なんと二か月以上の間が空いてしまいましたが、なんとか更新……。
海軍の事とか調べるの時間かかってしまったんですが、細かいトコはもうテキトーです(おい
細かいトコ……いや、けっこうデカいとこもテキトーかもしんない……。
いやもう気にしない、気にしたらキリがない!
兎に角海軍も頑張ってんだよ!と、そういうのが伝わりゃ良いんです!
でも誤字だけは教えてね!
――2023年 3月30日 12:00 琵琶湖 EDF太平洋連合艦隊 第一艦隊第二戦隊”戦艦ポセイドン級
670平方kmの広大な琵琶湖の水面に、高く上った太陽が反射する。
時刻は真昼、天気は快晴。
風も無く、4月中旬並みの暖かな空気を台無しにして佇むのは、巨大な黒鉄の船。
太平洋艦隊旗艦、弩級戦艦リヴァイアサンと、その他多くの戦艦、軍艦類。
戦艦ポセイドン級、重巡洋艦トリトン級、航空母艦ネレイデス級、巡洋艦テティス級、潜水艦ネプチューン級などが浮かんでいる。
《太平洋艦隊旗艦、リヴァイアサンより! 全作戦任務部隊に告げる! こちらは本作戦総指揮を務める榊中将である! 現時刻を以て、京都防衛作戦”アイアンウォール”を開始する!! 作戦第一段階! 第一艦隊、砲撃開始せよ!!》
『こちらスカウト4! 巨大生物先頭集団A群、B群共に攻撃開始地点を通過!』
地上で無人機を飛ばし、偵察任務を行っていたスカウトチームから、戦艦ポセイドンの艦橋に広域無線が入る。
余談だが、榊は3月20日付けで、少将から中将に昇進している。
本来はEDF総司令部へ赴き厳正な評価と正当な手続きの上行われるが、現在EDF総司令部に赴くのが様々な理由により困難であることと、必要に差し迫った問題が発生した為通常ではありえない強権を発動し、強引に昇進した。
ここまで強引な昇進を行った理由として、本来なら想定しなかった陸空海軍全てを統合的かつ絶対的に指揮する事が必要であり、それが出来る人間が榊以外に存在しない状況に成ってしまったからであり、また現存する海軍は交戦機会の少なさから未だ多くの戦力と人材を保有し、榊と同等以上キャリアを持つ将官クラスが居るものの、統合的に指揮をする能力ではない為、なし崩し的に榊が上から指揮を執るしか方法が無かった。
絶対的な指揮権を得るには大将まで昇進するのが手っ取り早いが、そうなると関係が正常化した(する予定)後のEDF総司令部や各方面軍との連携に致命的な齟齬が生じる恐れがあったため、その間を取り中将まで昇進した次第である。
『CICよりブリッジ! 全目標捕捉! 全艦斉射準備良し!』
『全艦一斉砲撃! てぇぇーーー!!』
旗艦リヴァイアサンで太平洋艦隊の指揮を執る大城提督*1が声を張り上げ、第一艦隊が動く。
戦艦ポセイドン級が、重巡トリトン級、カリブディス級が、その他巡洋艦、駆逐艦級が砲撃を開始した。
砲弾の飛ぶ先は近江盆地一帯を覆う巨大生物。
砲弾が着弾し、辺り一面が凄まじい爆風に彩られる。
巨大生物は一掃されたか――いや、そうではない。
爆風の大半は、巨大生物を護るようにして低空飛行していたレイドシップに防がれてしまう。
レイドシップは通常の砲爆撃では傷一つ付けられない。
それどころか、レイドシップは”砲弾が当たった方向に進む”という軍事兵器にしては奇妙過ぎる習性に従って、砲撃を行った第一戦隊へ進路を変える。
人類科学の粋を越える浮遊型転送船が、どうしてこのような単純な行動方式をとっているのかは不明だがとにかく、砲撃を受けた多くのレイドシップが第一戦隊のいる琵琶湖運河に向かう。
『地表への着弾率10%以下! 巨大生物A群B群、共に進路変えず第一防衛線に向け進撃中!』
ポセイドン
『レイドシップ、着弾確認の53隻! 進路NNWへ進路変更確認! 離岸まで300秒!』
「よぅし! 敵さんが陽動に掛かった!『ポセイドンより第二戦隊全艦! 今度は全力砲撃だ! ありったけぶち込んでやれ! てぇぇーー!!』」
EDF主力戦艦ポセイドン級一番艦”ポセイドン”艦長の河辺少将*2が命令を下す。
ポセイドンを筆頭に、二番艦トライデント、三番艦デメテルの440mmの巨砲が、
他EDF重巡トリトン級の220mmが飛んでいき、それは陽動にかかったレイドシップを越えてついに地表に着弾した。
派手な火柱が立ち上がり、巨大生物が種類を問わず吹き飛ぶ。
「効果は!?」
『地表への着弾率85%! 巨大生物A群B群共に直撃した模様です! 残りはレイドシップに着弾し、更なる陽動を達成しました!』
「ぃよぉし! さすがポセイドンだ! このまま近江盆地方面への面制圧を継続する!」
思わずガッツポーズをする河辺。
そして第二射を行った直後、事態が次の段階へ進む。
『艦長! レイドシップ、一斉にハッチ解放! あれは……ガンシップです! ガンシップを確認! 数は――』
「いい! どうせ数え切れん! 奇襲のイージス艦隊は!?」
『レイドシップは未だ陸地です! 離岸まで90秒!』
「ちっ! まさか見抜かれたのか……?」
『ガンシップ! こちらを認識! まっすぐ向かっています!』
「ふん、このポセイドンに勝てると思ってるのか!! 全方位、対空戦闘用意!! 戦闘レベル最大だ! 航空機による戦艦不要論を覆した、戦艦の対空防御システムが伊達では無い事を、奴らに思い知らせてやれ!!」
『『Aye,aye,sir!!』』
『エメロード、射程入ります!』
「目標はC.I.Cまたは自動捕捉に準ずる! 対空戦闘、攻撃始め!!」
『アイ・サー! エメロード、発射!!』
ポセイドンに搭載された16基の発射管から中距離汎用ミサイル・エメロードが飛び立つ。
そのまま白い尾を引いて、高速でガンシップへ向かう。
ガンシップは回避行動もとらず、次々とエメロードに叩き落されていく。
そして、ミセイルによる対空戦闘を行っているのは当然ポセイドン一隻ではない。
ポセイドン級トライデント、デルメルやその他巡洋艦、駆逐艦クラスからも小型迎撃用ミサイルが一斉に飛び立ち、ガンシップのいる方角を炎のカーテンで覆う。
空母からはEDF製艦載機EJ-25C”シリウス”が次々発進し、空対空戦闘を行っていた。
しかし、やはり敵の数が多すぎる。
「河辺艦長! 右舷第三区画に被弾! 火災発生!」
「自動消火装置は作動しているな!? ならば想定の範囲内だ! 戦艦がそう簡単に沈むことは無い!! それよりも
50隻以上のレイドシップから次々とハッチをくぐり飛び立つガンシップの数は、まさに無限だ。
数の暴力に対応するには、特に空軍の実力が足りていない。
技術の進歩でミサイルの小型化と高威力化が進んだが、それでも一機で20発程度の搭載量では、ガンシップに対しては少なすぎる。
そして、戦闘機自体がそもそも高価であり、数を用意できない事に、決定的な差が生まれてしまっている。
「――ち、やはり押し負けているな! くっ……なぜポセイドンの砲撃で、あの忌々しい銀の艦を沈める事が出来ないのか……! 悔やまれる……本当に!!」
その上、レイドシップの白銀装甲は一切の物理攻撃を通さない。
その威容、まさに無敵艦隊と呼ぶにふさわしく、開戦初期には多くの人類は成すすべもなく逃げるしかなかった。
だが、そんな苦渋を舐めた時代はもう終わりを告げたのだ。
「河辺艦長! レイドシップが海上に出ます! TF109が動き出しました!!」
「! 来たか! ぃよぉし! さすがは大城提督の立てた作戦だ! このまま砲撃を継続しつつ、レイドシップの注意をこちらに向け続けろ! ……駆逐艦共め、ポセイドンではあり得ぬ、その足の速さを生かす時だ。気張れよ!」
――12:30 第二艦隊
『レイドシップ先頭集団、離岸を確認! 海上へ侵入!』
『全艦最大戦速! 戦闘始め! 以降各艦長の命令による強襲遊撃行動を開始せよ!』
その無線と共に、突如として岩陰から現れたのは、大量のイージス艦だった。
艦数およそ30隻。
そのうちの一隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦”アルテミシオン”の支倉艦長*3は、声を張り上げて命令を下す。
「攻撃目標、右前方210度、ターゲットA09! 対艦戦闘用意! 対空戦闘は自動に切り替え!」
「艦長! ガンシップ群、こちらを認識! 距離を一直線に詰めてきます!」
第一戦隊に向かっていたガンシップの一部が、分かれるようにしてイージス艦群に向かってきた。
「面舵一杯!! 艦首を右に向け、弾幕を厚くして対空防御を固めろ! 両舷第一戦速、A09の周囲を旋回しつつ、ハッチ解放を待つ!」
アルテミシオンにガンシップが接近する。
ガンシップのレーザー攻撃は非常に高出力だが、その分射程が短いと分析されている。
対して、EDF仕様のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の武装、汎用型対空ミサイルEM-B2”エメロードB2型”で射程100kmを越える。
射程に関しては圧倒的アドバンテージがあった。
そもそも、イージス艦というのは空母などの対空攻撃に脆弱な艦を敵航空機から防衛するための艦だ。
故に、敵航空機自体や、それが発射した対艦ミサイルを迎撃するために長大な射程の対空ミサイルと広範囲多捕捉の高性能レーダーを備えている。
その気になれば100km先からガンシップを一方的に叩き落す事が可能なのだが、それには意味がない。
なぜならば、レイドシップはその限られた艦内から無限に近い物量の戦力を吐き出すと見なされているからだ。
そして、レイドシップを沈めるには接近して直下からの攻撃しかない。
遠距離で優位を取っているだけでは、あっと言う間に弾薬が切れてしまう。
その愚策は、旧来の対人類戦術を用いていた開戦初期に散々やらかした。
それを考慮して開発されたエメロードB2型は、従来のミサイルより圧倒的な小型化に成功した為、アーレイ・バーク級駆逐艦に100発以上搭載可能ではあるが、それでも数千単位で存在するガンシップ相手には分が悪い。
事実、レーザーの射程内に艦が入る前にミサイルは放たれ、多くを撃墜しているが、数の暴力がそれを上回る。
数機がミサイルを掻い潜り――というよりは、ミサイルの捕捉数を上回りアルテミシオンの懐に入る。
同時に、EDF製
毎分5000発の発射速度を誇る弾幕が、射程に入ると同時にガンシップを捕捉し、叩き落す。
元々はミサイルを迎撃するために開発された兵装だ。
直角的な機動をするとは言え、ガンシップを捕捉するのは容易だった。
しかし、ここでも数の暴力がその対処能力を超える。
三機、弾幕から逃れたガンシップがレーザー照射を開始する。
僅か一秒にも満たない極短時間照射。
しかし、その一瞬で装甲には大穴が空く――以前ならば。
『右舷前方、複数個所レーザー照射受けました! CIWSによる撃墜、済んでいます!』
「損害は!?」
『対レーザー蒸散塗膜加工のお陰で、損害は軽微! 戦闘続行に支障ありません!』
「よし! 上出来だ! S&Sマテリアルズの奴め……いい仕事をするじゃないか!」
『A09レイドシップ! ハッチ解放を視認!!』
「機関、最大戦速!! データリンクは!?」
『他艦との重複無し! 進路クリアです!』
「主砲及び艦尾VLS発射準備! 主砲仰角最大! 対艦戦闘開始! 一瞬でカタを付ける! 気合を入れろ!!」
最大戦速、40ノット*4の高速移動で向かう先は、ハッチの空いたレイドシップの真下。
そして、ハッチが開いたという事はそこから大量のガンシップが降下したという事。
ガンシップは自身へ高速で突撃する艦影を脅威と感じたのか、全てがアルテミシオンに向かった。
その数は優にイージス艦一隻の対処能力を超えている。
つまり、損害は避けられない。
『支倉艦長! ガンシップが多すぎます! このままでは――』
「対空戦闘手動切り替え!! 主砲とVLS、そして機関の防御を最優先!」
『艦長! 駆逐艦”カデシュ”、”サラミス”より入電! 「貴艦の突入を援護する」だそうです!』
「ありがたい!」
後方から、前方のガンシップ群に向けて大量のミサイルが向かっていく。
その爆風を至近で受けながら、全速力でアルテミシオンはレイドシップに向かっていく。
だがレイドシップは何を思ったのか、突然の進路変更を行った。
『な!? レイドシップA09! 進路変更! 方位210度……こちらに向かっています!』
「なんだと!? やってくれる!」
『このままでは右側面を通過します!』
それではこちらの攻撃範囲に入らないまま、通り過ぎてしまう。
時間の猶予は無いが、進路を左に向けつつ急減速をしなければならない。
「総員慣性に備え! 機関、両舷全速後進! 取り舵一杯! 主砲の射程内に本艦を留めろ!! 主砲、撃ち方始め!!」
「知ってたけどホントに無茶苦茶だな!!
操舵を担当する航海長がぼやきながら、海軍独特の発音で舵を左に切る。
「目標、A09の下部ハッチ内部!
砲術長が同じく号令を飛ばす。
アルテミシオンは急減速し、同時に左に急旋回を開始。
艦内は慣性で前につんのめった後、今度は艦自体が右に大きく傾く。
その姿は、後方から見ていた駆逐艦カデシュによると、まるでドリフトしているかのようだったという。
そんな中、アルテミシオンは127mm速射砲を子気味良い間隔で連射する。
速射砲はほぼ真上に向けて砲弾を放つが、花弁状に広がったハッチが盾の役割を果たし、思うよう直撃しなかった。
「砲弾、直撃2、残りはハッチに!」
「ち! ここからでは駄目か! 両舷前進微速、取り舵一杯続け! レイドシップを正面に捉えられれば……!」
微速前進しながら急旋回。
強い慣性を感じながら艦は旋回し、やがてレイドシップを正面に捉えた。
同時に艦に強い衝撃が走る。
「被害報告!!』
「速射砲基部損傷! 砲撃不可! 右舷第二区画浸水、第一区画にて火災発生! 現在自動消火装置にて消火中! 射撃指揮所中破! 速射砲を除き、戦闘に支障はありません!」
「速射砲の修理を急げ! 両舷最大戦速! レイドシップ直下を通過する!」
「艦長! レイドシップのハッチが閉じかけています!」
「クッ、間に合うか!?」
急加速し、艦はレイドシップの真下に差し掛かる。
「艦尾VLS、一番から三番、
発射準備を整えていた艦尾VLSから、N5対艦巡航ミサイルが噴炎を派手に吹き出し放たれた。
最大3500km離れた目標も捕捉可能な長距離巡航ミサイルは、僅か200mも離れていない、しかも空中の目標に向かって放たれた。
ほぼ無誘導で直進した3発のN5巡航ミサイルは、レイドシップの無防備なハッチの内部に直撃し、大爆発を起こした。
「A09レイドシップ、撃沈を確認!」
「やったぞ!!」
同時に艦内に歓声が上がる。
「これで一隻目だ! 敵艦はまだまだいる、気を抜くなよ!!」
アルテミシオンは、爆発炎上を続けながら墜落するレイドシップを背後に、次なる目標を求めて戦闘を続行した。
――14:00 琵琶湖全域――
作戦の経過は順調だった。
アイアンウォール作戦。
その第一段階、艦砲射撃での限定的面制圧及びレイドシップの分断と撃沈。
そのうちEDF海軍が担っていた艦砲射撃と、その副産物であるレイドシップの分断作戦は多くの被害があれど順調に機能していた。
近江盆地を直進していたレイドシップの80%以上は海上に出て、強襲部隊であったイージス艦隊と交戦を開始し、イージス艦隊は多くの被害を出しながらもレイドシップを次々と撃墜している。
そうして地上の防御力が薄れたのち、EDF太平洋艦隊第一戦隊の戦艦、重巡洋艦群が面制圧砲撃を開始。
地上に居た巨大生物群、多脚歩行戦車ダロガなどを砲撃していた。
だが、今後の作戦を考え、ここで戦艦の主砲弾を全て使い切るわけにもいかず、また海上に出たレイドシップ全てを撃沈するにはリスクが多きすぎる。
レイドシップの残存数に比べ、既にイージス艦群の損害は大きく、何隻もの撃沈を受けていた。
そして、無慈悲な事に、レイドシップから発艦したガンシップは、海上に投げ出された生存者をも逃すことは無かった。
対人類の戦争ではありえなかった、海上で溺れる怪我人や脱出した小型艇もろとも、無残に殲滅されていった。
「提督、強襲任務戦隊の損耗率、40%に達しました。もうこれ以上は……」
艦橋で交信をしていた通信員が、沈痛な面持ちで大城提督に報告する。
「ふむ。……榊中将、よろしいかな?」
「十分だ。ここまで粘ってくれて感謝する、大城提督。よし、『全作戦部隊に告げる! 作戦を第二段階に進める! 第一戦隊による面制圧止め! 大型爆撃機フォボスによる絨毯爆撃、及び地雷原と砲兵による敵部隊漸減を行う!』大城提督、直ぐに強襲任務戦隊の救助に」
榊中将は全軍に命令を下すと、大城提督に向き合う。
「分かりました。しかし、本当に本艦まで向かってよろしいので? いくら戦艦が頑強とは言え、戦場に居る以上何かの間違いで沈む可能性も否定できませんが」
無論、大城提督も、横で指揮を執るリヴァイアサン艦長も、この戦艦の強さには自信があったが、相手はフォーリナーだ。絶対はない。
万が一を考えると、現在日本のEDF総指揮を執っている榊中将が戦死するリスクは避けるべきだ。
もっと言えば、旗艦とは言え戦艦に乗り込むのではなく、最後方の司令部で大人しくして然るべきだ。
大将が死ねば、戦は負けるのだから。
「問題ない。この艦の対空防御は信頼しているし、何よりリヴァイアサン程の戦力を遊ばせておくことなどできん。もとより、この戦艦に乗った時点で、覚悟の上だ。臆病者に、指揮官など務まらんと言うのが私の持論でね。前線で命を張っている将兵に比べれば、これでも申し訳ないくらいだ」
「合理的な考えではありませんが、確かにリヴァイアサンを戦力と考えた場合悪くはない手です。ふふ、まったく、命知らずな総大将も居たものです……。いえ、だからこそ、今の日本を纏められるのでしょうね」
半ば呆れつつ、しかし大城提督は本心から、この人の命令ならば全霊で応えられる、そう確信した。
歳で言えば二回りも下の若造にしか見えない総大将であったが、しかし彼は今の未曾有の危機に晒された日本を背負う覚悟があると、相対してはっきり分かった。
「よし、第一戦隊、全艦最大戦速! 全力で強襲任務戦隊の援護に向かう!」
第一戦隊の戦艦、重巡群は砲撃をやめ前進し、強襲戦隊の援護及びガンシップ群との交戦を開始した。
同時に強襲戦隊のイージス艦群は撤退し、入れ替わるように戦艦群が殿を務める形となった。
作戦第二艦隊と並行してこの撤退は続き、結果的にイージス艦、戦艦群は多くの被害を出しながらも、その総合戦力の70%を残して帰港した。
残った21隻のレイドシップは、10隻がそのまま海上を彷徨い、11隻が陸上に戻り京都へと向かった。
人物紹介
▼
69歳。EDF極東方面太平洋連合艦隊司令長官。
階級は海軍大将。
元海上自衛隊の重鎮で、これからは国を護る戦いではなく星を護る戦いになると考え、EDF海軍に出向した。
人望は厚く、当時EDFを軍拡の為だけの組織と見ていた多くの海上自衛隊員たちが、彼に賛同してEDFへ出向したという。(余談だが、このような人材の引き抜きが相次いだ為、各国軍からEDFは相当に煙たがられていた)
一方で海軍のこと以外に目を向ける事は無く、生涯独身を貫き、これと言った趣味もない。まさに「海に行き、海に死ぬ」そんな考えを体現した生粋の軍人。
▼
55歳。階級は海軍少将。
EDF主力戦艦ポセイドン級一番艦”ポセイドン”艦長を務める。
子供のころから戦艦が大好きで、元々自衛隊の護衛艦乗りだったが、EDF戦艦ポセイドンの砲力に惚れ、EDF海軍の門を叩いた。
以後は転々としながらついにポセイドンの艦長に任命され、年甲斐もなくはしゃぐなどポセイドン大好き人間。
実家の犬にまでポセイドンと名付けて妻に呆れられる始末。
荒っぽい口調だが命令は的確で、演習では常に最高点を叩き出す天才肌。
ただしいかにポセイドンの強みを生かした立ち回りをするか重点的に考えている。
そんな行動も「まああの人ならしゃーない」という雰囲気でポセイドン乗員も納得している。
▼
37歳。階級は少将。
駆逐艦”アルテミシオン”の艦長を務めている。
艦長としては若い方だが、真面目な性格に反した柔軟な戦術眼を持っていて、対フォーリナー戦に於いてその力を発揮している。
海上自衛隊からの出身ではなく、生粋のEDF海軍軍人。
若輩の時からの叩き上げでのし上がってきた努力家で、EDF上層部を”堅物”呼ばわりする等発言には過激な所があり、そのたびに部下や側近はひやひやする思いをしている。
そんな彼だが榊中将のある意味司令官としては破天荒な行いを知って、かなり好感を持っている。
命令は前述の通り斬新だが、その命令は無茶ぶりが多く、部下は振り回されがちで、お陰で艦隊一の操舵術と砲術と噂される程技術が向上した。