全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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第四十七話 逆襲の猛火

――2023年 3月30日 18:15 京都市内 「第101戦車大隊-第七中隊”ヴァーミリオン”-第二小隊”クリムゾン”」――

 

 

「なんだ!? 何が起こった!?」

 

 突如、周囲の地面が爆ぜ、辺りは舞い上がった土砂に覆われる。

 一輌の戦車が、地中から押し上げられ、同時に牙で履帯を噛み切られる。

 

「履帯損傷ッ!? 巨大生物が!!」

 

 転輪を噛み砕かれ、別の個体に砲身を、そして砲塔に牙を突き立てられる。

 その瞬間、α型の頭部が爆ぜた。

 戦車の側面に張り付けられた、対巨大生物用の爆発反応装甲(リアクティブアーマー)の効果だ。

 

「うッ、やったか!?」

 

 戦車の内部にも衝撃が伝わる。

 

「ああ! だが数が多すぎる!!」

 

 頭部のないα型の死骸を押しのけて、更に多くのα型が装甲を食い破る。

 125mm徹甲榴弾を撃ちだす砲身はひと噛みで千切られ、咀嚼されて腹の中に納まる。

 

「主砲が!? ちくしょう、喰らえッ!!」

 

 砲手がトリガーを引き、車載12.7mm機銃を放つ。

 車内から操作された機銃は目前のα型を撃ち殺すが、

 

「うぎゃああ! くそ、やめ――ガッ……」

 

 別の個体が側面装甲を食い破り、操縦手が食い殺された。

 

「ちッ、ギガンテスはもう駄目だ! 銃を持て! 脱出して――ぐああぁ!!」

 

 車長がアサルトライフルを手に取るが、装甲がさらに食い広げられ、銃を持った腕を噛み千切られる。

 

「車長ッ!! く、喰われるッ!? くるな、来るなァァーー!!」

 

 砲手が車内でアサルトライフルを発砲するが、砲塔を完全に喰い破られ、頭上にα型の顎が見えた。

 

「ひぃい!! だ、誰か、助けっ――」

 

 砲手の声は最期まで発することなく、その上半身はひと噛みでα型の腹の中に納まった。

 戦車の残骸内に砲手の鮮血が撒き散らされた。

 

 上半身を喰らって満足したのか、その場を後にするα型に変わって、幾体ものα型が殺到し、死体の残りや戦車の残骸を貪り喰らう。

 中には残っていた爆発反応装甲によって爆死する個体もいたが、他の死骸には見向きもせず、狂ったように喰らい尽くす。

 

『インディゴ1より本部ッ! エリアD37でコード991発生ッ!! 簡易センサーで巨大生物……1000体以上を確認! 我々とクリムゾン小隊が直撃を喰らいました! 援護を……ぐああぁぁ!!』

 

《本部了解ッ!! そちらに接近中の部隊を援護に回す! 一輌でも多く持ちこたえろッ!!》

 

 通信の最中、インディゴ1は酸で溶かされた柔らかい装甲に牙を突き立てられ、装甲を食い破られた。

 中の乗員は全滅した。

 

『こちらクリムゾン1! インディゴ小隊の指揮を執る! 全車、機銃を撃ちつつ後退ッ! 大丈夫だ! 群れさえ抜ければ何とかなる! ついてこいよッ!!』

 

 クリムゾン、インディゴ合わせて三輌がやられ、残りは五輌。

 戦車とは本来巨大生物に対しても強力だが、至近距離で囲まれれば当然その強みは生かせない。

 

『くっそォ! 近づくなァッ!!』

 

 7.62mm同軸機銃と、上面車載12.7mm機銃で必死に応戦しつつ、全速後退する五輌の戦車。

 その戦車に食らいつこうとα型やその亜種が噛みつくと、爆発反応装甲が爆裂し、頭部を丸ごと消し飛ばす。

 

『ちくしょう! 糸が! 糸が絡みついて動きがッ!!』

 

『クリムゾン4!!』

 

 クリムゾン小隊四号車は、右側の履帯にβ型の糸が多数絡みつき、酸で機構を溶かされて動かなくなっていた。

 車体や左側の履帯にも多くの糸が絡みついている。

 後退する方向から見て最前列にいたクリムゾン4は、α型より足の遅いβ型の攻撃を一手に受けてしまっていたのだ。

 

『大泉中尉*1! 俺達はもう、もう駄目です! ここで一体でも多く巻き込んで見せます! ……ご武運を』

 

『……松島。そっか、元気でな! 向こうで会おう!』

 

 その一言で、四号車車長の松島曹長は安堵し、車内を見渡す。

 喰い破られた装甲から操縦手は糸に引きずられて喰われた。

 溶かされた酸を浴びた砲手は左手を丸ごと失ったが、意識はある。

 

 戦車長の松島はたった今体中に糸を浴び、上から引きずられている。

 体も糸に染み込んだ酸でぐずぐずだ。

 

「ふふっ、最後まであの人らしい……、森本……撃て、撃てぇぇッ!!」

 

「イエッ……サー……ばけものめ、喰らえ……ッ!」

 

 砲手の森本はトリガーを引いた。

 既に砲弾の発射機構は無くなっていて当然だったが、彼らには最後の幸運が残っていた。

 

 へし折れた砲身から砲弾は放たれ、ちょうど砲身の真正面にいたα型亜種の顔面に直撃した。

 信管が作動し、起こった爆発と衝撃波は、クリムゾン4に群がっていた巨大生物16体を一撃で巻き込んだ。

 

 だが、クリムゾン4の挺身をもってしても、状況は劇的には変えられない。

 

『大泉中尉ッ! 背後から、背後からβ型の大群が!! ――ぎゃぁっ!!』

 

 インディゴ2の焦り声と悲鳴が聞こえてくる。

 インディゴ2は、全速後退の途中でβ型と衝突してしまったのだ。

 

「何やってる!?」

 

「β型が、すみません!!」

 

 時速90km以上で轢かれ、β型はその肉体を半壊させられるが、かろうじて息があったようで、腹部の糸の発射口を、乗り上げたインディゴ2に向ける。

 

「脱出だ! 早く!!」

 

「りょうか――ひぃぃ!!」

 

 脱出しようと前進するインディゴ2の前方を、α型亜種がふさぐ。

 同時に、周囲に別の巨大生物も群がり始めた。

 

「ちくしょう……終わりなのかよ……?」

 

 その瞬間、インディゴ2の周囲の巨大生物が、突然炎上し始めた。

 周囲が猛火に包まれ、乗り上げたインディゴ2ごと周囲を焼き尽くしていく。

 やがて、ギャアギャアと耳障りな断末魔を上げたのち、周囲の巨大生物は粗方焼き尽くされた。

 

 そして装甲の焦げたインディゴの周りに、四機のニクスが次々と降り立った。

 

『向井中尉*2、周辺の巨大生物、焼き尽くしました』

 

『上出来だ。こちらフレイム1。周りは片づけた、まだ動けるか?』

 

 ニクス、フレイム小隊の女性指揮官が通信を繋げた。

 

『こちらインディゴ2。すまない、助かった。装甲ごと焼かれたのは気にしない事にしておく。しかし、凄まじい火力だな』

 

『ふ、これが新型のレッドシャドウの力だ。巨大生物との接近戦は任せろ! とはいえ、コンバットバーナーの燃焼剤はそう多くはない。急ぎ体勢を立て直せ!』

 

 コンバットバーナーが主兵装だったニクス・レッドボディの後継機が、このレッドシャドウだ。

 接近戦を主眼に開発されたこの機体は、高い運動性能とスラスターによる機動性能を誇っている。

 両腕に装備されたコンバットバーナーも新装され、巨大生物の甲殻を瞬時に焼き尽くす火力がある。

 

『了解しました! 大泉中尉、インディゴ2、そちらに合流します!』

 

『こちらクリムゾン1。分かった、無事で何よりだ! フレイム1! ホンット助かった! 顔は見えないがきっと美人だろ? 後で一杯奢らせてくれっ!』

 

『それは貴様の顔次第だな! ようし、フレイム各機! 戦車隊の残存各車を援護するぞ! 派手に燃やしてやれ!』

 

『『イエッサー!!』』

 

 迫る巨大生物に、四機が猛火を浴びせる。

 その炎の壁に巨大生物は突っ込んでゆき、そしてあっけなく燃やされる。

 後退しながら左右に炎を吐き出し、巨大生物は次々と焼け死んでいく。

 

 だが、その炎の中を耐えきって進む個体があった。

 

『クソッ、あの赤いのは相変わらず頑丈だな! 改良されたコイツですら燃やしきれねぇのか! なら!』

 

 言いながら、部下のレッドシャドウ一機は肩部に装備された散弾砲を浴びせる。

 外殻を炎上させながら至近距離まで接近していたα型亜種は、歩兵用とは威力もケタ違いな大型の散弾を喰らって肉体を四散させた。

 

『β型にも気を付けろ! 奴らビルを使った跳躍で炎を回避してくるぞ! 足を止めるな! 動き続けるんだ! それこそが機動力に優れたレッドシリーズの戦い方だ!』

 

『『イエス、マム!!』』

 

 前方から右斜め前に飛び、ビルにへばりついて糸を飛ばしてくる個体に狙いをつけ、ビルごと焼き尽くす。

 その隙に背後に回り込んだα型亜種三体を別のニクスが散弾砲で片づけ、すぐさま距離を取る。

 

 だが、それでも全ての糸や酸を躱しきることは不可能だ。

 

『くっ、右腕の動きが鈍い……酸を喰らいすぎたか!?』

 

『フレイム3! いったん下がれ! 周囲のβ型が多すぎる、囲まれるぞ!!』

 

『了解!』

 

 フレイム3は、背面のスラスターを吹かし、囲まれた状況から離脱を図る。

 だが、それを好機と言わんばかりに、β型は糸の対空砲火を集中させ、フレイム3は空中から引きずり降ろされた。

 

『ぐぁぁッ!! ちくしょう! 化け物め!!』

 

 墜落したレッドシャドウは半壊し、即座に体勢を立て直すことができない。

 終わりか――パイロットの頭に死が過ぎった瞬間。

 

『全車輌一斉射! 撃てぇぇーー!!』

 

 横一列に並んだギガンテスⅡから、125mm徹甲榴弾砲が一斉に放たれた。

 砲弾はフレイム3の周囲のβ型巨大生物を一掃し、更に前面のα型亜種も、至近から放たれた砲弾にはひとたまりもなく、その分厚い甲殻が抉られて吹っ飛んでいく。

 

 その応酬として、後方から山なりに酸のショットガンが飛んでくるが、それをギガンテスの装甲が真正面から受け止める。

 先ほどのように囲まれればともかく、数発程度なら喰らっても、新型ギガンテスの装甲は溶け落ちる事は無い。

 

『こちらフレイム! すまない、危ない所だった!』

 

『こちらクリムゾン。借りは返さなくっちゃな! しかし、この集団を我々だけで殲滅するのは骨が折れるな! どうよ、松宮!』

 

『こちらインディゴ、同意する! インディゴよりゴールド! そちらの状況は!?』

 

『――――』

 

 帰ってくるのは、ノイズのみだった。

 

『ちぃっ! まさか兼城大尉、やられたのか!? 本部! 応答願います! 本部!』

 

『こちら本部! 状況は大方把握している! ゴールド小隊は二号車、三号車のみ行動中! 四号車乗員三名は戦死。兼城大尉以下二名の一号車乗員は負傷しているが全員生存。ゴールド、クリムゾン、インディゴの各小隊は直ちに合流し、隊を再編成しろ! ニクス、フレイム小隊も戦車小隊と共に後退し、フラウンダー1の指揮下に入れ! 他部隊と合流しつつ京都南IC付近を目指し、戦闘を継続せよ!』

 

『『了解ッ!!』』

 

 各部隊が、慌ただしく動き始めた。

 

*1
30歳男性。クリムゾン1小隊長。陽気でプラス思考な態度は、部下を不安にさせない

*2
26歳女性。ハキハキとした快活な女性。言葉はキツいが部下には甘い




EDF5に出てくるレッドシャドウは使った事ないんですけど、上位機種のレッドガードはめちゃめちゃ強くてお世話になりました。
レッドシリーズと言えば火炎放射のイメージですが、ゲームでは何と言っても両肩の散弾砲の破壊力がハンパない!
こっちでも早く上位機種のレッドガードがさせる展開に追い付きたいですね!

人物紹介!

大泉賢介(おおいずみ けんすけ)(30)
 クリムゾン小隊長で、クリムゾン1車長。
 中尉。
 陽気でプラス思考な明るい小隊長。
 兼城大尉がカリスマと戦術で中隊を導くとしたら、大泉中尉は絶望を許さない明るさで部隊を支える存在といえる。

向井慶子(むかい けいこ)(26)
 第二歩行戦闘車中隊、第二小隊”フレイム”小隊長。中尉。
 高機動型ニクス・レッドシャドウを操る。
 ハキハキとした口調の快活な女性で、対巨大生物においては相当の自信があり、高機動を生かした戦場の”火付け”部隊として駆け回る。
 厳しい口調を心掛けるが生来の優しさが抜けず、部下には甘く、いまいち恐れられてはいないが、そこはご愛敬。
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