全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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幕間2 北欧戦線①:トヴェリ防衛作戦「ヴィリーキィ・トヴェリ」

●北欧戦線

 7/24の核攻撃『ヴァシレフスキー作戦』の成否については様々な意見がある。

 核攻撃プロセス自体は滞りなく実行・終結させ、三つの主目標のうち『巨大生物群の殲滅』『インセクトハイヴの破壊』の二つを成功させた。

 だが三つ目の主目標『レイドシップの撃沈』に失敗し、更に地中から多くの巨大生物群の出現を誘発させ、結果的に周辺への侵攻を助長させたことから一般的に失敗であったとはみなされている。

 しかし地上にいた20万体超の群れをあのまま放置していたら、今以上に凄惨な事になっていた可能性は誰もが考える。

 更にインセクトハイヴを破壊した成果か、大規模侵攻の始まった2023年2月以降もロシア戦線全域で侵略性外来生物γの確認は認められず、ガンシップに航空優勢こそ取られているものの、対空部隊の活躍は維持されている。

 

 しかし前述の通り、放射能汚染と共に周辺の巨大生物は地下より出現・拡散し、ロシア西露戦線・北欧戦線・東欧戦線を苦境に立たせた。

 

 そのうちひとつの巨大生物・レイドシップ艦隊はM-11高速道路に沿う形で北上し、防備の間に合わないモスクワ近郊の都市を蹂躙し、モスクワ北部・トヴェリ州との境に位置する『ザビドヴォ国立自然公園』へ侵入した。

 東進する大規模フォーリナー群への対処に追われるサンクトペテルブルクの西部軍管区は余裕がなく、『州都トヴェリ』に司令部を置く『第79ロケット砲旅団』や『第13独立自動車化狙撃旅団』の指揮官は頭を悩ませた結果、『ザビドヴォ国立自然公園』でミサイル砲撃と直接交戦を敢行した。

 

 だが『第79ロケット砲旅団』は戦術弾道ミサイルを装備する旅団であり、弾頭をクラスター弾頭に換装して面制圧を行ったものの、クラスター弾頭の備蓄は十分ではなく、通常弾頭で巨大生物の大群を攻撃する事はあまりに費用対効果という点で有効ではなかった。

 それでも在庫を全て消費する勢いで発射したが、焼け石に水程度の効果であった。

 

 かわりに奮戦したのは『第13独立自動車化狙撃旅団』である。

 その構成は、

 100mm低圧砲や7.62mm機銃を多数装備した歩兵戦闘車『BMP-3』と突撃銃AK-74Mや迫撃砲、対戦車兵器を持つ『自動車化狙撃兵』が配備された『自動車化狙撃大隊』が三個大隊。

 152mm自走榴弾砲『ムスタ-S』や、BM-21自走多連装ロケット砲『グラート』を保有する『自走榴弾砲大隊』が二個大隊。

 125mm滑腔砲とレリークト爆発反応装甲(リアクティブアーマー)を装備するT-72B2『ロガートカ』を有する『戦車大隊』が一個大隊。

 その他多くの指揮・支援・兵站系部隊が組み込まれている。

 

 希少動物や絶滅危惧種が多く眠る場所での戦闘によって、多くの生命種が凄惨な最期を迎え、国立自然公園は炎と鉄の地獄と化した。

 

 やがて『第13独立自動車化狙撃旅団』は半数を失ったのち国立自然公園を後にする。

 『ザビドヴォ国立自然公園』は人間、巨大生物を含む様々な生命種の墓場となったが、後続の巨大生物はその屍を何の感情もなく踏み付け、レイドシップはその上を悠々と飛行した。

 

 そのフォーリナー群は制圧された自然公園の目と鼻の先にある『州都トヴェリ』へ侵攻。

 州都は『ヴァシレフスキー作戦』開始より緊急避難を行っていたものの未だ都市には20万人近くがインフラ維持のために残っていた。

 

 『州都トヴェリ』は国内維持にも重要な工業都市のうちの一つで、なおかつ首都モスクワ、第二の都市サンクトペテルブルクを結ぶ鉄道や高速道路があるなど、交通の要衝でもあった。

 更にロシア連邦軍最大級の空軍輸送基地『トヴェリ・ミガロヴォ』があり、軍にとっても重要拠点と言える。

 特に、モスクワが壊滅した今、旧モスクワの各機関・人員や多くのシステムが移設・移動したまま残っており、モスクワに近すぎる事が分かっていながら、軍事・政治・産業共に簡単に手放すことは出来なかった。

 

 当然、この場所を守るべく多くの戦力が、ロシア連邦軍西部軍管区司令部のあるサンクトペテルブルクより大移動を行って来ていた。

 しかし、首都モスクワ壊滅・ロシア連邦軍参謀本部の移動による混乱、『ヴァシレフスキー作戦』の実行とその影響への対処、東西に分かれた大規模な巨大生物群の進撃などに対応が追われ、この時期『州都トヴェリ』に十分な戦力を送る事が出来なかった。

 

 そんな状態で7月30日、『トヴェリ防衛作戦:ヴィリーキィ・トヴェリ(偉大なるトヴェリ)』が幕を開けた。

 トヴェリ自体が要衝であると同時に、ここの突破を許せば『古都ノヴゴロド』、その先は今やロシア中枢を担う臨時首都『サンクトペテルブルク』への道を明け渡してしまう事になる。

 トヴェリでは『ミガロヴォ空軍基地』をフル活用し、トヴェリ州全域の戦力と人員を可能な限りかき集めていた。

 しかし、それでも十分と言える戦力を確保できないまま、作戦は決行された。

 

 都市全域を使った攻撃作戦で、瞬く間に都市は廃墟になり、捨て身のレイドシップ撃墜作戦が何度も行われた。

 その勇猛かつ無謀な突撃によって、トヴェリの防衛戦力は枯渇し、最後には作戦の指揮を執っていた『第13自動車化狙撃旅団』司令部が玉砕突撃を敢行し、全滅。

 『ヴィリーキィ・トヴェリ作戦』に参加した全ての部隊は、例外なくこの地で抵抗の末、果てて行った。(この戦いで『レイドシップへの突撃作戦は自殺行為。白銀装甲を貫通できる新型砲弾の開発を待つこと必須』という世界の常識のような考えが広く行き渡り、世界の対フォーリナー戦は都市を拠点とする徹底抗戦から後退に後退を重ねる遅滞戦闘が主へと変わっていった。だが、それを世界に知らしめたロシア・西露戦線では、広大な土地があるにも関わらず、部隊の展開にフォーリナーの進撃速度が追い付かなかった為、時間を稼ぐ都市防衛を目的とした大規模戦闘が相次いだのは皮肉だろう。そんな中なので、歩兵の少数突撃作戦を成功させた日本はやはり世界の驚愕を誘った)

 

 司令部玉砕後も続いた戦闘は8月17日でほぼ完全に抵抗力を失い、トヴェリ全域にて市民の虐殺と都市の破壊が徹底的に行われた。

 巨大生物は人間に限らず、自動車・建造物・樹木や植物・燃料・資源などありとあらゆるものを喰らい尽くした。

 しかしその行動に一貫性は無く、唐突に貪りを中断し移動したり、群れの中でも数匹がはぐれ別行動を取ったり、その場にとどまり徘徊したりと、人類の予測を悉く裏切って行動した。

 

 その結果残るのは、残骸だらけの食い散らかされた都市だ。

 人間一人を見ても、骨も残らず丸呑みに近い形で捕食される人間から、汚くバラバラに食い散らかされたり、或いは凄惨な都市の中で生き残りが現れたりと、機械や兵器の様な正確さからはかけ離れていた。

 

 しかしそれは却って悲劇と混乱を生み、家族を失い、一人だけ生き残ってしまった人間、四肢欠損して藻掻き、出血多量で死ぬ事しか残されていない人間、凄惨な光景に正気を失う人間や、燃え続ける街、瓦礫、倒壊する建造物、引火する燃料、更にその中を気まぐれに徘徊し、気まぐれに生き残りを喰らう巨大生物。

 

 いっそ全て更地にしてくれた方がましと言える地獄が、巨大生物が蹂躙した後に残る傷跡である。

 

 州都トヴェリの陥落によって、トヴェリ州は全域が地獄と化した。

 

 しかし、『ヴィリーキィ・トヴェリ作戦』に参加した兵たちの挺身によって、更に北に隣接する『ノヴゴロド州』の防衛体制が整った。

 事態を重く見たEDF西露方面軍司令部の判断により、EDF三個軍団が動き出し、ノヴゴロド州とトヴェリ州の境付近に位置する『EDF第129駐屯基地:バルダイ』*1を改造・増築した『バルダイ要塞群』に戦力が集結した。

 

 『バルダイ要塞群』から『古都ノヴゴロド』までは直線で凡そ130km。

 EDF西露方面一軍司令部隷下のEDF西露第二軍団は、『バルダイ要塞』に戦力を集中させながらも、『ノヴゴロド』へ至るまでの土地に戦力を分散配置していた。

 

 『ザビドヴォ国立自然公園』での戦いでレイドシップへの攻撃は諦め、新型砲弾開発までの時間稼ぎとして遅滞戦闘に重きを置く戦術ドクトリンに流れが変わったのだ(前述の通り、西露戦線はこの戦術が間に合わなかった)

 

 そして9月5日。

 トヴェリ州の蹂躙を終えたフォーリナー群が一斉にノヴゴロド州の入り口ともいえる『バルダイ要塞群』での戦闘が始まった。

 

 しかし期待されていた要塞群での奮戦は凄惨なものになった。

 そもそもこの『バルダイ要塞群』は、『ザビドヴォ国立自然公園』での戦いが本格化してから大部分が急増された簡素なものであり、いくらEDF主導で構築したとはいえ激しい攻勢に耐え得るものではなかった。

 巨大生物の酸はあらゆる鋼鉄・防壁を溶かし、垂直の壁を減速せずに自在に移動する走破性で、要塞内部まで侵入し虐殺を行った。

 

 要塞砲からは多数の砲撃が行われて少なくない巨大生物を撃破していたが、津波の様に押し寄せる巨大生物に対しては無意味だった。

 EDF西露第二軍団の主力は瞬く間に捕食・溶解・惨殺され、要塞内部は凄惨なものとなった。

 しかし要塞機能が失われた後もEDFは小隊・分隊・あるいは個人単位で生存・抵抗を続け、孤立無援となりながらもその場に留まり敵を引き付けていた。

 

 一方撤退可能な部隊は『バルダイ要塞群』の大部分を放棄し、周辺都市『オクロフカ』『クレスツィ』『ヤムニクスコエ』などの郊外・平原に展開していた部隊と合流した。

 ここから、ノヴゴロド州全域を戦域とした広い範囲で遅滞戦闘が繰り広げられた。

 

 撤退に撤退を重ね、場当たり的な戦闘を強いられていた西露戦線に比べ、巨大生物やレイドシップの絶対数が少ないとはいえ、EDFとロシア陸軍、そして空軍や海軍の高度な連携を取れた為多くの被害を出しつつ戦線の維持に成功していた。

 

 特にノヴゴロド州の6km程南にあるイリメニ湖に緊急展開したロシア海軍バルト海艦隊の『アドミラル・ゴルシコフ級フリゲート艦』や、EDF北欧圏連合艦隊の『アーレイ・バーク級EDFミサイル駆逐艦(アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦はアメリカ海軍のものだが、地球防衛構想によりEDF工廠がライセンス生産を行い、独自に改修され内部・武装は別物となっている)』の砲撃・ミサイル攻撃の援護が行われたことが大きかった。

 

 サンクトペテルブルクに軍港を置く両艦隊は、都市内を流れるネヴァ川を東部に進み、欧州最大の巨大湖ラドガ湖に流れ込むヴォルホフ川に入り南下、ノヴドロゴ市内を抜けてイリメニ湖へ支援に来ていたのだ。

 

 『アドミラル・ゴルシコフ級フリゲート艦』からは130mm単装砲やカリブル巡航ミサイル、『アーレイ・バーク級EDFミサイル駆逐艦』からは127mm速射砲、N5巡航ミサイル、エメロード汎用ミサイルが次々と各線上に火力投射を行った。

 

 ノヴゴロド州での戦闘が始まってから二か月後。

 11月中旬に入った頃、ついに各地で戦線が崩壊し、一気に州都ノヴゴロド近郊での戦闘が火蓋を切った。

 また二か月に及ぶ遅滞戦闘の影響で、戦線が長大になり、東は巨大なダムで莫大な電力事情を担うエネルギー都市『ルイビンスク』、西は宗教の中心地であり、バルト三国防衛の要衝『プスコフ』まで侵攻が始まった。

 

 いずれも20万人規模の都市であり、捨て置くわけにもいかず戦力を分散せざるを得ない。

 そんな時、フィンランド軍・スウェーデン軍、更にEDF北欧方面軍が動いた。

 北欧防衛の為、フィンランド・スウェーデン・ノルウェーの北欧三国は、決して友好とは言えないロシア政府と交渉し、EDFの主導を条件に大規模軍の上陸を許可した。

 

 本来、EDF南極総司令部は北欧方面軍の戦力を割いてまでロシア国内を防衛する事に消極的であった。

 地球防衛構想に基づき、EDFは南極総司令部の命令があれば、国家政府の許可を得ることなく国境・地域を跨ぐことが出来る。

 しかし、仮に大軍をロシアに送ったとしても、”無敵艦”とも呼ばれるレイドシップがいる限り、人類に出来る事は時間稼ぎの他にない。

 

 現状の最良戦略は”遅滞戦闘”であり、『新型装甲貫通弾』が開発されるまでは戦力の前進移動は行わない方針であった。

 が、フィンランド軍・スウェーデン軍がEDFの”要請”を無視しロシアへの大規模戦力移動を敢行した事により、EDFも追従せざるを得なくなった。

 二ヵ国軍の、特に歩兵装備は対巨大生物戦に於いて力不足である。

しかしどんな国、どんな質の兵士であっても無為に損失を増やすことは人類守護・地球防衛戦略へのマイナスとなる。

 故に次善策としてEDFは二ヶ国軍と同時に大規模な戦力移動を行った。

 

 その間の北欧防衛・防衛体制充足の為ノルウェー軍は残り、北欧二国とEDFはロシア・サンクトペテルブルクを経由しノヴゴロドへ向かった。

 

 また東欧では、その動きに乗じてエストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国の国軍・駐屯NATO軍も動き出し、こちらもロシアの国境を越え、州都プスコフ防衛へ向かった。

 これはサンクトペテルブルクの臨時政府にほぼ無通告で行われた。

 

 バルト三国はサンクトペテルブルク臨時政府への直接のパイプを持っていなかった為、国家防衛の危機を理由に事後承諾の形を取った。 

 

 サンクトペテルブルク臨時政府は、バルト三国からの情報をNATO軍→EDF欧州方面軍→EDF南極総司令部→EDF西露方面軍→サンクトペテルブルク臨時政府の順という非常に回りくどい経由でこれを知ったため、バルト三国がプスコフ到着後も、越境の情報は間に合わなかった。

 現地ロシア軍兵士は「侵略か!?」と動揺の声が上がりながらも「もうなんでもいいから手を貸してくれ!」の意識の方が強く、思ったより大きな混乱は起きなかったという。

 

 プスコフの戦力充足を知り、フィンランド・スウェーデン・EDF北欧方面軍は戦力を二分割し、二ヵ国軍主力はノヴゴロドへ、EDF主力はルイビンスクへと向かった。

 

 しかし中でも重要と言えるのは依然『ノヴゴロド』である。

 ノブゴロド自体に戦略的価値は薄いが、ここを制圧されるとサンクトペテルブルクは目の前である。

 サンクトペテルブルクには、ロシア連邦軍西部軍管区、並びにロシア連邦軍参謀本部、更にロシア臨時政府の一部機関と、EDF西露方面軍司令部など、本来モスクワにあった司令部機能、国家機能が集中している。

 

 更にロシア人にある精神・歴史的観点でも、ロシア最古の都である『ノヴドロゴ』は日本人で言う『京都』のような(いにしえ)の都である為、絶対に敵の手に渡したくない、という意識があった。

 

 しかし、フォーリナーはその考えを真正面から蹂躙する。

 2022年12月2日。

 最後まで奮戦していた『ノヴゴロド州プロレタリ』が陥落し、集結したロシア連邦軍西部軍管区・EDF西露方面軍・EDF北欧方面軍・スウェーデン・フィンランド連合軍が戦力を抽出し、合計三個軍団相当の戦力が集結した。

 そのうちの一部がノヴゴロド=プロレタリ間でフォーリナー群と激突し、『ノヴゴロド防衛戦』が幕を開けた。

 

 ノヴゴロドの避難状況は芳しくない。

 市内には、凡そ20万人の人口のうち、未だ5万人近くが避難の遅れで残っている。

 理由は様々だ。

 住民の拒否、避難先の受け入れ態勢の不備、交通網や輸送手段の不足、避難全般作業やインフラ維持の為、など。

 サンクトペテルブルクは既に受け入れできる状況ではなく、周辺の都市も急な人口増加に既に対応が限界になっている。

 EDFは都市近郊に大量のプレハブ家屋を設置したが、それの在庫も全世界で大量に枯渇しだしている。

 

 それを嘲笑うかのような大量の敵が、ノヴゴロドに迫る。

 

 陸地を埋め尽くさん勢いで迫る巨大生物、上空で浮遊し、まるで反復爆撃の様に何度も往復し巨大生物を都市上空へ投下するレイドシップ。

 後退する余裕はなく、またも玉砕覚悟で突撃し、レイドシップのハッチを狙う部隊が急増し、そして損害を与えられないまま全滅した。

 

 レイドシップはその巨体さで低空飛行を行う為か、自動車程度の速度でゆっくり飛行しているが、当然人が戦闘しながら走って並べる速さではない。

 車輛であれば追い付けはするが、車載砲は仰角の問題で使用できず、また前方を必ず巨大生物の壁で塞がれるため、結局は歩兵による突撃しか戦法はない。

 

 EDFの先進歩兵である降下翼兵(ウイングダイバー)二刀装甲兵(フェンサー)であれば突破して射程内に収める事は出来るが、上を向けば周囲の巨大生物に食われる事は間違いない。

 前提として、圧倒的火力で投下後の巨大生物を封殺するしか方法はない。

 そしてそれは現状の火力・兵力では不可能だった。

 現段階の人類に出来る事は、地上に投下された巨大生物を少しでも駆除する事だけだった。

 

 ノヴゴロドへ終結した三個軍団相当の北欧連合軍はノヴゴロド周辺で次々迎撃を始め、そして徐々に包囲され、迎撃から、後退を含む遅滞戦闘へ移っていった。

 そして12月4日には最初に戦闘した南東部プロレタリ方面が破られ、それを皮切りについにノヴゴロド市内での戦闘が発生した。

 

 北欧連合軍は軍一部をノヴゴロド内へ後退させ市街戦を行ったが、フォーリナーはノヴゴロドに群がるように包囲を行い、12月8日には北部、西部の一部区域を覗いて重厚な半包囲が形成されてしまう。

 

 更に周辺のフォーリナー群は、北上しサンクトペテルブルク方面に向かう事なく、ノヴゴロド州に散った全ての巨大生物が都市ノヴゴロドの一点を目指し集中した。

 この動きは他の地域・戦線でもままある事であり、人類側の戦力集中点・防衛拠点や大都市などがある場合、迂回や囮を使うことなく一点集中でその拠点に群がる。

 

 習性か戦略かあいまいな部分ではあるが、ノヴゴロドに於いてもこの状況が発生した。

 これは人類の防衛戦略に於いて、その地点が突破されなければ後方での体制を整えられる利点はあるが、反面その集中個所は激戦となり、そう長くは持たない。

 また、集中が度を過ぎると溢れた個体が周辺都市に広く拡散し、浸透・突破を許す事にもつながる。

 

 その負の点においても例外なくノヴゴロドは該当し、夥しい数の巨大生物が一都市に大挙した。

 北欧連合軍はそれを逆手に取り都市から陸軍を退去させ、執拗な空爆を行うも、低空飛行のレイドシップが傘の様になり、効果的な爆撃を行えず、結果的に地上部隊での熾烈な市街戦となった。

 

 建物を縦横無尽に駆け巡る巨大生物との戦闘では、市街戦の分が悪い事は周知の事実だが、都市が破壊されようと、砲爆撃に晒されようと、それでも主にロシア軍は古都ノヴゴロドの土地や住民を守るべく奮戦した。

  

 だが、EDFの決断は無慈悲であった。

 12月15日。

 EDF北欧方面軍を含む、北欧連合軍はEDF・ロシア両軍の損耗が五割、連合軍の損耗が三割に達した事と、巨大生物によるノヴゴロド包囲網が完成しつつある事を理由に撤退を提案。

 苦渋の決断ではあったが、EDF西露方面軍も同意したことを受け、ロシア連邦西部軍管区も認めた。

 未だ助けを求める市民に最期の介錯を与えるかのように、低仰角で猛烈な砲撃を無差別に加えるロシア海軍『アドミラル・ゴルシコフ級フリゲート艦』三隻を最後に、ノヴゴロドからは全軍が撤退した。

 

 軍のいなくなった古都ノヴゴロドに響くのは、千年の間古都を受け継いできた市民たちの阿鼻叫喚の地獄だった。 

 

 12月17日。

 巨大生物によるノヴゴロド食害が終わり、レイドシップと共に、巨大生物の大群は数個に分かれて移動を開始。

 最大の梯団は4万体以上に上り、第二首都サンクトペテルブルクに向かって北上した。

 そしてほぼ同時期に水力発電都市『ルイビンスク』東欧防衛の要衝『プスコフ』も陥落し、一体の電力不足と東欧バルト三国への侵攻を許した。

 

 周辺都市は物量に圧迫され次々と陥落。

 ノヴゴロド=サンクトペテルブルク間の平原・雪原には対戦車地雷・対人地雷・そしてEDFのC型爆雷を大量に設置した(巨大生物に偽装は不要なため、占領地奪還の事も考え剥き出しのままで十分だった)

 更にロシア北欧戦線の総力を挙げた砲爆撃が行われ、巨大生物群の推定四割近くの漸減に成功した。

 

 しかし、人類の勝利条件である『白銀装甲貫通弾』は完成しない。

 何度か人類の有する技術と、不明遺物構造体(OVUM-68)を解析し、新型砲弾を開発しているが、そのいずれも効果を与えるには至っていない。

 それの開発には、どうしてもレイドシップの装甲素材の解析・再利用が必須なのだ。

 そして装甲素材を得るためには不可能と言われるレイドシップを撃墜しなければいけない、というジレンマに陥っていた。

 

 人類の、そしてロシアの時間稼ぎも虚しく、ついに12月25日。

 今やロシア最大の都市にして中枢地であるサンクトペテルブルクにフォーリナーが大挙した。

 『サンクトペテルブルク攻防戦』が始まった。

*1
史実ではバルダイ国立公園




ひとつに纏めようとしたけど無駄に長くなって無理でした(汗
またもロシアの中で更に分割です。
まさかこんなに筆が乗るとは……と言いつつ、これ結構執筆コスト高いので(平たく言うと凄い調べるし疲れる)更新頻度かなり落ちてます
まさか、今年いっぱい幕間にかかるなんてことは……普通にありそう。
早く仙崎の話も進めたいのですけど……ここにきて世界情勢なんも考えてないので、ここらでちゃんと決めておかないと後々困るのですよ、俺がw
なのでしっかり濃厚に書いておきます。
ただ、今の段階でちょっと矛盾が多々あったりします実は。
落ち着いたらちゃんと修正していきたいです……。
幕間はせめて今年中には終わらせたく思うので。なんとか頑張っていきたいと思います。
ではまた~~
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