――2023年3月30日 20:30 京都南IC付近――
《本部より全戦闘部隊!
これより、アイアンウォール作戦、最終段階第五
損耗の激しい部隊は南インターに待機していた部隊と入れ替わり、後方陣地として機能している402火力演習場まで後退しろ!
そのほかの部隊は全力で集中する敵勢力を殲滅せよ!!
既に敵レイドシップは残り僅か、残存する敵勢力は作戦開始時の四割を下回った!
ここが正念場だ!
EDFの勇猛さを、奴らに徹底的に教えてやれ!!》
「「ウオオォォォォォ!! E.D.F!! E.D.F!!」」
京都南ICに集結したEDF部隊の士気は最骨頂となり、そこに集中して押し寄せる敵勢力に負けない勢いを発する。
『
フォレスティオ、右翼の巨大生物群を砲撃、敵を戦車部隊に近づけるな!
アイアンランサー、対空戦闘! 速射砲でガンシップを叩き落せ!
我々は左翼に回り込んでダロガC群四機を側面から機動砲撃!
『ジャベリン1了解!
『ストーク11了ォ解!! 小隊、一体も近づけるな!! 撃ちまくれ!!』
『『サー!! イエッサー!!』』
ストーク11がアサルトライフル、ロケットランチャーで弾幕を形成し、戦車前面に迫る巨大生物を押しとどめる。
「押しとどめろ!! 特にβ型の跳躍に注意しろ! 弾幕を簡単に抜けてくるぞ!」
「イエッサー! 飛んだ瞬間に狙撃してやる!」
「10方向、柱の陰、狙ってるぞ! 跳躍して近づいてくる!」
「させるか!」
「いけ! 柱ごとぶっ飛ばせ!!」
立体道路の柱の陰から飛び出したβ型は爆発に巻き込まれ、残った跳躍した個体も狙撃される。
『今だ! ダロガC群を徹底砲撃! 撃て!!』
ジャベリン小隊が一斉砲撃を開始。
四機のうち一機を撃破する。
『車載機銃、歩兵部隊を援護射撃! ストーク11! 攻撃が激しいときは無理をするな! 我々が盾になる!』
『こちらストーク11! フェンサー部隊がいるおかげでまだ優勢だ! 気にするな、いざとなったらいつも通り、気兼ねなく利用させてもらう!』
戦車部隊にいる機銃射撃も役に立って、歩兵、戦車部隊の攻撃は安定していた。
続く戦車砲撃で、二機目を撃破。
だが向こうも上部の触覚型砲身を光らせる。
「砲撃が来るぞ!!」
「どっちを狙う気だ!? シールドを構えろ!!」
ダロガの砲撃は、歩兵、フェンサー、戦車部隊に分散して飛んで行った。
いたるところで爆発が起こり、悲鳴が上がる。
「フン! この程度なら盾でどうにでもなる! 行け! 砲撃継続! 敵の注意を引け!!」
レイジボーン隊長、紺迫少佐命令し、ダロガに砲撃。
スラスターで巨大生物の猛攻を躱し、時に盾で防ぎながら遠方の的を砲撃する様は並みのフェンサーに出来る芸当ではない。
『こちらジャベリン! 新たにダロガ六機と、取り巻きのγ型の接近を確認! 航空支援を行っていたアルテミスが二機墜とされた! まっすぐこっちに向かってる!』
『レイジボーン了解! 目標を分散するのは危険だ! 先にダロガ二機の撃破を優先!』
『ジャベリン了解! 奴らは黒煙を吹いてる! 先に仕留めるぞ!! γ型はどうする!?』
『アイアンランサー! 任務追加だ! γ型を叩き落せ!』
『イエッサー! 小隊、シールドを活用しろ! 針はシールドで弾き落とせる!!』
その間も、巨大生物群の猛攻は続き、レイジボーンは追い詰められていた。
「ちっ、この程度、フェンサーの装甲なら問題ない!」
多少の酸や糸、陸戦歩兵とは比にならないアーマーを着込んだフェンサーなら物ともしない。が、
「おい、油断するな! 喰らいすぎだぞ!!」
「分かってる! だが敵の数が多すぎて盾が役に立たないんだ! 少佐! 撤退しましょう!」
「だめだ! 左右からまだダロガやヘクトルが迫ってる! 奴らを潰さないと押し込まれる一方だ! 特にヘクトルの長射程砲撃とダロガの広域殲滅力はヘタを撃てば陸戦歩兵が一気にやられる!」
「歩兵の為に我々が犠牲になるんですか!! 我々の方が戦力的に勝って――」
「馬鹿野郎!! EDFの陸戦部隊の中核を支える存在は彼らだ!! 数の力を軽んじるとはな!! 貴様実戦で一体何を学んできた!?」
「す、すみません!!」
「隊長! 奥の六機から砲撃来ます! 巨大生物も!!」
「シールド、構え!!」
別の集団からの青白い粒子砲弾が迫る。
「隊長、紺迫少佐!! 巨大生物が、巨大生物が!! うわあーーー!!」
β型に絡まれ、盾を構えられなかったフェンサーの一人が砲撃に巻き込まれて死亡した。
元々、アーマーも削られていたところに粒子砲弾の直撃だ。
肉体は爆散して腕や足がその名残として転がっていた。
アーマーが無傷だったとしても、盾なしでの砲弾の直撃はフェンサーにとっても命取りだ。
「少佐!! 一人戦死、二人が軽傷を負いました!」
「くそっ! ダロガへの砲撃を続けろ! 常に移動を計算し、巨大生物に絡めとられるな!!」
「イエッサー!!」
『中隊長、紺迫少佐! 援護砲撃します! 流れ弾に気を付けてください!』
『フォレスティオか、助かる! 30秒でいい! こちらはその間態勢を立て直す! 右翼の巨大生物には目を光らせて居ろ! 奴らがなだれ込めば戦線は瓦解する!』
『了解ッ!! 砲撃開始!!』
フォレスティオは一時右翼の砲撃を中断し、左翼のレイジボーンの援護を行う。
『小隊、ダロガへの砲撃止め! 回避と巨大生物迎撃に切り替え、体勢を立て直す!』
瞬間、戦車部隊の砲撃によってダロガは二機とも爆発した。
同時に、奥の六機が歩を進める。
『ジャベリンより総員! 手前のダロガを撃破! 奥の六機に砲撃を継続する! ――!! くそ、左翼からヘクトル接近を確認! 総数五機! ブルージャケットが狙撃しているが、何故かこちらに向かっている! 武装は機銃型2、榴弾型2、混成型1!』
『砲兵型じゃないなら後回しだ! 先にダロガをやる! フォレスティオ! もう助かった、十分だ! 右翼の頭を押さえろ、急げ!!』
簡易レーダーを見ると、右翼の頭がかなり戦車部隊に接近しているのが分かる。
ストーク11も押さえているが、このままだと突破される。
『フォレスティオ了解!! 小隊! 右翼に砲撃開始! てぇーー!!』
第三中隊フォレスティオが、ハンドキャノンを一斉射、巨大生物を吹き飛ばす。
「喰らえ! 巨大生物共!」
「くそ、なんて数だ! ここまで接近されるとは……! まともに照準を付けてる暇もない!」
「14時方向よりα型亜種接近! 弾幕をものともしない!?」
「回避しろ!」
スラスター機動で突撃を回避し、背後を取ってハンドキャノンの近接砲撃。
「オラオラ! 砲で接近戦が出来ないと思ったか!? 舐めんな!!」
「次弾装填中! 援護を!!」
「ちっ、手数が足りない! デクスターに切り替える!」
「ストーク11-2、フォレスティオの近接護衛だ! 後ろに回り込まれつつあるぞ!!」
「第二分隊、ショットガン装備! α型亜種は固いぞ! 接射で仕留めろ!!」
「「イエッサー!!」」
差し込まれつつあったフォレスティオをストーク11-2が助けに行く。
「撃て! なんとか巨大生物を押し込めるんだ!」
「うおおおお! 死ね! こっちに来るなぁぁぁ!!」
ハンドキャノンから放たれた高速徹甲弾は、何体もの巨大生物を貫通するが、跳躍するβ型が多くそれを抜けてくる。
『ストーク11-2よりフォレスティオ! β型に差し込まれてる! これ以上砲撃で押しとどめるのは無理だ! デクスターに切り替えての近接防御を提案する!』
『こちらフォレスティオ! 駄目だ! 向こうから一体何体の巨大生物が迫ってると思ってるんだ!? それよりこっちに砲撃支援は来ないのか!? 紺迫少佐! こちらは限界です! 後退しないと大きな被害が出ますッ!』
砲撃音は、戦闘始まって以来そこらじゅうで聞こえるが、ここには飛んでくる気配がない。
『レイジボーンより各部隊! 砲撃支援は2ブロック左右で行われている! これでも数は減っている方なんだ! 贅沢を言うな!』
砲弾にも限りはある。
全力砲撃を行えばこの場は凌げるかもしれないが、その後の戦闘が困難になる事は誰もが本当は分かっていた。
それに、後退できる場所も無い。
此処より10km背後には地中侵攻を行った巨大生物が山のように存在しそちらでも激しい戦闘と砲爆撃が行われている。
『くっ、フォレスティオ了解……! とにかく、ここで抑え込むしかない! 総員覚悟を決めろ!!』
フォレスティオ中隊は腹をくくり、自らを犠牲にしても巨大生物を押し込める覚悟を決めた。
が、突如戦場に乱入者が現れた。
『フラウンダー1より
『承知! フッ、派手な弔い合戦となったものだ!
『逆よ不良中隊! 我が小隊に貴様が追従しろ!! 行くわよヴァルキュリア2! 私たちの華麗な舞を、野蛮な陸の
『『イエス、マム! やあぁぁぁーーー!!』』
フラウンダー中隊、ランドガルド2、ヴァルキュリア2が敵陣に突入し、弾幕で敵を押さえる戦法を嘲笑うかのような圧倒的な接近戦能力で無双する。
「フン!! せいッ!! どォォォけェェェェいッ!!!」
フォースブレードで巨大生物を薙ぎ払い、叩き割り、辿り着いたダロガを真正面から叩き斬る。
真上から真下に振り下ろした一撃は、それだけで周囲の巨大生物を弾き飛ばすが、装甲を両断する事は叶わず、傷をつけるだけに留まる。
「派手な割に装甲を撫でただけか! ま、それでもフェンサーにしては上出来って所かしら! 止めはいただくわよ! 続きなさい!」
ヴァルキュリア2は全員武器をレーザーランスに切り替え、四人が一直線に並び、高速で一撃ずつ、装甲の破損個所の向かって引き金を引く。
短射程高出力のレーザーの短時間照射。
それを三度正確に同じ個所に照射し、ついに装甲が融解したところに、最後の一撃が内部を貫通し、ダロガは制御を失って地に倒れ、四人の背後で爆散した。
「次! 攻撃はとにかく一点集中! 照射する位置は絶対外さない事! 高度は低く、絶対ダロガより上にでちゃ駄目よ! あと癪だけど今は隊長の援護が無いんだから、あたし達だけで突っ込みすぎない事! いいわね!」
「「はいっ!!」」
ヴァルキュリア2は、”極東EDF降下翼兵団一の近接格闘部隊”の名に恥じない一糸乱れぬ機動で次のダロガに向かう。
空中からレイピアを照射し、巨大生物を薙ぎ払い、道を作っていく。
「おゥおゥお高い戦乙女様がオレたちの事頼ってやがるぜェ? 貴重な機会だ、有り難く地上から拝ませて貰うとしようや! ぎゃははは! 酒の肴にゃ困らねェってなァ! 言っとくが、録画は禁止だぜ?」
斯波中尉は率いるフラウンダー6は、着地の隙をカバーするように隙間に入り、射撃と爆破でウイングダイバーに巨大生物を近づけさせない。
「なんですって! キモい!! あんたたちはいちいち嫌悪感煽る事しか出来ないわけ!? 協力しようという気が失せるんですけど!!」
「やれやれ斯波のダンナがまたトンデも無い事言ってやがるぜ。これだからフラウンダーは何時までたっても嫌われモンなんでさァ」
迫るγ型とガンシップは、辻中尉率いるフラウンダー5が撃ち落とす。
エメロードミサイル、スナイパーライフル、D型アサルトライフルなどで次々と飛行物体は叩き落されていく。
「なンだ辻、随分大人しい事いうじゃねェか? 三部隊の敵中引っ掻き回しじゃ刺激が足りなかったか? かっかっか! ソイツはすまねェ!」
「何言ってやがんでぃ梶川大尉! 火事と喧嘩は江戸の華、なんでもかんでも楽しむのが俺たち流ってなァ! ダンナと戦乙女の喧嘩でも眺めながら、祭りに騒ぎ散らすのも一興でさァ!」
一方梶川大尉率いるフラウンダー1は、ランドガルド2と共に別方面から巨大生物群を搔き分け、ダロガに向かって進んでいた。
歩兵一個中隊に、降下翼兵、機械化歩兵を加えた遊撃集団によって敵の進撃方向が乱れ、大きな隙が出来た。
『今だ! ストーク11、フォレスティオ、敵前線を押し返せ! レイジボーン、ジャベリン、砲撃目標変更! ダロガはヴァルキュリア2に任せてヘクトルをやる! 撃てェェーー!!』
ジャベリン小隊車長の声で砲撃が激しさを増し、ヘクトルが一斉に崩れ落ちる。
戦況は、フラウンダー1、ランドガルド2、ヴァルキュリア2の乱入を気に優勢に傾いた。
登場部隊解説
▼レイジボーン
第102機械化歩兵連隊-第一中隊。
指揮官の紺迫少佐は連隊長と中隊長を兼ねる為、第二中隊”アイアンランサー”第三中隊”フォレスティオ”の指揮も執る。
ハンドキャノンを主兵装とした機動砲撃戦術を主軸に戦う。
その中でアイアンランサーは、デクスター自動散弾銃やガリオン軽量機関砲などの中近距離専用兵装にして部隊の近接防御を担うことが多い。
中隊編成の中で第二小隊が接近戦を担当する事はよくある編成だが(第一が中距離、第二が近距離、第三が遠距離を担当するのが最もバランスに優れている)、中隊単位で編成するのは珍しい。
▼ジャベリン
第72戦車連隊-第211戦車大隊-第一中隊。
指揮官は土橋大尉。
第一中隊はジャベリン、キーパー、レガシーの三個小隊。
EDF第72戦車連隊と言えば厚木市撤退戦でダロガ戦車群を相手に多くの時間を稼ぎ、ダロガとの初戦闘だったにも関わらず多くの敵戦車を撃破したとして有名。
▼ストーク11
第72戦車連隊-第211戦車大隊-第一中隊-第11ストーク小隊。
ジャベリン中隊付きの随伴歩兵小隊。
▼フラウンダー1
第一陸戦歩兵大隊-第26フラウンダー中隊-第一小隊。
梶川大尉の指揮する不良中隊。
素行の悪さと乱戦での暴れっぷりはEDF内でも有名。
敵中への突撃を好む。
▼ランドガルド2
第202機械化歩兵連隊-第三中隊”ランドガルド”-第二小隊。
指揮官は太斎中尉。
フォースブレードやボルケーンハンマーなど近接兵装を装備する近接戦小隊。
▼ヴァルキュリア2
第一降下翼兵団-第一中隊”ヴァルキュリア”-第二小隊。
指揮官は
レーザーランスとレイピアのみを使用する”EDF降下翼兵団一の近接格闘部隊”。
飛行技術、廃熱管理、高速移動しつつの照準いずれもトップクラスで彼女たちが通った後の敵は、斬り刻まれ、撃ち抜かれ、死骸、残骸の山となる。