全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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日付超えましたねぇ……。
いや、殆ど完成はしてたんですけど、ちょっと書き足してたらなんか長くなってしまって……。

あの、戦闘回ではないのでちょっとクドいかもしれません。


第六十五話 奈落の王(Ⅴ)

――2023年 1:20 EDF太平洋艦隊旗艦 リヴァイアサン級 艦内C.I.C内部 EDF仮設司令本部――

 

『本部、本部! こちらガルー7! 敵の攻撃で、自分を残してガルー隊は全滅! 敵に爆撃の効果は認められません! 撤退の許可を!』

 

『こちらラタトスク1! ”アルデバラン”門倉大尉より攻撃中止の提案が! 超巨大生物の足元で三人の歩兵が戦闘を行っています!』

 

 仮設本部内に、空母から発進した爆撃隊の指揮官が通信を送る。

 

「こちら本部! 攻撃中止を許可! 貴隊以下二個飛行隊は、所定の空母へ帰還せよ!」

 

 榊中将の判断は早かった。

 エアレイダーが攻撃中止を進言するならそれは信じられるし、航空隊に無視できない被害が出ている。

 ただでさえ手探りの状態だ、効果が無いと判断した場合は柔軟に戦術を変えなければならない。

 

 ただ、己の采配で失ってしまった命に、人知れず歯噛みする。

 

『了解! ですが、バゥ・ロードは――』

 

「現在対策を協議中だ! 場合によっては再び飛んでもらう! 整備・補給を完全にした後空母内での出撃準備態勢を維持せよ!」

 

 それでも、使えるものは何でも使わねば日本は護れない。

 重要なのは、失って得たものを無駄にしない事だ。

 

『ラタトスク1了解。全機攻撃中止、帰還に移る!』

 

『アルバトロス2、了解!』

 

『ガルー7、了解しました!』

 

 本部の命令で、36機だったカムイとシリウスは、その数を23機に減らし、空母へ戻ってゆく。

 

「状況を確認する! 通信をアルデバランにつなげ!」

 

「了解!」

 

 通信士官の鹿島中尉が、機器を操作して通信を繋げる。

 

「こちら本部! アルデバラン、状況を知らせろ!」

 

『アルデバランより本部! 敵超大型種は、恐らく、体毛の中にβ型通常個体を潜ませています! 奴らが投下した爆弾やミサイルを空中で迎撃している為、爆撃での撃破は困難と判断しました!』

 

「なんだと……!? 奴らにそんな習性が……?」

 

 β型通常個体が爆撃を迎撃して防いだというのは、聞いた事もない話だ。

 無意識にルアルディ中尉を見ると、激しく首をぶんぶんと振る。

 閲覧出来た資料は一部だけだった為、彼女も初耳だろう。

 

「榊司令! スカウト4から報告! 内容は概ね大尉と一致しています!」

 

 鹿島中尉がスカウト4からの報告を伝える。

 疑った訳ではないが、信頼性の高い二種の情報源が言うからには、見間違いという事もないだろう。

 

『――榊司令。作戦を、タイタンによる中近距離砲撃にへ変更する事を具申致します!』

 

 門倉大尉が代案を提案する。

 空爆を諦め、地上部隊での戦闘に切り替える、と。

 

「根拠は?」

 

 促す榊中将に、門倉大尉が言葉を続ける。

 

『はっ! 奴の迎撃方法の性質上、高初速かつ近距離の砲弾は物理的に迎撃が間に合わないかと考えます! 奴の糸による迎撃には、感知から糸の射出まで若干の誤差があるように見えました。であれば、糸の極大放射による迎撃が間に合わない距離と速度で砲撃を加えれば、直撃を与える事も可能かと! 加えてタイタンの他に、現状奴と真正面から撃ち合える程の装甲と火力を備えている戦力はありません! どうか検討を!』

 

 一見利にはかなっている。

 だがタイタンを戦場から離すのはリスクが高い。

 自走状態ではたどり着くまで時間が掛かるし、今から空輸というのも考え難い。

 その戦術が本当に有効かすぐに見極める必要がある。

 

「ルアルディ中尉! 門倉大尉の案を軽くシミュレートできるか!?」

 

「はい! 例によってデータ不十分ですが、なんとかやってみます!」

 

 榊中将の無茶ぶりに、ルアルディ中尉が笑顔で答える。

 頼もしい限りである。

 並みの分析官なら匙を投げる所だが、それでも彼女は少ないデータから推論で確度の高い結果を導き出す。

 

「永崎中佐! タイタンがバゥ・ロード砲撃可能地点まで移動するのに、だいたいどれぐらいかかるか算出しろ! ルアルディ中尉のデータも参考にな」

 

 現地の地形、戦闘状況、タイタンのスペックと実際の状態、移動経路など含めて算出を行う。

 

「了ー解ぃ。やれやれ、こりゃまた滅茶苦茶な状況になってきましたねぇ。ただどちらにせよすぐにはたどり着けませんがね。知っての通り先のタイタン空輸時に、輸送機ノーブルに少なくない被害が出ていますし、アンカー落下の影響で、今亀岡市と京都市を結ぶ国道付近には、γ型を含む小規模の巨大生物群が確認されてますからねぇ。手っ取り早く空から、って訳にもいかんのですよ。つまり、陸路一択という訳です。バゥ・ロードの足止めをしていないと、下手をすれば一生追い付かないという事になり兼ねませんが、それはどうするおつもりで?」

 

 バゥ・ロード移動速度データは手元には無いが、スカウトの映像を見るに、跳躍速度で考えるととてもタイタンには追い付けそうにない。

 

「アルデバラン。タイタンの移動はリスクを鑑み陸路での自走になる。仮に実行するとして、タイタンの到着にはかなりの時間が掛かる。映像から相対速度を考えるに、向こうが逃げた場合追撃は不可能と考えるが、何か対策はあるか?」

 

『榊司令、その為に三名の歩兵をバゥ・ロードに向かわせました。彼らが時間を稼いでいるうちに、どうかご裁可を』

 

 歩兵三名。

 その言葉に司令部内に動揺が走る。

 

「歩兵三人ぃ!? それは、自殺しに行くようなものじゃないかぁ!? ……いや、失敬失敬。しかし、門倉大尉ともあろうものがそんな判断を……」

 

 永崎中佐は珍しく大声を上げてしまう。

 常識で考えれば、あの超大型個体に対し、三名の人間では差がありすぎる。

 

 しかも、敢えて伝えはしないが一人は402演習場の警備兵で、もう一人は先日初陣を経験したばかりの新米フェンサーだ。

 平均的な兵士であっても、恐らく10分と持たないだろう。

 

『中佐。本当に失敬極まりない発言は以後ご自重されますよう』

 

 永崎中佐の心無い発言に多少の怒りを覚えた門倉大尉は、静かだが強めに言い放つ。

 

『ごほん。こちらは、第11陸戦歩兵大隊指揮官の伊勢原少佐です。負傷が酷く、ほとんどの会話を彼に任せていました。足止めは私も許可しました。一時的に三人の指揮を預かった兵士の名は、中将も聞いた事があるはずです』

 

 伊勢原少佐が通信に混ざる。

 その言葉は流暢ではあったが掠れ気味で、重度の負傷である事が分かる。

 

「なんだと? どういうことだ?」

 

『彼の名は、仙崎誠伍長。あのレイドシップを世界で初めて撃墜せしめた男です。彼ならば確かに、何かを成せる力があると、ほんの少しの間ですが共に行動した私は判断しました』

 

 仙崎誠。

 その名は、先刻砲撃を要請されたときにも耳にした名前だ。

 あの状況下で無事生き残っただけでなく、またも重要局面の渦中に存在していた。

 その男はレイドシップを撃墜し、四足歩行要塞(四つ足)出現・プラズマ砲台破壊の際にも居合わせたそうだ。

 

 そして、荒瀬軍曹も属するレンジャー2小隊の歩兵で、今まで常に最前線で戦い続けたもはや歴戦の兵士。

 しかも、彼はフォーリナー襲撃時には民間人であり、元EDF兵士ではあったものの、正式にEDFに戻る前から荒瀬の指揮下で、なし崩し的に銃を取り戦たったのだという。

 

 彼ならば。

 そんな思いが、榊の心にも表れた。

 

「……分かった。足止めの任務を、彼らに託そう。成功した暁には、たっぷり勲章を与えてやらんとな。――永崎中佐、ルアルディ中尉、分析は終わったか!?」

 

 通信を終え、二人を振り返って叫ぶ。

 

「はい! 概算ですが、シミュレートの結果、タイタンでの攻撃は十分有効かと思われます! 砲撃可能位置は、相対距離900m以内の至近距離です!」

 

 900m。

 タイタンの射程が5km超ある事と、双方の大きさを考えると、まさに至近距離だ。

 

「バゥ・ロードの現在位置が大きく変動しない事を前提としても、凡そ一時間半はかかる計算ですねぇ。その間、歩兵たった三人で時間を稼ぐと? やはり無謀すぎるのではと小官は愚考致しますが」

 

 永崎中佐が冷静に、そしてやや冷ややかな目線で考えを述べる。

 安易に希望に寄り添わない、徹底したリアリストではあるが。

 

「かと言って他に手はねぇだろう。足止めの手段はともかく、ここであのタイタンを使うのが最も現実的だ。航空部隊の多重絨毯爆撃って手もあるがリスクが大きすぎる。砲弾を次から次へとブチ込んでも何とかなるだろうが、この後の作戦が続かねぇ。通常戦力の大移動はもってのほか! ふん、タイタンがいなきゃァ詰んでる状態だぜこりゃ」

 

 秋元准将が、乱暴な口調で投げ遣りに言う。

 

「他に手はない、ねぇ。まったく本当にその通り。まぁ、その残された手というのは、私は京都放棄・大阪工廠移転だと前々から言っているのですが」

 

 永崎中佐の意見は、一見して逃げ腰のように見えるが、一般的な高級軍人がこの様相を見れば誰もが迷わず撤退を選択する。

 むしろ、永崎中佐ですら日本国内にとどまり続ける腹なのだから相当肝が据わったものである。

 

 対して、榊中将の京都での防衛に固執する様は、諸外国からするとはっきり言って狂気の沙汰である。

 現に彼我の戦力差も読めない稀代の無能、と思っている国が殆どだ。

 

 しかし日本防衛を目標とするなら、京都は何としても抜かせてはいけない。

 永崎中佐の考え通り京都を放棄、大阪工廠を移転するとして、その間の時間的ロスは避けられない。

 

 候補地の北九州重工業地帯の他、各地域に設備を移転する間、生産は停止し、物資不足はより深刻なものになる。

 京都から、新たに本拠地と定める九州地方までの地理的猶予はわずかに取れるが、満足な物資のないその戦場は惨憺たるものだろうというのは、想像に難くない。

 更に歩行要塞攻略にも踏み切れず、上部のプラズマ砲台が復活すれば距離的猶予は消え失せる。

 

 バゥ・ロードをここで諦めるなら状況は更に悪化し、ここでバゥ・ロードの迎撃能力を超える飽和砲撃を行った場合でも砲弾備蓄が底をつき、満足な防衛は出来ない。

 仮に九州防衛に成功したとしても、そこから関東までが巨大生物で埋め尽くされることを考えると、本土奪還は今よりも更に遠のくことになる。

 

 一方、現状は現状で絶望的だ。

 関東から押し寄せるフォーリナー群に対抗すべく、京都と奈良を結んだ”鉄の壁”で敵群を押しとどめはしたが、度重なる予測不能な地中侵攻、降り注いだレイドアンカーによって部隊は予想を超える打撃をこうむり、その内最も激しい激戦区として京都南ICで複数の部隊が必死に敵の漸減を行っている。

 

 そんな中で現れたバゥ・ロード。

 これを放置すれば大阪壊滅は必至。

 迎える部隊は無く、欧州で破壊の限りを尽くした奈落の王に相対するはたった歩兵三人。

 正確な数字は不明だが、欧州ではもう何千何万と殺したのと同個体に、たった三人。

 

 そんな手段に賭けるのは到底正気ではない。

 

 拠点を九州に移動すべきと考える、永崎中佐。

 飽くまで京都防衛をすべきと考える、榊中将。

 

 どちらが正しいのか、それは、結果のみが示す問題だ。

 

「現状、後の事を考えると、代替可能の有効な手はない……! よし、大尉の案を採用する! 鹿島、通信をタイタンに繋げ」

 

 作戦方針を決定した後、タイタンに直接指示を出すべく、鹿島中尉に指示する。

 

「了解! 繋ぎます!」

 

「本部より重戦車タイタン。新たな命令を下す。君たちの任務は、亀岡市に陣取っている敵超大型巨大生物、通称バゥ・ロードとの交戦、及び撃破だ。よって、現戦域での戦闘行動を中断とする! データ受信後、即時指定座標へ移動! 繰り返す、即時指定座標への移動開始せよ! 移動中に小規模巨大生物群との遭遇が予想されるが、タイタンなら問題はない。ただしレクイエム砲の使用は禁ずる。同様に、超大型巨大生物に関しては射程距離内であっても相対距離900mまで発砲するな。これはバゥ・ロードに確実な有効打を与えるための命令だ。相対距離900mまで移動後、バゥ・ロードに向けレクイエム砲での連続砲撃を行い、これを撃破しろ! なお現地では三名の歩兵が時間稼ぎと足止めを行っている! 直ちに急行せよ!」

 

 現在京都南ICの激戦区で、レクイエム砲による敵機械兵器の殲滅を行っていたタイタンに通信を送る。

 その周辺でも糸の数本が落下しているので、戦場ではかなり騒ぎになり、鹿島中尉が概要の説明を行っていた。

 その為、402演習場からバゥ・ロードが地中より出現したことは周知の事実だ。

 

『こちらタイタン! 委細了解した! この戦場を離れるのは心苦しいですが、デカブツに一発ぶち込んで見せましょう!』

 

 この急な命令をタイタン車長、権藤少佐は快諾し、すぐに戦場を離れた。

 一方で現場ではタイタン離脱にかなりの混乱が起こったが、十数キロ先から糸を飛ばしてくるという規格外の怪物の撃破を願って、快く送り出した。

 

「……まさかご裁可なされるとは。本当にたった三人で足止めが可能と思っているのですか?」

 

 永崎中佐は榊中将に呆れの混じった言葉を投げかける。

 中佐は続ける。

 

「司令、タイタンを向かわせる事自体は私も賛成ですが、それを確実にすべき要点を決めぬまま決定なされたことは、んー……、控えめに言って考えなしが過ぎるのでは、と」

 

「オイオイ中佐、中将に対してあんまりな口の利き方だぜそりゃぁ……。だがとにかく、小規模な足止め部隊をいくつか編成すべきでしょう。撹乱できる高機動の部隊を編成して――」

 

「――そんな部隊がどこにいる……! そちらはそちらで現実が見えていないようだが、タイタン離脱の影響で、特に南IC付近からの戦力抽出でもすれば、前線が崩壊するぞ。ここを突破される事も、同時に大阪へ危機をもたらすことになる。それ以外の地域など、より少ない戦力で何とか踏みとどまっている所しかない。元々、九州方面からの援軍到着まで耐える防御的作戦だ。余裕など、どこもありはしない……」

 

 今も各地点は、ギリギリ持っている状態だ。

 タイタンが抜けたことによって、それはより崩壊寸前と言える。

 まして中途半端な増援は、徒に死者を増やすだけになり兼ねない。 

 

「それが無理なら、とにかくタイタンを一刻も早く奴に砲撃させるしかない。レクイエム砲の射程は5km以上あるんだろ? 元々艦砲だ、町一つくらいは飛び越えて狙えるだろ。仮に砲が当たらなかったとしても、歩兵の援護くらいには……」

 

 秋元准将は、必死に頭を捻って何とか歩兵を援護する案を練る。

 だが、そんな簡単な思いつきでは現状は覆らない。

 

「あの……、砲撃開始地点を直前にしたのは、主砲を確実に標的に当てる為ともう一つ。タイタンへの被害を少しでも減らす為です。もし、有効射程に入り次第砲撃を行えば、標的の迎撃を誘発しタイタンの主砲残弾数的に仕留めきれないばかりか、高い可能性でタイタンが先に撃破されてしまう計算です。それを鑑み、最も成功率が高いパターンが、相対距離900m以内での砲撃、かと……」

 

 ルアルディ中尉も、おずおずと先ほど計算した内容を説明する。

 正論ではある。

 タイタンが撃破されてしまったら、現状打つ手は無くなる。

 残されるのは、貴重な砲弾を投入しての飽和砲撃のみ。

 それは、関東を埋め尽くす巨大生物や、四足歩行要塞を歩兵攻撃のみで相手をする、という事に等しい。

 

「くそ! 分かっているさそんなことは! だが、足止めが全滅すれば奴は大阪へ一直線だぞ!? ルアルディ中尉が計算するまでもなく、奴が大阪へ一直線に向かえばタイタンは成す術もない!」

 

「英雄だなんだとか言って、その仙崎とかいう男を司令が買っているのかわかりませんがねぇ。希望的楽観に、英雄的幻想を重ねた――」

 

 秋元准将に続いた、永崎中佐の否定的な意見を遮って、鹿島中尉の声が上がる。 

 

「――司令! スカウト4より報告! 攻撃により、足止めを行っていた三名のうち、二名が重傷! もはや戦闘続行は不可能との判断です! 現在402演習場の残存兵士二名が負傷者の回収を行っています!」

 

 続き、柊中尉の報告も。

 

「バゥ・ロード反転、大阪方面に進撃を再開しました! 司令、もう……」

 

 絶望的な空気が流れる。

 永崎中将がため息を吐き、秋元准将が片手で顔を覆い、榊中将が両手で司令官用の机を叩く。

 

 もはや、バゥ・ロードを止めるものは何もない。

 仮に初期の段階で部隊を送ったとしても、間に合っていなかっただろう。

 それどころか、京都側の戦線も崩壊した可能性まである。

 

『本部! こちらスカウト4! 我々も戦闘に参加させてください! このままでは大阪は……、日本は!!』

 

 偵察・観測を任務とするスカウト4が声を上げる。

 

「本部よりスカウト4! 要請を却下する! 貴隊の武装は戦闘に耐え得るものではない! 引き続き偵察を続けろ!」

 

『くッ……、了解ッ!! くそッ!!』

 

 榊中将は要請を却下。

 彼らの装備は偵察・観測機材が多くを占め、戦闘のノウハウもない。

 加えて、彼らをここで失う事は司令部にとって目と耳を潰されるに等しい。

 それは絶対に許可できない。

 

「榊司令、こうなってはタイタンはもはや追い付けません。我々の、敗北です……」

 

 秋元准将が静かに重く言った。

 だが、榊中将は、深く息を吸うと、決意を新たに目を見開いた。

 

「――日本全ての砲戦力を結集して、奴をここで叩くッ!! 時間差砲撃で、絶え間なく奴に砲弾を叩き込め! もはや明日の備蓄を心配していられる状況ではなくなった! 直ちに――」

 

「――待ってください!! バゥ・ロード、進撃停止! 再び戦闘状態に移行しました!」

 

 鹿島中尉の言葉に、動揺が走る。

 

「なッ、なんだと!? いったい誰が戦っている!?」

 

『本部! こちらスカウト4! 歩兵が、一人の歩兵が、バゥ・ロードと再度交戦中! は、激しい攻撃を回避しつつ、損害を与えています! これは互角……、いやそれ以上です! バゥ・ロードから這い出たβ型も次々撃破し……、み、右前脚と右目に攻撃を集中しているようです! バゥ・ロードが、体の各所から体液を流出させています!』

 

 偵察任務を継続したスカウト4が、驚愕と困惑を同時に表しながらも、とにかく事実を懸命に伝える。

 

「馬鹿な……!? 一人で、たった一人で、あの化け物と正面からやり合っているだと……!?」

 

「なんという戦闘能力……、そんなことがあり得るのかぁ……?」

 

 秋元准将と永崎中佐が、それぞれ驚愕を口にする。

 

「信じられん……! 足止めのみならず、それほどの損害を与えているとは……! スカウト4。その兵士の名は分かるか!」

 

 聞きつつ、榊中将には確信があった。

 

『彼は……仙崎伍長です。レンジャー2所属の、仙崎誠伍長です』

 

「やはり、彼か……! 砲撃作戦は中止とする! タイタンの到着を急がせろ! 彼が踏みとどまっている間に、何としても辿り着け!!」

 

 これを以って、榊中将は仙崎たった一人に全てを賭ける事を、己の中で決定する。

 まともな司令官ならば、日本滅亡を掛けたこの戦いならば、躊躇いなく一人を巻き込んででもありったけの砲弾を叩き込み、あの絶望を粉砕するはずだ。

 

 しかし、それでもその後待って居るのは支援砲撃の枯渇した戦場で、本土奪還の絶望的地上戦だ。

 そこには、とても今よりも希望があると断言はできない。

 

 なればこそ、榊中将は仙崎に全てを賭けた。

 

「鹿島! 仙崎伍長と通信は可能か!?」

 

 榊中将は、直接仙崎との通信を希望した。

 

「いえ! 通信を試みましたが応答ありません! 通信機能もしくはヘルメットを喪失している可能性があります」

 

「そうか……。よし、その場所に補給コンテナを等間隔で撃ち込め! 例え奴が反応したとしても、時間差なら全てを迎撃する事は叶わないはずだ! 通信が不可能でも、その場にいればコンテナの存在には気付く……! 絶対に、彼を死なせてはならんぞッ!!」

 

「了解ッ! 艦隊の補給艦に打診します!」

 

 戦力を送れずとも、こうして援護する事は出来る。

 各々がやれる事をやる為に、全力で動いた。

 

 




はい、対バゥ・ロード会議スペシャルでした!

いやーーー~~~、これ! これがやりたかったのよ!
あの強敵を相手にたった一人で戦ってる!?的な!
これこそが地球防衛軍だよね! いやー満足!

そしてこうやって仙崎の名前も軍上層部や他の友軍とかに”英雄”として知れ渡っていくわけですよ。
いや~主人公してるね~。

と、作者の中では勝手に思っています。
読んで楽しいかは分からんので、気軽に感想下さい!
つまらん! と言われても勝手に書きますけどね笑
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