――2023年3月30日 20:45 京都南IC付近――
別のエリアでも、激しい戦闘が行われている。
『
『ウォートホッグ了解! そっちは任せたぞ!』
ウォートホッグ中隊は、破壊された道路を移動し、ヘクトルのプラズマキャノンや巨大生物を回避しつつ、砲撃を続ける。
『ヴィクター1より各小隊! 巨大生物をやる! 機動で撹乱しつつ、囲まれないように注意しろ!』
『ウィスキー1了解!』
『エクスレイ1、了解ッ! うおおぉぉぉぉ!!』
エクスレイ小隊のニクス・バトルキャノンが両腕部のリボルバーロケットカノンを発射する。
回転弾倉式によって連射されるロケット弾が巨大生物を次々とまとめて爆散させる。
『ウィスキー1より各機! 4時方向にヘクトル三機確認! 機関砲タイプです!』
ニクス・グレネーダーを駆るウィスキー女性指揮官から知らされる。
『ヴィクター1よりウィスキー1! 対処できるか!?』
『なんとか! 皆! エクスプロージョンはまだ残ってるか!? よし、ならいける、ついてこい!』
ウィスキー小隊は、ニクス脚部に標準装備されている高速走行用のローラーユニットを起動させて巨大生物やヘクトルの攻撃を避けつつ道路を走る。
道中の巨大生物は、両腕のグレネードランチャーやリボルバーカノンで撃破していく。
やがてヘクトルに接近すると、
『全機、エクスプロージョン、ファイアッ!!』
ニクス・グレネーダーから放たれた一機あたり40発の小型グレネードが拡散して飛び出し、その殆ど全てがヘクトルに当たり、一面が小爆発の連鎖で埋め尽くされる。
元々は対巨大生物ようの広範囲面制圧兵器だったが、その火力はヘクトル相手であっても十分に発揮される。
『おぉ……。ニクス四機であの爆発はなかなかだな……。隊長オレのニクスにもアレ付けんないんスか?』
『あれはグレネーダーの固定武装だ!! それより右! β型が来てるぞ!』
ヴィクター3の軽口にヴィクター1が荒い声で答える。
『分かってますよ! 近寄るな虫どもッ!』
ヴィクター3のリボルバーカノンがβ型数体を穴だらけにする。
『ちっ、見ろ、γ型だ。ヴィクター4、ミサイルの照準を合わせろ。近づかれる前に撃ち落とすぞ』
ヴィクター2低く冷静な声で指示を出し、両肩部ミサイルコンテナを開く。
2と4はニクス・ミサイルガンだ。
『了解! でもこの数、私たちだけじゃ……』
『近づく奴は対空リボルバーカノンで叩き落す。やれ!!』
ヴィクター2の合図で対空ミサイルが放たれ、上空でγ型が次々に撃墜されていく。
しかし数は多く、生き残った個体が上空から針の空襲を行う。
『エクスレイ4、右脚部をやられました! 運動性に重大な損傷!』
『下がってろ! ぐあっ! くそ、糸か! 離れろクモ野郎ォォ!!』
『武装が動かない! 誰か蜂を何とかしてくれ! ぎゃああぁぁぁぁ!!』
断末魔を上げて、ウィスキー3が撃破される。
そのほかにも被弾や損害が目立ち始める。
『ヴィクター2、4! とにかく撃ちまくれ! 数はそう多くない、いずれ倒せる!』
ヴィクター1の指示で、二機はとにかく対空型リボルバーカノンでγ型をひたすら撃ち落としていく。
『地上の敵はこっちにまかせとけ! オラオラァ!』
ヴィクター3は、高速移動で酸や糸を最低限回避し、リボルバーカノンや肩部ロケット砲で地上の巨大生物を減らしていく。
《本部より
『こちらウォートホッグ! 輸送艇撃墜は可能ですが、内部の搭載兵器を撃破するのは困難です! それよりは投下後の隙を狙って一斉砲撃で仕留ます!』
《こちら本部、了解した! そのエリアは最も敵の攻勢が激しい。B-651タイタンを派遣する! そのほかにも
『プレアデスを!? ……いや、了解! 絶対にここは通しませんッ!』
プレアデス小隊のエアレイダー保坂少佐は、誤爆ギリギリの危険な爆撃を行う危険人物として有名だ。
『隊長! 輸送艇接近! ダロガを投下します!!』
『全車停止! 中隊全車、識別A輸送艇直下のダロガに照準! ――撃てぇぇ!!』
ウォートホッグ、ワイルドボア、バスターブルの三個戦車小隊10輌が一斉砲撃。
砲弾が四機それぞれのダロガを襲う。
『クソっ! 隊長! 仕留めきれません!』
『砲撃が来るぞ! 次弾装填――なに!?』
別方向からヘクトルのプラズマ砲弾が飛んできて、一輌撃破される。
『ぐああああぁぁあぁ――!!』
『バスターブル1がやられました!! ちくしょう!!』
『こちらヴィクター1! 砲撃を受けている! 向こうにいた部隊はどうした!?』
『連絡がない! 全滅したのかもしれん! とにかくそっちが優先だ! 我々は二個小隊でヘクトルを砲撃する! 俺たちとダロガを押さえるぞヴィクター1』
『了解!! ヴィクター中隊各機! 行くぞ! あの付近には歩兵部隊も展開している筈だ!』
『『了解ッ!!』』
『ワイルドボア、バスターブル! お前らはヘクトルを撃破しろ!』
『『了解ッ!!』』
一方ダロガの近くにいた歩兵部隊は苦戦を強いられていた。
「ダロガ接近、ダロガ接近! だめだ、隠れろ! 銃撃が来るぞォォーー!!」
ダロガが下部レーザーバルカンを発射し、瓦礫ごと歩兵部隊を撃ち殺していく。
「ぐぁぁああッ! 後は、たの……」
「大尉ぃぃーー!! くそっ、こちら
第17ブレイク中隊の指揮官が戦死する。
『無理するな! 歩兵は戦車の後ろに隠れろ! ここは駄目だ! 後退し、側面から叩く!! ヴィクター1!!』
『ヴィクター1了解! 各機、ウォートホッグの案に乗るぞ! 右翼に移動! 入ってきた巨大生物群をリボルバーカノンでハチの巣にする! 上空のγ型は常にミサイル自動照準で迎撃しろ!』
『こちらブレイク2! ブレイク3と共に左翼で弾幕を張る! 正面の巨大生物にも気を抜くな! 射撃開始ッ!!』
ヴィクター小隊含め一個中隊のニクスと、陸戦歩兵のブレイク1から6の六個小隊が両脇に分かれ、侵入してきた巨大生物に対し両方から弾丸のシャワーを浴びせる。
『いい調子だ、ブレイク3! 気を抜いてヴィクターの連中を撃つんじゃないぞ?』
『味方撃ちしたら一発に付き日本酒一合な!! ちゃんと終わったと弾痕見るから誤魔化すなよ!?』
『オイオイ気の小さいニクス乗りはモテないぜ?』
『野郎にモテたってしょうがねェや!!』
ウィスキー小隊の四番機とブレイク3の一人が軽口を叩きつつ、あけた穴にまんまと入ってきた巨大生物を殲滅する。
『なら、あたし達ならどうかしら!』
突如舞い込んできた明るい声は、
『待たせたわね、戦場の女神の登場よ! みんなー! 頑張りなさいな! 三つに分かれて各部隊を援護! さあ行って! 他の男共はあたし達に守られて、あたし達を守りなさい!』
ルナティックレイの指揮官の言葉通り、中隊は三個小隊に分かれ、それぞれレーザーライフルやプラズマランチャーで上空から援護射撃を行う。
ウイングダイバーと言えば単独で戦いがちで、協調するとしても他部隊に援護して貰うという戦い方が一般的だが、第二降下翼兵団のルナティックレイ中隊は、このように中距離の陸戦部隊への航空支援を主な戦術としていた。
隊長のその人柄もあって、
「うおおぉぉ! ルナティックレイが来たぞ! お前ら、いいトコ見せるぞ! ふんばれぇぇ!! あっ、こっち見た!」
「今日もルミ様はなんて良い笑顔なんだ! 彼女の為なら頑張れる! 行くぞ!」
彼女たち中隊はさながらアイドルのような人気を誇っていた。
部隊長の方針で、隊内の仲間が皆下の名前で呼び合うのも特徴的だ。
「くそ! 正面の圧力が予想以上に激しい! 抑えきれないぞ! ぐぁっ! くそ、腕がぁぁぁ!!」
「糸が! 糸に絡まって身動きが取れない! ちくしょう!!」
左翼部隊ブレイク2の何人かが苦戦を強いられている。
一人やられると、後はそこから弾幕を喰い破られて蹂躙されるケースが多い。
が、今は希望がある。
「この野郎ッ! 大丈夫か!? 下がって手当しろ! おい! こっちにカナエちゃんが来たぞ! 手振れ! 手振れ!!」
一人がβ型を撃破し、上空に向かって手を振って合図をする。
それを見た他の兵士も弾幕で敵を押さえつつ手を振る。
「はっ! 援護ね! ったくしょうがないわね! 下がってなさい! ヨウコ、ナオミ! Pランチャーで吹っ飛ばすよ!!」
「イエッサー!」
「了解!」
三人のウイングダイバーが三連プラズマランチャーを発射する。
エネルギー分散器を取り付けた特殊なプラズマランチャーは、中央と左右それぞれに一発ずつのプラズマ砲弾を発射した。
三人合わせて九つのプラズマ砲弾は、ブレイク小隊たちの目の前の巨大生物を上空から一方的に爆撃し、辺りを青白い爆光と赤黒い爆炎で覆った。
「よし! 前面の敵は吹っ飛んだ! ありがとうカナエちゃん達! お前ら! 押し返すぞ!!」
左翼部隊はカナエちゃん……松本香苗中尉率いるルナティックレイ2が抑えた。
一方、ブレイク6とヴィクター小隊が陣取る右翼方面には、ルナティックレイ3が辿り着いていた。
「カオリ! 撃ちすぎ! 一旦降下! あぁナギもか。この数じゃ、仕方ないね……冷却して。私とスミコが守るから」
上空からレーザーライフルで敵を押さえていたカオリとナギに代わって、”粒子バルカン砲”とカテゴライズされた新型銃”イクシオン”を斉射。
プラズマランチャーと同じく特殊なエネルギー分散器によって粒子弾は三つに分かれ、機銃掃射のように上空から巨大生物を薙ぎ払っていく。
ちなみに、イクシオン系統の粒子バルカン砲は飛行中に使うと強い慣性が加わり狙いがずれるのだが、彼女たちのように使いこなせば強力な武器となる。
「ユキ中尉、すみません……」
「きゃあぁ! γ型がっ、く、来るなぁ!!」
下がったカオリとナギの二人に、γ型の針が降り注ぐ。
「させないッ! γ型を撃ち落とすんだ! 彼女たちを傷つけるな!」
ブレイク6リーダーの一声で、彼女たちを囲んでいたγ型が次々と撃ち落とされる。
「あ、ありがとう。助かりました!」
「お気をつけて! この敵の数です、上空からの援護はありがたいですが、ユニットへの負担が大きいはずです。地上にいる間は我々が守りますので、無理なさらず!」
「了解しました。優しいあなたに、幸運がありますように。二人とも、冷却は済んだ? なら、飛びましょう、お互いをカバーしあって!」
ルナティックレイ3は、再び上空からの援護射撃でブレイク6を援護する。
「隊長も優しい顔して隅に置けませんねぇ。やっぱユキちゃん推しなんですか?」
「? 何をいっている? 友軍に優しくするのは当然だろう?」
「うわーー! 出た天然だ! 天然誑しだ!! これだからモテる男は! くっそーー!!」
「ホントに何言ってるんだ!? ふざけてないで正面の敵を倒せ! 挟みこんだ敵はだいたい殲滅したか!?」
『こちらヴィクター1! 侵入してきた敵は粗方片付けた!』
『ウォートホッグ1だ! 正面のダロガは全て撃破した! だが物量の根本的な解決にはなっていない! どうする!?』
『あ~、こちらプレアデス。こっちの方全部吹っ飛ばして貰うから~。各自レーダーを確認するように』
呑気な声が聞こえて来たので、各自冷汗を搔きながら簡易レーダーを見る。
案の定、効果想定地域に部隊が片足を突っ込んでいる。
『ヴィクター1より各部隊! 総員退避! 巻き込まれるぞ! プレアデス!! 何を考えている!!』
『だって遠くに砲撃しても仕方ないだろう? ココに一番集中してるんだから。貴重な砲弾使うなら、最大の効果を得ないとドブに捨てるようなモンじゃないか。大丈夫大丈夫、ちゃんと部隊の移動速度とか計算してるからさ』
言っている事は最もだが、あまりにも人命軽視な作戦に戦域の皆が背筋を凍らす。
悪名高きプレアデスのいる戦場では、兵士たちは常に爆撃の恐怖に晒されるが、なんだかんだ有効な支援をしているのが困りものだ。
『花火会場には近すぎるわ!! ルナティック、全員撤退! あ、ブレイクの人達は大丈夫!?』
『こちらウォートホッグ! 俺達戦車部隊が歩兵の殿になる! 多少は巻き込まれても大丈夫だ! だが保坂、覚悟しろよ! 部下が死んだら絶対戦場で貴様を轢き殺してやるッ!!』
ウォートホッグの隊長は、声に溢れんばかりの怒気を滲ませる。
『おぉ~怖い怖い。僕はこんなに一生懸命なのに酷い扱いだね。ま、そろそろ着弾するけど、その心配はなさそうだ』
瞬間、砲兵の撃った砲弾があたりに着弾し、間近だった戦車部隊の目の前が爆炎に包まれる。
着弾の振動で地面が揺れ、巨大生物の肉体の一部が爆炎に紛れて宙を舞う。
レーダーの赤い点が次々と消えていくのが、面制圧が成功した証だ。
『おぉ~~! すげぇよ! こんな間近で砲撃が見られるなんて!! やっぱ戦場はこう派手じゃなくっちゃな!』
『ヴィクター3、物好きな奴め……。今までの戦場はお前にとって何だったんだよ……』
『保坂少佐の要請でもないと、普通はこんな間近で砲撃制圧なんてしないからねぇ。興奮するのは分からんでもないけど』
『お前まで正気かヴィクター4、こっちは流れ弾で死にかけてるんだぞ? 冗談じゃねぇ。ウォートホッグ、そっちは大丈夫か?』
ヴィクター2、3、4がそれぞれ砲撃に反応する。
『ああ! なんとか問題ない! 保坂少佐! 今度会ったら殴るくらいで勘弁してやる! ウォートホッグ各車! 十分な砲撃だったが気を抜くな! これで全滅するほどフォーリナーは甘くない! 各車赤外線センサーで照準! ダロガやヘクトルの撃ち漏らしを逃すな!!』
戦車部隊ウォートホッグの隊長は相当頭に来てるようだが、とりあえずは戦場に集中する。
簡易レーダーを見ると一見全滅したかに見えるが、この激しい爆撃では取り逃していると考えるのがEDF兵士の常識だ。
事実、少しずつ追加の敵をセンサーがキャッチしていく。
『はっ! 新たに3時方向よりヘクトル複数確認! 砲兵型です! チャージはまだですが、こちらに砲身を向けています!』
高所に登り、狙撃型レーザーライフルで偵察していたルナティックレイの一人が報告する。
『あらら。補足されちゃったねぇ。ホエール、狙撃出来る?』
『無茶言うな! ここから何km離れてると思ってる!? ビーコンを撃ってくれ!』
プレアデス小隊のエアレイダー保坂少佐は、上空を旋回する大型対地攻撃機、DE-202ホエールに無線するが、ホエール側の照準は精度が低く、単独での狙撃には無理がある。
「『だよね~、うん、一応聞いてみただけさ』よし、宮藤君、頼んだ。インターの道路を上がって見晴らしのいい所までよろしく」
プレアデス小隊の車輛グレイプのドライバー宮藤軍曹に、保坂少佐が狙撃位置を伝える。
「インターの道路って砲撃で所々崩れてるんですけど! しかも巨大生物とかそこらへんに固まってるんですけど!!」
「大丈夫大丈夫~。『ホエール、今から移動するから制圧破砕砲で援護して。出来るだけビーコンで指示するから、誤射心配しないでガンガン撃ってくれ!』
『ホエール了解! 破砕砲は空中で弾けて拡散する! 範囲を考えないと巻き込まれるからな!!』
『了解了解~。そこは宮藤の腕次第かな。宮藤君、ミスったら死ぬから頑張ってね~』
「んも~!! この人はホントに~~! やってやりますよぉぉ~!!」
宮藤軍曹は、相変わらずな保坂少佐に答え、グレイプ装甲車を走らせる。
その最中、上面ハッチから保坂が身を乗り出してビーコンを放つ。
1秒後に、上空から制圧破砕砲が降り注ぎ、空中で破砕してまるでショットガンのようにまとめて巨大生物群を吹き飛ばす。
ビーコンを地面に撃てばそこ目掛けて飛んだ制圧破砕砲がγ型目掛けて炸裂し、数体を同時に撃ち落とす。
グレイプは最高速のままドリフトし、破損した道路の端を滑るように進み、最も高い場所で停止する。
「着きました! これで満足ですか!!」
宮藤は、ヤケクソに言い放つ。
保坂少佐の無茶ぶりに鍛えられたドライビングテクニックはもはや凄腕と言って差し支えない。
「うん、満足満足。ここなら……いけるね」
保坂は狙撃型のビーコンライフルに切り替え、七体のヘクトルを正確に狙ってビーコンを発射する。
ビーコンは風や爆風、何より標的の移動も読んだ保坂の凄腕により正確に吸着し、信号をホエールに送る。
『こちらホエール! ビーコンを捉えた! 105mm連装速射砲、ファイア!!』
ホエールの火器管制員が発射装置の引き金を引く。
二連装の砲からは、子気味良い速度で砲弾が放たれ、次々とヘクトルに当たっていく。
同時に何発か、プラズマ砲弾が放たれた。
「やべって、撃たれた。あれは……一発こっち来てるね。宮藤ここすぐ降りて~、辺り一帯吹っ飛ぶよ!」
「急にいわないでください! 相変わらず呑気なんだから~! みんな、かなり揺れるから掴まってて!」
バックしてギアを入れ直し、向きを変え、頭から瓦礫を階段のように下って地上に降りると、急いで場所を変える。
瞬間、砲弾が着弾し、辺り一帯が吹っ飛ぶ。
向こうの味方部隊付近にも着弾したらしく、悲鳴や火災が巻き起こる。
『こちらウォートホッグ! 保坂少佐! ヘクトルはどうなった!?』
『こちらプレアデス。今ホエールが砲撃中さ。もう片付くと思うよ?』
『ちっ、もう少し早ければ……いや、それはいい! だが西の方からも砲兵型ヘクトルが確認されたらしい! すぐ撃破しないと同じ目に遭う!』
『まじ? 戦車部隊で狙撃出来ないのかい?』
『こちらブレイク1代理、それは無理だ! 戦車はダロガに当ててないと押し込まれるぞ! 狙撃部隊を編成して撃てるところで迎撃するしかない!』
『あ~らら。その間にも砲撃されるだろうし、まいったねこりゃ』
『こちらヴィクター1! ダロガは我々が相手をする! 戦車部隊はヘクトルをやれ! 戦車砲弾ならヘクトルの迎撃は容易いはずだ! そちらを優先すべきだろう!』
意見は紛糾し、その間も面制圧で減らしたはずの巨大生物群にじりじりと攻め込まれていく。
そんな中、新たな声が乱入した。
『いや。ここは我らに任せて貰おう』
低く、どっしりと構えたような声は、E-651重戦車”タイタン”の車長のものだった。
同時に、副砲の120mm滑腔砲が陸戦部隊主面の巨大生物やダロガを砲撃する。
『タイタン!? はぁー、やっと来たね! よし、みんな! 急いでタイタンの後ろに隠れよう! あの装甲なら、ヘクトルのプラズマランチャーなんてものともしないさ! 多分ね』
『多分ってなんだ!? より、ヴィクター全機、一時後退する! 去り際に巨大生物を連れて行くなよ!』
『ブレイク1了解! 中隊傾注! ウォートホッグの後ろに張り付きつつ後退だ! ヘクトルの砲撃に気を付けろよ! 敵はお構いなしに撃ってくるぞ!』
『ルナティックレイ! みんな! 次のステージに移行するわよ! 移動中もやる事は変わらないわ! 特に下がる時は隙が出来やすいんだから、自分にも他人にも気を配る事! いいわね!?』
そうして、全員がタイタンより後ろに下がった時、放たれたヘクトルのプラズマ砲弾が直撃する。
青白い白光と、急速な燃焼による火炎が入り混じった爆発がタイタンの前面装甲を覆うが、
「操縦手、被害程度は?」
「表層の対光学装甲への攻撃の為、損害は軽微です!」
その程度の攻撃、陸の戦艦と称されるタイタンはものともしない。
「主砲装填完了! 撃てます!」
「よし! 目標、11時方向のヘクトル五機! まとめて吹き飛ばす。レクイエム砲、てぇーー!!」
タイタン車長、権藤少佐が手を振り下ろし、主砲砲手は引き金を引く。
発射の爆音が鳴ると同時に極音速で砲弾はヘクトルに直撃し、半径70mを巻き込む大爆発を起こした。
むろん、周辺にいた巨大生物やγ型などを巻き込んでの大爆発だ。
爆炎が上空まで高く上がり、離れた歩兵たちにも衝撃波が届く。
『す、すげぇーー! なんて火力だ! 艦砲以上だぜこれは!!』
真っ先に声を上げたのは、派手好きのヴィクター3だ。
レクイエム砲の砲弾には、電子励起爆薬*1”セレウコス”*2が使用されている。
電子励起爆薬を使用する事で少量の爆薬で大威力を有し、大型の砲弾機構に大量の発射薬とロケット推進機構を組み込むことで射程と初速を大幅に向上し、大型砲でありながらギガンテスⅡの主砲の約三倍の高初速を実現している。
艦砲以上と言ったヴィクター3の言葉は間違いではない。
「な、なんて火力だ……これなら、いける!」
「隊長! 周囲の巨大生物がタイタンに迫ってます!」
『周囲の陸戦部隊に告げる! こちらはタイタン車長、権藤少佐だ。タイタンは通常の戦車と同じく、巨大生物の集団に弱い。表層の対光学物理装甲の下に、対強酸化学装甲、二重複合装甲を施しているが、プラズマやレーザー、酸や牙の交互攻撃には対処しきれん。対空機銃も装備されているが空の敵も苦手だ。機銃や副砲で援護を行うので、貴官らは周囲の巨大生物を頼む! ダロガやヘクトルは、タイタンに任せろ!』
タイタンの到着により、陸戦部隊の士気は上がり、大きく戦況は好転した。
登場部隊解説
▼ブレイク1小隊
第三陸戦歩兵大隊-第17ブレイク中隊-第一小隊。
1から6の六個小隊で構成されている。
元々厚木市に駐屯していた部隊で、厚木のダロガ襲撃戦によって半数が戦死している。
その欠員は他の部隊や予備部隊からの補充兵で賄っている為、常に前線を張っていた部隊と比べると練度が低く、若年兵が多い。
ちなみにEDF陸戦歩兵部隊はフォーリナーの襲撃によって中隊の統廃合を繰り返している為数字と創設順序は一致しない。
▼ヴィクター小隊
第72戦車連隊-第711機甲大隊-第四歩行戦闘車中隊-第一小隊。
中隊は、ヴィクター、ウィスキー、エクスレイの三個小隊12機から成る。
ヴィクター1はまだ30代だが戦術学や指揮能力に優れた優秀な指揮官。
ヴィクター2は海外派兵で初期型のニクスに乗ったこともある優秀な古参パイロット。
ヴィクター3は腕は立つがド派手な戦場が大好きの困った若者。
ヴィクター4は軍歴は長いが頭が悪くて万年少尉を自称する女性パイロット。
▼ウォートホッグ小隊
第72戦車連隊-第212戦車大隊-第三中隊。
中隊は、ウォートホッグ、ワイルドボア、バスターブルの三個小隊から成る。
中隊長の郷田大尉は良くも悪くも気性が荒く、保坂少佐を本気で殴り倒したいと思っている。
▼ルナティックレイ中隊
第二降下翼兵団-第三中隊。
フェアリーテイル中隊と同じ兵団。
指揮官は
EDF内でアイドル的人気を誇るウイングダイバーで、部隊内では皆下の名前で呼び合う。
ウイングダイバーには珍しく、歩兵の航空支援を基本戦術とし、武装も中距離装備でひと固めにしている。
▼プレアデス小隊
第2エアレイダー小隊のコールサイン。
グレイプ装甲車一輌、随伴のレンジャー6人、エアレイダー保坂少佐1人で構成される。
グレイプ運転手のレンジャー宮藤軍曹は、いつも困難な指示を出されている。
保坂少佐は誤爆ギリギリな指示を出す為、一部の陸戦部隊からは酷く嫌われているが、その実力は折り紙付き。