米軍とか自衛隊とか地名とかで無駄に調べもの多くて……
米軍って戦車連隊って無いんですね。知らなかったよ。
そしてその割に話は大して進んでません、本当にすまない……
――2023年2月6日夕方 神奈川県厚木市 市街地
『第88レンジャー中隊第二小隊”レンジャー2”』――
「小松一佐! 玉川地区の十町丁、避難完了しました!」
「輸送車、第14列発進します。避難先は乙三号……山梨方面です」
「山梨は次の便で受け入れ先が一杯だそうだ! 予定より多いぞ。長野の方は空きがあるのか?」
避難誘導を開始してから一時間程度が経過した。
日は沈み始め、市民でごった返す厚木市が赤く照らされる。
避難は親切な自衛隊の協力もあって、大きな混乱なく順調に進んでいた。
「しかし、やはりこういう任務は、我々より自衛隊の方々の方が手慣れていますね」
大林中尉が結城大尉に向かって呟いた。
我々EDFは現在、避難が完了した地域に残っている人がいないかの呼びかけと、物資の輸送をメインで行っている。
今私はEDF製高機動車”ジャガー”の運転をしていて、助手席に鷲田少尉、後ろに大林中尉、結城大尉を乗せている。
やれやれ、士官殿の真っただ中にたった一人の伍長とは、少々か肩身が狭いものだ。
と言うのも、今は三人を厚木市役所……現在の緊急避難対策本部へ送る所なのだ。
「うん。僕たちは戦う事ばかりで、こういった人や自然災害と向き合う訓練は殆ど無かったからね。特に自衛隊は何度も災害を経験しているし、そのノウハウもある」
「前の震災の時なんか、戦力と予算だけはいっちょ前な癖に、災害時に役に立たないEDFは、随分風当たりが強かったらしいですね……。その頃俺ぁ、海外に居たんですけど」
鷲田少尉が珍しく丁寧な言葉で話す。
当然の光景なのだが、普段のイメージと少し違って新鮮だ。
しかし、震災か……丁度その頃私もEDFで海外派遣部隊に居た頃だな。
もしかすると、鷲田少尉とどこかで出会っているかも知れないな。
「それにしても、進捗予定通りとは恐れ入ります。この分だと、あと一時間もすれば撤収作業に移れるでしょう」
大林中尉が時計を見て時間を計算する。
先程対策本部から届いた進捗状況は全体で約五割。
厚木市中心部など人口が集中している地域は道路状況が混雑し、未だ四割に達していないが、それも計画には織り込み済みだ。
どう頑張っても、やはり短時間で十数万人を陸路で避難させると道路状況という壁にぶち当たる。
「一時間か……。問題は、津川浦でどれくらい持ちこたえられるかだね。相当数の対空兵器を集めたとは聞いているけど……」
結城大尉の懸念通り、この計画が上手く行くかはその一点に掛かっている。
マザーシップの艦載機、ガンシップに対し、どれだけ時間を稼げるか……。
殲滅してくれればありがたいが、海軍がこっ酷くやられた事からも生半可な相手ではないだろう。
厚木市役所付近に近づく。
市役所の駐車場は市内に点在する乗車拠点になっていて、さながらバスターミナルのように整備されている。
そこに並ぶ車輛待ちの人々の不安そうな顔が見える。
彼らを無事この地から脱出させるこ事が、我々の任務だ。
――30分後 厚木市役所 陸上自衛隊 緊急避難対策本部――
「EDF極東本部より入電ッ!! 津川浦が敵部隊に突破されましたッ!! 航空戦力の他に陸上機甲戦力も確認したとの事です!」
「馬鹿な! 500機以上のEDF戦闘機が居たんだぞ! いくら何でも早すぎる!」
「いや……あの北米に現れた陸戦兵器……確かダロガと言ったか。あれには強力な対空攻撃があった筈だ。しかし、どうしてそんなのが突然現れた?」
「分かりません……! ですが、間も無く後続部隊との戦闘が始まるとの事です!」
「厚木基地に配備されていた空自及び米海軍の戦闘機が全機緊急発進、間も無く接敵します!」
厚木基地に所属しているのは本来米海軍の戦闘攻撃機と海上自衛隊の航空機なのだが、府中基地、目黒基地、市ヶ谷基地など関東の主要な基地が軒並み巨大生物に占領されてしまったので、その時撤退に成功した航空機を一部厚木基地へ移動させていたのである。
幸か不幸か、それが今回の緊急展開には役に立った。
「無茶だ……! EDFですら歯が立たなかった相手だぞ! EDFは何と言っている?」
「避難を一刻も早く完了させろ、としか……」
「全体の進捗は!?」
「77.8%……未だ15万人が各所に取り残されている模様です」
「間に合うのか……いや間に合わせろ!」
「了解ッ!!」
――10分後 寒川町上空 米海軍第五空母航空団 第102戦闘攻撃飛行隊”ダイヤモンドバックス”――
日が沈みつつある夕暮れの空に、総数100機近くの戦闘機が現れる。
米海軍のF/A-18E/F”スーパーホーネット”
F-14SD”スーパートムキャット”
航空自衛隊のF-2E”バイパーゼロ”
F-15J"イーグル"
F-35A”ライトニングⅡ”
これほどの航空戦力であれば、恐らく他国のどんな戦闘機部隊と戦っても勝利するだろう。
それはEDFの最新鋭戦闘機、EJ-24”レイヴン”と比べても例外ではない。
レイヴンは対フォーリナー用に作られた兵器だが、それ故にステルス機能はオミットされている。
加えて、開発時はまだフォーリナーとはいったいどういう存在なのか、もっと言えば敵かそうでないかの判断すらついていない。
その為、敵だった場合の敵の性能に応じて機能を拡張出来るように設計に余裕を持たせているだけだ。
もちろん、EDFの兵器全般に、南極大陸で発見されたオーバーテクノロジーであるフォーリナー由来の技術は使われているが、それでも基本性能は飛びぬけて高いモノではない。
それよりも兵器として脅威なのは、世界中で確立された製造ライン、それによる規格統一化、そして桁違いの生産能力によるコストの安価化だ。
しかし、それでも他国軍にとってEDFの技術力は脅威だった。
いくら対フォーリナー用の兵器と分かっていても、それが人類に牙を剥かない保証などない。
現に中東では、強奪されたコンバットフレームが大きな被害を出した事もある。
EDFに触発されるように、各国の兵器も数年前とは数段兵器の性能は向上していった。
EDFのように新型を簡単に開発する事は出来なかったが、旧型機、現行機を大幅にアップグレードし、EDFと各国の技術力の差は驚く程でもなくなっていた。
だが、そんな人類をあざ笑うような軍団が迫っていた。
《キャスター(早期警戒機のコールサイン)より全部隊へ。前方2500、敵ガンシップ確認、総数おそよ600機。その後方1300に敵歩行戦車”ダロガ”確認。総数12機。オーヴァー》
『ダイヤモンドリーダーよりキャスター。
《キャスター了解……。すまない。
『なに、敵部隊の殲滅をする訳じゃない。日本国民が避難するための時間を少し稼ぐだけさ。死ぬつもりはない』
その言葉を聞いてから、早期警戒機は戦闘空域を去った。
管制なしでの戦闘など、本来の空戦ではありえない事だが、津川浦防空戦では足の遅い早期警戒機が真っ先に全滅した為、急遽帰還させることにした。
『さて、ダイヤモンドリーダーより中隊各機! ブリーフィング通り俺達の任務は時間稼ぎだ! 無理に敵を追わず、生き残ることを優先しろ! 後に……コイツらに一泡吹かす日が必ず来る! その時まで死ぬな!』
『『
『ったく! つい昨日まで陸上勤務なんて退屈だと思ってたが、まさかこんな事になるなんてな!』
『まったくだ03! ロナルドレーガンが恋しいぜ! ただまあ、EDFにパクられたニミッツも一瞬で穴だらけになったって言うから、かえって良かったかもな!』
『おいおい06、俺達天下のダイヤモンド・バックスがそんな事許すと思うのか? フォーリナーなんぞ片っ端から鉄屑に変えてやるぜ』
『04、お前は大尉の話を聞いてなかったのか? とにかく死ぬなって言ってたろ?』
『04、そういう大口はまず10機ぐらい落としてから叩くんだな!』
『言ったな05! そんならどっちが多く落とせるか勝負だ! 負けた方は大尉の執務室からこっそり上物のウイスキーを……』
『02より04、05。せめて大尉の聞こえない所で言ってくれ……。ついでに言っておくが、今回はEDFと共同作戦だから、無線も全部丸聞こえだぞ? いつもみたいに恥ずかしい話はするなよ』
『グローム03よりダイヤモンド02。構わないさ、むしろ我々にも粋なアメリカンジョークとやらをご教授願いたい。ところで、いつも話している恥ずかしい話とやらはどんななんだ?』
『ヘイ! 02! なんてこった! 日本人に一本取られたぞ! こりゃ腹いせに02の一番恥ずかしい話を聞かせるしかねぇな!』
『なんだと!? やめろ04! 戦闘前に微妙な空気になったらどうする気だ! それならお前のあの話を――おっと! どうやら雑談はここまでのようだ!』
『ああ! こちらも確認した! グロームリーダーより各機! ガンシップ視認! その向こうにダロガが――』
ダイヤモンド2の通信と同時、視界に入ったダロガの上面が光り、自衛隊のF-15Jが一機レーザーに貫かれ爆散した。
『こちらダイヤモンド! 07が撃墜された! ダロガのレーザー攻撃だ!』
『冗談だろ!? この距離でこの精度かよ!?』
『ガンシップも来るぞ!! 各機迎撃開始!! ――うわあぁぁぁ!!』
地平線の限界から、多脚歩行戦車ダロガのレーザー照射が戦闘機隊を襲う。
その攻撃に、自衛隊、米軍を問わず最新の戦闘機がなすすべなく撃墜されていく。
その混乱の最中、同時にガンシップの攻撃も始まる。
『くそッ!! ダイヤモンドリーダーより全機! あの陸戦兵器、思ったよりトンでもない性能してやがる!! 先にあっちから片付けないと全滅だ!!』
『こりゃあマジで生き残るだけで大変だぞ! あんな攻撃躱しようがない!!』
『こちらグロームリーダー! 我々のF-2Eは対地兵装も充実している! 危険だが、歩行戦車は我々でなんとかしよう!』
《その必要は無い!》
『!?』
地上部隊からの通信が割り込んできた。
――在日米陸軍 第七機甲師団 第一旅団戦闘団”ファイア・クラッカー” 第一戦車大隊――
『地上の敵は地上で相手をする! ダロガは我々に任せろ! 空軍は空の敵を食い止めてくれ!』
《ファイアクラッカーか! 第七機甲師団の一番槍が居るとは心強い! 頼んだぞ!!》
上空で空軍が戦闘する中、米陸軍の誇る最新鋭戦車、M1A3エイブラムスⅡ24輛が隊列を組んでゴルフ場を突っ切る。
その2km程隣では、陸上自衛隊の18式戦車が住宅街を進んでいる。
そして、唐突にゴルフ場が爆風に巻き込まれた。
『クソ! 敵の方が目は良いようだ! フレイム1より各車! 足を止めるなよ!?』
『『sir! yes`sir!!』』
『距離4000、目標確認! 撃て!!』
時速80km程で駆けながら、エイブラムスⅡは125mm徹甲榴弾を放つ。
装甲を貫通し、更に内部で爆発する徹甲榴弾は、従来の戦車なら一撃で行動不能にする程の威力だ。
それが十数発、4kmの彼方まで正確無比な狙いで飛んでいく。
高速で飛来した砲弾は全て命中。
しかし装甲を破るまでには至らず、派手な爆発が巻き起こっただけに終わった。
『ジェリコ1より全車! 目標健在!』
『ウソだろ……あれだけの攻撃でまだ動けるってのか!? なんて装甲してやがるんだ!』
黒煙を上げてはいるものの、攻撃したダロガはまだ行動できるようだった。
その上、徐々に山肌の陰からダロガが集まってくる。
日が沈みかける住宅街に、不気味に光る縦長のシルエット、その数20以上。
そして、その頭頂部の触覚が一斉に光り始める。
『奴ら撃ってくるぞ!!』
『フレイム1より各車! 各自散開しつつ砲撃!! せめて奴らの注意を空軍から反らせ!!』
ダロガの触覚から粒子砲弾が放たれる。
まるで機関砲のような驚異的な連射力で放たれた青い粒子砲弾は、それぞれが大きく爆発し、一瞬にしてゴルフ場を抉って焼野原にした。
当然戦車隊も無事では済まない。
『フレイム1より各車! 無事か!? 何輛やられた!?』
『フレイム3が直撃した! 目の前で爆散するのを見た!』
『5と6の反応も無いぞ!!』
『まだ撃ってくる! うわあぁぁぁぁ!!』
『まずい! 奥のダロガが空中に攻撃してる! レーザー照射だ!!』
米軍のエイブラムス戦車も、負けじと応戦し、幾重もの砲弾と粒子砲が交差する。
その砲撃のかいあって2機は撃破出来たが、米軍戦車隊は11輛を失っていた。
米軍は住宅街に下り、そこをダロガが家屋ごと一瞬で焼け野原に変えてゆく。
そして夜空に一筋の光が走るたびに、空軍の命が消えてゆく。
『今だ!! 突っ切るぞ!! うおおおぉぉぉ!!』
そんな中、雄叫びを上げて9輛の戦車が、狭い県道を時速90km以上の猛スピードで曲がりながら突撃する。
市街地専用に小型軽量化された車体は、陸上自衛隊の18式戦車だ。
ダロガ4機は接近する標的に反応し、粒子砲弾を叩きこむ。
しかし18式は履帯から火花を散らし、半ばドリフトのような走行で砲弾を回避しながら、あろうことか猛烈に砲撃するダロガの100mそばまで接近すると、急カーブ中に全車が一斉に砲撃した。
戦車にとって極至近距離での砲撃によってダロガ2機は耐え切れず崩れ落ち、18式はそのまま離脱した。
『ハッハァ! ザマァ見やがれ! 日本の国土をそう簡単に蹂躙できると思うなよォ!? フォーリナー如きが!!』
陸自の戦車隊指揮官と思われる男が、無線で盛大に騒ぐ。
『おいおい狂ってんのか陸自の戦車の乗りは!! いくら機動性の高い戦車だからってそこまでやるとはな!』
『だがお陰で活路が見えた! 奴ら砲撃の狙いはそう正確じゃない! 機動戦に持ち込めれば……!』
わずかに光明が見えたと思われた、そんな時。
その場一体に地震のような揺れが起こった。
『おい、なんか妙に揺れてないか……?』
『地震……? いやこの揺れ、まさか!?』
思ったときには、既に事が起こっていた。
辺り一面の地面が一斉に爆ぜ、地中から巨大生物――α型やβ型、更に未確認の赤色変異型までもが現れたのだ。
『なんで巨大生物が!? うわあぁぁぁぁ!!』
『身動きが! ぎゃああぁぁぁ!!』
『う、嘘だろ!? ちくしょう!』
『このフォーリナーのクソ共がァァァ!! テセウス全車後退だ! クソ虫共と接近戦はリスクが高すぎる!!』
『駄目です柏崎大尉!! どこもかしこも巨大生物だらけで……ぐあああぁぁ!!』
『ちくしょうめ!! 逃げれる奴だけ逃げろ! ここはもう駄目だ!!』
陸自の戦車隊テセウス中隊は、その数を減らしながら撤退していった。
『テセウス中隊が撤退していきます! 大尉! 我々も!』
『くそう……完全に分断されたか! 巨大生物め……!!』
米軍のフレイム中隊は地中侵攻の直撃こそ受けなかったものの、今まさにダロガと巨大生物の挟み撃ちにあっていた。
『フレイムより
フレイム中隊指揮官はヘッドセットを握りしめて無線を送るが、ノイズのみで返答がない。
『おい!! 聞いてるのかHQ! HQ!! ……おいまさか……』
ノイズが酷い。
そして、彼は思い出す。
以前同じようなことがあったことを。
その時はフォーリナー襲来時で、原因は学者たちの間ではマザーシップが大気圏に突入する際に発生する特殊な電磁波によるものだと聞いた。
そして、確か今マザーシップは太平洋から姿を消していた。
「まさか……一度宇宙に上がり、またここへ向かってきている……のか……?」
そうなれば最悪のシナリオだ。
ここで敵を食い止めるとか、住民を避難させるとか、そういう問題を遥かに超えた蹂躙が始まろうとしていた。
なんか18式戦車とか、エイブラムスⅡとかちょっと進化した現代兵器?出てきてますけど別に細かい設定は考えてません!
ただ、南極のフォーリナーシップによってEDFが技術革新起こしてるのに、そのほかの国が現代と同じ性能だと変なのかなぁ、と思っただけです
まあアレですよ、ノリで考えてるだけなんで深く考えたら負けです
あと現代と違って兵器産業めちゃくちゃ盛んなんでそのせいって事で