全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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第二十三話 変異型襲来

――ガンシップ出現前 2月6日早朝 東京都江戸川区――

 

 

「見てみろよ。……クソ、更にデカくなってやがる」

 一人の陸上自衛官が、同僚に測量器付双眼鏡を渡す。

 場所はジェノサイドキャノンによって焦土と化した江戸川区。

 双眼鏡を受け取った自衛官は、枯れ果てた荒川を越えたその先にあるものを見て顔をしかめる。

 

「350mか……ついに東京タワーを越えちまった。ったく、一体どこまでデカくなるのやら……」

 

 焦土平野の彼方に、ひと際高くそびえる歪な構造物があった。

 陸上自衛官が観測用の双眼鏡で覗いているのは、東京都千代田区に建設された巨大生物の巣、インセクトハイヴだ。

 土砂や鉱石のような物質で作られたその構造物の周囲には、地面が見えないほどの巨大生物がせわしなく動いている。

 更に構造物の側面にも巨大生物がひしめいている。

 虫が苦手な人間が見ればぞっとする光景だが、ここに居る五人の自衛官は既に感覚が麻痺していた。

 

「これじゃ、ここも飲み込まれるのは時間の問題ですよ一曹。ここを取り戻すの、一体いつになるんすかねぇ。それまで俺、生きてりゃいいっすけど」

 

 日本では本格的なインセクトハイヴ攻略作戦は行われていない。

 海外でも、ロシアの核攻撃が唯一の成果だ。

 アメリカやオーストラリアでは何度かインセクトハイヴに直接砲撃を行ったが、生半可な攻撃では損傷を与えられず、巨大生物をいたずらに刺激するだけに留まっている。

 

 その上、地下にも巣穴が広がっていて、地上に出ている個体はほんの一部に過ぎないというのが現実だ。

 

「ぼやくな大竹。フォーリナーの相手はEDFに任せときゃ良いんだよ。その分、俺達はこういう地味な調査と記録を……ん?」

 その時、双眼鏡を除いていた一曹の動きが止まる。

 

「どうした中沢」

 観測器を調整していた自衛官が聞き返す。

 

「国本三尉、羽です、羽が生えた個体が……」

「何!? 貸せ、どこだ!」

 国本三等陸尉が、双眼鏡を奪うようにひったくる。

 

「右上の方、開口部から這い出てきてます!」

「本当だ……。他の個体と明らかに違う。まさか、新種なのか……? 武田、無線を持ってこい! すぐに本部に連絡だ!」

「はい!」

 武田と呼ばれた自衛官が高機動車の方に走っていく。

 

「あの羽、まさか奴ら、飛べるのか? だとしたら、大変な事になるぞ……」

 国本三尉の額から、冷や汗が流れ出した。

 

 

――ガンシップ出現直前 2月6日  神奈川県相模原市 EDF陸軍病院――

 

 

「多すぎ」

 私の目の前に居る無表情な彼女、白石玲香少尉はそう一言だけ放った。

 

「こんちゃ~す! 迎えに来たぜ玲香ちゃん! オレと一緒にドライブしない?」

「やっほ~! うわ! ねえあれ見て見て! あそこにいるのニクスレッドボディじゃない!? ちょっと見に行っていい!? いいよね!」

「おい大将、桜のやつ行っちまったぞ?」

「ええい葛木! 桜を連れ戻して来るのだ!」

「分かったよ! 待ってぇ~!!」

 

 浦田がナンパのような挨拶を、桜がニクスに向かって走り出し、馬場がそれを止めもせず見送り、私が葛木に司令を下し、葛木が女のような声で走り出す、ただし葛木は男だ。

 

 そんなカオスな状況に白石は、

 

「?」

 無表情ながらもまったく理解できないという表情をしていた。

 

「ああえっと、騒がしくてごめんね~。実はさー」

 私の隣に居た瀬川が話し出す。

 

 いい加減このカオスな状況を説明すると、そもそもの発端は我々の昇進研修が始まる事だった。

 レイドシップを撃墜したレンジャー2の功績は非常に大きいと本部にも評価され、まず初めにレンジャー2の伍長組が昇進する事になった。

 昇進メンバーは2-1の私、浦田、桜と2-2の馬場、葛木の5人だ。

 

 ここ数日間我々は西関東防衛線の司令部となっている前哨基地2-6を拠点として、防衛線に押し寄せる巨大生物の駆逐とレイドシップ撃墜を繰り広げていた。

 私や鈴城軍曹などの負傷者が徐々に復帰しつつの戦闘を続けていたのだが、本日極東本部にて昇進研修が始まるという事で、一時極東本部へ戻る事となった。

 

 その道中で本日退院予定のペイルウイング2隊員の白石玲香少尉をピックアップしてほしいと頼まれたのだ。

 正直かなり横須賀までは遠回りどころかまるっきり反対方向なのだが、行かねばならないいくつかの理由があった。

 

 この陸軍病院は防衛線付近に位置し、戦力も豊富だが頻繁にはぐれ巨大生物が発見される事。

 前線に近いため負傷者も多いが、危険なので移転が進んでいる事。

 そのせいで混雑し空きの車両が無く、危険なので公共交通機関も利用不可能。

 更に今も前線では戦闘が続いている為、暇な兵士など居ないという事……我々以外には。

 

 そのような理由で、この六人で白石を迎えに来たという訳だ。

 ちなみに瀬川は白石と同じ部隊という事で付き添いで来た。

 手続きなどでどうしても同じ部隊の人間が必要なのだ。

 

 ちなみに瀬川だけで行かせるのも却下された。

 道中ではぐれ巨大生物との遭遇が懸念されるので、最低の戦力を整える必要がある。

 その為、我々も武装状態である。

 

「そ。どうも」

 

 と、私の説明よりざっくりした話を瀬川から聞いた白石は、少しだけ我々に対し礼をした。

 たった一人に対し大人数で押しかけた事に驚いたのだろうか。

 

「まったくもー、足速すぎだよ桜ちゃん」

「あ~レッドボディ、イカスねぇ! あの軽そうな身のこなし見て見たいなぁ~! あ、れーちゃんやっほ~! 入院生活どうだった?」

 葛木に連れてこられた桜が白石に挨拶する。

 その様子だと新型のニクスは思う存分堪能したらしい。

 

「退屈」

「だよね~。でもここってたまに巨大生物に襲われるって聞いてたけど大丈夫なの?」

 

「ん。アレが倒した」

「えぇ~っ! レッドボディが戦ってるとこ見たの!? いいな~、どんなんだった!?」

 

「忘れた」

「忘れたの!? 嘘でしょ!? 今伝えるのめんどくさいって思ったでしょ!」

 

「…………」

「無視か! 何そのすまし顔!」

 

 などと白石と桜が喋っている間に瀬川が受付を済ませ、我々は機甲部隊から借りたグレイプに乗り込む。

 運転は浦田が担当した。

 

「それにしても、荒瀬軍曹が昇進を断るなんて意外でしたね~」

 グレイプでの移動中に、葛木が呟く。

 

「ああ、軍曹なぁ。実はちょっと込み入った事情があるみたいでよ。ほら、基地司令官の榊少将知ってるだろ?」

 馬場が荒瀬軍曹について話し出す。

 

「あの基地に居て知らない人間居ないわよ。で?」

 瀬川も多少興味があるようだ。

 もっとも、あの場に居て荒瀬軍曹に感謝しない人間はいないだろうな。

 

「あの二人、同じ士官学校を卒業した同期らしいぜ? それがなんか事件だが事故だかがあって、当時大尉だったあの人が、一気に軍曹まで叩き落されたんだと」

 

 なんと……!

 確かに、シップ撃墜の時に本来要請出来なかったアルテミス攻撃機を無理やり引っ張ってきたり、上層部にコネでもあるのかと思っていたが、まさか榊少将と同期だったとは……。

 

「で、その事件って?」

 白石が聞いてくる。

 いったい大尉から軍曹に一気に降格処分された事件とは一体なんなのだろうか。

 

「俺も気になるんだが、そこまでは話してくれなくてよ。まあ、そんなこんなで軍曹もしばらくは昇進する気はねぇみたいだな」

 しかし、シップ撃墜最大の功労者が昇進を拒むとは、なんだか申し訳ない気がしてきたな。

 まあかくいう私も直接トドメを刺したとしてちょっとした有名人になってはいるが、その実情は瀕死のシップにたまたま悪あがきの一撃が当たっただけの事だ。

 

 とは言え、あそこでゴリアスS改を発見した私の判断は我ながら最良だったと思っているが。

 

「はぇ~。そんな理由があったんだ~。ならなおさらどんな事件か気になるよねぇ。ウラスケなんか知ってる?」

 桜が珍しく浦田に話を振る。

 ちなみに渾名の理由は”浦”田と”スケ”ベらしい。

 スケベとか最早死語ではないのか?

 

 話を振られた浦田は、しかし無言だった。

 

「……ウラスケ?」

「やべぇッ!!」

 浦田は急ブレーキを踏み、全員が前のめりになった。

 急停車だったため、車体が斜めになってドリフトするかのように止まる。

 

「何があったの!?」

「あの丘の向こうを見ろ! 赤色の……巨大生物が居やがる!」

 赤色!?

 浦田の指し示した方向を見ると、確かにそこには赤い甲殻を持った巨大生物が居た。

 

「ホントね、赤い……」

「確か欧州では、新種の巨大生物が現れたって話だったけど……」

 葛木が弱々しく言いつつ、装備の確認をする。

 皆も同じだ、空気が一気に冷たいものになる。

 

「欧州の新種ってβ型の事だろ? ありゃあどう見てもα型だろ。更に新種って事かよ……」

 馬場が更なる敵の増強を想像し嘆く。

 

 欧州の話は結城大尉から直接ブリーフィングで聞いた。

 今までのような蟻型ではなく蜘蛛型だという。

 糸を吐く怪物で、戦闘能力は高いが甲殻が無いため、防御力は薄いらしい。

 

「……新種と言うより変異種。で、どうする?」

 白石が指示を瀬川に仰ぐ。

 一応、この中で再先任かつ最高階級である瀬川葵少尉が、有事の際このメンバーの指揮を執ることになっている。

 

「まずは本部に緊急連絡。でも恐らく交戦は避けるべきだから、一旦この場からは離れるわよ。浦田、引き続き運転よろしく」

「あいよ。囲まれてなけりゃいいがな……。とりあえず南に走るぞ」

 瀬川は冷静に指示を出し、浦田はグレイプを進路変更する。

 

「本部、応答願います! こちらペイルウイング2瀬川! 現在地にてα型巨大生物群と遭遇! 数は不明。それと、その群の中に体表が赤色のα型個体を発見しました!」

 瀬川が無線する。

 現在地はGPS送信を行っているので伝わるはずだ。

 

『なんだと!? それは本当か!? この非常時に……何という事だ。本来なら調査隊を派遣する所だが、今はそれどころではない!』

 本部の……榊少将の声は逼迫していた。

 背後では司令部の慌ただしい喧騒や警報の音がひっきりなしに鳴っていた。

 

「どういうことですか!?」

『前哨基地2-6がβ型巨大生物の攻撃を受けている。また海軍が敵新型兵器と交戦中だが詳細を説明する時間は無い。貴隊は巨大生物群を迂回しつつ、前哨基地2-6の本隊と合流し戦闘に参加せよ!』

 

「さ、サー! イエッサー!!」

 本部との通信は終わった。

 

「敵の新型兵器だと!? それに2-6(にーろく)基地にβ型!? おまけにそこには赤い巨大生物! おいおい洒落になってねぇって!」 

「オレの勘だと、赤いのは絶対やべぇ。強化されてるに決まってるぜ」

「癪だけど同感だね! ニクスレッドボディも赤いもんねぇ」

 馬場、浦田、桜がしゃべっている。

 私は気になって上部車載式12.7mm機関銃から顔を出す。

 

「おのれ……! 残念だが発見されたようだ! 変異型が追ってきている! 速いぞ!!」

 赤い巨大生物が迫って来ていた。

 こちらは自動車であるにも関わらず、その距離を徐々に縮めている。

 このままでは追いつかれそうだ。

  

「なんですって!? 数は!?」

「目視確認で4! 迎撃する! 射撃許可を!」

「いいわ! やっちゃいなさい!!」

「イエスマム!!」

 

 建前上指揮官の瀬川に射撃許可をいただき、私は12.7mm機関銃の引き金を引く。

 走行中との事もあって機関銃の銃弾は悪い精度で飛んでいくが、それでも当たってはいるはずだ。

 なのに、変異型は一体もその歩みを止めはしない。

 

「おのれ! まさか12.7mm機関銃が効かんというのか!? 浦田、もっと速度は出んのか!?」

「これが限界だっての!! クソ、駄目だ曲がるぞ! しっかり掴まってろよ!」

 道路上の都合でグレイプが大きくカーブする。

 

「ぬおおお!! まずい、追いつかれるぞ!」

 

 どうやらこの赤い変異体は通常種より硬い甲殻に覆われているようだ。

 そこそこ至近弾の機関銃にも速度を落とさない。

 

「ドア開けるよ! こっちでも撃ってみよ! てやぁぁ!!」

 桜が後部ドアを開けて、AS-20Rを放つ。

 

「無茶だ! 12.7mm機関銃が効かないねぇんだぞ!」

 助手席の馬場の言う通り、変異種にその銃弾は効いていないようだった。

 

「浦田、あとドンぐらいで着く!?」

「あと5分で2-6(にーろく)だ! それまで何とか!!」

 馬場の問いに浦田が叫ぶ。

 しかし直後に、変異型が後部に噛みつき、車輛が大きく減速する。

 そのあまりの咬合力によって車体がひずみ、火花が散る。

 

「ひゃあぁぁ! やばい、やばいよぉ~!」

「いや、チャンス」

 頭を抱える葛木を押しのけ、白石がウイングダイバー装備を整え、至近距離でレイピアを放射した。

 無数の短距離レーザーの刃が、変異型の顎を切り裂き、変異型は頭部を無残な形にして飛んでいった。

 

「さすが、レイピアだねぇ~」

「でも今のでもう走れねぇ、タイヤがパンクした!」

 さすがに後部フレームがズタズタに歪み、タイヤがパンクして車輛は徐々に減速していった。

 そして他三体の変異型が目前にせまる。

 

「ひぇぇ、もう、コレ使ってもいいかな……!?」

 葛木が手にしたのは、ロケットランチャー、ゴリアスD。

 当然こんな閉所で使えばバックブラスト(反動を抑える為後方に噴射されるガス)により後方にいる人間に被害が出る。

 かなり危険な行為だが……。

 

「ちょ、お前マジか!?」

「ええいなんでもいいからやっちゃいなさい! 浦田と馬場は伏せてりゃ大丈夫でしょ! アーマースーツもあるんだし! いけるっしょ!」

「葵ちゃんの頼みなら仕方ない!」

「浦田おめぇ女からの頼みだからって!」

「じゃあいくよ! 伏せててね!」

「ええいド畜生め!!」

 馬場、浦田、瀬川のやり取りの後で葛木がゴリアスDを発射する。

 

 閉所で放たれた猛烈なバックブラストによって、フロントガラスが割れ、周囲の備品が放り出される。

 そして、発射された弾頭はロケットモーターにより加速し、変異型に着弾する。

 

 現代の戦車装甲を破壊する目的で作られたゴリアスDの威力は、変異型にも有効だったようで、変異型は甲殻を破壊されて絶命していた。

 

「倒した……よね?」

「なんとか、ロケットランチャーは効果があるようだな」

「流石に鼓膜が破れそうだったがな!」

 真後ろで伏せていた馬場が恨み言を言う。

 ちなみにグレイプは、歪んだ車体が地面にこすれながらもなんとか走行中だ。 

 

「甲殻が戦車以上じゃなくて良かったわね! でもまだ来るわ!」

「ひぇぇ! く、来るなよぉぉ~!!」

 錯乱したのか、葛木はそのままゴリアスDを残りの二体に続けて叩きこんだ。

 強烈なバックブラストで車内が揺れる。

 

「うおおお! 前見てる暇がねぇぇ!!」

「ぶつかるぞ! 止まれ、止まれぃ!!」

 私は前を振り向くと、数m先に建物が迫っていた。

 

「なにぃ!?」

 浦田は急ブレーキを踏んで、全員がつんのめるがスピードが出ていなかった事が幸いし、何とか車体は停車した。

 

「や、やったのか……?」

「それフラグ」

 馬場の危険な発言に白石がつっこむ。

 だが、追ってきた変異型は葛木のゴリアスによって完全に絶命したようだ。

 

「はぁぁ、怖かったぁ」

「運転中にぶっ放されたオレの方が怖ぇよ……」

 追手が居なくなってほっとする葛木に、浦田が恨み言を小声でぶつける。

 

「なによ~! あそこで撃ってなかったら私ら今頃アイツらに喰われててもおかしくなかったのよ? ウラスケのヘボい運転のせいで」

「桜ちゃんそりゃひでぇよ……。ま、ひとまず助かったから良しとすっか」

 どうやら浦田が不満そうなときは桜に任せれば大抵上手く行くらしい。

 

「何にせよ助かったぞ葛木よ。あの状況から三体の変異型を撃破するとは、大したものだ」

「え!? そんな、ボクは……ありがとう」

 照れながらはにかむ葛木。

 なんだこいつちょっとかわいいぞ。

 

「……馬場。あいつ、男だよな?」

「ああ、気持ちは分かるぜ大将。だがあれで案外射撃の腕は悪くねぇ。あの女々しさには軍曹もちょっと困り顔だがな」

「確かに、揺れる車内で三体を一撃で仕留めたのは見事だった。しかし、2-2も変人が多いのだな……」

「……それは言うなよ大将……」

 小声で話して、お互い何とも言えない空気になると、上空に飛び上がって偵察していた瀬川が逼迫した顔で戻ってきた。

 

「やばい! 西の方からβ型が来てる! 大群よ! どうする!?」

「なんだと!? どうするも何も、逃げるしか無かろう! 浦田! 車は動くのか!?」

「駄目だ! 動いたとしても、きっと走った方が早いぜ!」 

 浦田は車体をチェックして一瞬でそう判断する。

 

「2-6まであとどれぐらいか分かるか!?」

「車であと五分ぐらいだったから、走れば15分ぐらいで着くだろ! 逃げきれねぇ距離じゃない!」

 そこまで近いなら援軍が来る可能性は十分にある。

 ……基地が無事なら、だが。

  

「よし! 瀬川、無線頼む!」

「おっけー!」

 本部との通信は瀬川に任せよう。

 

「見えてきたよ! 凄い大群だ!!」

 葛木が、住宅街を跳ねて移動するβ型を発見する。

 建物を無視して一直線だ。

 追いつかれずに行けるか……いや何としても辿り着く!

 

「総員全力疾走! 最短で基地まで撤退するぞ!」

「「イエッサー!!」」

 全員が駆け出した。

 

「やっぱフラグだった」

「そうじゃないかと思ってたぜ!」

 走りながら白石と馬場が話す。

 

「駄目! 2-6からは援軍は出せないって! 向こうもやばいみたいよ!」

 瀬川が本部との無線の結果を放す。

 

「ちっ! スチールレインの時と言い今と言い、冷てぇ本部だ!」

「まーまー、向こうもやばいんなら仕方ないっしょ」

 悪態をつく馬場を桜がなだめる。

 

「でも、こっちにはウイングダイバーが二人。勝てなくは、ない」

 白石が強気な事を言う。

 

「その通り! もうやるしかないわ! 射程に入り次第迎撃! 引き撃ちで行くわよ!」

「「イエス、マム!!」」

 こうして、多眼の凶蟲との戦闘が幕を開けた。

 

 




葛木望(かつらぎのぞむ)(24)
 第88レンジャー中隊レンジャー2-2分隊員。
 伍長。
 少し女々しい所があるが歴とした男性兵士。
 小柄だが見た目より体つきはしっかりしていて、射撃の腕も上々なので兵士としては問題ない。

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