――約一時間後 4月1日 2:00――
『こちらスカウト1! 周辺のアンカーから巨大生物第12波が出現! α型260、α型亜種120、β型220、γ型80体です!』
『こちらゲイザー1、我々が砲撃で数を減らす! 全車移動開始、前線に出るぞ!!』
絶える事のない激戦の中、更に迫りくる巨大生物群に対し、155mm自走迫撃砲”ブラッカー”13輌が走り出す。
『行くぞ! 砲撃開始ッ!!』
主砲を上の方に向けて低初速の砲弾を打ち出す。
砲弾は放物線を描き、巨大生物群の真上から炸裂する。
13輌から次々と砲弾が放たれ、死骸が爆炎と共に吹き飛ぶが、奴らは進撃の速度を緩めない。
『アンモナイト、ネグリング全車、撃ち方始めェ!! 雀蜂を叩き落せぇッ!!』
稲荷山の第一対空砲兵群の生き残りたちが一斉に対空砲を上に向ける。
そしてγ型に向けて対空砲とミサイルの弾幕が注がれた。
『少しづつ後退しながら撃て! とどまっていると針にやられるぞ!』
『来るな、来るな来るなァーーッ!!』
無数のγ型に対し濃厚な対空砲弾の弾幕が張られ、空中で炸裂した砲弾により多くのγ型がその身を千切られて飛散する。
が、それを潜り抜けて針を打ち出す個体が現れる。
『ぐあああぁぁぁ!!』
『六号車爆散! くそぉー!!』
『ネグリング! ミサイルを打ち尽くしたら後退しろ! 大きな図体では――ぎゃああ!!』
『ヴィクター中隊各機! 前に出るぞ! 対空部隊を援護する!』
『こちらフェンサー・ゾディアーク中隊! 我々は地上の巨大生物を押さえる! 各員中近距離戦用意! 行くぞ!!』
雨の様に針が降り注ぐ地獄の戦場に、ミサイルガン仕様のニクス部隊ヴィクターと、デクスター自動散弾銃で武装したゾディアークが対空砲部隊と代わり、前に出る。
『巨大生物接近!』
『来るぞォ、正面だ! 撃て!!』
『うおおおぉぉぉ!! この下等生物共めぇぇ!!』
フェンサーのゾディアーク中隊が、一斉に散弾銃で弾幕を張る。
しかし甲殻の硬いα型亜種と、跳躍するβ型に間を抜けられてしまう。
『しまった、い、糸が! ぎゃああ!!』
『落ち着け! フェンサーの装甲なら……何!? ぐぁ! すごい数だ!! ぐあああぁぁぁぁ!!』
『くそ! 援護だ! 砲撃支援が必要だ! この数は抑えきれない!』
『フェンサー! そこをどけ! ここは俺たちの出番だ!!』
苦戦するフェンサー部隊に代わったのは、ニクス・グレネーダーに乗るウィスキー小隊だ。
『エクスプロージョンを使う! いっけぇぇーー!!』
対地面制圧に特化したグレネーダー仕様のニクスは、肩部の拡散グレネード射出器”エクスプロージョン”を放った。
広範囲にばら撒かれたグレネードは、多くの巨大生物を撃破した――が。
『こちらシルフダンサー!! 右翼の戦車部隊が壊滅した! 砲兵のヘクトルがそちらを狙っている!』
ウイングダイバー部隊からの通信だ。
見ると大型のプラズマキャノンを装備したヘクトルが、ウィスキー小隊を狙っていた。
『まずい! 全機退避!』
『りょうか――ぐわッ!! しまった! 脚をやられた! うごけない!!』
『い、糸が絡みついて!! きゃああぁぁぁ! 喰われる、喰われるぅ、助けてぇぇーー!!』
『ちくしょう! γ型が多すぎる!! 対空部隊は何をやってるんだ!!』
漏れ出てきたγ型の針や、β型の大量の糸に絡めとられ、身動きが出来ない機体が二機。
『脱出だ! PAギアを装備して脱出しろ!』
『だめだ、周りは巨大生物だらけで――!!』
『くそ! 二人付いてこいッ! 救出するッ!!』
ゾディアーク中隊のフェンサーが三人救助に向かった。
だが間を置かず、プラズマキャノンが着弾し、青白い閃光と赤黒い爆炎があたりを包み込む。
『うぅっ、どうなった……!!』
『一人、救助しました……、ですが、爆発に巻き込まれてニクスパイロット一人、フェンサー二人が死亡しましたッ……!』
『クッ、悔いる暇はない! とにかく戦線を立て直すんだッ!!』
無茶な救助は、時に犠牲が多く生まれる事もある。
一方ゾディアーク中隊の別方面ではα型類やヘクトルも猛威を振るう。
『おい後ろだ! 後ろに回られた! 誰か!』
『ぎゃああ!! 腕が、溶けるっ、くそ、フェンサーの装甲を貫通するのか……!』
『それだけ消耗しているんだ! もう限界だぞ!』
『こちらダイバー、シルフダンサー! こっちの部隊はほぼ壊滅だ! 貴隊への合流を希望する!』
『こちらフェンサー、ゾディアーク! こちらも半数がやられた! 共同して戦った方がよさそうだ!』
『了解! ただヘクトルはどうする? 我々の装備では太刀打ちできそうもない!』
『ランドガルドよりシルフダンサー! ヘクトルは我々が何とかしよう! ランドガルド2、近接戦闘だ! いけるか!?』
『了解した。ゆくぞ皆の者、剣の錆にしてくれようぞ!!』
『オオオォォォォォーーーッ!!』
フォースブレードを装備する武人、太斎中尉達ランドガルド2がヘクトルに挑みに行く。
それを月島大尉や棚部中尉達が援護する。
一方シルフダンサーとゾディアークは合流したが、他の場所でも多くのほころびが増え始める。
『こちら戦車中隊ウォートホッグ!! 随伴歩兵の被害甚大! 我々も壊滅の危機だ!』
『くっ、我々はまだ戦える! 行くぞ! 戦車中隊守れ! 彼らがいないとヘクトルやダロガに対抗できない!』
『もう、無茶しないで! 援護するこっちも大変なのよ! ルナティックレイのみんな! 私たちはγ型をやるわよ! もう4人やられてるから、とにかくエネルギーに気を付けて、脚を止めちゃだめ!!』
『畜生巨大生物共め!! しまった! ダロガがいるぞ!! ぐああぁぁぁ!!』
『くそ、戦車部隊! ダロガをやれ! 巨大生物はこっちで……う、うわぁーー!!』
『隊長! くそ、隊長が喰われた!! ちくしょう!!』
『っとぉ、どこもかしこもヤバい事になってるねぇ~。ホエール? まだ生きてるかい? よし、ビーコンに150mm単装砲の連続射撃、頼んだ! ダロガが来てるから迎撃に気を付けてね~~』
凄惨な戦場と場違いな言葉が無線で流れ、グレイプから軽い身のこなしで現れた保坂少佐は、ダロガ三機にビーコンを射出した。
『了解!! これが最後の支援になる……150mm単装砲、ファイアッ!!』
戦車砲以上の巨砲が大型航空機から放たれる。
重力加速度を加えた砲弾の速度は更に戦車砲以上の速度でダロガの脳天に突き刺さる。
強力な爆風と衝撃波が周囲に散るが、まだ健在なダロガに向けて更に追撃が何度も降り注ぐ。
ビーコンにより精密誘導をされてくる砲弾は一発も外れることなく三機のダロガに命中し、初撃で照射装置を破壊されたダロガは迎撃する事もままならず、全機が成すすべなく崩れ落ち、爆発した。
『こちら、DE-202。全ての砲弾を打ち尽くした。機体の損壊も激しい為、此度はもう戻ってこれそうにない。すまない……あとは任せたぞ、地上の戦士たちよ!』
『いいっていいって。十分助かったよ相良機長。後味悪いから、ちゃんと無事に帰ってくれよ?』
『ふっ、当然だ』
保坂の軽すぎる口調にも気することなく、ホエール攻撃機は帰投していく。
ホエールは機体各所につけられた対空機銃を使ってガンシップを迎撃しながらの支援をしていたのだ。
”空の要塞”と称されるほど頑強な構造のおかげで簡単に墜落には至らないが、それでも相当の危険を冒して迎撃に当たっていた。
『こちら、補給第七隊!! γ型の攻撃を受けている!! このままでは補給物資が全滅する! 誰か援護を!!』
『こちらグリムリーパー。その場所なら我々が最も近い。援護に向かう。持ちこたえて見せろ』
『グリムリーパー!? ありがたい!!』
極東第一工廠からの補給部隊の護衛に、漆黒のフェンサー、グリムリーパーが向かった。
『こちらレンジャー1結城! アンカーから新たな巨大生物の群れを発見! プレアデス、面制圧は可能ですか?』
『こちらプレアデス。残念だけど指揮する砲兵も空軍も残っていないねぇ。東の方で大規模な空戦があったらしくて、戦力になる空軍機も弾薬も残ってないんだってさ』
『そうか、それは残念ですね。了解しました。こちらで対処いたします!』
『うん、お願い。あぁー、待って、今通信が入った。そちらに回すよ』
保坂少佐と結城大尉が非常に落ち着いたやり取りを行う。
とても周囲で人が死にまくっている激戦区にいるとは思えない落ち着きぶりだが、そこにもう一人通信に割って入った。
『こちらエアレイダー、スピカ!! 南丹市の方は何とか片付けたわ!! 生き残ったブラッカー小隊達といっしょに今向かってるから、なんとか持ちこたえなさい! けど道中にも敵が多くて、すぐには向かえないの! 先にネレイドを先行させてるから上手く使いなさいな!! 残った砲兵のデータは今プレアデスに送ったわ! 砲弾はまだ少し残ってるから、ちゃんと役立てなさいよ!!』
こちらはこちらで子供と聞き違えるような甘ったるい声で、しかし真っ当な軍人の様に声を張り上げて話す。
『おお~、深雪ちゃん、助かるよ。結城大尉、そっちはどうだい?』
『こちら結城! 巨大生物の群れと戦闘を開始した! 少々無茶でも構わない、支援砲撃をしてくれると助かります!』
『了解了解~~。んじゃ、砲兵借りるよ?』
『早くしなさい!! 死人が増えるわよ!!』
テンションの差の激しい三人がやり取りをして、やがて期待通りギリギリの砲撃があたりに降り注ぐ。
「うおおおぉぉぉッ! なんてギリギリの砲撃だよ!! 死んじまうって!」
馬場が大げさにビビりながらも、砲撃を抜けてきたβ型の跳躍を狙い、しっかり迎撃する。
「プレアデスの保坂少佐か……! あの人の要請には毎度毎度肝が冷える」
荒瀬軍曹が珍しく愚痴のようなものを零すが、
「いや、今回頼んだのは僕だよ。危険だったけど、あの大群を相手にする余裕は今の僕たちには無かったからね」
結城大尉が答えたのを聞いて、荒瀬軍曹も無意識に背筋を伸ばした。
「はっ! そうでしたか、失礼しました!」
「アタシは派手な爆発で吹っ飛ぶ蟻共を間近で見るの好きだけどな~」
「そ、それより生きた心地がしませんでしたよ……」
それぞれのどうでもいい感想を述べつつ、たった四人となったレンジー2は確実に敵を撃ち倒していく。
少しは状況は良くなったが、それも一瞬の話で、際限なくアンカーから湧き出る敵に、他の陸戦部隊は苦戦を強いられていた。
アンカー破壊に注力したいところだが、そこそこ距離が離れているのもあって手を出せず、先ほどから戦艦群が新たに広範囲砲撃を行っているのだが、アンカーに集中して破壊するのは難しいといった状況だった。
そんな中、榊司令からの無線が届く。
《本部より南ICの戦闘部隊へ! 偵察部隊によってアンカーの稼働状況と、要撃破数の割り出しに成功した! 部隊を再編成し、アンカー破壊へ迎え!! 主力部隊は河を越えて桂川
『『了解ッ!!』』
全部隊が一斉に動く。
『桂川まで撤退だ、急げ!』
『おい馬鹿、射撃を止めるな! ぎゃああぁぁぁ!』
『隊長! 巨大生物が多すぎて撤退できません!』
『とにかく撃て! 撃ちながら乗り込めッ!』
『くそ、撤退の前に蜂共をどうにかしないと!』
『こちらゾディアーク! γ型はデクスターの弾幕で押さえておく! 早く行け!』
『イエッサー!!』
『こちらグリムリーパー! 殿は我々が務める! 歩兵部隊、先に行け!』
『こちらスプリガン! 南の方は我々が押さえよう。行くぞ、グリムリーパーに後れを取るな! 我々こそが一騎当千の精鋭であるという事を歩兵と下等生物に知らしめろッ!!』
二個精鋭部隊の活躍で、流入する巨大生物は圧倒的に減っていく。
が、それでも被害は甚大で、この状況でアンカー破壊部隊を抽出する事は難しかった。
『くそ、戦力が……戦力が足りない!』
『コンバットフレーム部隊の被害が甚大だ! 早く次の機体を持ってきてくれ!』
『保坂少佐! このまま我々が抜ければ大きな戦力低下になります! どうにかして少しでも敵を減らせれば……!』
地獄のような状況に、荒瀬軍曹が保坂少佐に声をかける。
保坂少佐は少し考え、ある案をひらめき、無線をオフにして荒瀬軍曹に声をかける。
「戦力……あるよ。とびっきりのヤツがね。だいぶ奥の手だったけど、もうどうやら使うしかなさそうだ。君さぁ、確か仙崎君がまだ民間人だったころ、銃を渡して戦わせていたそうだね?」
保坂少佐に思いもよらない事を話されて、珍しく驚く荒瀬軍曹。
「っ! なぜ、それを?」
「さぁね? 僕は普通のエアレイダーとちょっと違うからねぇ。で、僕も今から似たような事をやろうって訳さ。なぁに非常時さ。君ならその必要性が分かるだろ?」
「それは……」
荒瀬軍曹は口ごもる。
彼とて民間人を巻き込むのは賛成ではない。
「僕もね、できれば彼の自由意思に任せたいとおもったんだけど、まぁ事ここに至ってお願いすれば、ほぼ自由意思みたいなもんだろ?」
「どうせ断れない、という事ですか……」
断れない事を分かっていて、強制的に選択肢を選ばせることは、自由意思と言えるのだろうか。
「そりゃそうさ。僕らが全滅すれば次は大阪だからねぇ。彼が死にたくなかったり、周りの人を死なせたくないと思うなら、選択肢は自ずと見えてくるだろ? ま、色々グレーだから、榊司令には黙っておいてくれよ。五年前から親しい仲なんだろう?」
「貴方は……、一体何者なのですか!?」
荒瀬軍曹は二度目の驚愕を浮かべる。
五年前と言えば、荒瀬軍曹の降格に繋がったディラッカ事変。
だが、自分と榊司令の関係は、そう多くの人間が知る事ではない。
だとすれば、彼もまた、一般の指揮系統とは別の思惑で動いている事になるが……。
「あはは。そんなの教えると思うかい? とにかく僕は凄腕のコンバットフレームパイロットを呼ぶから、着いたら僕らもすぐに移動開始だ」
そういうと、保坂少佐は移動と連絡の準備をする。
「しかし、たったコンバットフレーム一機など」
「たかが知れてるって? 安心しなよ。それの度が超えてるから彼は。この戦いで生き残れば、英雄間違いなしだ」
そう言って、保坂少佐は微笑む。
その笑顔が荒瀬にとって少し不気味に映るのは、得体のしれない何かの片鱗を見てしまったからだろうか。
――――
保坂少佐の真意は不明だが、とにかく彼の考えた通りに事は進み、安藤和真は戦場に来ることを了承し、コンバットフレーム輸送トレーラーに乗せられて桂川PAに向かった。
道中、タイタンの危機を察知した和真は、強引にトレーラーからニクスを発進させ援護したが、その後問題なく皆がいる激戦区へ辿り着いた。
『保坂さん! 今着きました! ここで戦います! うおおぉぉぉーー!!』
安藤和真の乗る赤いコンバットフレーム・ニクスレッドシャドウが現れた。
両腕にリボリバーカノン、右肩部にロケットランチャー、左肩部に散弾砲を装備した変則型のニクスだ。
高機動型のレッドシャドウにしてはかなりの重武装ではあるが、それを感じさせず巧みに操っている。
『よし。全部隊全速で後退だ! 敵は精鋭二小隊とそこのニクスに任せて桂川までこうたーい』
『しかし……!? なんだあの動きは!? コンバットフレームにあんな動きが……いや、了解! 後退を開始する!!』
余りに無茶だと言いかけた別のニクスパイロットは、しかしその動きを見て考えを改めた。
ヘクトルの繰り出す機銃とエネルギー榴弾を跳躍とローラーダッシュで回避し、背面に回り込んで両腕のリボルバーカノンを掃射、撃破する。
そこに集ろうとするβ型を察知し、跳躍とロケットでの射撃を同時に行い、その場に集ったβ型を殲滅。
迫るγ型には肩部の散弾砲をお見舞いしたが、ややオーバーキル気味であると悟った和真はリボルバーカノンの単発射撃に切り替える。
『ったく無駄弾使わせやがって! 蜂ごときこれで十分なんだよっ!!』
しかしまだヘクトルやダロガ、ガンシップなど、巨大生物以外も多く残っている。
戦域の全ての戦力が集中しているので、ここで殲滅出来れば完全勝利となるはずだが。
『さすがに数が多すぎるだろ……! それでも、ここを抜かせるもんかよ! うおおぉぉぉ!!』
背後の大阪には妹の桂里奈や、出会った仲間たちがいる。
そこを危険に晒すわけには、絶対にいかない。
這い進むα型をリボルバーカノンで、α型亜種を散弾砲で砕きつつ、移動しダロガを照準内に捉える。
『そこだぁぁ!!』
全武装を至近距離で一斉射撃。
だがダロガを撃破するには至らず、触覚が青白く点灯する。
すぐさま距離を取り、推進剤とローラーを併用した小刻みなステップで高速移動する。
『へっ、どうよ! 工場でテストしてるときに編み出した移動法だ! 狙いを絞れねぇだろ!』
そのまま飛び上がり、上空からダロガのレーザー照射部を狙う。
ダロガが頭上にいる和真機を検知して照射準備に入るが、
『遅ぇんだよマヌケ!!』
二丁リボルバーカノンを一点集中射撃。
空中で移動しながら正確無比なその射撃は照射部を貫通、内部を貫き、機構に致命的な損傷を負ったダロガは内部爆発を起こし四散した。
『ヒャッハァァーー! オレ、絶好調!!』
『ふっ、それはどうかな?』
渋い低音の声で思わず後ろを振り向くと、漆黒のフェンサーがヘクトルを倒したところだった。
『あっ、助かり、ました……』
まったく気づいていなかったのと、急に声をかけられたので少しどもってしまう。
『操縦技術や技量はベテランにも引けを取らん。だが注意力や連携に難があるタイプと見た。次は死ぬと思って感覚を研ぎ澄ませ』
『あっ、はい、ありがとうございます……!』
グリムリーパー隊長、アヴィス大尉の助言にたじろぎながらも応答する和真。
軍人特有のぶっきらぼうで少し圧を感じる態度は、やはり慣れないなと本人は苦笑する。
それはそれとして、そんな軍人にベテランには引けを取らないと言われたことは純粋に嬉しい……が、あまり余計な事考えると本当に死んでしまいそうなので集中する。
『こちらレンジャー1結城! 桂川PAでの迎撃準備は整った! 殿の部隊はこちらまで後退せよ!』
『だそうだ。行くぞ小僧、遅れるなよっ!!』
『は、はい――いや、了解っ!!』
フェンサーたちに後れを取らず、移動を開始する。
もちろん、移動しながら追ってくる巨大生物の殲滅や、ヘクトル、ダロガの攻撃を躱す事は忘れない。
――その後、歩兵部隊数人の活躍と、タイタンのレクイエム砲によって超大型個体バゥ・ロードは撃破された。
プレアデス小隊を中心としたアンカー破壊部隊も損害を出しつつ任務を達成し、巨大生物の増殖が収まったことと、EDF第八機甲師団が援軍として駆け付けた事により状況は大きく好転し、
4月1日 午前7時30分頃、ここでの戦闘は完全に終結を迎えた。
「はぁ……終わっ、た……のか……。つかれた……」
コックピットに居ながら、肩で息をして汗を流す和真。
合間合間で補給を受けた時に休憩していたが、実に五時間の間戦い続けていた。
無傷という訳にもいかず、機体を何度か交換し、被弾時の衝撃で生傷が目立つが、大きな怪我もなく戦い終えた。
「くそ、これが戦場かよ……ハードすぎんだろ……」
「和真ク~ン、お疲れ~。僕の期待通り、役立ってくれて何よりだよ」
コックピットを開けると、保坂少佐が入り口まで上ってきていた。
「いやぁ頑張りましたよ……。これで大阪は、守られたんですよね……?」
「うん。君のおかげだ。まだ各地で散発的な戦闘が発生しているけど、それもじきに僕たちEDFの勝利で終わりはずさ。君のおかげで、大阪は無事だ。君は英雄さ」
「そう、か。よか、った……」
コンバットフレームを降りようとして、再び和真は気を失って倒れてしまう。
「まったく。君は良く気を失うね……。よし『こちらエアレイダー保坂。鏑木、聞こえるか?』」
無線を取り出すと、保坂は急に声色を変えて相手に送る。
『こちら鏑木。手短に頼む』
『パッケージ”A”を手に入れた。秘密裏に輸送を頼む』
『所属は?』
『イオタチームがいいだろう。手元に置いておきたいとはいえ、戦争が終わるまで活躍して貰わないと困るからな』
『了解。すぐ向かう』
数分後、EDFのジャガー高機動車がやってきて、気絶した安藤和真を乗せて走り去った。
「あの……、これで本当にいいんでしょうか……?」
グレイプの運転手、宮藤が去り行くジャガー見てつぶやく。
「ああ、必要な事だ。それに、やってることはEDFと変わりない。今は地球を護るのが最優先だ」
「でも私、今でも……」
「そこから先はまだ言うな。君の父の研究は、この戦争には必要不可欠だった。それは間違いない。だが、このままいけば世界は誤った方向に向かう。それを防ぐのが、我々の役目なのだよ」
「……本当に、戦争は終わるんでしょうか?」
「それは間違いない。”博士”の解読した”ファティマ第三の予言”によると、人類の滅亡はそれより先、人類同士によって起こる。その過ちは、もう始まっているのだから……――さ、長い戦闘で疲れただろう? 僕らも戻ろう。あまり長居していると不自然だからね」
「はい! あ~早く帰ってシャワーとか浴びたいですねぇ~~」
――彼らの会話は、誰にも聞かれる事は無かった。
ふぅ……ようやく終わった……!
この、ね?
最後のコレをやる為だけに今まで長々と書いてきたんですよっ!!
でも途中の描写書くのやっぱり楽しくて……!
でもこの感じ、人によっては嫌いな人も良そうなので悩ましい所。
そしてね、実はこれ、幕間”1”なんで当然2と3があるのですよ!!!
まだまだ本編には行けそうにありません……。
予告しておくと、次は今まであまり触れなかった(考えていなかった?)世界情勢についての話を書こうと思います!
いや、自分だって本編書きたいから、いい加減簡潔にパパっと纏めようと思うのですが……?
とにかく、そんな感じです!