別に年内に合わせる必要性はまったく無いんですが、キリがいいとなんか気分もいいじゃないですか。
という訳で、アイアンウォール編、残すところあと一話です!
盛り上がって(るつもり)来ましたーー!!
――2023年4月1日 2:30 亀岡市廃墟――
低空を飛行する六機のカムイが、三列に並び機銃掃射を行った!
一瞬だが、雨あられと降り注いだ機銃掃射は、多くがバゥ・ロードに直撃し、我々が殆ど手出しできなかった背面を穴だらけにした。
「か、門倉大尉!?」
「よぉ! 待たせたな、仙崎! 約束通りちゃんと戻ってきたぜ! よく生き残った! 最後はちょいとヒヤッとしたが、まぁ仲がよさそうでよかったじゃぁないか!」
車輛が確保できなかったのか。
市販の軽自動車から現れたのは、門倉大尉だった。
なお、いくらか被弾したようで、運転席のドアは既にない。
「んだよおっさんそのボロボロの車!! 無茶しやがって! ……んだがま、助かったけどよ!」
御子柴少尉は笑い飛ばすと補給を終え、補給コンテナを用済みよばかりに蹴り倒し、その場から噴射して離脱する。
直後、バゥ・ロードの砲撃。
蹴り飛ばしたコンテナの周囲は、極太の糸が次々着弾し土煙があがる。
「いやぁ、殆ど命令違反でコッチに来たもんだからな? 堂々と輸送車とか借りる訳にもいかなくてなぁ! コイツを拝借してきたわけだ! ……スピカの奴には感謝しなければな」
車から降りると門倉大尉は、素早い身のこなしで手に持つ
ビーコンガンを改造したそれは、どういう原理か粘着起爆弾でありながら狙撃銃並みの精度と射程を持つ強力な兵器であり、しかし起爆に専用信号を使用するのでエアレイダーの装備でしか使えない、という話だ。
三発の起爆弾を射出後、門倉大尉がスイッチを押すと、小規模な爆発が三回。
起爆装置や信号受信器に場所を取られた爆弾の火力は決して大きくはないが、我々の付けた傷跡を正確に狙った爆破で、バゥ・ロードが大きく仰け反った。
「今だッ! やれッ!」
「イエッサー!! ゆくぞ瀬川!」
「任せなさい!」
門倉大尉の作った隙に、私と瀬川が同時に動く。
私は駆け、瀬川は飛び、ほぼ同時に攻撃を行う。
レイピア・スラストの一点連続照射と、ガバナーとスパローショットの二丁同時射撃。
大量の散弾とプラズマアーク刃が肉の抉れた右前脚付け根の粘膜を削り取る。
「効いてるの!?」
「恐らくな!!」
だが奴が姿勢を少し変えると、弱点はあっさり離れていく。
「追うわ!」
「待て! 糸が来るぞ!」
「やらせんさ!!」
門倉大尉の声と同時、傷口で爆発が連続して起こる。
恐らく、いつの間にやら射出していた粘着爆弾だ。
堪らず、バゥ・ロードは跳躍して後方に下がるが、門倉大尉は不敵に笑った。
「ふっ、もはやどこへ逃げようが遅い! 『ラタトスク! ビーコンは打ち込んだ! やれ!!』」
『ラタトスク1了解!! 全機突入! 105mm砲、ファイアッ!!』
我々の上空を、高速・低空で飛翔したのは、EDF海軍飛行隊の艦載機。
EJ-24戦闘機C型艦上汎用機、シリウスだ。
4機のシリウスが一直線に飛び、本来ならば装備しないであろう戦闘機としては巨大な砲を機首から発射した。
四発の105mm誘導砲弾は、エアレイダーの放ったビーコン信号を受信し、高速で飛翔する戦闘機から放たれたとは思えない精度で四発全てがバゥ・ロードの右前脚付け根部分に直撃する。
歩兵の攻撃では無しえない衝撃と体液の噴射が、その威力を物語っている。
『攻撃……成功! 全弾命中しました!』
『凄い! ロックオンすらしていないのに! これがエアレイダーの力か!』
『ふぅ、あんなデカい砲を機首につけろと言われた時には馬鹿かと思ったが、存外できるもんだな』
『無駄口を叩くな! 迎撃来るぞ! 各機散開! 回避行動に移れ!』
『『『了解ッ!!』』』
バゥ・ロードが目障りな航空戦力を認識し、迎撃の糸を放射する。
が、一度攻撃を目の当たりにし、仲間を失ったラタトスク隊の4人にはもはや通用しない。
それぞれ散開し、計器ではなく目で見て不規則な糸の軌道を予測し、絶妙な機体制御で攻撃を回避する。
「御子柴! 今だ! 隙を逃すな!!」
声を上げる。
移動したことにより、私や瀬川ではバゥ・ロードの弱点を狙えぬが、
「分かってるって! そぉら地上ががら空きだぜっ!!」
推進剤の水平噴射に於いては、ウイングダイバーより上の瞬発的高機動を発揮し、御子柴が右脚付け根を狙う。
「いっけおらぁぁッ!!」
御子柴は先ほど武装を換装したのか、両肩部にフェンサー用汎用ロケットランチャー”キュロスⅡ”を、両腕にNC103ハンドキャノンを装着し、全武装一斉砲撃。
フェンサー背面装置の自動装填機構で、高速ロケット弾と20mm徹甲対物砲弾が連続で叩き込まれる。
だがバゥ・ロードは未だ健在で、御子柴に向かって糸の砲撃を行う。
「ちっ! 元気だなぁおい!! 次頼むぜ!」
「私が行くわ! このぉぉッ!!」
御子柴が射撃を止め立体的に跳躍して回避を行うと、その糸の下をくぐるように瀬川は飛行し、中距離で連鎖雷撃銃イズナ-Aを発射。
連続して放たれる電撃に似たプラズマエネルギーは御子柴程の打撃は与えられないが、飛び散る糸の切れ端や酸を迎撃し、瀬川に道を作った。
「喰らいなさいッ!! この、バケモノ蜘蛛ッ!!」
バゥ・ロードの懐に侵入し、レイピア・スラストを一点照射。
肉体内部を覆っていた粘膜はプラズマアークの刃に斬り刻まれ、ついに毒々しい色に覆われた筋線維のようなものが見える。
が、同時にPEユニットが警告音を発する。
廃熱限界だ。
ここで限界まで撃つか、撤退して冷却に移るか。
一瞬の逡巡だっただろうが、視界の端に私を見たことで瀬川はすぐに撤退した。
「あとお願い!」
「任された!! 御子柴ッ!!」
「どうなっても知らないぜ! にーちゃんよぉッ!!」
私は瀬川と交代し、更に私の一声で御子柴が回り込む。
武装をその場で放棄し、走る私を受け止めると、そのまま――
「おッ、らぁぁーー!!」
「な、なにやってんのぉーー!?」
私をぶん投げる御子柴、驚く瀬川。
私は空中を遊泳しながら、手持ちの9mm拳銃で軌道修正。
そのまま、バゥ・ロードの右前脚上の体毛を掴んで着地した。
「ぬぁはは! 思った通りだ! もう迎撃を行う子分は残っていないようだな! ならば、死ねぇッ!!」
即興で考えた作戦にしては上手くいったようだ。
私は、脚の付け根にガバナーを突き付けて、連射した。
門倉大尉の粘着爆弾の内部爆発、シリウスの105mm砲の直撃、御子柴の一斉砲撃、瀬川のレイピアの照射を受けて、粘膜は消失し、筋線維はズタズタだ。
だがそれでも、まだ脚を動かし、跳躍の構えを取った。
「ふん! もう遅いわッ!!」
表面を削り、効果十分と判断した私は背中の超兵器に武器を切り替える。
EDF開発部が開発した対巨大生物群体殲滅用面制圧兵器。
サッカーグレネード、と名付けられたものである。
それは20発もの小型吸着榴弾を同時射出し、4秒後に時限起爆するというものだ。
群体殲滅用の名の通り、本来はこのような運用を想定されたものではない。
が、私は躊躇いなく引き金を引く。
20発の粘着榴弾が全て剥き出しの筋線維の吸着し、私はこの場を飛び降りる。
無意識に4秒を数え、振り向くとバゥ・ロードは発射態勢に入っていた。
「ふん、弾けろ」
同時、脚部から凄まじい爆裂音が響き、右前脚は根元から千切れ吹き飛び、バゥ・ロードは本体を支えきれず初めて地にその身を崩した。
「うおおお!! やったな仙崎すげぇぜ!」
「凄いけど無茶しすぎじゃない!? なんなのその銃!! 銃なの!?」
「がっはっは! まさか本当にやってのけるとはなぁ!! 御子柴との話を盗み聞いたときは正気かと思ったが!」
「聞いていられたのですか!! いや、私もサッカーグレネードとやらを発見して咄嗟に思いついたので色々と粗はありましたがなんとか!」
四者それぞれ歓喜の声を上げる。
だが、油断はしない。
所詮は、六つある脚の一つを千切った程度だ。
煙が晴れ、バゥ・ロードがゆっくりと体を起こす。
「で? この後はどうする? 航空隊は燃料の都合もあるし、そう何度も射撃は出来んぞ?」
「そのグレネードはもうないの?」
「あったとしても同じことそう何度も出来ねぇだろ……投げるだけなら簡単だけどよ」
「……いや。御子柴の話が本当なら、間もなく時間のはずだ!」
各々、リロードしたり冷却を行ったり、航空隊との調整をしつつ態勢を整えると、我々と同じように立ち直ったバゥ・ロードが再度糸の放射を行う。
もはや手慣れた我々で、各々何とか回避するが(門倉大尉は、瀬川や御子柴のような機動も持たず、私のような回避技能も持たないが、私にくっついて安全地点を見つけ出し、難を逃れた。
《こちら本部!! バゥ・ロードと交戦中の歩兵達へ! まもなくタイタンが射程内へ到達! 10分だ! 10分後に砲撃を行う! それまで何としても持ちこたえろッ!!》
本部からの通信が届く。
希望は見えたが、しかし我々も限界が近づいていた。
勘違いをしていたのだ。
侮っていたのかもしれない。
脚を破壊すれば、例え一本だろうと光明は見えると。
確かに、跳躍の距離も頻度も少なくなったかもしれない。
だが、奴の脅威はその圧倒的な攻撃力にこそあったのだ。
「御子柴! 避けろッ!!」
「わぁってる! くそ! こっち見んな!!」
確かに、脚を一本失ったことで、バランスを失い、動作は目に見えて精彩を欠いていた。
しかしそれ以上に、我々の方にも限界が来ていたことを思い出す。
「躱せんだよ、こんなん! うわっ!!」
「御子柴!?」
御子柴が、小規模な爆発と共に転倒した。
飛散した微量な酸が蓄積し、装甲を溶かして跳躍ユニットを破壊したのだ。
糸は回避したが、御子柴は機動力を失った。
「ちっ! 酸飛び交う環境での連続高機動戦闘では無理もなしか……! 『アルバトロス! 機銃掃射プランW3! 突入方位3-1-5から銃撃の雨を降らせろッ! ラタトスク! ビーコン信号送信! アルバトロスと10秒交差で105mm砲斉射!!』」
『アルバトロス2了解!
御子柴へ追撃を掛けようとするバゥ・ロードに、銃弾の雨が降り注ぐ。
即座に標的を変更し、飛び去るカムイに発射口を向けるが、
『ラタトスク全機! 最後の砲撃だ、気合を入れろ! 速度最大、捕捉されるなよ!? 105mm砲、発射ッ!!』
105mm砲という無理やりな追加武装を装備させられたにもかかわらず、相変わらずの高速でバゥ・ロードを抜ける。
通った後は四発の砲弾が既に直撃した後で、バゥ・ロードは煙に包まれている。
『こちらアルバトルス2! アルデバラン、済まないが燃料がもう持たない。一度空母に帰還する』
『ラタトスク1よりアルデバラン。こちらは砲弾切れだ。生憎、最低限機動性を確保する為、余計な武装は装備されていない。機銃すらな。こちらも一度、空母へ帰還する』
『アルデバラン了解。なに、燃料も弾薬も、全て計算ずくだ、気にするな! 後は地上部隊に任せておけ!』
最後の打撃を与えた後、航空隊は上空から飛び去って行った。
これで門倉大尉も最大の攻撃力を失った。
「はぁ、はぁ、……うっ」
そして瀬川も。
飛行ユニットによる機動の最中、着陸時に頭を抱えてよろける。
「瀬川! 大丈夫か!? くっ、砲撃が来るぞ! こっちだ!」
私は瀬川を無理やり抱え、走り出すが、間に合わない。
「くッ!」
「ッ、ああもうッ! このぉーーッ!!」
瀬川は抱えられたまま飛行ユニットを起動し、短距離噴射でなんとか難を逃れた。
が、その直後に倒れる。
「瀬川! 無茶するな! しばらく大人しくしているのだ!」
ウイングダイバーの装備する飛行ユニット、およびその動力源プラズマエネルギーユニットは、彼女らの装備する特殊なヘルメットを介しサイオニックリンクと呼ばれる制御を行っている。
女性だけが持つ特殊な脳波でエネルギー出力を制御しているそうだが、長時間の使用は酷い頭痛を引き起こす。
そもそも、402演習場に避難していたのもそうした理由もあるのだろうが、その上更にこの激しい戦闘だ。
限界を迎えるのも無理はない。
「仙崎、撤退すべきだ。時間は十分に稼いだ。脚も一本吹っ飛ばした事だし、タイタン到着まで奴が逃げ切れる可能性は少なくなった! 俺はもうそれほど役に立たんし、二人も限界だ。そしてお前もな!」
「分かっています! 撤退すべき状況ですが、ただ!」
私は瀬川を、大尉と御子柴は自力で駆け出すが、バゥ・ロードの糸の砲撃は相変わらず我々を襲う。
「ちっくしょう!! アイツ俺達を無視して大阪へ向かうんじゃなかったのか!? ぜんぜんこっち狙ってくる――ぐああぁぁッ!!」
「本部! こちらはもう長くは持たないタイタンはまだ――ぐはぁッ!」
「ちっ!! 御子柴! 門倉大尉ッ!!」
機動力を失った御子柴と、本部との通信を行っていた門倉大尉が糸の砲撃を受ける。
二人とも直撃は避けたようだが、余波を喰らうだけでも歩兵にとっては致命傷だ。
「あっ……たま痛いなもうっ!!」
担いでいた瀬川が突如癇癪を起し、ヘルメットを脱ぎ捨てた。
「瀬川!? 何を」
「これも、邪魔! あんたに背負われてるのも悪くないけど、そんな屈辱味わうくらいなら自分の足で走るわ! 今までだってユニットが無くたって、何とかしてきたもの! 銃貸しなさい!」
背後のPEユニットごと投げ捨てる。
瀬川は私から離れるが、走りながらもその様子はふらつき、とても戦闘に耐えられる様子ではない。
それに言っている事も支離滅裂だ。
私は無言で瀬川の手を掴んでひたすら走る。
「ちょわっ、なに考えてんの!?」
「それはこちらのセリフだ! 事ここに至ってはもはや逃げるしかない! 今更歩兵銃の攻撃でどうにかできると思ったのか!? 状況を見ろ!」
「うぅっ、それは……、そうね……」
正論を叩きつけてぐうの音も出ない瀬川。
しかし、バゥ・ロードは逃げる我々に対し追撃を止めない。
「また来るぞッ!」
糸の砲撃が行われた。
少しばかり距離を稼いだので、糸の砲弾は多少山なりに飛んでくる。
「あそこの建物だ! 建物の陰に逃げ込めッ!!」
よく食料品などが売っているスーパーの陰に皆を誘導する。
直撃が避けられるか、一か八かだ。
極太の糸は容赦なく建物を破壊し、轟音を立てて建物全体が一瞬で崩れ落ち、酸に溶かされ泡を立てながら溶け落ちる。
そして化学反応により内部にあった多彩な可燃物に引火して炎上する。
「皆、生きているか……!?」
私は当然、糸と瓦礫を見切り直撃こそ回避したが、飛び散る酸や糸の欠片などが付着し、蓄積されたダメージも無視できない。
「ごほっごほっ! なんとか無事だ……!」
「……ったく仕方ねぇな……! ここは俺が押さえてやんよ。行け」
ゆっくり立ち上がった御子柴が静かに言う。
「御子柴……、だが――」
「――わぁーってるって! 跳躍ユニットもねぇし、盾もない。パワードスケルトンの装甲だってアレ相手じゃそう持たねぇって。けどよ、”殿を務めるのはフェンサーの役目”だろ?」
その口調は軽い。顔も見えない。
しかし確かに、彼なりの決死の覚悟が垣間見えた。
陽気でふざけているように見えても、彼もまたEDFの誇りある兵士なのだ。
だが、それは誤りだ。
一人を残して撤退したところで、きっとあの怪物は我々を――私を逃しはしないだろう。
だから、ここで残るべきは――
『こちらタイタン! その必要はない。繰り返す、その必要はない! 総員バゥ・ロードから距離を取れ! む? 既に距離は空いているな。ならば良し! 目標が射程に入った。直ちに砲撃を行う!!』
タイタンからの長距離通信!?
まだ先ほどから五分と経っていない、早すぎる。
『レクイエム砲! てぇーーーッ!!』
だがタイタンの主砲は、躊躇いなくバゥ・ロードに振り下ろされた。
バゥ・ロードは音速の数倍で迫るレクイエム砲に反応し、迎撃を行った。
砲弾は直前で迎撃され、余剰となった糸はまだ地平線の向こうのタイタンに容赦なく直撃する。
タイタンとバゥ・ロードの、砲弾と糸の交差する砲撃戦が、始まる!
タイタン到着です!
やっぱ巨大戦車は大型の敵との戦いで力を発揮すると思うんですよ
だって絵になるしね!
サッカーグレネードとはEDF2で登場した武器です。
恐らくEDF5などではスティッキーグレネード試作型と名前を書いて登場していますが使った事ないので不明です。
サッカーグレネードD=スティッキーグレネードαとなっているのですが、それは一発の吸着爆弾に対し、サッカーグレネードは20発の吸着爆弾が拡散して射出されます
よくソラスなんかに使った覚えがありますが、上位武器はまだ出せない上、今時EDF2より出典なのであまり馴染みは無いかもしれませんね。
もっと時代が進んだら、インフェルノ攻略とかで見る馴染みある武器が出せると思うので頑張って進めます!