全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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第四十一話 オペレーション・アイアンウォール(Ⅲ)

――2023年 3月30日 15:00 京都府京都市山科区――

 

 

《本部より地上部隊へ! 現時点で可能な露払いは終わった。後は諸君らの直接戦闘のみが頼りとなる。本当に、苦境を強いていると思う……。だが! 我々EDFは、やらなければならない! 今や我々の心臓部となった、極東第一工廠防衛の為、そして何より、背後に居る無辜の日本国民の為! 諸君らはここで鋼鉄の壁となり、迫る全ての敵を殲滅せよ!! 現時刻を以て、アイアンウォール作戦、第三段階への移行を宣言する!》

 

 EDF極東方面第11軍司令官、榊玄一中将は、山科区に布陣した地上部隊に激励と第三段階への移行を声高に宣言した。

 

 アイアンウォール作戦第三段階。

 すなわち、京都地上戦力によるフォーリナー進撃部隊の真っ向からの迎撃戦闘である。

 

《巨大生物、攻撃開始地点を通過!》

 

《戦車部隊!! 攻撃開始せよ!!》

 

『了解!! 全車輛! 攻撃開始! 撃ぇーー!!』

 

 第一戦車連隊の108輛の”ギガンテス”戦車が一斉に砲撃を開始する。

 戦場に幾十もの砲撃音が奏でられ、進撃する巨大生物を駆逐する。

 

 開始の数分間は、まだ一方的な展開となった。

 EDF海軍、空軍、そして陸軍砲兵隊と工兵隊の連携によって漸減された巨大生物はまばらで、生き残りも大きなダメージを負っていた。

 

 それでも僅かな生き残りが戦車部隊の砲撃を抜けて、歩兵部隊の射程まで迫る。

 

『狙撃部隊! 巨大生物接近! 手負いだが数十と見た! 頼んだぞ!』

 

 陸戦歩兵(レンジャー)からの無線が狙撃部隊に届く。

 

『任せておけ! 我々ブルージャケットが居る限り、この程度、物の数ではないさ!!』

 

 ビル街の屋上で待機していた、複数の狙撃部隊が応答する。

 彼らは一部青色に塗装されたアーマーを着ている事から、”ブルージャケット”と呼ばれていた。

 

 その強気な発言の通り、狙撃に関してはEDF一の精鋭部隊として名をはせている。

 しかしそもそも、彼らは本来の正規戦力ではない。

 

 元々はここ第402火力演習場で対狙撃戦に於いての兵器試験部隊だった。

 その並外れた練度と、事態の緊急性から昨今では半ば正規戦力として扱われている。

 所属は第二師団、独立狙撃大隊。

 コールサインは愛称を取ってそのまま”ブルージャケット”と呼ばれている。

 

 彼らの装備は少し前から、巨大生物の甲殻を確実に貫くことを目的に開発されていたストリンガー狙撃銃が支給され、多大な戦果を挙げていた。

 今作戦では更に新型対物狙撃銃”ライサンダー”も数丁与えられている。

 

 彼らの銃声が鳴り響くと、点在していた巨大生物群は瞬く間に数を減らし、陸戦歩兵部隊の射程に入る前に大方殲滅した。

 

《フォーリナー第一波はほぼ殲滅! 続き、フォーリナー第二派、来ます!! α型、β型、ダロガの混成部隊です!》

 

 旗艦リヴァイアサンに居る通信オペレーター、鹿島中尉の声だ。

 地平から、今までの倍以上の巨大生物が押し寄せてきた。

 更に遠目には、ギリギリ多脚歩行戦車ダロガも視認出来た。

 

『ここからが正念場だ! ダロガとの撃ち合いになる! 気張れよ! 全車、砲撃開始!』

 

 第一戦車連隊の連隊指揮官が発破をかける。

 

『散々面制圧したってのに、まだこんなに数が居やがるのかよぉ……ちくしょうめ!』

 

『戦う前から泣き言を言うな! それにこっちのギガンテスも次世代型なんだ! 遅れは取らないさ!』

 

 連隊の戦車兵たちが部隊内無線でやり取りをする。

 やがてダロガからの反撃も始まった。

 

『ッ! 砲身点火ッ! 粒子砲撃、来ます!』

 

『各自移動開始! 建物を盾にしろ! この距離なら問題なく躱せる!』

 

 幾つもの粒子砲弾が第一戦車連隊に向かって放たれ、街は爆撃でも喰らったかのような様相になるが、しかし反撃に高速の徹甲榴弾が即座に放たれた事から、戦車部隊は健在であることが分かった。

 

『損害報告!!』

 

『こちらヴァーミリオン大隊! 損害車輛なし!』

 

『こちらシルバーグレイ大隊、同じく!』

 

『バイオレット大隊! 全車輛、損害無し!』

 

 それぞれ第101、102、103戦車大隊の指揮官が答える。

 

『よし! この調子でダロガの相手をするぞ!』

 

 一方、その間にも巨大生物は迫っていた。

 

『こちらブルージャケット! 我々は厄介なβ型及びα型亜種を中心に狙撃する! その他の敵は任せたぞ!』

 

 ビル街から断続的に狙撃音が聞こえるが、フォーリナー第二派、およそ一万体の巨大生物を前に闇雲な狙撃は無意味だ。

 脅威度の高い個体を優先して狙撃している。

 

『こちら第一歩行戦闘車(コンバットフレーム)中隊! 巨大生物捕捉! リボルバーカノンによる掃射を行う!』

 

『第102機械化歩兵連隊接敵! 第一中隊(レイジボーン)総員、ハンドキャノンでα型亜種を狙撃! 第二中隊(アイアンランサー)第三中隊(フォレスティオ)は中近距離戦用意!』

 

『第二降下翼兵団、エンゲージ! 全中隊、殲滅開始!!』

 

 コンバットフレームや、歩兵各兵科も次々と接敵し、戦闘を開始する。

 

『第18陸戦歩兵大隊接敵、戦闘開始! 86、右側面、接近するダロガに対戦車戦闘! 87、正面でα型亜種を阻止攻撃! 88、その場でα型及びβ型に弾幕射撃! 一定時間で良い、背後に回らせるな!』

 

『第88レンジャー中隊了解! 中隊、まだ撃たないで、引き付けて……ようし、射撃開始!!』

 

 仙崎誠伍長の所属する、第88レンジャー中隊も射撃を開始した。

 

『レンジャー9より本部! 巨大生物の侵攻が激しい! レンジャー12と連携を取っているが、阻止できない!!』

 

《こちら本部! 無理はするな! トルネード中隊! レンジャー9の航空支援をやれ! レンジャー9は2ブロック西に後退!》

 

『トルネード了解! 一個小隊で航空支援を行う! 第一小隊! 高度に気を付けろよ! 特にβ型は対空能力が高い!』

 

 第16攻撃ヘリ中隊”トルネード”は、一個小隊4機の対地制圧ヘリEF-31”ネレイド”を向かわせた。

 自動捕捉型40mmオートキャノンが的確に直下の巨大生物まで撃ち抜き、

 両翼の70mmロケット砲が敵をまとめて吹き飛ばす。

 

《本部よりフェンサー”ゾディアーク中隊”へ! そちらにα型700体以上が集中して迫っています! 急ぎ後退し、コンバットフレーム”ゴーン中隊”と合流し、共同で迎撃してください!》

 

 旗艦リヴァイアサンに設置された本部の女性オペレーターが緊急に無線を送る。

 

『こちらゾディアーク1、了解した! 中隊! 一時後退だ! コンバットフレームと合流する!』

 

『ゴーン1了解!! 来るなら来てみろ! この鋼鉄の壁、そう簡単に抜けると思うなよ! 虫けら共め!!』

 

 フェンサー、ゾディアーク隊は合流後、高機動でかく乱しつつ中距離戦で威力を発揮するデクスター自動散弾銃で暴れまわり、それをゴーン隊のニクスが後方から援護していた。

 

『こちらストーク7! β型が余りに多い! 援護を頼む! 既に2人やられた!』

 

《本部よりフラウンダー6! ストーク7の最寄りは君達だ! 至急援護に向かえ!》

 

『フラウンダー6了ォ解! 梶川大尉ィ、んな訳でちょっくら離れますわ! 行くぜ野郎共! ストーク7の坊ちゃん共のお守りだ!』

 

『『ヒャッハーーー!!』』

 

『こちらストーク7! 助かる……が、坊ちゃんは余計だ!』

 

 第26フラウンダー中隊のフラウンダー6が配置を変え移動する。

 中隊長、斯波中尉率いるフラウンダー6は、道中の巨大生物を蹴散らしながら、見事ストーク7の窮地を救う。

 

 こうして各部隊が奮戦し、第二派の残敵が半数を切った。

 しかし、この辺りから徐々に綻びが出始めてきた。

 

『こちらレンジャー5! くそ、孤立した! 背後に回られてる! 本部! 誰か、誰か援護を頼む!!』

 

《ウイングダイバー”シルフダンサー中隊”! レンジャー5の救援に向かえ!》

 

『シルフダンサー1より本部! こちらもβ型の対処で身動きが取れない! ストーク4と連携を取っているが……くそ、おい! α型の酸にも気を付けろ!!』

 

《そちらに限定的な支援砲撃を送る! エアレイダー”プレアデス隊”! 出番だ!》

 

『プレアデス了~解。なんとか群れを掻い潜って五分で駆け付けるから、それまではどっちも死なないでねーっと。ほら、宮藤君。運転よろしく~』

 

『う~、無茶ぶりですよ~!』

 

 そんな気の抜けるやり取りがオープン回線で発信されるがまあこれはいつもの事。

 プレアデス隊指揮官保坂少佐の無茶ぶりに見事答えた彼女、レンジャー宮藤の手荒な運転によって、なんとか五分で駆け付けた保坂は、高機動型グレイプ装甲車のハッチから身を乗り出し、素早く目標と腕の操作パネルを照らし合わせ、位置を決定する。

 

『プレアデスより砲兵隊”スレッジハンマー”! 送信グリッドに限定制圧砲撃! よろしく頼むね!』

 

『こちらスレッジハンマー! 味方が近いが大丈夫か!?』

 

『大丈夫大丈夫! ぐずぐずしてると余計な死者が出るよ?』

 

『そいつぁ目覚めが悪ぃ! 目標グリッドに砲撃開始! 撃ぇー!!』

 

 数秒後、数発の砲弾が、レンジャー5とシルフダンサー1の中間くらいを狙い撃つ。

 二小隊の合流を阻害していたα、β混成群が綺麗にふっ飛んだ……が。

 

『シルフダンサーよりプレアデス!! 保坂少佐! 何を考えてるんですか!! 誤爆スレスレの砲撃でしたよ!! 殺す気ですか!?』

 

『えー? でも死んでないじゃん』

 

『それは結果論です!! そっちのストーク小隊なんかかなり危なかった様子でしたけど!』

 

『はいはいゴメンネー。でも急がないとレンジャー5死んじゃうんじゃない?』

 

『ッ! それは分かっています! ダンサーズ! さっさとレンジャー5と合流! ストークは後ろから付いてきて、退路の確保! いいわね!』

 

『サー! イエッサー!! ストーク4! お嬢さん方のケツに付け! 悪い虫共のストーキングはお断りだ!』

 

『言い方!!』

 

 緊迫ある命のやり取りの最中にあっては神経を逆撫でするような保坂の声に苛立ちながらも、ギリギリかつ効果的な判断、そしてそれを実行する砲兵隊の練度に舌を巻きつつ、シルフダンサー1や他部隊は戦闘を継続していく。

 

『こちらレンジャー11! 巨大生物の激しい攻撃を受けています! 救援を!!』

 

「クソっ、こいつらなんて数だ!」

 

「弾が足りないぞ! 補給コンテナをもっと持ってこい!」

 

《ブルージャケット! その位置からなら狙えるはずだ! 狙撃で集中的に援護しろ!》

 

『ブルージャケット了解! ブルー1、2、目標変更、狙撃開始』

 

「そうは言ってもこの状況、そう長くは持たないぞ?」

 

「狙撃にも限度がある……一体一体仕留めるのは骨だな……。せめてもっと火力のある武器があれば」

 

「ぃやっほー! 呼んだかい!!」

 

 苦戦するブルージャケットの居座るビル屋上に、突然陽気な青年の声が聞こえた。

 フェンサーだった。

 しかも、通常は盾と併用して使うはずの重火器を二丁持ち。

 

 今回の作戦で試験的に運用されている、EC-01SS”ロデオSS”と呼ばれるハンドガトリングガンだ。

 元々EDF欧州第三(スペイン)工廠が開発したロデオという兵器だったが、米国軍需企業S&Sマテリアルズにより改修を受け、歩兵用ガトリングにあるまじき長射程、高精度を獲得したハンドガトリングガンだ。

 

 そして両肩には、市街地、特にビル群などでの戦闘を想定した誘導兵器、高高度強襲ミサイルコンテナを二基装備していた。

 これはその名の通り、ミサイルが一度上空まで直進した後、設定された目標に一直線に飛んでいくというもの。

 

 米陸軍の対戦車ミサイル”ジャベリン”は、戦車の上面装甲を狙う目的で同じような軌道をとる事があるが、これはそれとは別の目的で上空から急降下する。

 すなわち、障害物の影響を受けずに遠距離から攻撃する為である。

 

 そんなフェンサーの中でも重武装の彼の名は、

 

「御子柴ぁぁ! お前連携って言葉を知らねーのか! だいたいこのミサイルなら屋上まで登らなくても……っておい!」

 

 第105機械化歩兵連隊、第二中隊第一小隊”スティングレイ1”のフェンサー栗宮少尉は、同小隊御子柴少尉を咎めかけるが、御子柴少尉は、既に高高度強襲ミサイルのハッチを開け、発射態勢に移っていた。

 

「栗宮ぁ! いいからお前も早くぶっぱしようぜ! 獲物が逃げちまうしあそこのレンジャーがやべーぞ!」

 

「ああもう分かったやるしかねぇ! 『スティングレイ1よりレンジャー11! ミサイルによる支援砲撃を行う! 衝撃に備えろ!』」

 

『レンジャー11了解! ありがてぇ! 早いとこ頼むぜ!』

 

『おっしゃまかせとけ! 発射ぁ!!』

 

 二人両肩、合わせて40発ものミサイルが上空に飛翔し、各々に狙いを定めて急降下する。

 巨大生物に狙いを定めたミサイルが、次々と着弾し、レンジャー11が苦戦していた巨大生物群は一気にその数を減らした。

 

『助かったぞスティングレイ1! この調子で頼む!』

 

『おおよレンジャー11! そらそらぁ! まだまだやったるぜぇー!!』

 

「ったく調子のいい奴だ……!」

 

 御子柴は腕部の二丁ロデオSS型ガトリングガンを、栗宮はガリオン軽量機関砲をそれぞれ発射する。

 

「ふん、フェンサーがわざわざこんな場所に陣取って狙撃とは、変わったやつもいたもんだな。頼もしいが、俺達の獲物は残しておけよ?」

 

 ブルージャケットの隊長、早坂大尉がリロード中に御子柴達を見て不敵にほほ笑む。

 

「ああ心配すんな! あいつら腐る程居やがっかんな! 何だったら勝負するか? 負けねぇぜ!」

 

「ちょっと馬鹿お前、相手は大尉だぞ! すんません大尉、こいつ見ての通りの馬鹿野郎なもんでして」

 

 相手を選ばず喧嘩を売る御子柴に対し、栗宮が焦った様子で止めに入る。

 

「……まあ、今は戦闘中という事で見逃してやる。腕もいいようだしな。ところで木崎曹長、手が止まっているようだが?」

 

「その重武装のフェンサー、もしかして貴方、”スティングレイの狂犬”? 盾を使わないで敵陣に突撃していって、重火器乱射して暴れまわるっていうあの!」

 

 御子柴に対し目を輝かせている彼女は、ブルージャケット隊の一人、木崎曹長という。

 なんでもいつかの戦闘でたまたま狙撃中スコープを覗いていたら、重火器二丁装備で暴れまくるスティングレイ隊の一人を目撃し、その強さに惚れ込んだのだとか。

 

「そうそれ俺! ってその名前そんな広がってんだ! ちょっとびっくりしたわ!」

 

「きゃー! やっぱり! 私ファンなんです! へぁ~、まさかこんなところで巡り合えるなんて!! ねえちょっとヘルメット外して見せてよ! これでイケメンだったらどうしよう……!」

 

「はぁ……、この恋愛脳……」

 

 早坂大尉がスコープを覗きながら呆れたように顔を歪める。

 

「コイツそんなイケメンじゃないぜ曹長……。言動に違わぬアホっぽい能天気な顔してるから見ない方が……」

 

「なにおう栗宮! だがまあ流石に戦闘中は無理だわな! また今度会ったらゆっくり話そうぜ! つー訳で今はスーパーガトリングタイムをひたすら楽しんじゃうぜっ!! オラオラァー!!」

 

 あんまりな事を言う栗宮に対して憤慨するが、そんなことは無視してひたすら弾幕を張り、ガトリングガンを放つ快感に身をゆだねる事にした御子柴。

 

「ったくホントマイペースなヤツ。……御子柴! 11時方向ダロガ多数! 戦車部隊が押されてる、ありゃあまずいぜ!」

 

 ダロガが進撃し、戦車部隊は半包囲されかかっている。

 単純な移動速度は戦車が上だが、建造物が砲撃で次々と破壊され、キャタピラと言えども移動が困難な場所がある。

 

「そうか! 頑張れよ栗宮!」

 

「いやお前もやるんだよ! ってそうか! ロデオじゃダロガには効き目薄いか!」

 

 全く効かない訳ではないが、やはり最低でも徹甲弾で無いと効果は薄い。

 

「そゆこと! それにやっぱあれじゃん、虫共に無双して殺しまくった方が楽しいじゃん! 大物狩りはなんかメンドイし、そりゃあ神谷かお前の領分だろ!」

 

「分かったけどお前メンドイとか言うな! とは言え俺だってガリオンじゃどうにもならんだろ!『柳中尉! 11時方向のダロガ数機、相手できますか!?』」

 

『こちら柳。目標確認した! ギガンテスと連携して攻撃する! こっちは任せておけ!』 

 

 スティングレイ1指揮官の柳中尉が応答する。

 

「ブルージャケット! いつまでもフェンサーに獲物を譲るな! 各員、ライサンダー装備! 新型対物狙撃銃の力、見せて見ろ!」

 

「「サー! イエッサー!」」

 

 ブルージャケットの早坂大尉を含む数名が、大型のライフルを伏せて構える。

 フォーリナーの技術を組み入れて旧極東本部開発部が設計した対ダロガ大型対物狙撃銃。

 ブルージャケット隊員が引き金を引くと、まるで戦車の砲撃音のような衝撃が響き、同時にダロガに風穴が空いた。

 内部機構まで貫通したのか、風穴は炎上し、機体各所から煙が上がる。

 ダロガ上面にある触覚のような粒子砲台も三本が吹き飛び、殆ど無力化できていた。

 

「一撃は無理だったが、それでもなんという威力だ」

 

 スペック通りダロガを一撃で屠る事は叶わなかったが、単純に旧型ギガンテス以上の威力を狙撃銃で出したと考えれば、驚くべき性能だ。

 問題は弾薬が高価であり数が用意できない事だが、それも量産体制が整えば話は変わるだろう。

 

『今の攻撃、ライサンダーか!? レンジャーの銃がここまでの威力を見せるとはな! 大したものだが、トドメは頂くぞ!』

 

 通信してきたフェンサーは、急ブーストで近づき、一個しかない砲塔から放たれる青白い砲弾を回避すると、ブーストジャンプでダロガとの距離を詰め、すれ違いざまにデクスター自動散弾銃を放った。

 

 ほぼ全弾が命中したダロガは、敢え無く崩れ落ち、機体内部から爆発した。

 その爆発を盾で防ぎ、新たな敵を探していく。

 

「ひゅー。神谷のやつ、やるじゃん」

 

「デクスターでダロガ墜とすとか、あいつも結構変なヤツだよな……」

 

 同じ小隊員である神谷の事を、御子柴と栗宮がそう評価する。

 

「いいとこ、見つけた」

 

 そんな中、新たな乱入者がビルの屋上に降り立った。

 どうやらウイングダイバー隊の一人のようだ。

 

「白石少尉! 後ろはお任せください!」

 

「……同じ小隊なんだから、少尉はいらない」

 

 ペイルウイング2の白石玲香少尉と、間宮の補充要員として配属された仁科少尉だった。

 

 そう言いながら、白石が構えているのはやはり狙撃用レーザーライフル。

 

「お? あんたなんか前会った事あるよな? 名前は確か……」

 

 御子柴が、スチールレイン作戦の時の記憶を呼び起こす。

 

「隣、危ない」

 

「ん?」

 

 狙撃用レーザーライフルを構え、目線をスコープから外さずに、近づく御子柴を警告する。

 その様子を見た早坂大尉が何かに気付く。

 

「その銃、まさかMONSTERか? 御子柴少尉、離れた方が良い、溶けるぞ」

 

「えっ? そんなやべぇ武器?」

 

「発射」

 

 御子柴が離れるのを待ったのか狙撃のタイミングを計ったのか。

 丁度御子柴が離れた瞬間、小声でつぶやいた白石が引き金を引いた。

 まるで落雷のような音を発し、圧倒的熱量のレーザーが照射された。

 まさに一瞬の出来事だったが、彼女が狙ったダロガは装甲を完全に貫通され、装甲の大部分も融解していた。

 当然ひとたまりも無くダロガは崩れ落ち、内部から爆散する。

 

「す、すげぇぇぇ!! あのダロガを一撃で撃破とか!! バケモンかよその銃は!!」

 

「凄いです白石少尉!! 周囲の巨大生物も余波で二、三体は仕留めてますね! MONSTERと白石少尉が居ればダロガだろうと何だろうと怖くありません!!」

 

 御子柴と仁科が両脇から白石やMONSTERについて騒ぐ。

 

「オーバーヒートした。援護して」

 

「お任せください! 白石少尉の珠の肌には指一本触れさせません!」

 

 実は先程からこのビルにも壁面を這って進んだ各種巨大生物が進撃しているのだが、中近距離装備のブルージャケット隊員や栗宮、仁科の活躍で乱戦は避けられていた。

 

「ふん、新たなライバルが現れたようだが、その様子じゃ一発で排熱限界に達するようだな。この隙に接近する残りのダロガも片付けるぞ!」

 

 早坂大尉が部下に発破をかける。

 白石も、ただ冷却を待つだけでが無く、もう一つの武器レーザーライフル”マグブラスター”を使って迎撃する。

 マグブラスターは、銃本体に内蔵電源があるタイプなので、ユニットが強制冷却状態でも使用可能な銃だ。

 その事もあって、マグブラスターはウイングダイバーの中では最もポピュラーな装備として評価が高い。

 相方の仁科の装備もマグブラスターだ。

 

「冷却完了。もう一発……」

 

 白石は再びMONSTERのスコープを覗く。

 が、そこで白石の動きが止まった。

 

「白石少尉! どうした?」

 

 早坂大尉が奇妙に思って声を掛けた。

 

「あれは……」

 

 白石がスコープから見ているものは、ダロガの揚陸艇だった。

 恐らくマザーシップから発艦しているだろうこの揚陸艇は、世界中に拡散して一隻に付き六機のダロガを投下する。

 レイドシップと違い装甲は脆弱で、ある程度の火力なら撃沈する事は可能だが、内部のダロガは頑強な為生存している事が多い。

 

 そんなフォーリナー揚陸艇だが、その内部に見慣れない物体が入っているのが見えたのだ。

 味方がそんな揚陸艇を放置するはずもなく、ニクスのロケットランチャーの集中攻撃で墜落した。

 

 問題は、その中身だ。

 そこから這い出てきたのは……。

 

「っ! 敵の、新型兵器……!?」

 

 白石が珍しく険しい表情をした。

 

 図体は10m前後、ダロガとほぼ同じ。

 ガンシップと同じ白銀の装甲を身に纏っているが、墜落の衝撃で損傷しているのを見ると無敵ではなさそうだ。

 だが、何より特筆すべきなのはその姿。

 

 人間と同じ二本の脚と腕があり、腕の先には銃器のような物が装備されていた。

 頭部は無いが、胴体の中心にある赤く光る窪みがあり、まるでこちらを見られているような感覚になる。

 

 後に、白銀巨兵”ヘクトル”と名付けられる二足歩行兵器が戦場に降り立った。

 

 




また無駄に(?)新しい奴増えたなぁ……。
そのうち自分も読者様も整理しきれなくなるのでもっと簡易的な人物一覧を作ろうか検討中……

新規登場人物

宮藤理恵(みやふじ りえ)
 第2エアレイダー小隊の随伴陸戦歩兵(レンジャー)
 階級は軍曹。
 主にエアレイダー小隊の運用する高機動型グレイプの運転手を務める。
 もちろん普通にレンジャーとしての戦闘もこなせるが、直接戦闘部隊に比べるとどうしても経験は少なめ。
 ただ保坂少佐の無茶ぶりに対応する為、運転技術はかなり高い。
 本人的には不満らしく、保坂少佐の愚痴を語らせれば一時間では収まらないと本人は言う。

早坂大吾(はやさか だいご)
 第二師団、独立狙撃大隊”ブルージャケット”の指揮官。
 階級は大尉。
 狙撃に於いての指揮、その技術どちらもEDF随一のベテラン狙撃兵。
 若いころは猟師として活躍していたが、環境の悪化に伴い続けられなくなり、稼ぐためにEDFの門を叩いた。
 巨大生物など所詮は獲物に過ぎないと思ってはいるが、同時に獲物に牙を剥かれる事もあると理解している。
 真面目な性格なのだが、猟師の頃の癖が抜けず、つい仕留めた獲物の確認に行ったり食えないかどうか実験したりするのを部下に止められたりしている。


木崎真理(きざき まり)
 ブルージャケット部隊員の一人。
 階級は曹長。
 普段はなんてことないのだが、変な男に惚れがちな恋愛脳の女性兵士。
 価値観がどこかズレていて、普通のイケメンに「何か違うのよねー」と言って告白を断った事がある。
 昔はそうでもなかったのだが、EDFに入り、「強さ」を重視する傾向になった。

神谷穣一(かみや じょういち)
 第105機械化歩兵連隊第一中隊”スティングレイ”第一小隊員
 主に機関砲や火砲を使うフェンサー。
 盾で身を護りつつの近距離戦を得意とし、特にデクスター自動散弾銃では、対巨大生物用として開発されたにもかかわらず、ダロガに散弾が通るぐらい接近して攻撃するという普通では考えられないやり方で多数の戦果を挙げている。


仁科秋香(にしな あきか)
 第一降下翼兵団第二中隊”ペイルウイング”第二小隊員。
 厚木市で戦死した間宮の後釜で、階級は少尉。
 隊長が戦死し解隊された部隊の一人。
 配属されて以来、白石のクールっぷりに惚れ込んで付きまとっている。
 
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