全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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第五十話  ブルート救援

 

――2023年 3月30日 19:00 レンジャー2 仙崎誠――

 

 

『フレイムよりレンジャー2指揮官! 我々も殆どが燃焼剤を使い切った。残りの散弾砲で貴様たちの護衛に残る! 我々が助けた命だ、簡単に散らせはしないぞ!』

 

『すまない、恩に着る!』

 

 というやり取りがあって、区役所跡には大林中尉、浦田、水原の三人、更にフラウンダー1の三人、ランドガルドの二人で計八人と四機のニクスが残ることになった。

 ニクスに関しては護衛と補給が済み次第戦線に復帰するそうだ。

 

 一方我々はというと……

 

『フラウンダー1よりレンジャー2-1隊長代理ィ! そっちにもガンシップが遊びに行くぜ! 面倒見てやれよォ?』

 

『チっ、とうとう来やがったか! 了解! 仙崎葛木! お客サンだ! 撃ち落とせッ!!』

 

「サー! イエッサー!」

 

「お客さんなのに落ち落とすなんて、なんか面白いなぁ」

 

 言いながら、葛木は慣れた様子でロケットランチャーを撃つと、向かってくるガンシップの集団に直撃し、一気に四機ほど墜落させる。

 

 本来戦闘機と互角以上にやり合うスペックを持ってる筈のガンシップは、対地攻撃に限ってなぜか低空低速で飛行するようになるので、歩兵部隊でも十分対応が可能だ。

 

「ぬぁはははは! のろまめ!! EDFの陸戦歩兵(レンジャー)を、ただの歩兵と侮ったか!?」

 

 私は突進するα型亜種を躱しつつ、上空のガンシップを一機一機と撃ち落としていく。

 視界に映る二機が空中で静止、機体中央下部が赤く光る。

 レーザー攻撃の前兆だ。

 

「はっ!」

 

 二本の赤色レーザーが地面を焦がす。

 膨大な熱量は地面を溶かし、路上の乗用車を掠め、引火する。

 

「気を付けろよ仙崎! アーマー越しでもめっちゃ痛いって話だからな!!」

 

「いや、めっちゃ痛いで済めばいいですけどね!」

 

 とはいえ、私は当たる気は無いが。

 しかし……。

 私は先ほどヘクトルにやられた腹部の傷に意識を向ける。

 一応治癒剤を打って止血をしたが、今後あのような精密な集中砲火を受ければ私とてこのような深手を負う、という事だ。

 

 幸いガンシップにヘクトルのような精密さは感じられないが、ヘクトルだけは要注意しておく必要があるな。

 

「巨大生物はこっちで片づける! 気にせず進め!」

 

 月島大尉率いるランドガルド中隊が、デクスター自動散弾銃やガリオン軽量機関砲などで弾幕を張り、道を切り開いてゆく。

 

「ったくよぉ! こんなんでどの面下げてゴーン隊共の救援に来ましたって言えんだよ!? こっちが助けてほしいっての!」

 

 車や瓦礫、或いは巨大生物を時に盾として攻撃を躱しつつ、ショットガンで弾幕を張り、素早く動くガンシップを確実に撃墜していく鈴城軍曹。

 

 確かに、今我々はゴーン隊、フェアリーテイル隊、アルデバラン隊がγ型の奇襲を受けているので救援にいってほしいとの命令を受けて移動中だ。

 先ほど本部から再度通信があり、彼らは更に南の京都南ICまで逃げ延びたが、そこで負傷者搬送用のヘリを押さえられ、立ち往生しているようだ。

 

 しかしこのありさまではどちらが救援か分からぬのではないか。

 

『心配すんな2-1代理の嬢ちゃんよォ! こっちの銀バエはもう片付くぜ! 間もなくそっちに行けそうだ!』

 

「アタシ嬢ちゃんって年でもねぇんですけどね! 葛木、右だ! 来てるぞ!」

 

「右? ひぃぃっ!」

 

 上空ばかり見ていた葛木に、鈴城軍曹が注意した通りα型が迫る。

 

 反射的にロケットランチャーを放ち、なんとか事なきを得たようだ。

 

「何匹か取り逃がしたか!? それはすまない! だがこちらも巨大生物の壁が薄くなってきた! まもなく群れを突破出来そうだ! ――いや待て!!」

 

 快進撃を続けていたランドガルドの足が止まる。

 右手の大きな建物の裏から、巨大なドラム缶を六つ繋げたような長方形の浮遊物がやってきた。

 

「敵の揚陸艦だ! ヴァーミリオン!」

 

「目標補足した。データリンク連動。各車、砲撃用意――撃て」

 

 新たに六輌編成となったヴァーミリオン中隊。

 指揮官の氷室は、空中揚陸艦が静止した瞬間を狙って命令を下した。

 

 六発の徹甲榴弾が一斉に空中揚陸艦に直撃し、揚陸艦は大破、墜落した。

 

「いいぞヴァーミリオン! これで」

 

「まだです月島大尉。中から出てきます」

 

 氷室中尉の言葉通り、墜落した空中揚陸艦を突き破り、内部から中破したヘクトル三機が現れる。

 

「いや、もう奴らは終わりだ! 中隊進撃! 前方の死にぞこない共に一斉射! 撃てぇぇーーッ!!」

 

 そう、辛くも生き残ったヘクトルを待って居たのは、哀れ弾丸の嵐であった。

 ランドガルド中隊の9人の一斉射撃がヘクトルを襲い、なすすべなく三機ともその場で撃破された。

 

「撃破確認! 前進、前進だァァーー!!」

 

「「ウオオオォォォ!! EDF!! EDF!!」」

 

 空中揚陸艦の残骸を乗り越えて、ランドガルド隊が快進撃し、それにゴールド、クリムゾン、インディゴの再編成されたヴァーミリオン隊、そして我々レンジャー2-1が続く。

 

「気合入ってンなァランドガルド! よォし野郎どもォ! いい加減殿(しんがり)は飽き飽きだろ!? こっからは最前線切り開いてやろォぜ!! 続けェェーー!!」

 

「「ヒャッハァァァーーー!!」」

 

 ランドガルド以上の声量で、フラウンダー1小隊の11人が雄叫びを上げる。

 

 どうやら後方のガンシップは無事殲滅したらしい。

 さすがは歴戦のフラウンダー。

 我々も負けてはいられないな。

 

「よし! このまま応援要請のあった所まで進撃する! フラウンダーの前進を左右から援護するぞ! 続けぇぇーー!!」

 

「「うおおおぉぉぉぉ!!」」

 

 荒瀬軍曹の声に小隊の七人が応え、残り少ない巨大生物群を破竹の勢いで突破する。

 

 やがて、目標である京都南ICが見え来た。

 

 上空には無数のγ型が飛行し、そこから針を発射してくる。

 この針が強力で、アーマースーツを着ていても負傷か、最悪貫通する。

 戦車であっても薄い上面装甲に攻撃を受けがちなせいで、そう長くは持たない。

 

 コンバットフレームのゴーン小隊は遠目では既に二機が動かなくなっていて、残り二機が逃げ回りながら腕部のリボルバーカノンで弾幕を張っている。

 肩部の誘導ミサイルはとっくに使い切ったあとだろう。

 

 本部の情報によると数分前から部隊の足が止まっているようだったが(本来は後退しながら敵を間引く引き撃ち戦術が有効)負傷者を収容したEU-04ブルート輸送ヘリがγ型とダロガ五機に抑えられ、身動きが取れなくなっている。

 今は瓦礫に囲んだうえでフェアリーテイル中隊が護っているようだが、中隊の人数は7人しかいない。

 

 そして、そのブルートを手配したであろうアルデバランは、ダロガにビーコンを設置し、攻撃機アルテミスと連携して20mm機関砲や76mm対戦車ロケット砲で攻撃していた。

 低空で侵入しているためダロガのレーザーは飛んでこない。

 

「フラウンダーより野郎共ォ!! クソデカ蜂が見えて来たぞ! 狙撃で出来る奴ァ走りながら狙撃! 出来ねェ奴はあの針山の中に突っ込むぞ! 覚悟は良いな!?」

 

「「ヒャッハァァァーー!! 一番乗りはいただくぜェ!!」」

 

 梶川大尉の号令にフラウンダー小隊員が叫び、

 

「レンジャー2了解ッ!! γ型との初戦闘になる! 奴らの甲殻は薄い、弾を当てることに集中しろッ!」

 

 荒瀬軍曹が、

 

「ヴァーミリオン了解。その先に五機のダロガを確認した。我々はあちらを叩く」

 

 氷室中尉が、

 

「ランドガルド了解!! 俺達は部隊の救出を最優先だ! あの針串刺しからフェンサーの盾で味方を護る!」

 

 月島大尉がそれぞれ部下に指示を出す。

 

「やんぞ!! 攻撃開始だァ!!」

 

「っしゃ! ファーストキルいただき!!」

 

 フラウンダー小隊の山口軍曹がγ型を狙撃銃で撃ち落とす。

 

「あっ、ずりぃぞてめぇ! その獲物は俺が狙ってたんだ! 横取りしやがって! 女横取りしただけじゃ気が済まねぇってのかコノ!」

 

 同じく中野瀬伍長が狙撃銃で別の個体を撃ち落とす。

 

「んだよ俺がいつ女を横取りしたって!? ありゃあおめぇがいつまでたっても話掛けられねぇヘナチン野郎だから俺が貰ってやったんだろうが!」

 

「はぁ!? ナメやがってこの横取り野郎! そういやお前この前のポーカーの掛け金もちゃっかりくすねやがっただろ! 道理で計算が合わねぇと思ったんだ!」

 

「両隣でピーチクパーチク喧しいな! 敵の一体や女の一人如きに横取りだなんだ小せぇ事いいやがって。いいか、騒ぐならよぉ」

 

 山口と中野瀬に挟まれていた後藤曹長が引き金を引くのは、エメロード式C型ミサイルME-3だ。

 小型ミサイルは五体の敵をロックオンし、拘束で飛行し、外すことなく五体のγ型を撃ち落とした。

 

「せめてこんぐらいはやってくれよな。お前らにお似合いの言葉は、五十歩百歩だな」

 

 後藤は特殊ミサイルカートリッジをリロードし、再び放つ。

 

 エメロードシステムと呼ばれるこのミサイルが画期的なのは、リロードがカートリッジ化され容易になった事だ。

 他にも、小型かつ高性能なミサイルはその汎用性が注目され、最も小型化されている歩兵用C型のほかに、 

 航空機用のA型、陸上、艦上用のB型がある。

 

「なにおう!?」

 

「一緒にするな!!」

 

 山口と中野瀬がそれぞれ反応するうちに、γ型の一部もこちらに向かってくる。

 

「連中に構うな! まずは先の部隊と合流してブルートを援護すっぞ!! 葛木! てめぇは空の敵チマチマやってもきりがねぇ! 地上の蟻共まとめて片付けろ!!」

 

「い、イエッサー!!」

 

 鈴城軍曹の命令で標的を地上に切り替える葛木。

 空の敵は地上に比べて密集しづらいので爆発系の武器は不向きだ。

 そもそもこのγ型というのはガンシップに比べて不規則に動くため弾速の遅いロケットの類は当てづらい。

 ロケットランチャーの扱いに長ける葛木ですら、何度か外している。

 いや、むしろまだ距離があるここから当てる方が凄い、というべきか。

 

「巨大生物接近! まもなく射程内です!」

 

「こっちが射程内って事は、向こうもすぐ酸撃ってくるわよ!」

 

「それでもやるしかねぇんだろ! ところでよぉ、あのアルテミス、なんかこっち来てねぇか?」

 

「馬場! よそ見してないで前を見て撃――なに? アルテミス?」

 

 千島、細海、馬場、荒瀬の2-2四人組が話す。

 荒瀬が訝しんだ直後に、通信が入る。

 

『アルデバランよりそこの陸戦歩兵(レンジャー)! 友軍感謝すると言いたいところだが、その場所に航空支援を要請しちまった! 悪いがすぐ離れた方がいい!』

 

 通信と同時に、簡易レーダーに攻撃想定地域が赤く表示される。

 今いる場所は真っただ中だ!

 

「ほら! やっぱアルテミスだあれ!」

 

「ちっ! 間が悪ぃなクソ!」

 

「小隊! 右に寄れ! ハチの巣にされるぞ!!」

 

 馬場、鈴城軍曹、荒瀬軍曹が声を上げる。

 我々は逃げるように道路わきのファーストフード店の駐車場に避難。

 

 直後、低空飛行するEA-20A制圧攻撃機”アルテミス”が20mmガトリング砲を放つ。

 大音量の虫の羽音が何重にも重なった爆音が聞こえたと思ったら、眼前に迫っていた巨大生物は殆どハチの巣になり、アスファルトは見事に破壊され悪路と化していた。 

 更に対戦車ロケット弾を連射し、ダロガの一機を撃破して飛んで行った。

 

「こ、殺す気かよバカヤロー!」

 

「騒ぐな馬場! 今が好機だ! 駆け抜けるぞ!!」

 

「小隊前進だ!! 続けてめぇら!!」

 

 鈴城、荒瀬両軍曹をトップに、馬場、私、千島、葛木、細海のレンジャー2総員が続く。

 

 その我々を迎撃しようと、生き残ったγ型が次々と向かってくる。

 

「小隊、左手だ!! γ型が来るぞ! 合図で散開して針を躱せ!! ……今だッ!!」

 

 荒瀬軍曹の合図と同時に、γ型が針を発射した。

 同時に我々はローリングで各々その場を離れ、針を全員が躱す。

 我々のいた場所には針山が出来ていた。

 

「今度はこちらの番だぞ!!」

 

 私は道中の補給コンテナで手に入れた広角ショットガンガバナーを発射し、空中にいるγ型三体を仕留める。

 その奥から、更に多くのγ型が飛んできて、尻をこちらに向ける。

 針の発射態勢だ。

 

 ローリングですぐその場を離れると、振動と破壊的な音と共に地面に針が突き刺さる。

 

「狙いが甘いな! その程度で私を仕留める気か!?」

 

 ガバナーで更にγ型を叩き落す。

 そうして走っているうちに、敵に囲まれて身動きが取れない大型ヘリ”ブルート”が見えた。

 ブルートには既に何本かの針が刺さっており、傍目には飛行できるかどうかが怪しい。

 

 その周囲には何人かのウイングダイバー、恐らくフェアリーテイル中隊が護衛していた。

 しかしその人数は七人と、ここまで五人の脱落者がいる事が伺えた。

 

「おわっ!!」

 

 飛び回っていたうちの一人が、空中で針を受け、背中のユニットの片翼が吹き飛ぶ。

 

「藤野!!」

 

「うわ、あかん、あかんて~!!」

 

 墜落した藤野と呼ばれたウイングダイバーは、目前を発射態勢になったγ型三体で塞がれ、涙目になる。

 

「ぬぁははは!! させん!!」

 

 あわや針串刺しの刑か、という所を、颯爽とガバナーで撃ち落として見せる。

 

「おお~! ナイスタイミングやあんちゃん! ホンマ助かったで、おおきに!」

 

 助けた藤野と呼ばれていたウイングダイバーはやたらとフレンドリーだった。

 どう見ても隊長格には見えないので、恐らく少尉だろう。

 

「例には及びませぬ! それよりブルートに敵が迫っています! 迎撃しましょう! まだ戦えますか!?」

 

「おう! 任しとき~! 飛べへんけどな!」

 

 そういうと、藤野少尉は手にした雷撃銃、サンダーボウを空に向けて発射。

 拡散された雷撃は複数のγ型に当たり、雷撃の特性に似たプラズマがγ型の胴体を切り裂く。

 

「おお! それは噂に聞く雷撃銃! なかなか使い勝手がよさそうではありませんか! 特に空中の敵と相性がいい!」

 

 雷撃銃は、確か桜の父親である結城博士も開発に携わっていたはずだ。

 どんな人物か、一度会ってみたいものだ。

 

「やろ!? あんちゃんよう分かっとるねぇ~! ちゅーかあんちゃん、言葉ちょいカタイで~。見た感じ同い年くらいやろし、敬語なんていらへんいらへん! ウチ、貴様に少尉はもったいないーってよう隊長はんに言われとるし!」

 

 私はガバナーで、藤野少尉はサンダーボウとやらで迫るγ型を撃ち落とす。

 奴の射程はそう長くないので、撃たれる前に殺すのが定石と教わっていたが、こうも数が多くてはきりがない。

 

「はあ、そちらがいいのであれば。しかし、遠目からでは分からなかったが、地上の敵もなかなか多いのだな!」

 

 この場にはγ型だけでなく、地上のα型やβ型も存在している。

 藤野少尉はユニットを背負っているのにも関わらず、レンジャーさながらのローリングで糸を躱し、停車していたトラックを盾にして、サンダーボウを放つ。

 

 サンダーボウは若干地面に向けて撃ち、電撃が地を這って接地している各巨大生物の足からダメージを与え、仕留めきれないが行動を止めさせる。

 

「あんちゃん、やったれや!!」

 

「ぬぁははは! 戴きだ!」

 

 一瞬だが行動を止めた隙を逃さず、中心に手榴弾を投げ込み、まとめて爆殺する。

 その死骸の山に藤野少尉が飛び込み、放たれた針を死骸を盾にして防ぎ、死骸の隙間からサンダーボウを放ち、γ型を屠る。

 

 空中を華やかに舞うウイングダイバーのイメージとは違う、泥臭い戦い方だ。

 

 ちなみに私は身のこなしだけで針を躱しているので、ある意味ウイングダイバーより華麗なのでは?

 

「しかし、君は随分とダイバーの割には地上戦に慣れているな。そのままレンジャーでも通用しそうだぞ?」

 

「あー、ウチおっちょこちょいで、よぅユニット壊しとるからなぁ。それに、ぶっちゃけな、ウチあんま高い所好きくないねんのやけど、こん武器使えんのウイングダイバーだけやっちゅーからギリギリダイバーやってる所あんねん。ま、ウチの隊長はんには口が裂けても言えへんのやけど」

 

「藤野ォォーー!!」

 

 怒声と共に、一人のウイングダイバーが下りてきた。

 平時ならかなりの美人であろう顔を鬼の形相に変え、敵を倒しつつも藤野少尉に詰め寄る。

 

 あぁ、何も言わなくても分かる。

 この人が隊長なのだろう。

 

「ひえっ! なんやねん中尉ぃ~。心配して来てくれたん? おおきにおおきに! この通りピンシャンしとるから、どうぞお構いなく~! なんちって」

 

「貴様はこのっ……! ああ、怒るところがありすぎてどこから手を付けていいのか分らん!! とにかく! そのユニットの修理費は後で貴様の給料から天引きするとして、そのまま地上で戦って貰う!」

 

「嘘やろ美船中尉ぃ!? ウチ、実家のばっちゃまへの仕送りが~」

 

「藤野、ふざけるのは後にしてくださいって。ところで、そちらの方は?」

 

 眼鏡をかけた頭の良さそうな少尉が私を見る。

 

「敬礼は省略させていただきますが、応援に駆け付けたレンジャー2小隊員、仙崎誠伍長であります!」

 

 射撃中なので敬礼する余裕はない。

 

 瀬川や藤野のせいで忘れがちだが、ウイングダイバーは最低階級が少尉の為基本上官である。

 本当に忘れがちだが、彼女らはユニットを操作する脳波適正、空中戦に必須な空間把握適正、その他にもエネルギー管理や重たいユニットを背負う筋力と、飛行するための厳しい体重制限など、非常に厳しい門を潜り抜けたエリートなのだ。

 

 まったく本当に忘れがちではあるが。

 

「応援か! まったく遅すぎる! ここで足止めを食ってから既に我が中隊は2人の死者と3人の負傷者を出したぞ!」

 

「はっ! 我々もここに来るまでダロガや巨大生物共の攻撃に会い、多くを失いました! ここはお互い様という事でいかがでしょう!?」

 

「ふん、口が達者だな伍長。いいだろう、許す。私はフェアリーテイル2指揮官の美船中尉だ。レンジャー2という事は、あの海岸での戦い以来か。結城大尉や大林の奴はいるか?」

 

「いぃや? 生憎大林の奴は道中でリタイアだ。俺でよけりゃァ話になるぜ? 美船ちゃん?」

 

 梶川大尉の濁声が、私の代わりに答えた。

 

「梶川大尉! その呼び方は士気に関わる上、誠に個人的な話ですが非常に嫌悪感を露にしてしまうのでおやめくださいと何度もお願いしているのですが?」

 

 端麗な顔で、キツく睨みつける美船中尉。

 いや、私の一番はもちろん瀬川だが、睨みつけても絵になる表情はさすがとしか言いようがない。

 

「おお怖! 黙ってりゃ美人なんだからそうカッカすんなっての! 本部の命令通り応援に来てやったんだからちょっとは嬉しそうにしてくれてもイイんじゃない? そっちの指揮は誰が?」

 

「あら。こんばんは梶川大尉。予定より随分と遅い到着でしたのねぇ」

 

 梶川の問いに答えたのは、空から降りてきた新たなウイングダイバー。

 戦場に似つかわしくない、落ち着いた気品のある声だ。

 お嬢様、という感じがぴったりだ。

 

「こんばんはじゃねぇや奥村大尉よぉ。あんたが指揮とってんのか?」

 

 おっとりしたしゃべり方に、さすがの梶川大尉も微妙な顔をして答える。

 

 大尉、という事はこの方がフェアリーテイル中隊の指揮官だろう。

 恐らく、この場の部隊の総指揮を握っているのだろう。 

 

「ええ。現在、負傷者搬送の為に門倉大尉にブルートを要請して貰ったのだけれど。これがまんまとダロガに囲まれてしまってねぇ。γ型にも囲まれて立ち往生、という訳。ゴーン隊の二機には退路の確保、門倉大尉以下四名にはダロガの撃破を優先して貰って、私たちフェアリーテイルの七人がブルートの護衛とγ型の駆除を行っていましたの。そちらの戦力は?」

 

「俺達フラウンダー1が11人――」

 

「くっそぉ! ハチ共! 死ね、死ねぇぇーー!!」

 

「中野瀬! 叫んでる割にはちっとも当たってねぇぞ! もっとよく狙え!」

 

「当たってるっての! それより敵の数が多すぎんだよクソが!! ぐああ、痛ぇちくしょう!!」

 

 ブルートの後方に回り込み、γ型の攻撃から身を守りつつ、迎撃している。

 

「そっちのレンジャー2が七人――」

 

「仙崎! 合流しろ! ブルートにご執着なγ型をやるぞ!」

 

「おいおいブルート針だらけになってんじゃんか! 大丈夫なのかよ!?」

 

「ブルートは戦車並みの装甲を持つ輸送ヘリだ! とはいえこれ以上の被弾は避けたい! 期待してるぞ陸戦歩兵共!!」

 

 私は荒瀬軍曹に呼ばれ、フェアリー2と共にブルートの前面で迎撃を行う。

 

 

「戦車隊のヴァーミリオンが六輌――」

 

『中隊、目標11時方向のダロガ一機。全車輌、一斉射で仕留める。――撃て』

 

『こちらアルデバラン。いい腕だ! その調子で頼む! 須郷、ビーコンを付けた! 頼むぞ!』

 

《了解。120mm砲、ファイア!!》

 

《門倉、敵は吹っ飛んだか?》

 

『上出来だ! まだ行けるか?』

 

《おっと、初期照射を受けてる! 一旦撹乱機動に入る! アルテミスにバトンタッチだ!》

 

『ゴールド2、今撃破されたダロガを盾にしろ。インディゴ、右から迂回し、建物の残骸に登り稜線射撃。クリムゾン、γ型を機動で撹乱しつつインディゴの2ブロック南から射撃』

 

 ブルートの右後方で、戦車隊がダロガの相手をする。 

 

 

「――フェンサーのランドガルドが九人ってところだ」

 

「ランド2! ゴーン隊と共同し東方面から来る巨大生物を叩け! 他は盾を使いつつ上空のγ型を迎撃! 

よし、こっちだ! 戦車隊にγ型を寄せ付けるな! 氷室中尉達がダロガを片付ければ、それだけブルートの離脱が早まる!」

 

「承知。谷口、小滝、ゆくぞ!! 返り討ちにしてくれるわッ!!」

 

「了解。ボルケーンハンマー装備! うおりゃあぁぁ!! 爆ぜろッ!!」

 

「小滝! 後ろは気にするな! 援護する!」

 

『こちらゴーン1! 援軍感謝する!』

 

 フェンサーたちは二機のニクスと共同して、東の巨大生物を押さえる。

 

 

「なるほどねぇ。心強い、と言いたいところだけど、ここで籠城戦するにはまだ少し心持たない戦力ですよねぇ」

 

「その点なら心配いらねぇ。ここに第88レンジャー中隊と第26フラウンダー中隊を呼んでおいたぜ。乱戦ではぐれちまってたが、ちょうど近くにいたもんで合流することにしたぜ。ま、もちろん奴らは奴らでとっておきのお客がいるらしいがなァ」

 

 それぞれの中隊の背後には、新たな巨大生物群やダロガ、ガンシップが確認されている。

 援軍が来ると同時に、敵の増援も引き連れてくるという事だ。

 

「まあ! それは困るわね。お帰りいただけるのかしら?」

 

「馬鹿いうな、派手に歓迎するに決まってんだろうが! 味方も結集、敵も結集、結構な事じゃねぇか!」

 

「うふふ、楽しそうですのねぇ。でもまずはその前に、あのブルートをなんとかしていただけるかしら?」

 

「そいつは任しとけ! 野郎共! クソ蜂共をとっとと片付けるぞ!!」

 

「「ウオオオォォォ!! EDF!! EDF!!」」

 




人物紹介。
この設定を生かす機会を考えると妄想が膨らみますね!(機会があるとは言っていない)

山口博之(やまぐち ひろゆき)(32)
 フラウンダー1小隊員。軍曹。
 女癖の悪いボウズ頭の男。
 いわゆる女たらしだが、飽き性なので二度離婚して現在妻はいない。
 人のものを良く横取りしたり盗んだりするが、取られる方が悪い、の精神。
 が、その精神が災いし過去に二ノ宮軍曹に徹底的に搾り取られたので彼女は苦手。

中野瀬大輔(なかのせ だいすけ)(29)
 フラウンダー1小隊員。伍長。
 喧嘩っ早いが頭は悪い。
 何かとイキってよく突っかかってくるトラブルメーカー。
 特によく山口と揉めている事が多い。
 一見素行が悪いが、根が小心者の為、大きなことは出来ず、なかなか憎めない。
 賭け事が好きだが弱いので、隊内でよくポーカーなどをやって負けている。
 そして例によって二ノ宮軍曹に搾り上げられたことがあるので彼女は苦手。
 というか、フラウンダー自体が搾り取りやすい気質なのか、この中隊では「レンジャー2-1の二ノ宮って女はやべぇぞ!」ともっぱらの噂になっている。


後藤啓二(ごとう けいじ)(36)
 フラウンダー1小隊副長。曹長。
 小隊長の梶川大尉は中隊の指揮を執っている事も多いので実質的に小隊を纏めている。
 落ち着いた雰囲気の中年男性で、梶川も含め荒々しい印象のフラウンダー1の中でクールな存在。
 良く部隊内の揉め事を仲裁している苦労人だが、それはそれで楽しんでいる。
 ミサイルを含む爆発系の武器を多用し、前に出がちの仲間たちを後方から誤爆に気を使いつつ援護している。


奥村美奈(おくむら みな)(33)
 第二降下翼兵団、第一中隊”フェアリーテイル”中隊長。
 大尉。
 おっとりとした雰囲気の女性兵士で、「お嬢様」という言葉がしっくりくる。
 結城大尉や保坂少佐と似たような気質で、危機的状況であってもあまり動揺しない指揮官の鑑のような人物だが、フラウンダー辺りと並んでいるとテンションの差が酷い。
 甘いものが大好きだがカロリー管理が上手く、体重は殆ど増えない。
 一説では、そのカロリーは胸に吸収されているという噂が……。
 上記の話とは関係ないが、身体測定の結果ではバストサイズは部隊一。

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