全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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第五十三話 西区砲撃の裏

 

――2023年 3月30日 19:30(仙崎達がブルートに到着した頃) 京都市南区桂川西岸・第八戦闘機甲(コンバットフレーム)中隊――

 

『トマホーク1より各機! 六時方向に四機のダロガ発見! 左翼の巨大生物を押さえつつ撃破しろ! 最優先だ!』

 

『ロータス1了解! 砲撃する!』

 

『ギャンブル小隊、ロータスの側面を押さえる! 行くぞ!!』

 

 ロータス小隊の四機、ニクス・バトルキャノンが、ダロガへ両腕部のヘヴィリボリバーカノンを斉射する。

 隙を晒した側面に、喰らいつくように巨大生物が迫るが、それをギャンブル小隊のレッドシャドウが許さない。

 

『ロータスに敵を近づけさせるな! ギャンブル4! 左翼のヘクトルを叩け!』

 

『了解!! うおおぉぉぉぉ!!』

 

 女性小隊長の命令に、ギャンブル4の野太い声がすぐに応え、ひと跳躍で瞬時に接近すると、雄たけびを上げて肩部散弾砲の連射で撃破する。

 

『撃破ァ!』

 

 背後からの散弾砲の接射に、なすすべなく装甲を貫かれて崩れ落ちるヘクトル。

 

『やるじゃないギャンブル4! 復帰したばかりって聞いたけど、腕は確かのようね!』

 

 ギャンブル2が4の動きに関心する。

 その様子から、最近再編成された部隊だと分かる。

 

『そう見えるなら、何よりだ! 足手まといは御免だからな! うおっ!!』

 

 倒したヘクトルの残骸の陰から、β型が複数出てきて取り囲まれる。

 

『油断しないでギャンブル4! カバーする! はぁっ!!』

 

 脚部のローラーユニットで地表を滑走し、瞬時にギャンブル4のカバーに3が入る。

 両腕部の火炎放射器でβ型を糸ごと焼き尽くす。

 同時にギャンブル4も包囲から脱出し、同じく火炎放射器を使う。

 

『すまん。助かったぜ、ギャンブル3! もうちょっとで死ぬところだった!』

 

『ちょっと! ツメが甘いんじゃないの!? そんなんじゃ困るんだけど!!』

 

『ギャンブル2。位置的には、貴方のカバーが必須だったと思いますけど。私たちは互いが互いをカバーして初めて戦えるはずですよね?』

 

『っ……! う、うるさいわね、分かってるわよギャンブル3! ギャンブル4、合わせてあげるから、もっとわかりやすい動きしなさいよね!』

 

『了解ッ!!』

 

 と、そんなやり取りをしているうちにロータス小隊がダロガを片付け終わる。

 途中、戦車隊の援護砲撃もあり、ほぼ一方的にダロガを撃破する事が出来た。

 

『トマホーク1よりポーターズ! 進路上のダロガを撃破! 前進可能!』

 

『こちらポーターズ了解。護衛のサイクロンズと運動公園の対空部隊のおかげでガンシップとγ型も掃討できた。このままいけば目的地まで一直線だ』

 

 輸送機部隊ポーターズ。

 ティルトジェット方式*1を使用した輸送機ノーブルで編成された航空輸送機部隊。

 彼らが運んでいるのは、本作戦で初の実戦投入がされるB651”タイタン”重戦車。

 

 200tを優に超える重量の重戦車を、輸送機ノーブルは三機でワイヤーを連結し空輸しているのだ。

 戦車は元々、長距離を自走するのに向いていない車輛だ。

 更にそれが200tを超える重戦車とならばなおさらだ。

  

 故に、戦場までは別の方法で輸送するのが一般的だが、タイタンは設計当時からその巨体さ故に陸路での輸送は基本的には想定していない。

 採用されたのは、元々大失敗に終わった巨大な鉄屑、ギガンティックアンローダー・バルガの輸送で民間使用されていたバルガ専用垂直離着輸送機V-17でのワイヤー連結方式だ。

 

 このV-17の機動力、輸送能力に目を付けたEDFが輸送機を改修し、V-171輸送機ノーブルとして採用した。

 それがタイタンの輸送にも使われている。

 

 三機のノーブルと、一輌のタイタンは空中を進むが、レーダーを見ていたノーブルのパイロットが青ざめる。

 

『なんだ……? こいつ、まっすぐ向かって来ている……!? 大変だ! 北からレイドシップがこっちに来ているぞ! 二隻だ! 誰か撃ち落としてくれ! ガンシップを積んでたら厄介だ!』

 

『トマホーク1了解! ロータス、狙えるか!!』

 

『だめです! 此処からじゃ位置が悪い! すぐ移動しますが、バトルキャノンの機動力で間に合うか……!?』

 

 ニクス・バトルキャノンは、遠距離砲撃戦に特化した機体構成だが、機動力が重いのが欠点だ。

 

『こちらブルージャケット。東の一隻は我々が狙える。狙撃で墜とすには時間が掛かるが、注意は引けるはずだ!』

 

 近くまで来ていたブルージャケット隊が狙撃を引き受ける。

 

『こちらロータス! 感謝する!』

 

『トマホーク隊、ついてこい! ロータスの露払いをするぞ! ロータス! レイドシップの動きを予測して先回りしろ! ギャンブル隊、殿だ! 背後から巨大生物共を寄せ付けるな!』

 

『ロータス1、了解!』

 

『ギャンブル1了解!』

 

 トマホーク隊のニクスB型が跳躍し、それを応用にロータス隊が滑走移動する。

 

『こちらブルージャケット! 二隻、同時にハッチが開きます!』

 

『狙撃、始めッ!!』

 

『ロータスッ!!』

 

『大尉、ここからでは無理です!!』

 

 二隻のハッチが開き、それぞれがγ型とガンシップを発艦させる。

 東の一隻はブルージャケットが狙撃するが、ライサンダーを使い切っているので一回のハッチ開放では撃ち落とせない。

 

 そして、発艦したγ型とガンシップの一部が、輸送機ノーブルを襲い始める。

 

『野郎共! 蜂と銀バエを撃ち落とせ! ノーブルとタイタンを護れ!!』

 

『『イエス、マム!!』』

 

 しゃがれた女性指揮官の一声で、攻撃ヘリ中隊”サイクロン”の12機のバゼラートが対空戦闘を開始する。

 

『ドアガンナー、射撃開始! 弾幕を張れ! 撃ち落とせなくてもいい、とにかく敵を寄せ付けるな!!』

 

『了解!!』

 

 同時に、ノーブルのドアガンナーが、8.88mmUTガトリングガン”ヘパイストス”を発射。

 毎分3000発以上の連射力で8.88mmEDF規格弾を放ち、近づくγ型やガンシップを次々と墜としていく。

 

 だが、数の暴力はそれを上回る。

 

『こちらチャーリー2! 機体後部に被弾! 飛行可能ですが、このままでは……!』

 

 ポーターズの一機がガンシップのレーザー攻撃を受ける。

 そのほか、隊長機のチャーリー1の方もγ型の針撃を喰らい、機体各所に突き刺さっている。

 

『ちっ、ちょこまかと……! こっちに――まずいッ! うわあああ!!!』

 

 サイクロンの一機が撃ち落とされる。

 ガンシップのレーザー照射を喰らったようだ。

 

『サイクロン9!! やってくれるねぇ……! 野郎共、一か所にとどまるな! ポーターズを守りつつ、敵を撹乱するんだ!!』

 

『そうはいっても隊長!! ガンシップの相手に対空戦は不利です!!』

 

 その声にサイクロン3が言葉を反すが、

 

『泣き言をいうなサイクロン6! 少しでもタイタンを近くまで運べば……、くそ、蜂共が!! 機体に取り付いて……っ!! 寄るな、寄るな、やめろ、ぎゃあぁぁぁぁ!!』

 

 サイクロン3はγ型の集中攻撃を受け、針だらけの目に会い、最後は運転席に針が直撃し、血を散らしながら墜落した。

 

『こちらタイタン車長。もう限界だろう。タイタンを今すぐ切り離せ! ここから先は地上から行く!』

 

 タイタン車長、権藤(けんどう)少佐がポーターズに伝える。

 対空攻撃に脆弱なこの輸送プランは、元々危うくなったら予定地点より前でもタイタンを切り離す事も考えられていた。

 

『こちらポーターズ了解! 高度を下げて切り離す!』

 

『こちらサイクロン!! そんな余裕はない! 向こうから第二波が来た! さっきロータスが一隻墜としたが、どのみち第二波は耐えられないぞ! こんなところで全滅する気か!?』

 

『ですが! この高度では!!』

 

 タイタンの重量で高高度から切り離せば、自重に耐えられず最悪大破する危険もある。

 そうなっては一体何のために命を懸けたのか、まるで分からない。

 

『計算した。少し足回りがイカれるかもしれんがギリギリ耐えられそうだ。それにどのみちポーターズがやられれば墜落するしかないんだ。やってくれ!』

 

 権藤少佐が静かに、決意を固めてポーターズに伝える。

 

『くそっ! 無事を祈る! 権藤少佐! ポーターズ各機、操作権限を貰う! ワイヤー解除!!』

 

 三機のワイヤーが同時に切り離され、総重量200t超えの重戦車は地上に向けて落下する。

 

『総員、対ショック姿勢ッ!!』

 

 権藤少佐が部下に命令する。

 

『ポーターズ全機、全速離脱!!』

 

『サイクロン、全速離脱! 横大路運動公園を通過し、対空部隊に掃除させる!!』

 

 ノーブルはジェットエンジンを水平に変え、急加速して離脱、次いでバゼラートが続く。

 

『こちらブルージャケット、レイドシップ撃沈! 残敵、狙撃する!』

 

『トマホーク1より各機! タイタンの投下地点へ向かうぞ!!』

 

 タイタンは地上に激突し、辺りに轟音が鳴り響く。

 派手な土煙が上がり、辺りは視界不良になる。

 

「……ッ、ひどい、衝撃だな。各員、負傷者と車体のチェック急げ! 山波、現在位置は?」

 

 権藤少佐は、副車長の山波大尉に位置を聞く。

 

「……っと。現在位置、久世築山町の住宅街、桂川の西岸。目標地点まで、約3km!」

 

 頭からの出血を手当てしながら、山波大尉は慣れた手つきで位置を割り出す。

 

「車長! 足回りを含め、車体に異常はありませんでしたが、建物の残骸と地面にめり込み、車体が擱座しています。移動できません!」

 

 操縦手の一人が報告する。

 高高度からの落下にも耐えるとは、驚嘆に値する頑丈さだが、よりによって戦車が擱座するとは笑えない話だ。

 

「砲塔は動くか?」

 

「はい、異常ありません! ですが、射角が取れず、レクイエム砲は照準不能、副砲の120mm滑腔砲や機銃なら何とか……」

 

 タイタンは斜めに地面に突き刺さり、更に建造物の鉄骨が反しのように引っかかり、タイタンをロックしてしまっているので水平に射撃する事が出来ない。

 この角度で撃てば虚空に飛んで行ってしまう。

 

「車長!! 大変です! 対岸の西区住宅街の巨大生物がこちらに向かっています! 総数、2000!」

 

「見逃してはくれんか……!」

 

 西区住宅街、ちょうど仙崎達がブルートを護衛している周辺の場所だ。

 

『こちらトマホーク中隊! 我々が護衛します! 砲撃は可能ですか!?』

 

 ニクス12機が駆け付けた。

 

『擱座の為レクイエム砲は照準不能。副砲と機銃のみだが攻撃は可能だ。コンバットフレーム隊には車体の立て直しを要請したいが……』

 

《こちら本部! 状況は把握している! ここで貴官らを失う訳にはいかない。すぐに西区全域に面制圧砲撃を準備する! 効果想定地域の部隊に即時移動命令を出し、五分後に砲撃を行う! それで持ちこたえろ!》

 

 リヴァイアサン艦橋の榊中将から通信が飛んでくる。

 

『こちらタイタン。援護感謝します、榊中将』

 

「車長、敵巨大生物、接近!」

 

「ふん、まったく。散々な初陣になったものだな。だが、擱座していようと二門の120mmと四門の重機関銃、そして鉄壁の装甲を誇るタイタンを、そう易々と屠れるとは思わない事だな、下等生物共。よし、砲撃、開始!!」

 

 権藤少佐はヘルメットを被り直し、声を張り、攻撃開始を指示する。

 

『トマホーク1よりロータス隊、対岸へ砲撃開始! ギャンブル隊、ロータスの近接護衛! トマホーク各機、俺と来い! タイタンの擱座を何とかするぞ!』

 

 西区一帯への砲撃は、このような経過があって行われた。

 

 

――20:00 太平洋艦隊旗艦リヴァイアサン・艦橋――

 

 

「西区住宅街への砲撃終了。西区巨大生物の七割を撃破。味方部隊の被害、ありません」

 

「B651タイタン、擱座からの復旧完了。自走し攻撃開始地点へ向かっています。護衛のトマホーク中隊は大破1、中破3、小破4。戦闘続行可能です」

 

「混成機動小隊によるレイドシップ攻撃、これまでに撃沈11! その他戦車隊による高高度砲撃やニクスバトルキャノンによる長距離砲撃で多数の撃沈に成功しています」

 

 各オペレーターの声に、タイタン辺りの状況は落ち着いたと判断し、ひとまずそちらは問題ないと判断した榊だったが、その他の状況もめまぐるしく変化していく。

 

「バトルキャノン装備のサーカス中隊より救援要請! ガンシップの大群に手が負えないそうです!」

 

「京都駅周辺まで後退させろ! そこに対空車輛の生き残りが結集している!」

 

「一号線上鳥羽口(かみとばぐち)付近で交戦中のシルフダンサー、レンジャー5以下各小隊がヘクトル群に押されています!」

 

「鴨川を挟んで南に京都南ICで多数の戦力が応戦している! 南に後退し、南ICの戦車小隊に支援砲撃を要請しろ!」

 

「警察学校周辺の巨大生物が移動開始! 戦闘中のスティングレイ中隊、ペイルウイング中隊他各隊の戦線を押し上げて京都南ICに向かっています!」

 

「無理に押しとどめようとするな! 南ICには多くの戦力がいる! むしろ追撃し、南ICの部隊と挟撃を行え!!」

 

「南区住宅地周辺で戦闘中のニクス・ヴィクター中隊以下混成隊、171号線からの敵西進を食い止めました! 敵集団は三個に分かれそれぞれ南東……京都南IC付近へ向かっています!」

 

「なに……? とにかく、食い止めたのならばそのまま押し返せ! 南ICに向かっているなら都合がいい。祥久橋付近にいるストーク11以下各隊はこれに呼応し、そのまま敵を押し返せ!」

 

「スカウト4より緊急通信!! 向島大河原付近で地中侵攻発生!! 侵略性外来生物γを中心とし、3000以上の梯団を形成して北上しています! その進路に……京都南ICがあります!!」

 

「これは……榊司令! 戦域全ての巨大生物、フォーリナーが、京都南ICを目指して集結しつつあります!!」

 

「本当か!? 狙い通りだが……あまりにも極端すぎる……」

 

 その分かりやすすぎる様相に、榊中将も困惑する。

 

 アイアンウォール作戦、その第五段階以降の条件。

 それは、京都南ICに敵を集中させることだ。

 

 第四段階で京都市内に移動した部隊は、小隊単位で行動し、敵を分散しつつ各個撃破を行う。

 

 京都市全体を主戦場とし、砲撃で漸減した後あえて市中に敵を誘い込み、市内各所に待機させた部隊を小隊単位で行動させ、常に挟み撃ちの状態を作り、柔軟に立ち回り事によって敵を京都市内にくぎ付けにし、各兵科の相性を考慮し有利に立ち回りつつ、敵を市内で更に漸減する。

 

 市内各所で敵を各個撃破して戦力を間引きつつ、徐々に味方部隊を南ICに集中させ、釣られた敵も集める。

 一か所に集まった所で、徹底的な砲爆撃、そしてタイタンのレイクエム砲を以って一方的に撃破する、というのが理想の作戦だ。

 

 巨大生物の浸透力を逆手に取った作戦で、従来の二重三重に強固な防衛線を敷く、というやり方からは大きく外れた作戦だった。

 

 尤も、今回は防衛線に配備する十分な戦力や物資が無い事と、そもそも防衛線を敷くだけの後退が許される土地が無いという理由から編み出した、苦し紛れの作戦でもある。

 

 とはいえ、個々の兵士の力に大きく依存する危険な作戦ではあるが、巨大生物の浸透力を考えると有効な手ではあった。

 だが、問題は敵がそう都合よく一か所に集まるのか? という問題だった。

 

 これに関してはルアルディ中尉の、いや戦略情報部の非公開情報に根拠を置くものだったので、ある種賭けに近いものだった。

 

「フォーリナーは、より激しい戦闘に引き寄せられる、か。聞いてはいたが、これほどはっきり効果が見えてくるとは、少し聞いてた話と違う気もするが?」

 

 目を細め、真面目な顔をした秋元准将がルアルディ中尉を見やる。

 

「私も驚きです。海外のデータと見比べても、ここまではっきり動きがある事は稀……というか、見たことがありません」

 

 ルアルディ中尉は、目を丸くしながら、パソコンのデータを比較したり入力したりせわしなく動いている。

 

「そんなにか。なら、このデータを戦略情報部に送ってやったら泣いて喜ぶんじゃねぇのか? 取引材料に使えるかもな……」

 

「もう、真面目な顔して何言ってるんですか! それにしても、これはちょっと気になりますね。ここまでわかりやすいと、何か別の要因があるんじゃって思いますが……」

 

 ピンとくるものが無いのか、うーんうーんと頭を捻るルアルディ中尉。

 

「これに関しては、もっと戦略情報部の情報が欲しい所だな。万全を期し、今後の対策の為には原因をはっきり究明したいところだが、生憎そんな余裕はない。予定通り京都南ICを最後のキルゾーンにするぞ! 状況が整い次第、作戦を次の段階へ――」

 

『スカウト4より本部、応答願います!! コード991発生! エリアF5です! 推定個体数4000、まだ増え続けていますッ!!』

 

『こちらレンジャー2-1仙崎!! 本部、応答願います! 南IC付近エリアF5でコード991発生ッ!! 大規模な地中侵攻ですッ!!』

 

 エリアF5、南ICのすぐ北側に大規模な地中侵攻が発生した。

 

『α型、亜種、β型……γ型も地中から出ています! 』

 

「西区を制圧したばかりだというのに、まだ出てくるのか……! 南ICの部隊を下がらせろ! この規模を通常戦力でまともに相手は出来ない!」

 

『それが……、巨大生物群、その場からあまり動きがありません! 少なくとも今は、京都南ICへ向かう様子はありません』

 

「なんだと!? ええい、まったく、意味の分からん事をしてくれる……! スカウト4! 巻き込まれた部隊は確認しているか!?」

 

『本隊は南ICへ向かっていた為被害はありませんが、取り残された兵士数名が地中侵攻の直撃を喰らっています! ですが恐らくもう……』

 

「いや、こちらで生体反応を確認した! 二名だ! 信じられん……まだ生き残っている! 直ちに救助に向かう部隊を――」

 

『――本部、応答願います! F5に支援砲撃要請! 繰り返します、エリアF5に支援砲撃要請!! 直ちに願います!!』

 

 先ほどコード991の通信を貰った陸戦歩兵、仙崎伍長からの通信だった。

 

「こちら本部。エリアF5には歩兵の反応が二つある。付近にエアレイダーもいない。誤爆の危険があるため許可できな――」

 

『――その歩兵二人が我々です! 構わず砲撃をしてください! 弾はこちらで避けます!』

 

 仙崎伍長は、榊中将の言葉を食い気味に遮り言葉を荒げる。

 逼迫した状況は伝わるが、

 

「なんだと!? そんなことが出来るわけがない! 馬鹿げたことを言うな!」

 

 弾を避ける、とは不可能も良い所だ。

 一体何を考えているのか。

 

『それでもやらなきゃ死ぬのです!! このままではこちらも長く持ちません! 許可を!!』

 

 榊は逡巡する。

 だが、ふと思い出す。

 

「(仙崎誠伍長と言えば、確か軍曹と同じ小隊か。レイドシップ撃墜の立役者であり、四つ足にも遭遇してプラズマ砲台を壊す戦闘にも居合わせた。だがそれだけだ。普通、ただの偶然と考えるだろうが、あるいは……)」

 

 榊は、二人の天才の言葉を思い出す。

 

 ”仙崎誠伍長、ですか……。彼の事は、覚えておきましょう”

 リーヴス少将は、レイドシップに止めを刺した仙崎伍長の事を興味深そうにつぶやき、

 

 ”……アタシはね、英雄を探してるんだ。人間の底力ってのは馬鹿に出来ないからね。科学や物理で測れない事もあるって事さ。”

 茨城少佐は、レイドシップを撃ち落とす兵器ではなく、人の英雄を探しているといった。

 のちにその言葉は仙崎がレイドシップを撃ち落としたことで、彼に当てはまる事になる。

 実際、見舞いに顔を出したことがあるようで、気にかけているそうだ。

 

「……、分かった。許可する! 三分後に砲兵隊にやらせる!」

 

 仙崎伍長は、自らの身を犠牲にして砲撃でまとめて倒すつもりではないらしい。

 一体どういうつもりか知らないが、彼の運命に、榊は賭けた。

 

『ありがとうございます!』

 

《確か、レンジャー2-1の仙崎、といったな? 必ず生きて報告しろ。いいな!?》

 

『サー! イエッサー!!』

 

 

――20:20 仙崎誠、本條薫――

 

 

 α型亜種の突進を手をついて最小限の動きで回避する。

 β型の糸をくぐって躱し、α型の酸を亜種の体を盾にして防ぐ。

 だが別の角度から酸を喰らい、ヘルメットに被弾。

 

 構わず進むと、左手が糸に触れる。

 すかさず本條大尉がナイフで糸を切り取り、手榴弾でβ型を爆殺。

 その隙間に滑り込むように体を移動すると、背後からの亜種の突撃で投げ出され、本條大尉が離れる。

 

 私は華麗に受け身を取って牙の追い打ちを躱すと、本條大尉をすぐに拾い、再び駆け出す。

 拾った際に何発か酸を喰らったが、些細なダメージに気を配っている暇はない。

 

 とにかく、脚を止めず、ひたすら南を目指して走る。

 確かに、一人ならもっと早く、確実に、負傷も少なく抜けられただろう。

 だが、背中に守るべき者がいることが、今は誇らしかった。

 

《砲撃任務群”スレッジハンマー”より全部隊へ! エリアF5への限定砲撃を開始した! 弾着まで30秒!》

 

『こちらアルデバラン! F5だと!? なぜ撃った! その場所にはレンジャー2-1の兵士が一人取り残されている!』

 

 走り抜ける、ひたすらに攻撃を躱し、走り抜ける。

 やがて、向かってくる群れを抜ける。

 

 振り返ると、山のように巨大生物が連なっていた。

 ひっきりなしに酸や糸が飛んでくる。

 

《アルデバラン、これはそのレンジャー2-1の兵士からの要請だ。着弾まで、5、4、3――だんちゃーく、今ッ!!》

 

「跳べッ!!」

 

 私は、背中の本條大尉を持ち替え、庇うようにして大地を蹴る。

 

 私の運の悪さから考えると、恐らく”たまたま飛んできた砲弾が直撃し、木っ端微塵になる”ところは読める。

 では、それを逆に利用するまでだ。

 それまで群れを抜けられるかが鍵だったが、無事群れを突破し、数多の巨大生物を引き付ける事が出来た。

 

 狙い通り、躱した私のすぐ上を砲弾の一つが通過し、先ほど我々がいた場所に直撃する。

 爆風を追い風にして、私と本條大尉は宙を舞う。

 

 後は大尉を持ったまま受け身が取れるかだが。

 

 

「しまった――」

 

「うわっ!」

 

 爆風が想定よりもつよく、空中で、本條大尉の手が離れる。

 結果、私は何とか受け身を取って華麗に着地するが、本條大尉は地面に投げ出され、何回転か打ち付けられる羽目になった。

 

 一方、巨大生物は先頭に固まって我々を追っていたところに、砲撃が集中したので先頭集団は完全に全滅し、後続についてもその数を大きく減らした。

 

「ほ、本條大尉ぃぃーー!! 申し訳ありませぬ!! お、お怪我は!?」

 

「いてて……、全身を打ったがアーマーのおかげで大した怪我はないよ、伍長。いや、酷い目に遭ったとは思うけどね」

 

 間近で砲弾の爆風を受けたのだ。

 爆風の熱と破片からは庇えたと思うが、地面に打ち付けられたらトラックに撥ねられたくらいの衝撃はあったはずだ。

 

「慙愧の念に堪えませんが、後続が来ます。恨み節は後で聞きますので、急ぎましょう」

 

「いや、その必要はないみたいだよ」

 

 本條大尉の言葉の直後に、我々の周囲に三機のニクスが降り立った。

 

『ホーク1、本條大尉! ご無事ですか!?』

 

『遅れてすみません! ここは俺たちが!』

 

『オラオラァ! 来いや下等生物共! 留め刺してやるよ!!』

 

 ホーク小隊の部下三機が後続の散発的な巨大生物を迎え撃ち、

 

「仙崎!! まったく、無茶をしたな! だがよく生き残った! 乗れ! 本條大尉も、こちらへ!」

 

 アードウルフ高機動車が私の前に止まり、荒瀬軍曹が手を差し伸べてくれた。

 

「はっ。仙崎誠、小隊に合流します」

 

「乗せてもらえて助かる」

 

 私と本條大尉はアードウルフに乗り、この場を離脱する。

 

「大将!! よっく生きて帰ってきたな!! あの群れの中を単独で突破するなんて、さすがは大将だぜ!! しかも美人の大尉さんまで連れてくるとは!」

 

「馬場っ、分かったからあまり大声を出すな……。さすがの私も疲れた……」

 

「言っておくが私の夫はまだ生きているぞ?」

 

「あーあ馬場、色目使ったのばれちゃったね」

 

「使ってねぇ! いや大尉、今のは女性がいると場が和みますねって意味であってですね」

 

「ほぉ? アタシらは女性にカテゴリされてねぇって話か?」

 

「す、鈴城軍曹。ちょっと心外ですよねぇ……?」

 

「ぎゃー! なんでそうなる!? 千島! ちょっとバトンタッチ!」

 

「えぇ!? 無茶ぶりですよ! ま、まあ場は人はそれぞれ良い所ありますし、鈴城軍曹も細海さんも素敵だと思いますよ?」

 

「お、おう……分かってるじゃねぇか……」

 

「あ、あれ? ちょっと、何照れてるんですか鈴城軍曹。ひょっとしてそんなナリして初心なんですか?」

 

「細海てめぇ後で殺す」

 

「よ、容赦ありませんねこの人!」

 

「(これがあの大林中尉の部下たちなの……? 相当激戦を潜ってきたという噂だったけど、随分賑やかなのね……。そういう柔軟性が、隊を強くさせるのかしら?)」

 

「(ぬぅ、私から言っておいてなんだが私蚊帳の外すぎないか? もうちょっと讃えられてもいいと思うんだが。頑張ったし。まあやった事と言えば命からがら逃げかえってきただけなのだがね!)」

 

 とはいえそのような微妙な雰囲気で、我々はそのまま後方陣地へ一時的に後退し、前線から身を引くこととなった。

 

*1
ティルト、とは傾けるという意味で、機体に対してジェットエンジンを傾けて垂直離陸と水平飛行を両方行う方式。プロペラの場合はティルトローターと言う




仙崎、順調に主人公っぽい感じを出せてていいですね(いいですか?)
(なんなら戦闘描写少ないような……??)

ちなみにトマホーク隊など、コンバットフレーム隊の名前は多くがマブラヴオルタのモブ戦術機部隊から取っています。
主に横浜基地防衛戦に出てきた部隊から登場させようと思ってます。
あのモブ戦術機部隊たちの戦い結構好きなんですよねぇ、キャラ立ってるけど設定が特にないので隙に解釈出来ていいですね!

ちなみに、原作キャラを出さないのは扱いきれる気がしないから……。
だから二次創作賭ける人ってホント凄いなぁって思います。
EDFくらい緩ければ俺でも好き放題妄想できるんでいいですね!

では人物紹介!


権藤源治(けんどう げんじ)(56)
 B651タイタンの戦車長。
 階級は少佐。
 戦車大隊の大隊長だったが、元技術屋でもあり、ガプス・ダイナミクスとも繋がりがあったことにより、戦車長に選ばれた。
 焦らず、逸らず、それでいて熱く、力強い。
 まさに重戦車のような男。

山波新次郎(やまなみ しんじろう)(38)
 タイタンの副車長。
 階級は大尉。
 ガプス・ダイナミクスの技術者であり、引き抜かれてこちらに来ることとなった。
 こちらは権藤とは逆で元EDF陸軍戦車兵であり、彼が現場の声を持ち帰ったことによりGD(カプス・ダイナミクス)社の戦車産業にも少なからず影響した。
 他にも、タイタンの乗員にはGD社の技術者や関係者が多く乗員として搭乗している。
 
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