全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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11/30 EDF海軍の軍艦を米海軍のライセンス生産という形にして、数も減らしました。
理由は、いくら何でも11隻も新規設計の空母つくるのは無理なのでは?というのと、ちょっとは現代兵器も出してあげたいという事と、単純に名前考えんのめんどいという事です(おい



第二十一話 転換期

――前話より一日前 2月2日 イギリス王国 オックスフォード郊外――

 

『こちら第一機械化歩兵中隊! 巨大生物をエリアCまで追い込んだ! あとはそちらの仕事だ! 頼むぞフォボス!』

 

EDF第22航空隊(ファイアバード)了解。空爆を開始する』

 

第77降下翼兵団(ブリティッシュダイバー)総員! フォボスの空爆終了のタイミングで突撃して転送船直下を確保する! 用意は良いな!?』

 

『中隊各車! 我々はエリアBを駆逐する! 知能の無い蟲共に、米軍戦車流アウトレンジ戦法の偉大さを叩き込め!』

 

『CPより第15歩兵師団(グレートカンパニー)! 向こうはEDFに任せてエリアEの制圧に向かえ! 米軍(ヤンキー)共に後れを取るなよ!?』

 

 EDF欧州方面軍とイギリス陸軍、そしてアメリカ欧州派遣軍の三軍は、ここ数日で何隻かのレイドシップを撃墜し、戦線を前へ進めていた。

 この戦いも、占領されたロンドン奪還へのほんの一幕でしかない――はずだった。

 

「くそ野郎! 堕ちろッ!!」

 

 4人のフェンサーが頭上に向けて放ったガリオン軽量機関砲の連撃で、レイドシップは炎を吹き上げ、投下中の巨大生物を巻き込んで空中で激しく爆発した。

 

「船が落ちるぞ! 総員離脱!」

 

「了解ッ! 集合地点まで跳躍する!!」

 

 フェンサー隊長が叫び、ウイングダイバー隊長が素早く反応。

 直下で戦闘していたウイングダイバーとフェンサーはブーストを使って一気に跳躍し、レイドシップの墜落と巨大生物の包囲から脱出した。

 空中を飛ぶ間は酸が集中するが、そこはタイミングを合わせてフェンサーがウイングダイバーの盾となった。

 

「小隊、損害報告!」

 

 フェンサー小隊の隊長が短く発す。

 帰ってきた返答は2名が装甲一部融解、1名が装甲融解により重傷だった。

 レイドシップ撃墜のリスクは、EDF極東方面軍の戦術によって大幅に下がったが、それでもやはり多くの負傷者を出す過酷な任務に違いは無かった。

 

「リーガル1。そっちの状況は?」

 

 共同戦闘をしたウイングダイバーの隊長が声を掛ける。

 

「一人後方送りだ! そっちは?」

 

「こちらも1人撤退させた。二撃目は行けそうか?」

 

「厳しいだろうが、やるしかない」

 

「ああ。任務だからな」

 

 互いが納得し、補給の後もう一隻を撃墜する確認をしていたら、突然の声に二人とも動きを止めた。

 

 

――side:とあるイギリス陸軍歩兵――

 

 

 それを一番最初に発見して声を上げたのは、多分俺だったと思う。

 

「おい、見ろ! あれは」

 

 そんな声を上げた。

 レイドシップから降下してきたそれは、今までの蟻型巨大生物とは違う形をしていた。

 具体的に言うと、蜘蛛型だった。

 

「新種の巨大生物…」

 

 ぞっとした声で隣の仲間も呟く。

 ハエトリグモ、という小さな蜘蛛に外見が似ている。

 地球産の方は人懐っこく「かわいい」というモノ好きも多数いるようだが、この大きさで見ると色々シャレにならない。

 目は血で濁ったような赤く大きな眼が四つ。

 全身は体毛で覆われていた。

 

 その蜘蛛型は、縦に跳躍しながらこちらへ向かってきていた。

 

「なんて不気味な……! クソッ! とにかく撃て!!」

 

「了解ッ!」

 

 分隊長の号令で、俺達は引き金を引いた。

 だが、蟻型の群れに混ざって来るそいつらは、跳躍で弾丸を躱しながら迫る。

 そして、その尻から、酸ではなく糸を発射した。

 

「うっ!?」

 

 広い範囲に放たれたそれを、俺は避ける事が出来ず喰らってしまった。

 

「なんだこれは!? 糸? 糸が、糸が取れない!!」

 

 極太の糸……いや、もはや縄かワイヤーに近いそれに、俺は絡めとられていた。

 物凄い粘着力で、もがけばもがく程に絡みつく……。

 

「待ってろ! 今ナイフでとってやる……! 腕で払うな! 余計絡みつくぞ!」

 

 分隊長が周囲の巨大生物を撃破しながら、ナイフで糸を切ろうとしたが、糸には強力な酸が含まれているらしく、そのナイフでは上手く切れないようだった。

 ついでに俺のアーマーも溶け始めている!

 腕で払うなという忠告を無視して、無意識に暴れだす。

 

「動きが取れない! 助けて……隊長! 死にたくない!」

 

 蜘蛛型は糸を手繰り寄せ、その凶悪な口に引きずり込もうとしていた。

 

「うわあぁぁ引きずられる!! このままじゃ喰われる! 喰われ――ぎゃああぁぁ!!」

 

 強い力で手繰り寄せられ、俺はあっという間に奴の口に辿り着いて……そして、足元から齧り切られる感触と共に筆舌に尽くしがたい程の痛みを味わった。

 

「クソォォ!! 仲間を放しやがれ! 化け物め!!」

 

「離せ! 離せ、離せぇー!」

 

「うわ! しまった! 取れない! うわあああああ!!」

 

「隊長が掴まったぞ! うわ! こっちにも糸が!?」

 

「駄目だ! 撤退だ、撤退しろォォ!!」

 

「気を付けろ! そこら中に糸が飛んでくる! うわあぁぁぁ!」

 

 そんな仲間の悲鳴を聞きながら、俺は最早痛みを感じなくなった感覚を手放し、世界は真っ暗になった。

 

――――

 

 蜘蛛型巨大生物の出現によって、戦場はパニックの様相になっていた。

 既に全部隊に撤退命令が出されたが、粘着性の酸を含んだ糸は撤退行動にも大きな影響を与えた。

 

「おい! 早く車を出せ! 何してる!?」

 

「駄目だ! これ以上動かない! 車輪に糸が絡みついて――後ろに居るぞ! 撃て!」

 

「しまった糸が! ひぃぃぃ、喰われる!? ぎゃあぁぁぁ!!」

 

 歩兵の乗る車輛は糸の影響をもろに受け、大半は使い物にならなくなった。

 そして殿を期待されたフェンサーとウイングダイバーの特殊兵科も。

 

「オーロラ3! 米軍戦車隊と共に歩兵撤退の時間を稼ぐぞ! 空中ならあの糸は躱せそうか!?」

 

「分からない! だがやってみるさ! 喰らえ!!」

 

 ウイングダイバーのオーロラ3小隊の3人は、サンダーボウと呼ばれる電撃を放つショットガンのようなものを空中からばら撒く。

 

 蜘蛛型は見たところ蟻型のような甲殻には覆われていないらしく、効果は十分にあった。

 フェンサーのリーガル小隊もガリオン軽量機関砲で攻撃していく。

 

「盾を活用しろ! 盾に糸が当たっても、それで一回は防げるはずだ!」

 

 リーガル1隊長はそう命令するが、

 

「なんてジャンプ力だ! 狙いが付かない!」

 

「後ろだ! 後ろに居るぞ!! ぐああああ!!」

 

 一瞬で背後に付かれた部下が、至近距離から糸を喰らって体が融解した。

 どうやら糸の発射本数が多い事から、それ自体が脅威となる程の酸を含んでいるらしい。

 

「ちっ! このままでは囲まれる! 移動するぞ! っ! くっそぉ! 糸にやられた!」

 

 ついにリーガル1指揮官も掴まった。

 だがフェンサーのパワードスケルトンを無理やり動かせが、何とか脱出することは出来た。

 しかし、蟻型よりも強力な酸を含んでいるらしく、三重の防酸加工を施した装甲がいとも簡単に崩れ落ちる。

 

「なんて強力な酸だ……その上射程も長い! 『オーロラ3! そっちはどうだ!?』」

 

 無線と同時に右を見て様子を確認したが、空中で周囲から糸の集中放射を受けていた。

 

『駄目だ! 糸で飛行が上手く行かない……速度が出なくて――きゃあぁぁぁぁ!!』

 

 そのままオーロラ3指揮官は地面に叩き落された。

 待っているのは周囲を囲む蜘蛛型に食い荒らされる結果のみだ。

 

 そしてリーガル1自身も、周囲全てから飛んでくる酸と糸によって、最早逃げ場は無かった。

 

「くそ、動けるが、糸が絡みついて高速での離脱は難しい……! ここまでかよ……ぐああぁぁぁ!!」

 

 そして、ついに至近に接近された蜘蛛型に大量の糸を喰らい、リーガル1も全滅した。

 

 この新種の巨大生物によって、オックスフォードの部隊は甚大な被害を受けた。

 それだけでなく、イギリスの他の戦線や、欧州大陸方面にもこの巨大生物は現れた。

 

 やがて、地球に居る二種類の巨大生物を区別するという意味で、EDFは蟻型を侵略生物α、蜘蛛型を侵略生物βと呼称するようになった。

 

 そして、遠く離れたアメリカでは、新たなる絶望が始まっていた。

 

 

――侵略生物β出現から3日後 2月5日 アメリカ合衆国旧フィラデルフィア廃墟――

 

 

『アーチャー1より本部! 敵の……いえ、識別不明の歩行機体を発見! 地球の物ではありません!』

 

『なんだあれは……。あれもフォーリナーだっていうのか……?』

 

 EDF陸軍第57攻撃ヘリ中隊の指揮官機が発見したのは、四足歩行型の機体だった。

 

 全長は10m程。

 四本の細長い脚部に、円盤状の本体が付いていて、その上部には昆虫の触覚を思わせるものが四本延びていた。

 

 それが合計12機。

 レイドシップとは違う新型の機体から、投下されたのだ。

 巨大生物への迎撃戦の最中に起こった異常事態に、現場と司令部は混乱していた。

 

 今までの敵――フォーリナーの主戦力は巨大生物だけだった。

 ただ、直接攻撃は無いものの、レイドシップや停止しているマザーシップは明らかに生物ではない。

 ならば、機械系の敵の存在も当然あり得る話だ。

 

《本部より全部隊へ! 投下された所属不明機をフォーリナー兵器と定義する! 攻撃せよ! 繰り返す、攻撃せよ!》

 

『アーチャー1了解! 全機攻撃開始! 対戦車ミサイル(ATGM)を放て!!』

 

『隊長! 陸戦兵器の上部触覚が光っています!』

 

『なに!?』

 

 対戦車ミサイルは放たれ、それは陸戦兵器にまっすぐ進む。

 しかし、それより早く、敵陸戦兵器の触覚から青白い粒子弾が放たれ、

 

『回避を――うわあぁぁぁぁ!!』

 

 粒子弾は攻撃ヘリ部隊のバゼラートを全て撃墜した。

 その直後、対戦車ミサイルが陸戦兵器に着弾し、集中攻撃によって一機がバランスを崩し、そのまま爆発した。

 

「あの触覚みてぇなのは粒子砲なのか! クソ!」

 

「まずい! 米軍戦車が攻撃を受けてる! あのアイツを何とかしないと、次は俺達だ!」

 

「空軍に120mm砲の狙撃を要請した! 俺達は巨大生物を叩く! 付いて来い!」

 

「イエッサー! おい! こっちに撃ってくる!! ぐああぁぁぁ!!」

 

 巨大生物との混戦に、敵兵器の粒子砲弾による砲撃を受け、地上部隊は予想以上の損害を被った。

 

『こちらDE-202ホエール。これより対地狙撃を……なんだ!? 対象が光って――ぐあぁ! どうした!?』

 

『右主翼に被弾! 機体の大半がふっ飛んだ!!』

 

『まさか、レーザー攻撃――』

 

 次の瞬間、ホエールは多数の陸戦兵器からの集中照射を喰らい、空中で爆散した。

 これを機に、北米戦線の戦況は悪化の一途を辿り、これから一週間後には、米政府はニューヨークを放棄して撤退した。

 後にEDFによってこの敵陸戦兵器は、多脚歩行戦車ダロガと名付けられた。

 

 

――ダロガ出現翌日 2月6日 太平洋上 マザーシップ近海 EDF太平洋艦隊 哨戒艇――

 

 

 EDF太平洋艦隊の哨戒艇は、この日も連日通りマザーシップの監視に赴いていた。

 マザーシップは、開戦後カリブ海決戦から太平洋日本近海に移動し、以後一切の動きを見せていなかった。

 

『こちらブルーマリン三号、定時連絡を送る。14時現在マザーシップに異常なし』

 

『了解。監視を続行せよ』

 

 若い水兵は、無線を切るとだらしなく机に突っ伏した。

 

「ねぇ~、航海長。この任務、いつまで続けんすか? 来る日も来る日もなーんの変化のないミラーボール見て回るだけの任務なんてうんざりっすよ」

 

 かつて人類に途方もない打撃を与えた恐るべき存在は、今や若い水兵たちの間でミラーボールと比喩される程になってしまった。

 もちろん水兵たちも、あの恐怖を忘れたわけではないだろうが、実際に体験したわけではないし、この任務が余りにも退屈だというのも事実だった。

 

「減らず口を叩くな一等兵。退屈なのは否定しないが、それでもこの任務は重要だ」

 

「無人機でいいじゃないですか~」

 

「駄目だ。映像越しでは見えない変化があるかも知れんし、変化を変化と捉えて真っ先に報告できるのは人間だけだ。それが最も確実であるなら、犠牲が生まれようとそうするのが軍であり、EDFだ」

 

「まぁそうですけどね~。でも犠牲って、そりゃ最初は決死の覚悟でしたけど、今更俺達に反応したりしませんって。常識で考えてくださいよ」

 

 確かに、自分に近寄るものを敵として見なしたり、哨戒艇を脅威と判断するなら、真っ先に攻撃されてもいいはずだ。

 しかし、もう半年以上続けているこの偵察行動にマザーシップはなんの反応も見せない。

 相変わらず周囲の赤いラインの光は脈打つように点滅しているから、機能が停止したとは考えられない。

 

「それは違うな。この場合は”常識で考えるな”だ。相手は何処とも知れない宇宙から来た侵略者だぞ? 今この場で急にジェノサイドキャノンをぶっ放したってなんら不思議はない」

 

 声を強めに脅して見せるが、若い水兵はあまりピンと来ていないようすだ。

 

「……とにかく、同じ人類で戦争してきた過去と違って、今回の相手は本気で何考えてるのか分からんのだ。そりゃこうやって原始的な監視の仕方をせざるを得ないってもんさ」

 

「まあ、そういうもんですか。りょーかい。引き続き監視に当たりまーすっと」

 

 そんな緊張感の無い様子で、若い水兵は甲板へ向かった。

 

「まったく……気が抜けきっているが、まあ無理もないか」

 

 休憩中だった航海長も、ため息をつく。

 確かに余り誉められた状況じゃないが、しかしこうして何もないまま常に気を張るという事も人間の構造上難しい事だ。

 それに、いざとなれば迅速に動ける信頼のある兵を集めている。

 表面上多少砕けるのは見逃すのもいいだろう。

 

《緊急招集。緊急招集。艦橋要員は直ちに艦橋へ集合せよ》

 

 突如、艦内放送が鳴り響いた。

 

「くそ、何が起こったんだ!?」

 

 航海長は艦橋へ駆け出した。

 

――哨戒艇ブルーマリン三号 艦橋――

 

「――以上が、EDF総司令部より発信された情報だ」

 

 艦長の言葉が途切れる。

 内容は、昨日アメリカ・フィラデルフィア戦線が陥落したとの情報だった。

 その原因は、未確認の敵新型歩行戦車による攻撃。

 

「敵の能力に関して詳細は報告されていないが、短時間でフィラデルフィアが落とされている事から、生半可な敵ではないだろう。そして、皆も知っての通り四日前にはイギリスで新種の巨大生物β型が発生している」

 

 それ自体は日本から遠く離れた地域の出来事で、直ちにこの海域で影響はない。

 しかし、

 

「敵に知能があるとするなら、戦略の転換が行われたのは明らかだ。つまり、マザーシップにも何らかの変化が訪れる可能性は非常に高い。その事を踏まえ、監視体制を強化し――」

 

 艦長の言葉を遮って、警報がけたたましく鳴り響いた。

 マザーシップの変化を知らせる警報だ。

 

「なんというタイミングだ!! 状況は!?」

 

――ブルーマリン三号 甲板――

 

 若い水兵は双眼鏡を見ながら、艦橋へ緊急通信していた。

 

「マザーシップに変化あり! マザーシップに変化あり! 下部小型ハッチを開き、そこから艦載機を発進させています! 艦載機はこちらへ接近! 総数100以上!! 迎撃の用意を!!」

 

『なんだと!? くそ、砲術長、対空戦闘用意!! 他の変化は!?』

 

「ありません! ですが艦載機の総数は増え続けています! 我々だけでの対処は不可能と判断します!」

 

 マザーシップは下部小型ハッチ四か所から、今も次々と艦載機を発進させていた。

 その艦載機を、双眼鏡で確認する。

 

 色はマザーシップと同じ白銀。

 翼と尾を丸めた猛禽のような独特の形をしていて、中央機首の部分には赤く光る部分が二つ。

 それがまるで眼のように見え、血に飢えているかのような錯覚を覚える。

 

「こいつら……俺達を殺る気だ!!」

 

 無線が繋がっているのも忘れ、そうつぶやく。

 事実、敵艦載機は獲物を見つけた猛禽のように、こちらへ一直線に向かってくる。

 

 そして、機体中央下部の辺りから、赤色に見える一本のレーザーを発射した。

 レーザーは若い水兵の近くの甲板に当たり、一瞬で甲板を融解する。

 高温で蒸発した甲板はプラズマ化し、化学反応によって大きく爆発した。

 

「ぐあああ!! 攻撃……された……!?」

 

――EDF太平洋艦隊 第三戦隊 アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦――

 

「ブルーマリン三号が攻撃を受けました! レーザー照射です!」

 

「CIC(戦闘指揮所)より艦橋(ブリッジ)! 敵機捕捉、攻撃準備完了!」

 

「うむ! 撃ち方始めッ!」

 

「全艦、対空戦闘! スクイレル、撃ち方始め!」

 

 イージス艦に備え付けられた汎用ミサイル・スクイレルが一斉に火を噴く。

 スクイレルはEDFの開発した全標的対応可能なミサイルでそこそこの精度・威力・射程・速度を持った汎用ミサイルだ。

 

 このような不測の咄嗟戦闘に於いて、標的を選ばず即発射可能な利点がある。

 

 そのスクイレルがイージスシステムによって一斉にロックされた敵艦載機に向かって白い尾を引いていき、やがて直撃した機体は爆散した。

 

「よし! レイドシップのように無敵の装甲は無いようだ! とにかく撃ちまくれ!」

 

「敵機が迫っています!」

 

「CIWS起動! 敵を寄せ付けるな!」 

 

 接近した機体を自動的にロックし、艦の近接防御システムCIWSが起動する。

 独立したレーダーと一体化した六連ガトリング砲台が恐ろしい連射速度で弾丸を発射し、近づく敵機を銃撃する。

 敵の艦載機は回避行動もとらず銃弾に襲われるが、弾丸に当たった反動を利用して射線を反らして回避する。

 その間に五機、十機と周囲に集まり、ついに複数のレーザー照射に襲われる。

 

「ぐッ!! 損害は!?」

 

 艦橋に揺れが走る。

 

「艦首速射砲大破! 第二倉庫融解、火災発生!」

 

「第二ブロックから浸水発生! 隔壁閉鎖!」

 

「敵機の攻撃収まりません!! CIWS三基停止! エメロード発射管二基停止!」

 

「艦長! 敵の攻撃が激しすぎます! CICへ移動を!」

 

「いや、最早それどころではない! 総員脱出のしろ! 今に艦が沈むぞ!!」

 

「機関部にレーザー照射! 火災発生! 自動消火装置機能せず!」

 

「レーダーマスト崩壊! うわッ!! まずい! 第一ブロックに浸水! 隔壁作動しません!!」

 

「この艦はもう駄目だ! 火薬庫に注水急げ!! うわああぁぁ!」

 

 接敵から、ものの五分程度だっただろうか。

 アーレイバーグ級は、十を超えるレーザー照射に襲われ、火薬庫の注水も間に合わずあっという間に爆沈した。

 

――EDF太平洋艦隊 第三戦隊 ニミッツ級原子力空母所属 第一航空攻撃隊”ビショップ1”――

 

「ちくしょう! 間に合わなかったか!!」

 

 ニミッツ級原子力空母のEDF製艦載機EJ-24C”シリウス”のパイロットが、遠く見える複数のアーレイバーク級が爆沈する姿を見て唇を噛む。

 

『ビショップリード! 他のイージス艦も襲われています!』

 

 敵の艦載機は、イージス艦や哨戒艇が沈むと一気にその場所から散り、別の艦を襲い始めた。

 その姿は、まるで腐肉に群がるハエのようだ。

 例えとしては最悪だが、こんな最悪が現実になっている事にビショップリードは吐き気がしていた。

 

 そして、まるで無限のようにまだマザーシップからは艦載機が発進していく。

 その数優に1000は越えただろう。

 

 艦隊司令部からは既に撤退が指示されているが、どのイージス艦も既に半壊状態で、沈むのは明白だった。

 

『04よりリード! この数に突っ込むなんて無茶です! 死にに行くようなもんだ!!』

 

「リードより04! 今まで出番が無かった分張り切るんじゃなかったのか?」

 

『状況が違いすぎますよ! やつら艦の装甲も容易く溶かしやがる! シリウスなんぜ一瞬で蒸発するぞ!』  

 

「それでもやらねばならん! やらなければ、後方の本隊もやられ、その次は本土だ! ここで殲滅するとは流石に言えないが、少しでも時間稼ぎをしなければならんのだ! 地球の為に命を捨てろ! それが、我らEDFだ!!」

 

『くっそォォォ!! やってやる……やってやるよォォォ!!』

 

「その意気だ!! 全機散開!! 兵器使用、自由!!」

 

 ビショップ隊の他に、ニミッツ級から発進したEJ-24Cシリウス60機が一斉に散開する。

 そこに、接近する機体を察知した敵艦載機はレーザーを集中照射して数機が爆散する。

 

 レーザーの照射は短時間だが高出力で、装甲の薄いシリウスではかすっただけで翼が

変形するほどの威力を発揮していた。

 

「喰らえ!! ビショップ1FOX3ッ!!」

 

 敵機をロックオンし、空対空ミサイルを放つ。

 敵機は直進したかと思えば減速なしで急に方向転換し、ミサイルを躱すと同時に視界外に消え去った。

 

「ち! なんてデタラメな機動だ! 『リードから各機! 敵は機動力が高い! 深追いせず見つけた端から攻撃しろ!』」 

 

 だが、その無線を発した頃には既に四分の一が撃墜されていた。

 ビショップ1の元へも何度かレーザーが飛んできたが、こちらも衝突の危険を無視してデタラメな機動を取ったため、偶然にも掠める程度にとどめて居た。

 シリウスの空中機動力や旋回性能の高さが生んだ奇跡だった。

 

「ッ!! そこだッ!! FOX3ッ!!」

 

 攻撃の符丁と共にミサイルを放つ。

 レーザーを照射していた敵機に命中し、敵は空中で爆散した。

 

「そうか! こいつらは――」

 

 レーザー照射中は機動を停止して空中に止まる。

 それを発見した直後、ビショップ1はレーザーの直撃で蒸発した。

 

 

――海上の戦闘から三時間後 神奈川県茅ケ崎市 津川浦町 県道136号線―― 

 

 

 日が沈み始めていた。

 綺麗な夕焼けを汚すように太平洋から迫るのは、総数一千機を超える機械の猛禽。

 暫定的に無人機やガンシップなどと呼ばれるようになったそれを迎え撃つのは、今まで出番の無かった空軍のEJ-24Aレイヴンを含む560機の戦闘機群。

 そしてEDF陸軍対空車輛群、砲兵隊の対空砲。

 同じく陸上自衛隊の高射特科連隊の高射砲。

 その他レーダー車輛など複数が海岸で待ち構えていた。

 

 EDF対空車輛群のネグリング自走ロケット砲が動き出す。

 そして今、放たれた対空誘導ミサイルの白煙を開戦の狼煙に見立てて、両軍の砲火が交差した。

 

 




機械系やっと出番だ!
そして主人公は出番ありませんでした!

周囲の状況を表そうとするとどうしてもこういう回がでますねぇ。
ちなみに今仙崎は部隊に復帰し、巨大生物の迎撃戦しつつ昇進試験を待ってます。
フツーに戦闘してるだけなのでカット。
そんな事より世界のいろいろなトコがやばい事になってます。

しかしこんな回だからこそ難しい。
もっと米軍っぽいしゃべり方とかスラングって無いか?
ダロガの攻撃レーザーって言いたくなるけどレーザーは光速だから粒子砲って事でいいのか?
EDF艦の名前思いつかねぇぇ!もうテキトーでいいや!
海軍の戦闘の仕方ってこんな感じでいいのか!?わからん!

などなど……。
なんか参考になる戦争映画でも見ましょうかねぇ?

あ、ちなみに、ダロガの対空攻撃(ダロガミサイル)がレーザーになってホエールが撃墜されているのは、ちょっとしたマブラヴの敵光線級BETAのオマージュ?です。
まあ本家程凶悪な性能ではないので、あしからず……。

では用語解説!!

▼ニミッツ級EDF原子力空母
 EDF海軍の正規空母。
 アメリカ海軍のニミッツ級をライセンス生産し、EDF独自の改良を加えている。
 当時は他の装備と同様に、未知のフォーリナー勢力への軍事力としてEDFの新規設計の予定だった。
 しかし戦車や戦闘機などの他の装備と違い、余りにもコストと時間がかかり過ぎて数を用意するのが困難な為、新造艦と併用してライセンス生産という形に落ち着いた。
 その為外見はニミッツ級空母だが、中身は別物。
 艦載機はEJ-24C/D”シリウス”など60機以上を搭載可能。
 EDF海軍はアメリカに次ぐ空母保有数を誇り、その数は9隻。
 アメリカ海軍は13隻保有している。
 そのうち極東方面海軍は太平洋を活動範囲に入れているため三隻保有している。

▼アーレイ・バーク級EDFミサイル駆逐艦
 EDF海軍のミサイル駆逐艦。
 こちらも空母同様アメリカ軍のライセンス生産によって建造されている。
 当然エメロードCを始めとする武装や内部は別物。
 米海軍のアーレイ・バーク級に比べ、対空・対艦戦闘能力に優れ、逆にミサイル防衛・対潜能力は低下している。
 これはEDF海軍が宇宙からの侵略を前提としているからである。

▼EJ-24C/D”シリウス”
 EDF海軍の艦載機。
 EJ-24Aレイヴンを可変翼式に換装した小型な汎用戦闘機。
 小型なのを生かした高機動、高旋回力を誇る機体だが、同世代の機体と比較して少々撃たれ弱い。

▼EJ-24A”レイヴン”
 EDF空軍の保有する主力戦闘機。
 対人類戦を意識しない作りで、現代の戦闘機では珍しくステルス機能は無い。
 但し、製造ラインに余裕を持たせているので状況に合わせて直ぐに変更する事が可能。
 ステルス機能が無い分、同世代戦闘機より安価でより高性能。
 (EDF3のほんの一部に登場するEDFの戦闘機。なぜ一部なのか?それは一瞬で空軍が壊滅したからです。この世界ではもう少し頑張ってもらいますよ)
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