全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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おまたせしました!
帰路の遭遇書いてたら思いのほか長くなってしまったので分割です。


第三章 京都防衛戦
第三十三話 帰路の遭遇(Ⅰ)


――2023年 3月22日 三重県いなべ市 『第88レンジャー中隊 レンジャー2-1 仙崎誠』――

 

 

「砲撃が来るぞ! 走れ、走れぇぇ!!」

 誰かの叫び声が聞こえる。

 言われるまでも無く、全力で駆け、ギガンテス戦車の背後にスライディングで滑り込む。

 

 次の瞬間、さっきまで居た場所には、青白い線状の粒子砲弾が降り注ぎ、地面が抉られる。

 

「仙崎殿! 十時方向、一時方向よりダロガ! 三時方向からはβ型の群れが接近中ですが! 如何しますか!?」

「うわ、ガッキーせまい……」

 滑り込んだギガンテスの先で、新垣と桜に出会った。

 図体がデカいので押し出されそうになる……。

 

「十時方向のは距離がある、放っておこう! β型は第七戦車中隊の第一小隊隊長車(ゴールド1)と大林中尉達に任せる! 我々は一時方向をやるぞ!」

 ダロガが放つ、辺り一帯を巻き込む爆撃音に負けず声を出す。

 

「おっけーまことん! んじゃ、反撃いこっか!!」

「応!」

「イエッサーですぞ!」

 

 桜の一声と同時、我々三人は戦車の陰から飛び出した。

 手にはゴリアスDD、そして簡易的な対爆アーマーを装備している。

 

 新型ロケットランチャーが行き渡るまでの繋ぎとして渡された改良型だが、威力は確実に上昇している上に使い勝手もいいので、結構重宝している。

 防爆アーマーには巨大生物の甲殻を実験的に使用したものが使われているが、こちらも直撃さえしなければダメージは目に見えて減ったような気がする。

 まあ私は当たらないからあまり意味は無いがな!!

 

「だぁーははは! さあ! 俺達の砲撃にいつまで耐えられるか!?」

 新垣がゴリアスDDを撃ち、リロードしながら正面に見据えるダロガとの距離を詰める。

 土煙や黒煙に紛れて視界が悪いが、そう離れていない筈だ。

 

「近づき過ぎるなよ! 下部機銃は流石に躱しきれんし、威力も馬鹿にならんぞ!」

 私は新垣の後を追いつつゴリアスDDを放つ。

 命中させるも、直径20mもの大爆発が晴れれば、装甲が少し歪むか炎上する程度のダメージしか与えられない。

 それでも、歩兵の火器でここまで出来ているのは大きな前進だ。

 

「ゴールド2さん! 私達が囮になって攪乱するんで、後方から援護! 頼みましたよ!」

『了解だ2-1の嬢ちゃん! 前は頼んだ、下がりつつ砲撃する!』

 

 桜が短距離無線でギガンテスとのやり取りをする。

 本来囮になる立場が逆な気もするが、歩兵の方が身軽で攻撃を躱しやすい事から、自然とそうなっている。

 戦車の装甲でダロガの砲撃を耐えるには、もっと強固な防御力が必要だ。

 現在、真正面からダロガと撃ち合える新型ギガンテスが生産されつつあるが、今この戦場には居ない。

 

 ギガンテスが後退しつつ、120mm滑腔砲を発射。

 命中――まだ貫通には至らない。

 だが信管が作動し、砲弾が爆発。

 四つの脚の内一本を吹き飛ばした。

 

 流石にそれだけで転倒はしないが、バランスを崩して一瞬動きが止まった。

 

「今だ! 一斉射!!」

「らじゃー!!」

「だはははは! 喰らえ!!」

 私と桜、新垣がゴリアスDDを同時に放つ。

 いいぞ、ダロガが装甲の隙間から黒煙を上げている。

 撃破は目前だ!

 

『装填完了! 第二射、撃て!!』

 

 ゴールド2の車長の声と同時、砲撃音と共に砲弾が放たれた。

 砲弾は寸分の狂いなくダロガに命中。

 砲弾は装甲を貫通し、内部で爆発――とどめを刺した。

 

『撃破確認! ゴールド2、そちらは?』

『こちらもβ型の掃討が終わった所だ』

 

「大林中尉! そちらはどうです?」

 私は中尉の方の状況を確認する。

 乱戦だったもので、少し部隊を分けていたのだ。

 

『仙崎か。こちらも片付いた。本部?』

『こちら本部。作戦域のフォーリナーの殲滅を確認しました』

 大林中尉が本部を呼び出すと、鹿島中尉の声が聞こえた。

 

『工兵部隊の地雷(C20爆弾)敷設と自動砲台(ZE-GUN)設置も完了しています。レンジャー2は、指定座標にて他部隊と合流し、回収地点へ向かってください』

『レンジャー2了解。ところで、他部隊はどいつだ?』

『第三回収地点へ向かっているのは他に、レンジャー6、フェアリーテイル2(ウイングダイバー)、レイジボーン1(フェンサー)、ブラヴォー小隊(ニクス)、ゴールド小隊(ギガンテス)です。移動中は、レイジボーン1の紺迫少佐が指揮を執ります』

『了解だ。回収地点に一番近いのは我々だな? 他部隊に、遅れるなと伝えておいてくれ。こんな場所に長居は無用だからな』

『了解しました。ご武運を』

 

 鹿島中尉と大林中尉の通信が終わった。

 その無線を聞いているうちに、我々レンジャー2も無事合流した。

 

「よォ、遅かったじゃねぇか。ダロガの相手は楽しかったかァ?」

 輸送車の荷台によりかかるのは2-1の副隊長、鷲田少尉だ。

 ニカっと笑うその顔に騙されそうになるが、何と右肩から出血し応急処置された包帯が真っ赤になっている。

 軽傷では済まない。

 

「少尉みたいに戦闘狂じゃないんですから、楽しいとかそれ以前に――ってうわ、また派手にやったんですねー……」

 軽くあしらおうとした桜が、怪我を見て驚く、と言うよりは引く。

 

「かっかっか! なぁにかすり傷だよかすり傷! 血も治癒剤のお陰でもう止まってるしな!」

「鷲田少尉は突っ込み過ぎなんすよぉ。援護するこっちの気にもなってくださいっすよ」

 なんでもない事のように話す鷲田少尉を、疲れた様子の水原が見る。

 その様子から、相当振り回されたのだろう。

 しかし、それも水原の狙撃技術を見込んでの事だろう、多分。

 

「だぁーっはっはっは! 鷲田少尉! 鍛え方が足りませんなぁ! 」

「うるせ! お前みたいな天性のマゾと一緒にすんな! オレは喰らってる分敵ぶっ殺してるからこれでいいんだよ!」

 軽く新垣をドツく鷲田少尉だが、まったくダメージが無い。

 よく攻撃を喰らう二人だが、常にバーサーカー状態の鷲田少尉に対して新垣はまるでフェンサーのような防御力を誇っている。

 コイツは本当に人間なのか?

 

「確かに鷲田少尉物凄い活躍でしたね。β型の群れに飛び込んだと思ったら、並みいる巨大生物を次々と! 頼りにしてます!」

「だろ? いいぞ千島もっと褒めろ!」

 千島は良くも悪くも常識外れなEDFとしても我が小隊内でも、常識人というか、比較的一般人に近しい価値観をもっている。

 EDFの軍人に良くある英雄的思考も無ければ、過度な自己犠牲や苛烈な闘志、或いは計算高い冷徹な思考や軍人らしい粗暴な様子なども見せない。

 若干ネガティブなきらいもあり、味方によっては軟弱な精神の持ち主にも見えるがしかし、これまで軍曹と共に最前線で戦い抜いていながら一般的な価値観を持つというのは、実は非常に難しい事ではないかとも思う。

 それは本人の強さでもあり、きっと軍曹や仲間たちに支えられているからでもあるのだろう。

 

「それは良いんだけどその糸くず早くどっか捨てて下さい! 気持ち悪い!!」

「細海お前オレの事指さして気持ち悪いっていうのやめろよ……。どこについてる? 背中?」

 細海はやはりβ型の糸が気に喰わないらしいな。

 いっそ感覚が麻痺するくらい喰らってみてはどうだろうか。

 

「あ~も~ちょっとそっち向いてください! うげ、新調された対爆アーマーがこんな酸と糸まみれに……。ううっ……いや、これはこれでアリか……歴戦の感じが。ふへへ、いい味出してる……」

「おいー。変な笑いしてないで早く取れコノヤロー。割と肌が焼ける感じしてきたから!」

 β型の糸から染み出る酸の煙が音を立てる中、桜がとろけた顔でアーマーを見つめている。

 ミリオタ女子な桜だが、ボロボロのアーマースーツも桜の趣味の中には入ってるらしい。

 若干変態の域に踏む込みつつあるが大丈夫だろうか……。

 

「……はぁ。全く賑やかな連中だ」

「止めてきましょうか?」

 大林中尉と荒瀬軍曹だ。

 その二人と、そこでワイワイ騒いでいるメンバーで我がレンジャー2は全員になっている。

 すなわち私、桜、新垣、水原、鷲田少尉の2-1メンバーと、荒瀬軍曹、細海、千島の2-2メンバー。

 それに小隊長の大林中尉を加えた9人だ。

 

 他の人間はそれぞれ負傷して大阪の軍病院で治療を受けている。

 幸いにして我が小隊、未だ死者は出ていないが、いつ出てもおかしくないギリギリの戦いの連続だった。

 

「いや、いい。EDFの兵士にも休息は必要だ。たとえ戦場のど真ん中と言えど、休める時には休む。それが死なないコツだ」

「気は常に張っていられるものではありませんからね。ところで大林中尉。今後の行動予定は?」

 私は気になっていた事を聞くと、大林中尉は胸ポケットから折りたたまれた地図を出す。

 たまにこの人はこういうアナログな所があるが、案外と分かり易かったりする。

 

「間も無くここで他部隊と合流し、回収地点である伊勢湾港へ向かう。そこから先は作戦前ブリーフィングと大きな変更はない。輸送船で琵琶湖運河を通り、大津港から京都府へ。恐らく、そこが次の戦場になるだろう」

「京都が戦場に……。日本人としては、複雑ですね」

 日本の歴史的建造物や文化遺産が数多く残る京都だ。

 脈々と受け継がれてきた古の都を戦場とする作戦は、多くの反対意見が出る事だろう。

 

「……って思うじゃん? それがね、実のところ作戦方針を決めるちょっとした会議でも、案外反対案は出なかったらしいよ?」

 桜が会話に割り込んできた。

 

「そうなのか……? って、それはどこ情報なのだ?」

「へへん! 私の情報網を舐めないでおくれまことん君。整備部、兵站部の古参じじい共、開発部とか情報部の曲者強者、さらには司令部付きオペ子ちゃんズ達まで! 私の耳に集まらない情報はちょっとしか無いのです!」

 ドヤ顔で胸を張る桜。

 き、貴様のコミュニケーション能力は一体どうなっておるのだ……。

 

「まあぶっちゃけ、歴史とか文化に重きを置く保守派のえっらーいじいじ達はみんな我先にと亡命政府の方にトンズラしちゃったらしくて、残ったのは命知らずで現実主義者の塊みたいな集団だから、みんなそういうのちょっとしか気にしないみたいで、『まあ京都大事だけどこの場所丁度いいトコにあるしなー、日本今やばいしなー、どのみち負けたら歴史とか文化とか言ってらんないし、まあしょうがないっか』的なノリで割とすんなり決まったらしいよ?」

「ノリ軽いな極東本部!!」

 しかし実際、日本臨時政府は海外で亡命政権を打ち立てて、本土の事は我関せずなので、本土の政治はEDF極東本部が取り仕切ってるのが現状だ。

 もちろん県知事などの地方議員や職員は多数残っているが、地元を統治するので精いっぱいで、到底国家政府を新たに建てる余裕はない。

 そもそもEDFの方針に賛同する人間以外は殆ど海外に避難しているので、今日本に居る国民はEDFの旗の元に揃う一枚岩と言っても過言ではない。

 

 作戦実行に政府の許可が不要になった分、行動しやすくはなっただろう。

 これはいわゆる軍部の暴走と言う奴だが、このご時世誰もそれに文句を言える状況ではないな。

 

「京都に関しては皆思う所はあるだろうが、その後ろの大阪・神戸の重工業地帯は絶対に守らねばならん。特に神戸にあるEDF極東第一工廠は今のEDF極東軍にとっては生命線だ。ここが潰されれば最早、何も護る事は出来ない」

 大林中尉が会話に戻って来る。

 その後ろの方では、他部隊が徐々に到着しているのが見えた。

 

「加えて、その地域に残る民間人は、インフラ維持の為避難していない。少なくとも一千万人以上は残っているだろう。もし京都を破られれば、最早日本の戦線維持は不可能に近い」

 荒瀬軍曹が移動の準備をしながら話す。

 大阪・神戸の重工業地帯は、今や日本戦線の心臓部ともいえる最重要拠点となった。

 そしてその工業力を稼働させるのは、無防備な国民たちなのだ。

 

「次の作戦に、日本の明日がかかっているという事ですね。負傷した仲間の復帰は間に合うでしょうか?」

 これまでの戦いで半数が負傷している我がレンジャー2小隊は、単純に考えて戦力半減状態だ。

 

「詳細は分からんが、もし京都で迎え撃つ作戦ならフォーリナーの侵攻速度から言っても数日猶予があるかどうかだろう。全員の復帰は期待できない」

 荒瀬軍曹が悔しそうにつぶやく。

 

「そうだな……我々だけでなく、名古屋戦で失った戦力はEDFにとって痛手だろう。聞けばあのグリムリーパーですら、戦力を半減させて今は京都まで撤退したという。だが、次は負けられない戦いだ。各地から戦力を集めるだろうし、皮肉だがEDF極東工廠が近いお陰で兵站も盤石だろう。我々は我々で、全力を注ぐのみだ」

 大林中尉がまとめたところで、他部隊の集合も丁度終わったようで、全員で移動を開始した。

 

 ここから海沿いに南下し、海岸沿いの道路から東へ少し戻って伊勢湾港へ向かうルートだ。

 名古屋戦に参加したほぼ全ての部隊が撤退し、京都へ向かう為、渋滞などの混乱を防ぐために陸路・海路・空路それぞれに細かく分割し移動する計画だ。

 

 我々は、荷台が剥き出しになっている物資運搬用のトラックの荷台に乗っていた。

 兵員の大移動の為、装甲付きの兵員輸送車が確保できなかった為らしい。

 隣にはレンジャー6が、別のトラックには武装を外したレイジボーン1やフェアリーテイル2が見える。

 コンバットフレームであるブラヴォー小隊四機は専用のトレーラーで。

 ゴールド小隊の戦車は前後に二輛ずつ自走している。

 

 トラックの乗り心地は最悪だが、外の景色が見える分まだマシかもしれない。

 進行方向の右手先は崖になっており、その下を少し行くと海水浴場だろうか、綺麗な砂浜が続いている。

 まだ3月で少々肌寒いが、爽やかな潮風が心地よい。

 

 これからの激戦を考えると、今後あまりゆっくり出来る機会はないかも知れない。

 今のうちに頭を空にして休もうと思ったのだが、隣の小隊の会話が耳に入ってくる。

 

「は、腹減ったなぁ~……。それに気持ち悪い……」

 レンジャー6の一人が腹を摩っている。

「お前は死体を見過ぎなんだよ。ほれ、レーション食うか?」

「うげ、またC型レーションかよ……。勘弁しろって。はぁ~、戦うのは良いけど、メシがマズいのだけはホント無理……」

 最近EDFに入った兵士だろうか。

 ここ数か月で、EDFに志願する人間は老若男女問わず急増している。

 志願しない人間はインフラ関係者以外は殆ど亡命政府の元へ避難しているので、残った人間の半数程度が新たにEDFの兵士として訓練を受けたり実戦に駆り出されたりしている。

 

 普通なら過酷な状況で心折れ逃げだすものも多い筈だが、こんな状況だ。

 皆覚悟を固めて来ているので、兵士としての質が悪いという事はないらしい。

 

「なんだぁ、美味いメシ喰いたいのか? よし、向こうの基地に着いたら俺が食わせてやるぞ!」

「……まさか、また自分で作るなんて言わないでしょうね? 前回の三種のレーションぐちゃまぜ丼は勘弁ですよ」

「そうか? レーションも調理次第で何とかなると思うんだが」

「とびっきりの材料を使ってください。そうすればきっと何とかなります」

「いや、隊長の事だからまたきっと混ぜて終わりだぜ」

「お前、俺の事を何だと思ってんだ! 聞いて驚け、俺のカミさんは、俺の料理の腕に惚れてだなぁ!」

「おいおい世良、嘘は良くないぞ。料理の腕に惚れたんじゃなく、料理の腕が駄目過ぎて何とかしなきゃって思われたのがきっかけだろ?」

 

 何となく会話を聞いていたら、急によく聞く声が混ざっていた。

 荒瀬軍曹だ。

 

「げ、荒瀬。なんでお前がここに……」

 どうやら、レンジャー6-1分隊長の世良軍曹と知り合いらしい。

 歳は荒瀬軍曹と同じくらいだが、明るめの茶髪もあってか、随分軽そうな印象を受ける。

 

「今はレンジャー8から2に転属した。部隊表をちゃんと確認しておけ」

「いやぁ忙しくってなぁ。世間も部隊も、俺個人もな。いや、心配はしてたんだぜマジで。228もあんなだしよ」

 世良軍曹が少し慌てた様子で弁解を始める。

 

「本当か? お前も忘れっぽい所あるからな……。ところで世間と部隊と言うのは分かるが、個人と言うのは?」

「いやぁその……。こんな時に言うのもなんだが子供が生まれてな。去年の十二月だよ」

 世良軍曹が照れて少し言いづらそうに話す。

 

「なに!? ホントか!? それは目出度い! だがここに居ていいのか? 奥さんは何処に?」

「さすがに海外に避難させたよ。最後まで渋ってたけどな……。俺も最後までどうしようか迷ったけど、やっぱ娘がこの場所に返ってこられるようにしたくってさ」

「そうか……。奥さんには反対されなかったのか?」

「ん……内心はどうだったか分らんけど、俺の意見を尊重するって言ってくれたよ。だから、早いとこ日本を取り戻して、安心して住める場所にしてやんないとな」

「ああ。その通りだ」

 世良軍曹と荒瀬軍曹が決意を新たにしたところで、なにか振動を感じた。

 車で移動しているので気のせいか? とも思ったのだが。

 

「おい、あの砂浜、なんか変だぞ……?」

 フェンサーの一人が、砂浜を見て何かに気付く。

 私も視線を右崖下の砂浜に移すと、その瞬間、砂浜から巨大生物が現れた!

 地中侵攻!? こんなところでか!!

 

「見ろ! 巨大生物がいるぞ! 赤いやつだ!」

「砂の中から、出て来やがった!」

「こんな所まで掘り進んで来やがったのか!? ちくしょう、こっちに向かってきてるぞ!」

 砂浜から現れた巨大生物は、全てα型亜種――赤蟻だ。

 それらは、二、三割の迷走する個体を除いて、だいたいがこちらへ一直線に向かってきた。

 

「気付かれたか!! 総員戦闘用意! 武装装着急げ! 戦車隊、いけるか!」

 この臨時集団の指揮を受け持つフェンサー、レイジボーン1指揮官の紺迫少佐が声を張り上げる。

 輸送車列は未だ減速せずに走っているが、足の速いα型亜種に追いつかれるのは時間の問題だ。

 

『ゴールド1、捕捉した!』

『ゴールド2、いけるぞ』

 ギガンテスの砲塔が、砂浜の巨大生物を狙う。

 

「コンバットフレーム!」

「バトルシステムを起動中だ!」

「準備しろ! 早く!」

 コンバットフレームは、その機動制御のシステムが複雑で、立ち上げに少し時間がかかるのが珠に傷だ。

 

『本部! こちらレイジ1紺迫! 七浜街道沿いでα型亜種と遭遇! 振り切るのは困難だ、迎撃する!』

 紺迫少佐が本部に無線を送る。

 返って来たのは榊少将の声だ。

 

《こちら本部! こちらでも複数の地中振動を検知した! その場所は伊勢湾港の目と鼻の先だ! 港を危険に晒す訳にはいかない、確実に殲滅するんだ!》

『サー! イエッサー! 全車停止! ゴールド小隊、攻撃開始だ!』

 車列が砂煙を上げて急停車する。

 

 




用語集

●ゴールド小隊
第一戦車連隊-第七戦車中隊-第一小隊のニックネーム。
ギガンテス四輛で編成されている。
(名前は5の帰路の遭遇で出てくるのをそのまま使いました)

●フェアリーテイル2
第二降下翼兵団-第一中隊”フェアリーテイル”-第二小隊のニックネーム。
美船中尉を指揮官とし四名編成。
雷撃銃で空中からの雷撃を得意戦術としている。
略称はフェアリー2

●レイジボーン1
第102機械化歩兵連隊-第一中隊”レイジボーン”-第一小隊のニックネーム。
紺迫少佐を指揮官とし四名編成。
実はスチールレイン作戦に中隊名だけ登場。

●ブラヴォー小隊
第一歩行戦闘車中隊-第二小隊のニックネーム。
使用するニクスはB型。
武装はリボルバーカノン二門と小型誘導弾二基。

世良一輝(せら かずき)(33)
レンジャー6第一分隊の分隊長で軍曹。
明るい茶髪のノリの軽い中年。
荒瀬軍曹が降格してからの友人で、以前は良く連絡を取っていたが、フォーリナー襲撃後合うのは初めて。
最近子供を作ったが、家族は海外の亡命政府に避難させている。

紺迫幸雄(こんさこ ゆきお)(45)
レイジボーン1の指揮官兼レイジボーン中隊の中隊長。
階級は少佐で、人員不足から第102機械化歩兵連隊の連隊長も兼任している多忙人。
フェンサー採用時からの着用者で、岩淵大尉と並ぶ大ベテラン。
岩淵大尉とは逆に、ハンドキャノン等を使用した大火力による狙撃・砲撃を基本戦術とする。
(なお、この世界のフェンサーはゲームとは違いダッシュセルとアドブースターは標準装備なので機動力が損なわれることは無い)

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