを得た。
全地球防衛条約にも、フォーリナー由来の技術は地球防衛の要であるEDFに優先権があると記されてはいるが、バーグス中将の言葉が無ければアメリカ本国の反発は必須だっただろう。
一部の政治家からは嫌われている彼だが、その能力は確かに評価されている。
こうして、レイドシップの残骸は無事EDF先進技術開発研究所へ送られることになった。
1月23日。
EDF欧州方面軍が極東方面軍を参考に、ウイングダイバー部隊のレイピアを中心とした接近戦術でレイドシップを撃破。
同様に極東方面軍はそれを戦術として確立し、最小の時間と戦力で再びレイドシップの撃破に成功。
これを皮切りに、世界中のEDFでレイドシップへの反撃が始まった。
2月3日にはアメリカ軍が自力でレイドシップに奇襲をかけて同時に二隻を撃破するという戦果を挙げた。
これはEDFの戦力を借りずに国軍が行った初の撃墜であった。
レイドシップ撃墜の戦術は、別名”
土地の狭い日本関東戦線では自然と行われてきた戦術だったが、レイドシップ撃墜を研究し確立された戦術でもある。
10~20数名で構成された4兵科混成部隊が、航空支援の元一気にレイドシップ直下まで進み、直下を殲滅。
ハッチが開いた際に高火力の一撃を叩きこんで離脱する、という一撃離脱の戦術だ。
これは殆ど、荒瀬が即興で考えた作戦を元にしている。
潤沢な補給と支援の元で行われるこの作戦は予想以上の効果を発揮し、後のEDF少数精鋭ドクトリンの元になったとも言われている。
――二週間後 2月3日 神奈川県横須賀市 EDF軍病院(旧横須賀市立病院)――
あの激戦から二週間。
私はまた横須賀の軍病院で治療を受けていた。
ボロボロのアーマーで酸を喰らっていた私は、全身を酸に蝕まれていたが、EDFの高度な医療技術によって今はもう動けるようになった。
そんな重傷者がここに集めらたため、当時は部屋は埋め尽くされ、至る所でうめき声が聞こえ、衛生兵は走り回っていたものだ。
最近はその姿も落ち着き、戦況が好転しているのを肌で感じる。
今私が居る大部屋にも六人の負傷者が存在し、そのうちの一人浦田は薬で眠っていた。
「えーと、Gの163番……163番……あ、いた! あ、あの!」
少し暇だなと思った矢先、可愛らしい声が私の耳に届く。
「君は……村井茉奈、ではないか。久しいな」
そこには、まだ民間人だった頃に偶然助けた少女がいた。
村井茉奈。
力及ばず、両親と姉を救う事が出来なかった後悔は今も残っているが、そんな私の懺悔を望んでここへ来た訳ではないだろう。
「うん。お久しぶりです誠さん。はぁー、よかった。君は誰だ? なんて言われたらどうしようかと思っちゃった」
緊張していたのか、大きく深呼吸する彼女。
それにしても、見たところ元気そうで何よりだ。
少なからず言葉を交わしていたし、あの戦闘中ほぼ共に居たのでその後の安否は気になっていたのだ。
「ぬぁははは! 記憶力には自信があるのでな!」
「誠さんも元気そうでよかった。はいこれ」
彼女は背中に隠していた花束を私に渡してきた。
予想外で少し驚きつつ受け取った。
「これは……」
「えへへ。お世話になりましたっていう私の気持ち。私が助かったのは、誠さんのお陰だから……」
顔を綻ばせながら嬉しそうに話す。
その彼女を見ていると、救えなかった命もあったが、それでもあの時頑張った意味はあったのだと私の中に、確かに自身のようなものが生まれた。
「そうか。ありがたく貰っておこう。病院を出たら、部屋にでも飾っておくとしよう」
私は花束を受け取り、そっとそばのテーブルに置く。
「あれ。もしかしてもう退院なの?」
「そうだな。中々手ひどく喰らったのだが、最近の医療技術は目覚ましくてな。二週間ほどかかったが、もう復帰できそうだ」
完治とまでは行かないが、一週間ほど前から基礎トレーニングなどは欠かさず行っている。
復帰後も違和感なく戦えるだろう。
「へぇー。それにしても誠さん、いっつも病院に居るようなイメージなんだけど。一か月くらい前もまだ病院に居なかった?」
「そういう訳でもないんだが……。ああ、その頃は確か、まだ出会った時の怪我でリハビリ中でな。今回の入院はまた別件だ」
しかし、復帰してすぐこんな大怪我を負うとは。
私もまだまだという訳だな。
「ふぅん。軍人さんだから仕方ないけど、大変だねぇ。死んじゃ嫌だよ?」
「ぬぁははは! 私が死ぬなら、その時は人類が絶滅する時かも知れんな」
私程の男が死ぬというなら、それは余程酷い戦況で無ければありえんしな!
「あはは、まあ、誠さんしぶとそうだから大丈夫だよね! ……ホントに、大丈夫だよね?」
声のトーンを下げて、心配そうに聞く。
茶化している場合ではなさそうだ。
「……ああ。約束は出来ないが、まあ簡単に死にはしないさ。迷惑でなければ、たまに顔を見せに行くとしよう。今は地下8階の多目的倉庫か?」
「うん。横須賀近郊の臨時避難所になってるからね。今は確か……1万人くらいいるのかなぁ」
極東本部の地下8階は、嘘のような広大な敷地になっていて、そこが臨時避難所として機能している。
元々日本にあるEDF基地は、災害などにも機能するよう設計されていて、避難所も兼ねているところが多い。
極東本部もそんな基地の一つだが、首都圏にあるという事もあり、その規模はケタ違いだ。
「一万人か……結構な大所帯だな。生活は不自由していないか?」
「うーん。全然困った事無い訳じゃないけど、物資も豊富だし、地下基地だしすぐそばにEDFが居るから、案外居心地いいよ。地上は焼野原だから、戻るに戻れないしね。友達も何人か生き残ってたし、今は友達のママにお世話になってるよ」
人差し指を頬に添えながら、避難所の様子を思い出して淡々と語る茉奈。
しかし、半年前も思っていたがやはり強い子だ。
両親家族や、知り合いの殆どを亡くした事は想像に難くない。
それでいて、感情を失ったり冷めている訳でもない。
暖かい感情のまま、しっかり現実を見据えている。
「君は、本当に強いのだな……」
気づけば、私はそんなことを呟いていた。
「えっ、突然どうしたの?」
しまった、と思ったときには、もう茉奈は私を不思議そうに眺めていた。
「いや。そうだな……。以前、火事で家族を失った事があって。その時私は、感情を凍り付かせる事でしか、その事実を受け入れられなかったのだ。だから、君のその柔らかい感情は、凄く強いと思うのだ」
一回りも年下の少女に何を語っているのか……と思いながら、しかし彼女はしっかりとその言葉を聞いてくれていた。
「そっかぁ、誠さんも家族亡くしちゃったんだ。私もね。やっぱり凄くショックだったんだよ? でもなんか、それ以外にもびっくりするような事いっぱいあって。それにね、私がこうしていられるのって、誠さんのお陰、なんだよ?」
「私の?」
茉奈は、少し顔を赤くして静かに頷いた。
「ホントはもっと悲しかったんだけど、頑張ってる誠さんの姿見て、しゃんとしなきゃなぁって思えるようになったんだ。だから、ありがとうございます」
ぺこり、と茉奈は小さく頭を下げた。
ベッドから見ている私は一瞬どうしたものかと思ったが、その礼は素直に受け取ろうと思った。
私もかつて、そう感謝した人が居たからだ。
それからしばらく、茉奈と他愛ない話をした。
避難所の皆の事とか、分隊の変なヤツの事とか。
その流れで、なぜか電話やメールアドレスの交換なんかもした。
「ところで、EDFって何歳から入れるの?」
会話が落ち着いたころに、唐突に聞かれた。
「む? 受け付けは18からだが……入りたいのか?」
「そうだねぇ。別に仇討ちとかじゃなくてさ。私も誠さんみたいにかっこよく誰かの助けになりたいなぁって」
本人の前でそんな事言うのはリアクションに困るのだが……意外とそこら辺攻めてくる娘なのはこの数分の会話で把握済みだ。
「……そうか。誰かの為になる仕事など、別にEDFでなくとも……なんてことは既に分かっているか」
「お、さすが誠さん。理解が早いね。まぁ、私14歳だし、まだ4年も掛かるんだよねぇ。その頃にはこの世界、平和になってるかな?」
理解が早いのはお互い様だという事はさておき、4年後か……。
正直想像も付かん。
果たしてこの戦争は終わっているのだろうか。
巨大生物はともかく、未だマザーシップ攻撃の糸口すらつかめない現状では、未知数だ。
「さあな。だが、少なくとも私は、君を戦場へ送り出さない世界の為に、命を懸けると誓おう」
「……やっぱり誠さんは、かっこいいな……。じゃあ、また来るから! 次もいっぱいお話しようね!」
呆けたような表情から気を取り直し、足早に去っていく茉奈。
「ああ。連絡、待っているぞ」
最後にそれだけ言って茉奈を見送った。
「脈アリだな」
隣のベッドに座っていた浦田の声だ。
どうやら完全に寝たふりだったようだ。
「余計な事を言うな。いつから聞いてた?」
「いつからも何も、隣なんだからずっと聞こえてたって。で、どうすんだよ。結構かわいい娘じゃん。あれ絶対お前の事好きだぜ」
何やら楽しそうにニヤニヤしながら肘でつつく動作をする。
「やはりか……。しかしなぁ、相手はまだ14だぞ? 中学生だぞ?」
しかし、やはりかぁ……。
本人にその自覚があるのかどうかは分からんが、客観的に見て、そういう事なのだろう。
まったく、今まで26年間恋だの愛だのと無縁の生活を送ってきたというのに、突然恋に落ちたり好かれたり、忙しい事この上ないな!
「14歳だって恋ぐらいするだろ。しかも命を懸けて自分を守ってくれたナイト様だろ? っかー! うらやましいぜ! なんでお前ばっかり!! 顔は俺の方が良いのに!」
「さらっと自己肯定入れてきたな……否定はせんが」
実際浦田は黙っていればかなりイケメンの部類に入るだろう。
気軽な付き合いとしてよく出かけたり遊んだりする女友達も多いそうだ。
「しかしまあ、私には瀬川がいるし、14歳では残念ながら恋愛対象外だ。諦めて貰う他あるまい」
「ま、そうだろうな。これで茉奈ちゃんを選ぶとか言われたらビビるわ。恋愛は自由だから否定はしねぇけど。それより、葵ちゃんとの仲はどうなったんだよ。付き合うぐらいまでは行ったのか?」
ちゃっかり彼女の名前まで覚えたらしい。
そしてまぁ、意外と理解の懐は深いようだ。
そんな浦田は今度は瀬川の話に切り替える。
その手の話はやっぱり好きらしく、またニヤニヤしながら聞いてくる。
「いや、まだメールと電話番号を交換しただけだ」
「んだよつまんねぇなー。ま、前回あんだけズタボロになってんだからしょうがねぇかー……。で、手ごたえはどんな感じよ」
「それが、なかなか本心を見せてくれなくてなぁ。まったく、ツンデレというか何というか……そう、天邪鬼だ! 奴はこちらが思い通りに行かなくて悶々としてる様を見て楽しんでいるのだ! おのれ瀬川!」
「尻に敷かれるタイプかね、こりゃ」
冗談ではない!
こちらもそれなりに反撃しているから、力関係は対等の筈だ。
いや、やはり惚れた弱みに分こちらが不利か?
そんなことを考えていたら、目の前に人が立っていた。
「やあ仙崎くん。元気そうだね」
「はっ結城大尉! 病床から失礼します!」
第88レンジャー中隊指揮官の、結城実大尉だった。
私と浦田は、ベッドに座りながら敬礼する。
「うん。体力回復は重要だ。そのままで聞いてくれ。浦田くんもいっしょに」
「はっ!」
上官の前という事で、浦田もさっきまでの弛緩し切った顔を引き締める。
「本当はレンジャー2全員に纏めて話したいんだけど、余計な体力を使わせたくなくてね。先のスチールレイン作戦終盤における、レイドシップ撃墜の功績を検討して、部隊員全員を一階級昇進させることに大隊長の許可を貰ったよ。唯一、荒瀬軍曹には断られたんだけど。そんなわけで、一週間後に君達二人と妹の桜には、軍曹への昇進試験を受けてもらう事になった。よろしいかい?」
「問題ありません」
「了解しました!」
昇進か。
レイドシップを撃墜したことからこんな話は来ると思っていたが、しかし私はまだ軍に復帰したばかりなので、急と言えば急な話である。
「いずれは君達それぞれを分隊長にした部隊を編成する予定だけど……、仙崎は軍に復帰したばかりだし、桜は伍長に昇進したばかりだから、すぐってことは無い。ただ、人員が少ない部隊もあるし、戦況が落ち着いてるまに大規模な再編成があるかも知れないから、そのつもりで。質問はあるかな?」
「はい。噂は色々流れてますが、具体的な戦況はどんな感じですか?」
浦田が聞く。
本人が望んでない事もあって、若干砕けた口調になっている。
「ああ、当然気になるよね。余り詳しい話は避けるけど、一言で言うと優勢だよ。君たちがレイドシップ撃墜の糸口をつかんだことで、日本でも、世界各地でも撃墜例が急増している。関東周辺は今は日光辺りまで前線が進んでるし、このままいけばインセクトハイヴ攻略の日は近いと思ってる。ただ……ひとつ気になる話があってね」
結城大尉は少し声量を下げる。
余り良い話ではなさそうだ。
「まだ非公式だけど、どうやら欧州で新種の巨大生物が現れたらしいんだ」
「新種、ですか……。どのような特徴で?」
思わず眉をひそめる。
このまま順調に巨大生物駆逐と思っていたが、そうはいかないのかもしれない。
「蜘蛛型で、非常に戦闘能力が高いらしい。まだ情報が錯綜しているらしくて、正確な情報は伝わってこないけど、向こうはだいぶ混乱しているみたいだ」
「厄介ですね……。日本に来る可能性はあるんですか?」
浦田が聞いた。
欧州だけで食い止められればいいが、敵には往来可能なレイドシップがある。
下手をすれば、このまま世界中に拡散しかねない。
「さあ、なんとも。だから上は今、出来るうちになりふり構わずインセクトハイヴを攻め落とす強襲派と、再編成を行って時間をかけて堅実に攻略する慎重派で意見が分かれるトコさ。どっちが正しいのか、僕には判断付かないけどね」
何が正しいかは、結城大尉のもっと上が判断する事だ。
「時間をかければ、その新種が日本にも渡来する可能性がある……そういう事ですか」
「かも知れないってレベルの話だろうけど、来たら戦況は悪化するだろうね。おっと、そろそろ行かなくちゃ。じゃあ二人とも、お大事にね」
一抹の不安を残し、結城大尉は病室を去っていった。
「新種かぁ~。蜘蛛型とか普通に気持ち悪ぃな」
「まったくだ。虫は苦手か?」
「好きじゃねぇな。鈴城軍曹とか実は虫超苦手らしいぜ」
「そうなのか? それはなんとまあ、見かけによらないと言うか」
彼女なら、虫如き片手で捻り潰しそうだが。
そんなことを口にしたら、きっと鬼の形相で脚が飛んできそうだが。
「ギャップ萌えだよな? 颯爽とオレが虫退治して、惚れ直されるとかねぇかな?」
「無いだろうな。虫ごと回し蹴りでも喰らうのではないか?」
「ありそうだな……。新垣を盾要員として持っていくか」
彼は喜ぶしいいかも知れない。
そんなくだらない会話をしていたら、目の前に人が立っていた。
というかまたか!?
「やあ、探したよ。君が仙崎誠君であっているかい?」
「はい、そうですが……どちら様で?」
ずぼらな科学者、という印象を受けた。
うわ、という声が出そうになるのをなんとか抑えた。
何というかまず、一目見てキャラが濃い。
薄汚れたよれよれの白衣、病室にも関わらず火のついた咥え煙草、垂れ下がった紫色の眼鏡の奥は、死んだような輝きの無い瞳と落ち窪んだ隈がある。
猫背だが身長は高く、髪も長いが手入れはしていないらしくぼさぼさだ。
しかし臭くは無い、最低限の清潔は保っているようだ。
と、容姿の説明だけでこんなに使ってしまうほどの見た目に、私は警戒心を強めた。
そして危機を察知したのか浦田に至っては寝たふりを決め込んでしまった。
「えぇとワタシは……面倒だから、これを見てくれたまえ」
説明を早々にブン投げ、名刺を渡してきた。
EDF先進技術開発研究部第一室室長 茨城尚美技術少佐。
「しょ、少佐殿でありましたか! これは失礼!」
急いで敬礼をする。
開発部のトップではないか!?
超技術の兵器……我々が使っているアーマースーツや先の戦いの決め手となったゴリアスS改などを開発しているEDFの生命線のひとつ!
世界でもトップクラスの技術を使う部署、そのトップ!
そんな超重要人物がなぜ私に!?
「いいよそういうの。ワタシは技術少佐。兵士でも将校でもないから、オマケの権限みたいなもんさね。で、そんな面倒臭がりで多忙なワタシがココへ来た理由、分かる?」
皆目見当が付かない……訳ではないが、相手の真意が読めない。
ここは先に流れを見ておこう。
「さあ。なんでしょう」
とぼける事にした。
接点と言えば撃墜したレイドシップの残骸が開発部で研究されている事と、私がその時使ったゴリアスS改くらいだろうか。
「いやね、キミのお陰で研究がはかどっているから、一言礼でもと思ってね。アレを撃墜したの、キミだろう?」
「作戦立案は荒瀬軍曹ですが……。まあ確かに、最後の一手は私が」
あの混沌とした状況でシップを撃墜出来たのは凄いと言えば凄いが、撃墜出来たのは荒瀬軍曹の作戦があったからだ。
あの作戦が無ければ、あそこまでの状況を作る出すことは叶わなかっただろう。
「その荒瀬ってのにもさっき会ったよ。キミと同じだ」
「私と同じ……?」
「物事を成し遂げようとする強い意志を感じる。英雄の眼さ」
「英雄……?」
さっきから彼女は何を言っているのか……。
くつくつと笑いながら茨城博士は話す。
「くくっ、凡人に興味は無いけど、キミは違うようだ。研究の片手間の楽しみとして、キミの活躍に期待しているよ」
そう言い残して、茨城博士は去っていった。
「……なんかヤバめのねえさんだったな」
しれっと寝たふりを止めて私に話しかけてくる。
「ふっ、英雄、英雄か……どうなのだろうな……」
「まあシップ撃墜を期に戦況が変わったのは事実だし、十分英雄だろお前は。ちょっと癪だけどな」
「それは結果的にはそうなのだろうが。勝手に持ち上げられても些か困るな。しかしあんなのが開発部のトップなのか……」
やはり、馬鹿と天才は紙一重、という奴なのだろうか。
まあ、そんな天才のやる気に貢献したと思えば、これはこれでいいのだろうか。
そんな訪問者を捌ききった一日を終え、私は次の日から晴れて原隊復帰となった。
正直いらない回かも知れないけど、なんとなくキャラ掛け合わせるだけでも書いてて楽しいのです