全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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第四十四話 白銀の巨兵(Ⅲ)

――2023年 3月30日 17:15 京都市内 京都駅付近 八条通り「第一陸戦歩兵大隊 第88レンジャー中隊 レンジャー2-1」――

 

 

「走れ! 進め! 撃ち続けろォー!!」

 

「「EDF!! EDF!!」」

 

 荒瀬軍曹達、レンジャー2-2が前衛でα型や亜種から道を切り開いている間、我々後衛組は京都駅を乗り越えてやって来たβ型の大群を相手にしていた。

 

「くそ、数えるのもやんなるっすねぇ……。こんな大群に囲まれたら……」

 

 気弱なフリをしつつ、跳躍して宙を飛ぶβ型を次々と狙撃する水原の腕は、流石としか言いようがない。

 ついでに、隙あらば前方を進むレンジャー2-2の援護狙撃も行っている。

 

「そうなんない為にこうやって走ってんだろ水原。それにお前は何としても生き残って香織さんとやらに会えっての!!」

 

 そんな水原のカバーに浦田が入る。

 

「だからフラれたって言ってるじゃないっすかー! 嫌味っすか!? ってうわっ!」

 

 そういったそばから、水原は糸に脚を絡め取られて転倒する。

 足首のスーツが白煙を上げて溶け始めるが、肉まで達するにはまだアーマーの方が頑丈だ。

 

「こ、の!」

 

 糸を放ったβ型を、狙撃銃としては至近距離でぶっ放す水原。

 すぐに窮地を脱し、走って我々に追い付く。

 

「水原! 怪我は!?」

 

「ちょっとスーツが溶けたっすけど、まあ大丈夫っす!」

 

 大林の声に返事をする。

 まあ、私は全て躱しているので問題ないが、流石に皆スーツがぼろぼろになってきている。

 重傷者こそ出していないが、乱戦になればそう長くは持つまい。

 

 それにしても、アーマースーツの筋力アシスト性能の向上によって編み出された、この引き撃ちと呼ばれる戦術は、巨大生物には非常に有効だった。

 

 巨大生物との戦いは、常に包囲との戦いだ。

 人類同士の戦争であっても、包囲は基本的かつ強力な戦術の一つではあったが、巨大生物戦に於いてはもっと物理的な脅威となる。

 

 すなわち、巨大生物自体で壁を作られて、射線自体が通らなくなるのだ。

 右を見ても左を見ても敵の壁。

 こうなったらお終いだ。

 そうなる事で死んでいった仲間や部隊を腐る程見てきた。

 今思うとスチールレイン作戦の時は、本当に絶体絶命の状況だった。

 

 だが同時に、その圧倒的物量から包囲されずに立ち回るのは至難の業だ。

 開戦初期は、この包囲戦術に対して、防衛ラインを作って横に回り込ませない戦術を取っていた。

 だが、あの物量、機動力、何より、恐怖を一切見せず前進に前進を重ねる突進力に、成すすべもなく崩れ去り、あっという間に包囲殲滅されてしまう。

 

 そこでこのライン戦術をやめ、各部隊が小隊単位で動き回り、敵を引きつけながら攻撃する方法で立ち回る。

 敵が包囲するより早く移動しつつ、弾丸を撃ち続ける事で徐々に数を減らしていく作戦だ。

 

「だけどよ! 弾薬の補給とか、そもそも敵の方が足が速いとか、色々突っ込みどころがあんぜ、これはよぉ!!」

 

 浦田の左側面に数体のβ型が着地し、糸を放ってくる。

 数本に絡まれつつも、グレネードランチャー(TFアンガーGD)を発射し、一網打尽にする。

 が、数秒後にはその死骸を乗り越えて、β型が現れる。

 

「そのようだ! どうやら徐々に包囲されつつあるらしい、な!」

 

 そのβ型が放つ糸のシャワーを華麗にローリングで躱し、同時にアサルトライフルの射撃で三体を仕留める。

 私が使う銃は、S&Sマテリアルズという、スイスとスウェーデンの合同企業が開発したAE-20Exと呼ばれるアサルトライフルだ。

 PEG(パウダード・エナジージェム)弾と呼ばれる、エナジージェムを粉状にすり潰して火薬の代わりに詰め込んだ新型弾丸を使用しているらしい。

 

 そもそもエナジージェムとは、巨大生物やダロガ、ヘクトルなどの侵略兵器類から共通して取れる地球外の物質だが、早くもそれの応用に漕ぎつけたと言う訳だ。

 なんでも”エナジージェムの粉末化後、僅かに通電する事によりエネルギー準位を落とし中性子に変化する際の反応「露出型イオタ爆発」で生じる熱を使い、弾丸内の液体窒素を急膨張させて弾丸を射出する”という仕組みらしい。

 

 門外漢の私には何を言っているのか分らんが要するに、新技術を用いた画期的な実験兵器ということだ。

 そんな信頼性もクソもない意味不明な実験兵器なぞ、本来ならば論外といったところだが、

 

「鈴城軍曹!」

 

 私は鈴城軍曹の背後から迫る、はぐれたα型亜種向かって、AE-40Exの引き鉄を引く。

 決して高くない精度だが、弾丸は高初速で亜種の赤褐色の装甲殻を穿ち、数発で体液を吹き出し無力化する。

 

「さんきゅー仙崎! しかし、いい銃じゃねーか! なんでそんなに不満そうな顔なんだ?」

 

「いつ暴発するか分らぬ銃を使うのは、心臓に悪いのですが! しかしこんな状況では――」

 

 跳躍するβ型の着地を狙い、引き鉄を引く。

 

「――ちょっとでも強い武器じゃねぇと話にならねーってかぁ!? まったくその通りだぜ仙崎よぉ! それに、新垣の時は仕方なかったとはいえ暴発すんのはいつもの事だろ? ならソイツにビビッてばっかってのも変だろうが!」

 

 鈴城軍曹は接近戦に持ち込みたい衝動を抑えつつ、今は連射式ショットガン”スパローショット”を使って応戦している。

 集弾率が高く、連射も効くスパローショットは、中距離戦でも充分使えるのだ。

 

 まあ、暴発の件はともかく、今の鈴城軍曹の発言はアイアンウォールに参加する兵士の総意に近い。

 本来試作型だの先行量産型だのは、十分な信頼性が得られていない為前線兵士からしたら無用の長物である場合が多い。

 実際、使っていて問題が無いではないが、それに引き換えても何より少しでも「フォーリナーに通用する」ことが大事なのだ。

 

 まだEDF戦略情報部から正式に発表された訳ではないが、噂だとどうも巨大生物は初期のころから少し甲殻が厚くなっているらしい。

 銃器の進化のわりに、思ったより巨大生物が倒れてくれないのはこれが原因だろうか。

 そしてそれが現実ならば、恐ろしい事態だ。

 どんなに銃器が発達しても、それに巨大生物が追い付けば意味がない。

 

 その進化に果てはあるのか、不明だが、優位に立つためには巨大生物の進化を上回る速度で銃器兵器が進化していかなくてはならない。

 その先の絶望的な未来が待っているこの戦争、信頼性だけを優先して旧来の兵器を使い続けることは出来ないのかもしれない。

 

 そんな不確定な未来を考えながら、僅かずつだが引き撃ちで敵を減らしながら進んでいると、我々に接近する味方部隊の反応があった。

 

「大林中尉! 我々に接近する部隊があるようですが!」

 

「む、本当か!? ……この速度だと、フェンサー部隊か?」

 

 やがて大型の駐車場方面から、車を飛び越え、時に弾き飛ばしながら、追いかけるα型亜種と戦うフェンサー部隊の姿が見えた。

 

 どうやら優勢のようで、α型亜種はほぼ殲滅しているようだ。

 我々と同じで引き撃ちの戦術を取っていて、こちらに気付くと体を反転、前進して我々に追いすがるβ型の群れに狙いを定める。

 

「小隊! 散弾迫撃砲、ファイアッ!!」

 

 フェンサー一個小隊4人が、右肩に備えた散弾迫撃砲を放つ。

 一人に付き9個、合計36個もの小榴弾が辺りに降り注ぎ、京都駅の一角ごと爆炎に包みこむ。

 その効果は絶大で、我々に追いすがっていたβ型の群れの大半を吹き飛ばした。

 

 同時に、無線にフェンサー部隊の通信が割り込んだ。

 

『こちらフェンサー”ランドガルド”中隊! たった今一区切りついたところだが、レンジャー2、助けが居るか?』

 

『助けてから言わんでくださいよ、月島大尉……。まあ頼みます! 丁度手が足りなかったところで! 来たからには存分に活躍、期待してますよ!』

 

 ランドガルド中隊の指揮官、月島大尉と大林中尉がやり取りをする。

 

 ランドガルド中隊と言えば、フォーリナー襲来時、私がまだ民間人だった頃横浜で世話になった覚えがある。

 確かランドガルド3だったか。

 あの時はペイルウイング2と共に横浜からの撤退を支援してくれたのだったな。

 直接会話したことはなかったが……。

 

「こんな所で会うとは奇遇だな。と言っても、さすがに俺達の事は知らんか?」

 

 一人のフェンサーが、私のもとへ高速ダッシュからの急制動をかけて止まった。

 フェンサーの外部音声での会話に丁度いい間合いだ。

 重量武器を扱うフェンサーの繊細な機動は高度な技術がいると聞くから、そこそこ以上の腕と見た。

 

「いえ、半年前、横浜での救助に駆けつけてくれた事、覚えていますよ。ランドガルド3……の、中尉殿」

 

 階級章を見て判断する。

 中尉ということは、小隊長だろう。

 

「ふ、そうかい、そいつは光栄だ。俺はランドガルド第三小隊指揮官の棚部重行。よろしくな、仙崎誠伍長」

 

 棚部中尉は右腕の武器を縦に掲げる仕草をする。

 長大な銃や盾を両腕に装備するフェンサーは、都合上これが敬礼の代わりになっている。

 

「はっ! しかし、名乗った覚えは無いのですが」

 

 敬礼を返す。

 と、ここでβ型の後続が追い付いてきた。

 我々は再び戦闘に入る。

 

「おっと、知らんのか? 俺達と別れた後、横浜の輸送艦でペイル2のじゃじゃ馬に告白し、半年後EDFに入って僅か一日でレイドシップを撃墜し、その一か月後”四つ足”の砲台破壊を成し遂げ、ついでに訓練中に100丁を超える銃を暴発させた”嵐の男”だぞ? 一部界隈で知らない者はいまい」

 

 棚部中尉は多角機動で糸を巧みに躱しながら、デクスター自動散弾銃を子気味良い速度で連射しつつ、私にとっては無視できない情報をぶち込む。

 

「なぁっ!? なんなのですかその話は!? いや、大体事実ですが……、なんですかその嵐の男というのは……!」

 

 当然だがそんな名を名乗ったことはないし、呼ばれた事すら初めてなのだが。

 背後に着地して糸を放つβ型を見ずに横ステップで躱し、振り返り際にショットガンを放ちながら妙な呼び名に困惑する。

 

「ふ、なら結城桜にしてやられたな。先日も格納庫で散々『この男こそ戦場も色恋も、EDFに嵐を巻き起こす男!』とか色々騒いでたぞ? 知らない間に変な二つ名が出来たら大体結城桜のせいだと思った方がいい。ま、彼女の人脈じゃもう火消しは無理だ。諦めて伝説の一つや二つ打ち立てて、せいぜい士気を上げてくれ」

 

 ビルの上側面、歩道橋の上、背後のトラックの影の三方向から狙われる。

 ビルと歩道橋から糸が放射状に放たれ、私を絡めようとする。

 一瞬、その一斉射にトラックの影のβ型が遅れる。

 その隙を逃さず、バックステップでトラック影のβ型に接近する。

 トラック影のβ型が糸を発射するが、発射地点に近いほど糸は集中する。

 つまり避けやすい!

 

「おのれ桜! 私の与り知らぬところでやってくれる!」

 

 一度攻撃を躱せば、巨大生物は隙だらけだ。

 問答無用でショットガンを叩き込み、散弾がトラックの燃料を撃ち抜き、爆発する。

 側面から二体分の糸が飛んでくるが、棚部中尉が割って入り盾で防いだので、リロードしつつ盾の隙間から手榴弾を投げ込み、二体とも撃破。

 その爆風で盾についた強酸性の糸を引きちぎり、跳躍装置(ジャンプユニット)で5mほど飛び上がると、私の背後から狙っていた三体のβ型に肩の迫撃砲弾をお見舞いし、駐車場の車ごと爆散させる。

 

「しかしまあ、あの時見かけた民間人が、元軍人だったとは言えこうも活躍してくれるとは。分らんものだな!」

 

 そんな会話を交わしながら戦闘しつつ移動していると、突然前方で大きな爆発が起こった。

 同時に通信が入る。

 

『こちらレンジャー2-2!! ヘクトルと遭遇! 同時にフラウンダー1と合流完了!』

 

 先行していた荒瀬軍曹の声だ。

 

『こちらフラウンダー1梶川!! 地獄へようこそってかァ? ヘヘッ! 誰も来ねェから流石に参ってたぜ! にしてもこのヘクトルって奴ァ中々ヤリやがる! おまけに下等生物共もあー、まだ1500体ぐれェは居やがっから覚悟しなァ!』

 

 野太い声がやけくそ気味に銃声とともに吠える。

 

「巨大生物1500!? よく持ちこたえたものだ!」

 

 その数に戦慄と奮戦した感嘆を覚える。

 フラウンダー1の梶川大尉といえば、この方もかつて横浜で共に戦ったEDF兵士だ。

 その素行の悪さから”不良中隊”と噂されていてあまり評判は良くないが、レンジャーの中でも実力は折り紙付きだ。 

 

『レンジャー2指揮官、大林よりフラウンダー、ランドガルド! ヘクトルの追撃から逃れるのは不可能と判断する! よってこの場所での迎撃を具申します! 異存は!?』

 

『こちらランドガルド指揮官月島。いい判断だ! フェンサーの機動力なら振り切れなくはないがこの数だ、いずれ戦闘は避けられまい! ならば遮蔽物が残っているここで構えるのは悪くない!』

 

『フラウンダーの梶川だ! さすが鋼の男、大林! 攻める時は徹底的に攻める、その性格好きだぜェ! もちろん乗ったぜ!』

 

 大林中尉の進言に、二人の大尉の合意が取れた。

 この場所で、ヘクトル群の迎撃が始まった。

 

「仙崎ッ! 右からヘクトル二機、気をつけろ! 正面からの戦闘は避けるんだ!!」

 

 大林中尉の声に、私はとっさに住宅街に逃げ込み身を隠す。

 

 同時に、ヘクトルの二本の腕から放たれる機銃掃射で、民家が悉く薙ぎ払われてゆく。

 木造の家が砕ける破壊的な音と地面を抉った砂煙が舞う。

 その間、捕捉されぬようにひたすら走った。

 

「ぐおっ、やはり、狙いは正確か……!」

 

 その間、私としたことが何発か貰ってしまった。

 建物越しのこの正確な射撃。

 遮蔽物に隠れるのは何もしないよりはマシだが、有利は取れないらしい。

 

「だが! 一度に多くは狙えまい! 水原ッ!!」

 

「了解っす!」

 

 声を上げると同時、遠方から長距離対物狙撃銃”ライサンダー”の特殊弾丸がヘクトルを貫き、一撃で撃破した。

 

「助かったぞ水原! しかし、敵の新型が一撃とは……なんという狙撃銃だ……」

 

「でも弾丸は残り5発しかないっすよ! あんま当てにしてもらっても困るっすけどね!」

 

「るっせぇぞ水原!! んなもん使えるときに使わねぇとただの棒きれだろうが!」

 

 消極的な水原に、鈴城軍曹が暴論を突き立てる。

 

 そうしている間に別方向からヘクトルが三機。

 先頭の一機がビルと乗用車を爆破しながら突き進む。

 

 さらにその奥の四、五機目が、大型のプラズマランチャーを構えてチャージしている。

 

「やっべぇ! 仙崎逃げるぞ! 得意だろ!? 水原も一緒についてこい!」

 

「いや得意ですが同時に運もないのでご注意を!」

 

「アタシはあっから心配すんな!!」

 

「その前に、一機!」

 

 プラズマ砲弾が放たれる直前、逃げながら撃ったライサンダーの一発が命中し、ヘクトル四機目は撃破。

 同時に二発のプラズマ砲弾が弧を描き、我々に向かって飛んでくる。

 

「ぬおおおぉぉ!!」

 

 私はひたすら走り、最後ローリングで距離を稼ぎつつ大型ショッピングモールの影に身を隠す。

 

 瞬間、プラズマ砲弾はショッピングモールに着弾し、激しい閃光と爆風によって、我々三人は吹き飛ばされた。

 

「ッ、なんという破壊力だ……!」

 

 なんとか受け身を取った私だが、ショッピングモールの一角は完全に消し飛び、地面は抉られ、火薬とは違うプラズマ兵器独特の焦げ臭さが残っていた。

 

「仙崎ィッ、後ろだ!」

 

「ちぃ! 油断も隙も無い!!」

 

 背後にはエネルギー榴弾を構えたヘクトルがこちらを狙い、撃ってきていた。

 

「躱せるかッ!?」

 

「いや、殺るしかねぇよッ!!」

 

 私は瞬時に回避行動をとったが、鈴城軍曹は距離を詰めショットガンを連射。

 ヘクトルは上半身を大きく仰け反らせ、攻撃はあらぬ方向へ飛んで行った。

 

 が、距離が近かったため鈴城軍曹は被弾してしまう。

 

「ぐあっ!! ……やれ、仙崎!!」

 

「イエッサー!! 食らうがいい!!」

 

 エネルギ―弾の爆撃を受けながら鈴城軍曹が命令するより早く、私はアサルトライフルの弾丸をヘクトルに叩き込む。

 

 連続で叩き込まれる銃弾が装甲をついに貫通し、ヘクトルは内部爆発を引き起こし崩れ落ちた。

 飛んでくる破片から身をかわしつつ距離を取る。

 

「いてて、助かったぜ仙崎」

 

「こちらこそです鈴城軍曹。しかしまだ来ますよ!」

 

 炎上するショッピングモールの影から二機。

 今度は機銃型と榴弾型の二機だ。

 

「軍曹!! 南のほうからなんか次々大型砲のヤツが来てるんで、ちょっと手が離せないっす! あと砲撃に注意っすね!!」

 

「あァ!? マジかよ! 仕方ねぇ! 近場の敵はこっちでやるしかねぇな! いけるな!? 仙崎、浦田ァ!!」

 

「イエッサー!」

 

「はいはいやってやりますよちくしょー!!」

 

 榴弾型が両腕の円錐型の火器からエネルギー榴弾をばら撒くように発射する。

 一見適当なように見えてその狙いは正確に我々全員を捉えている。

 

 あたり一面が爆風に晒され、吹き飛ばされる。

 が、その破壊力はダロガ程ではない。

 射程もそれほど長くないと見た。

 

 私は爆風に被弾したが、瞬時に受け身を取り、着地と同時に銃撃を行う。

 機銃で浦田が狙われていたので、その機体を攻撃し、狙いをずらす。

 

 先ほど鈴城軍曹がやったのと同じだ。

 装甲が薄いためか、銃撃を与えると怯んで狙いが正確ではなくなる。

 つまり――。

 

「先手必勝って訳だ! 得意分野だぜ! オラァ!!」

 

 私が爆撃されていた隙に懐に潜り込んだ鈴城軍曹は、二丁のショットガンを近距離で連射し、ヘクトルの反撃を許さないままついに撃破した。

 

「よっしゃ! ――うおおぉ!」

 

 が、直後に別のヘクトルから機銃掃射を受ける。

 謎の粒子の機銃弾が炸裂し、地面と鈴城軍曹のアーマーを削り取っていく。

 

「援護する! この隙に下がれ!」

 

 大林中尉が連射式ロケットランチャーを放ち、連続する爆発でヘクトルの上半身を反らす。

 

「サンキュ! 助かりましたよ! ついでにコイツも!!」

 

 なんとか抜け出した鈴城軍曹が、浦田のそばに寄っていたヘクトルにショットガンを放つ。

 が、距離が遠いため決定打には至らない。

 

「ちっ! 遠すぎるか!」

 

「いや! 十分ですよ鈴城軍曹! 動きが止まれば――行くぜ仙崎!」

 

「承ったッ!」

 

 すでにこちらに銃口が向いているが、遅い!

 私と浦田は左右からアサルトライフルの銃撃を集中して浴びせ、一切の行動を許さない。

 

「いい連携だ! 喰らえッ!!」

 

 そこに大林中尉のロケット弾が止めを刺し、ヘクトルはまた一機爆散した。

 

「中尉ッ! ライサンダー弾切れッス! ついでにプラズマ砲弾、三つほど飛んでくるっすよ!!」

 

 そこで水原から悪い報告が。

 どうやら南部にいた砲兵型ヘクトルは、思ったより数が多かったらしい。

 見ると遠方から赤紫色の不気味な色をした砲弾が、弧を描いて飛んでくるのが見えた。

 

「小隊ッ! そこの大通りまで退避する! 来いッ!」

 

「「サー! イエッサー!!」」

 

 大林中尉についてプラズマ砲弾から逃げる。

 あの場所なら射線が確保できるし、ヘクトルに囲まれる心配もなさそうだ。

 一瞬で判断したのか、戦いながら後退ルートを確保していたのか、どちらにせよ流石の状況判断能力だ。

 

 五秒後、着弾したプラズマ砲弾によってショッピングモールは完全に崩壊し、炎上する瓦礫と化した。

 

『こちらヴァーミリオン! まもなく現地に到着する! だが同時に揚陸艇四隻、巨大生物群混成3000体を補足している! 揚陸艇のうち二隻はジャベリン中隊が追っているが、位置関係上もう二隻と巨大生物群をせき止めるものが何もない! そちらで対処できそうか!?』

 

『レンジャー2よりフラウンダー1、ランドガルド1! いけるな!?』

 

『こちらフラウンダー! いいねェ楽しくなってきやがった!!』

 

『こちらランドガルド! ここで殲滅して見せる!』

 

『ヴァーミリオン! そういうことらしい! そちらはどうする!?』

 

『ヴァーミリオンより各部隊、やる気十分で何よりだ! こっちは隊を二手に分ける! クリムゾン、インディゴはここで南方の砲兵型ヘクトル群を砲撃。我々ゴールドはそちらに向かう!』

 

『クリムゾン了解! 小隊、ここで停車! 砲撃開始ッ!』

 

『インディゴ了解! 俺らも砲撃開始だ! 兼城大尉、さっさと終わらせて、そっちの援護に向かいます!』

 

 ヴァーミリオン戦車中隊は、クリムゾンとインディゴの二小隊がヘクトルとの砲撃戦を行い、ゴールド一個小隊四輌が我々に合流するようだ。

 

 一方こちらは、

 

「分隊、構えッ! 前方のヘクトルに一斉射撃ィ!!」

 

「小隊砲撃開始! 隙を与えるな、撃ちまくれッ!!」

 

 我らが大林中尉と、ランドガルド3の棚部中尉両名が声を上げ、炎上するショッピングモール跡地から出てくる六機のヘクトルに対し一斉射撃を開始する。

 ほぼ同時にヘクトル群も一斉攻撃をかける。

 

 アサルトライフル、ハンドガトリングの猛烈な弾幕が隙を作り、ロケットランチャーと肩部ミサイルランチャーが爆発を彩り、ハンドキャノンの砲弾が確実に止めを刺していく。

 

 だがその間をすり抜けて敵の青白い機銃弾と赤い榴弾が我々を襲う。

 

「この程度!」

 

 棚部中尉はシールド出力を最大にして機銃弾を防ぎつつ、ハンドキャノンでヘクトルの胴体を穿つ。

 私もこう、ヘクトルから見る標的が多ければ、攻撃もばらけて躱しやすくなると踏んだのだが、

 

「なんか私だけ狙われてないか!? ぐああぁ!」

 

 なぜか一斉に飛んでくる攻撃に回避が追い付かず、榴弾の爆風を喰らって吹っ飛ぶ。

 

 起き上がったが、直後をヘクトルの機銃に撃たれ、アーマーの表層がみるみる剥げてゆく。

 

 粒子弾のシャワーを浴びて身動きが取れなくなっている私に、さらに榴弾が追い打ちをかける。

 直撃こそギリギリ躱したが、このままでは死の危険がある。

 

 倒れ伏せ、起き上がろうとすると体に力が入らないのに気付いた。

 なんだ? と思ったら腹のアーマーが破られ、出血しているではないか。

 

 これは本気でまずいのではないか。

 なぜか冷静にそう判断すると、誰かに腕を引っ張り上げられ、無理やり立たされる。

 

「久々に会ったと思ったらなんつー格好してやがる! まだまだパーティーはこれからだろうが! もっと楽しめや! おら、てめぇら撃て!」

 

 私の肩を担ぐようにして立たせたのは梶川大尉だった。

 彼は本当に楽しそうな顔で、こちらに銃口を向けるヘクトルをアサルトライフルで銃撃していた。

 

 見ると、ほかのフラウンダー1と思われるレンジャーや、2-2のメンバーとランドガルド1と2も合流してきていた。

 

「まったく、回避だけが私の取り柄であるのに、面目ない! とにかく助かりました! もう大丈夫です!」

 

 私は腰のエイドキットに入っている治癒剤を打ち込み、応急処置を済ませると梶川大尉から離れ、戦闘を再開した。

 

「ハッハァ! 無傷のまま戦おうなんぜ甘っちょろい事考えてんじゃねぇって事よ! 機械だろうがバケモンだろうが敵だって必死なんだ! 傷付いても仲間が死んでも食らいつくぐらいの気概、見せてみろやァ! 行くぞてめぇら!! フラウンダー流の戦い、不利になってからが本番だって事教えてやれェ!!」

 

「「ヒャッハァァァーー!!」」

 

 見れば、フラウンダー小隊も相当負傷しているようだ。

 あちらは巨大生物との交戦がメインだったが、1500体という数が数だ。

 

 それでも周囲を見る限りほぼ殲滅させてこちらの援護に駆けつけたのだから、本当に大したものだ。

 

 やがてレーダーが巨大生物第二波3000体と、ヘクトル12機の降下を確認した。

 残敵は大まかにみてβ型300体、ヘクトル3機ほど。

 

 こちらの戦力はレンジャー2が10名、フラウンダー1が11名、ランドガルド12名に。

 

『こちらゴールド1! 現着した! 小隊、砲撃開始! てぇー!!』

 

 ゴールド小隊の四輌がヘクトルに砲撃を開始した。

 ダロガに比べ薄い装甲では、強化されたギガンテスの125mm徹甲榴弾には耐えられず、数発の連続砲撃で撃破されていく。

 

 たまらずヘクトル側も反撃を行うが。

 

『へっ! そんな攻撃、ダロガに比べたらなんてことないぜ!』

 

『ギガンテスの防御力を甘く見るなよ! 食らえッ!』

 

 対ダロガ戦用を主軸として強化されたギガンテスの装甲を抜くことは簡単ではない。

 

『歩兵は戦車を盾にしろ! プラズマ砲弾は脅威だが、それ以外の攻撃なら何とかなる!』

 

『イエッサー!! 小隊移動開始! ヘクトルは戦車隊に任せ、我々は戦車に接近する巨大生物群を駆逐する!』

 

『フラウンダー移動開始! 戦車隊のお守りだ! 行くぜ野郎ども!!』

 

『ランドガルド全機! 俺達はヘクトルを高機動で撹乱しつつゴールド隊の援護だ! 兼城大尉! タイミングを合わせるぞ!』

 

『了解月島大尉! 全車輌、レンジャーを庇いつつ、ランドガルドの動きに合わせて砲撃!』

 

 レンジャーが巨大生物を迎撃し、フェンサーが撹乱し、ギガンテスがヘクトルを砲撃し仕留める。

 




EDF:IRの武器の設定は結構凝ってて読んでるだけでも結構面白いです。
半面EDF5の方はちょっと薄味ですかね。
IRの武器をなんとかコッチの世界に出してはいますが、設定が濃厚な分ちょっと合わせるの難しかったりして悩んだりしてますw
いつか各民間軍需企業の設定とかも軽く考えたいですね!
ていうかそう、用語とかの設定集とかも作りたいですね(人物すらまともに出来上がってないのに何を言う……)

では、恒例の人物紹介。
覚える必要はほとんどありませんが……

月島隆弘(つきしま たかひろ)(44)
 第202機械化歩兵連隊-第三中隊”ランドガルド”指揮官、大尉。
 フェンサーという兵科が出来る以前はレンジャーに所属しており、かつて大林の上官だった。
 中隊自体は一般的なフェンサーらしく中距離の機動砲撃戦を得意としているが唯一、第二小隊の太斎だけがフォースブレードによる接近戦を武器にしているので、それを中心とした作戦を立てることが多い。
 場合によっては第二小隊4名全て接近戦装備に切り替え、それを第一と第三が援護するといった動きを見せる。

棚部重行(たなべ しげゆき)(39)
 ランドガルド第三小隊指揮官、中尉。
 かつて横浜で仙崎達、第228駐屯基地から撤退した部隊の救助に合流した小隊長。
 人の名前をフルネームで呼ぶ癖がある。
 スラスターを駆使してデクスター自動散弾銃で上空からの射撃や距離を詰めての接射を多用する。
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