ご容赦を
――2023年 3月30日 17:45 京都市内 東寺付近「第202機械化歩兵連隊 第三中隊”ランドガルド”」――
「そこだッ! きえぇぇい!!」
ランドガルド2の太斎中尉が大振りのフォースブレードを横薙ぎし、なんとヘクトルの片足を一刀両断する。
倒れるヘクトルに、
『今だ! 発射ァ!』
ギガンテス、ゴールド3が砲撃し、また一機を撃破。
これで残りは八機、もうすぐ半分だ。
「ッ! ゴールド3! 後ろだ! すぐ移動しろ!」
太斎が声を上げるが、一瞬早くヘクトルが榴弾を連続で浴びせる。
距離が近いのと、人間と比べて戦車の図体がでかいので、全弾をその身に浴びるゴールド3。
「うぅっ! 食らったのか!?」
車内で衝撃が走り、モニターからは爆炎しか見えない。
「はッ!? 車長、左右の履帯破損、移動できません!」
操縦手が焦って報告する。
「何ィ!? 修理急げ! 砲塔は生きてるな!? なら反撃だ! 撃て!」
車長が命令を下し、砲手が砲塔の旋回とトリガーを迅速に引いた。
至近距離からの砲撃を喰らったヘクトルは、機体に大穴が穿たれたが、まだかろうじて立っている。
「追撃だ! 放てぇぇい!」
「「うおおおぉぉぉ!!」」
太斎中尉の命令により、ランドガルド2の二名がガリオン軽量機関砲を連射し、そのヘクトルは撃破された。
残り七機。
だが、その隙に別のヘクトルがその二名を狙う。
「村田、谷口、右から来ているぞ!」
太斎の声に谷口*1は反応したが、村田*2は間に合わず、盾でガードするに留まる。
「くっそぉ! だがこの程度で……何ッ!?」
機銃掃射を盾で防いだが、そこにα型亜種が乱入し、村田を強靭な牙で咥え込む。
このまま食い殺す気らしく、牙の力で装甲がひしゃげる。
「ぐああ! 畜生! 牙がッ……!」
「村田ッ! 迂闊なッ!」
太斎は再びフォーズブレードを構え、斬り込む。
α型亜種は一刀両断され、村田はその場に倒れ込む。
しかし、敵はα型亜種一体だけではない。
戦車一輌が行動不能になった隙をついて、ヘクトルの射撃が激しくなってくる上に、各種巨大生物もレンジャーの対処能力を大きく超えている為、徐々に浸透してきている。
「村田! 無事か!?」
「ぐ、ぐはっ、フェンサーの装甲を抜けるなんて……」
村田と呼ばれたランドガルド2のフェンサーは、腹の装甲を牙に貫かれたようで、出血が装甲を赤く染める。
その村田に追い打ちをかけようと、ヘクトルの射撃が集中する。
「ぬぅぅ! 多勢に無勢か……! 谷口、小滝*3! 援護しろ!」
太斎が盾で村田を庇う様にしつつ、武器をガリオン軽量機関砲に変えて応戦するが、盾を回り込むようにして移動する機体が現れる。
『援護する! 俺達を盾に――ッ!?』
その乱戦の様相に、ゴールド4のギガンテスが前進し村田を庇おうとするが、動かない。
履帯にβ型の糸が絡まって動けなくなっていた。
「くそっ! 小隊! 戦車に敵を近づけさせるな!!」
大林中尉が吠えるが、
「イエッサー! だが畜生……数が多いぜ!!」
「諦めんなよ浦田! アタシらEDFは――うわぁぁ!!」
鈴城軍曹がβ型の糸に被弾した、至近距離だ。
「鈴城!! うおおおぉぉ!!」
近くにいた荒瀬軍曹が周囲のβ型を駆逐して駆け寄る。
一方その間ランドガルド2は、太斎を中心に、谷口、小滝が村田を守ってヘクトルを迎撃していた。
すでに囲んでいた二機を撃破したが、
「あと、一機……クソッ、間に合わない! 太斎さん!!」
谷口が叫ぶと同時、ヘクトルが両腕からエネルギー榴弾を浴びせ、太斎と村田は爆発に包まれる。
「太斎さん! 村田!!」
吹き飛ばされる二人だが、太斎は瞬時に受け身を取って、
「この、外道がァァァ!!」
フォースブレードを抜刀し、スラスターを吹かしつつ勢いをつけて斬りかかる。
一刀両断、とはいかず、地面に着地した後、その反動を利用し、さらに横薙ぎに斬りつけ、両足を叩き斬る。
地面に倒れたヘクトルの上に、スラスターで飛び上がり、
「ぬぇぇぇぇい!!」
ヘクトルの胴体中央の赤い窪みにブレードを突き立てる。
完全に装甲を貫いたのを確認すると、またスラスターで飛び上がり、瞬時に距離をとる。
ヘクトルが背後で爆発するのも見届けず、太斎は村田の前に駆け寄る。
「村田! 村田! おい返事しろよ! まだ娘が生まれたばっかだって、これからだって、そう言ってたじゃねぇかよ!!」
が、傍では小滝が必死で呼びかけるのが見えていて、一方村田は破損した装甲から肉体が半壊しているのが見える。
呼びかけが無駄であることは、冷静であるなら一目瞭然だ。
「……すまぬ。だが立て、小滝!! 此処は未だ戦場。なれば成す事は唯一つ。そうであろう!!」
α型の強酸が小滝を襲う。
それを太斎が防ぎ、代わりにフォースブレードの斬撃を飛ばし、斬り刻む。
「太斎さん……はい! コイツの為にも俺……絶対生きて帰ります!」
「ふ……その心意気や良し! ゆくぞ!!」
一方ゴールド小隊は。
『ゴールド3! 被弾したのか!? 損害は!?』
『左右履帯破損!! 修理を急ぎますが、周囲の状況から見て時間が掛かります! その間、砲台としてこのまま戦闘を続行します!』
『頼む! ゴールド1よりフラウンダーへ! ゴールド3が移動不能だ! すまないが巨大生物排除を優先してくれ!』
『フラウンダー了ォ解! 盾としてはキッチリ利用させてもらうがねェ! とはいえこっちもキツくなってきた! オタクの二個小隊はいつ来るんだァ!?』
『南方のヘクトル群は残り三機だ! それが終われば二分で到着する!』
『ま、期待しねェで待ってるとするよ!』
あまり当てにされてない言い方で通信を切られた兼城大尉*4は、乱暴な言い方に苦笑するが、前方、機銃を構えるヘクトルを発見する。
「停車! 車体を横に向けろ! 背後のレンジャーを守りつつ、主砲撃て!」
「了解!」
直後、ヘクトルの機銃掃射が始まるが、ギガンテスの装甲にすべて防がれる。
「車長ー。 車体損耗60%上回りましたー。 そう長くは持ちませんねー」
「照準固定! 撃っちゃいます!!」
操縦手と砲手の言葉を受け取り、同時に主砲が放たれる。
ちなみにどちらも珍しいことに女性である。
「分かっている! ランドガルド3、頼む!」
『イエッサー!! そらそらこっちだデクの棒!!』
ランドガルド3の棚部中尉は、スラスターを吹かせて飛び回り、空中で肩部散弾迫撃砲をお見舞いする。
本来は小規模な面制圧用の平気だが、相手の表面積がこれだけ大きければ、単体用の攻撃兵器と化す。
だが、ダロガと比較するから認識がズレるが、ヘクトルも十分重装甲兵器。
そう簡単には装甲を抜くことは出来ない。
「よし、攻撃が反れた! 続けて主砲! 撃ち続けろ!!」
「よっしゃ! ――もう一発! これで、ドカーン!!」
合計三発の主砲弾を叩き込み、ヘクトルはようやく後ろに倒れ、爆散した。
「イエーイ!!」
「いえーい」
随分テンションの落差のあるハイタッチを砲手と操縦手が行う。
「ふぅー……。古河、これでヘクトルは残り何機だ?」
「えっとー。全部で15機で、もう11機撃破してるんで、残り4機ぐらいですねー」
この乱戦にも関わらず、独特の間延びしたしゃべり方で古河は報告する。
この戦車、ゴールド1の操縦手だ。
「そのうち四機はウチが撃破してるんだけど! いやぁ~今日も絶好調の腕ね! やばいわ!」
「やばいねー」
砲手の卯木の声に控えめに同意する古河。
だが卯木の腕はその自画自賛に値する腕前だった。
「よし! いい調子だ! 巨大生物の数は多いが、ヘクトルはこのままいけば――」
《本部よりヴァーミリオン中隊以下各隊へ!!》
本部の鹿島中尉から突如無線が入る。
《大宮付近で交戦していたフェンサー部隊が突破されました! 4機の砲兵型ヘクトルがそちらに向かっています! 砲撃を警戒してください!!》
『なんだと! クソ、他に部隊はいないのか!?』
《現在その付近では
それだけ言って鹿島中尉は通信を終えた。
同時に、上空から四つのプラズマ砲弾が降ってくるのを発見する。
「しゃ、車長! あれあれ!」
「分かっている! 古河、微速後退!『レンジャー2! プラズマ砲弾が降ってくる! 戦車の後ろに隠れてろ!』」
直後、砲弾は地面に炸裂。
四発の凄まじい爆発が戦場を包む。
戦車内にも下手な地震を超える振動が伝わる。
「ぐぅ……! 二人とも、怪我はないか?」
「うぇー、頭ぶつけましたー」
「いたた……くっそ~やってくれるわねあのヘクトルとかいうの。見つけ次第砲撃してやる……」
二人がそう報告する中、兼城は爆炎で煙る靄の中に、青白い光を見つけた。
兼城の顔に電撃が走る。
「――卯木ィッ! 正面、青い光の部分! 砲撃!!」
「へぁ!? は、はいッ!!」
動揺しながらも一瞬の判断でトリガーを引く卯木。
「古河ッ! 全速後退で離脱!」
「で、でも歩兵が!」
「ちっ! 卯木撃ち続けろッ!!」
「了解ッ!! って、こいつは……なんでいきなり!?」
煙が砲撃の風で少し晴れる。
ゴールド1の目の前にいたのは、砲撃準備態勢のダロガだった。
青白い光を灯したダロガは、ゴールド1に粒子砲弾を連続で叩き込む。
その全てがゴールド1のギガンテスに命中する。
「ぐおぉ!」
「うぅーっ」
「きゃあ!!」
ギガンテスは対ダロガを主軸に設計された改良型だ。
多少の砲撃は耐える装甲だが、その装甲は度重なるヘクトル戦で損傷が酷かったうえに、至近からの連続砲撃だ。
装甲の各所に穴が開き、エンジンからは火災が発生していた。
そして、かろうじて生きていたモニターの一部からは、再び天から弧を描いて降り注ぐプラズマ砲弾の姿が見えた。
「古河、卯木、脱出だ、脱出しろォォーー!!」
その言葉を最後に、ゴールド1のギガンテスはプラズマ砲撃の爆発に巻き込まれた。
再登場するのか不明ですが一応人物紹介!!
●
フェンサー、ランドガルド2小隊員の男性。少尉。
有名大学を卒業し、銀行員として出世街道を歩んでいた元エリート。
フォーリナー襲来時、横浜で家族を殺され、復讐を胸にEDFの門を叩く。
フォーリナー襲来に危機感を覚えたEDFの、通常のカリキュラムを無視した約半年間の即席育成教育によって2023年1月に実戦投入される。
持ち前の優秀さでフェンサーのパワードスケルトンや
元銀行員らしく物静かで丁寧だが、復讐に内なる炎を燃やしている。
●
ランドガルド2小隊員の男性。少尉。
二年前結婚し、最近子供を授かったばかりの家庭の大黒柱。
EDFには結婚前から務めており、妻にはEDFを辞めて一緒に逃げようと何度も説得されていたが、家族を守るために戦場に身を投じ続ける事を選んだ。
実際の所、フォーリナー襲撃時に消滅した臨時政府の決定により希望する人間の国外退避が実行された際、EDFの兵士に限っては除隊を厳しく制限されていたが、
それ以前の襲撃直後においてはその制限は無く、人類ではなく、家庭という最も愛する者を守る道を選び、多くの人間が除隊した。
だが、驚くべきことに前述の国外退避が行われると同時に、除隊した兵士の多くがEDFに復帰している。
家族のいる安全な諸外国を守るためには、砦となっている日本を陥落させるわけにはいかない。
そう感じた彼らは、日本に残り続けて戦う道を選び、そして多くが村田少尉のように命を落とした。
だが、その思いは他の兵士に受け継がれ、確実に日本を守る力となっている。
●
ランドガルド2小隊員。少尉。
フォーリナー襲来以前は、EDFのレンジャーとして活動しており、上級格闘課程を修了し、格闘徽章を持っている。
特に武器格闘に優れ、それを生かせるフェンサーに転属が決まり、階級も上がった。
現在では範囲攻撃も兼ねるボルケーン・ハンマーを主に使用する。
本人は家庭を持たないが、復讐を胸に秘める谷口と、家族を守る村田に感化され、熱く涙もろい性格。
太斎を心から尊敬しており、「太斎さん」と呼んでいる。
●
ゴールド小隊の小隊長と、ヴァーミリオン中隊の中隊長を兼ねる。
階級は大尉。
EDF生え抜きの戦車兵で、名古屋防衛線を含む、各地の防衛線で大きく活躍した。
フォーリナー、主にダロガとの戦闘において、それまでの基本戦術であったアウトレンジ戦法や先制攻撃の優位性が失われ(射程は敵の方が長く、先制攻撃での撃破は困難かつ奇襲によって動揺を誘う事も出来ない)、多くの戦車部隊が損害を被る中、小隊単位での機動砲撃戦術を駆使して多くのダロガを撃破してきた。
●
ゴールド1の操縦手。軍曹。
眠たげな眼をしたマイペースな女性。
一見冷めた性格のように見えるが、もともとそう見えるだけで本人は結構ノリがいい。
兼城大尉に戦車のいろはを叩き込まれ、卓越した操縦技術を有する。
●
ゴールド1の砲手。軍曹。
テンションの高い天才砲手。
軌道や距離の計算を無視して勘で高い命中率を保つ天性の砲手。
訓練校の同期の中では最も成績が良く、もともと才能があったが兼城大尉の元に転属して来てさらに腕を上げた。
扱かれたのを結構根に持っているが、本心では尊敬している。
操縦手の古河とは仲がいい。