全地球防衛戦争―EDF戦記―   作:スピオトフォズ

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大変申し訳ない事ではあるのですが、前々から思っていましたが戦況の話書くときに過去話との矛盾点が多くある現状です
時間を見て過去話の編集など行う予定ですが、現在そのままとなっておりますので、どうか最新話の状態で順応していただきますようよろしくお願いします……!

いやプロットとか書かずに思い付きとノリだけで全部考えてるんでどうしてもこういった事態が発生するのですよね……。
でもプロットは書きません、書かないで考える方が楽しいので!
付き合わせてしまって申し訳ありませぬ、それでもOK!という方はどうぞお進みください!


幕間2 北米戦線④:ワシントンD.C.首都圏決戦

 

 ――2月14日。

 ワシントン決戦が幕を開ける。

 戦闘目的は、単なる防衛に留まらず、ここで敵軍全てを迎撃し、敵の勢いを削ぐ事だった。

 

 敵は膨大な物量に思えるが、これまでに海上戦闘にてレイドシップ30隻以上、ガンシップ500機以上、ダロガ揚陸艇50隻以上を撃破している。

 しかしながらその被害は甚大であり、アメリカ大西洋艦隊第二艦隊は総戦力の半数以上を喪失。

 第二艦隊旗艦であったアイオワ級八番艦ミシガンを始め、戦艦戦闘群の中核を成すアイオワ級四番艦ウィスコンシン、空母打撃群として編成されていたジェラルド・R・フォード級空母四番艦ドリス・ミラー、五番艦アラン・シェパードなど、第二艦隊戦力の中核とも言えるべき艦艇が相次いで沈没。

 その他タイコンデロガ級、アーレイ・バーク級、ズムウォルト級などのミサイル巡洋艦および駆逐艦を含む戦闘艦艇や支援・補給艦など、30隻近い艦艇を失う壮絶な戦闘だった。

 

 1000機以上でメリーランド州及びバージニア州の首都圏に侵入するガンシップを迎えたのは、陸上版イージスシステムである『イージス・アショア』により制御された無数の地対空ミサイルだ。

 地対空ミサイルはガンシップの他、低空で侵入するダロガ揚陸艇も攻撃し、海中に次々とダロガを乗せたまま沈んでいった。

 空対地ミサイルを抜けた先に待って居るのは、これも米軍のイージス・アショアによって制御された無数の対空砲火弾幕だ。

 地対空ミサイルと同様に、路面や公園、ビルの屋上や商業施設の駐車場、果てはホワイトハウスの庭園にまで設置された対空砲群……アメリカ陸軍が海軍から譲渡された近接防空システム(CIWS)ファランクスが、EDF陸軍のCIWSヘッジホッグが、そして対空車輛である米陸軍アヴェンジャーシステム搭載型ハンヴィーや、EDF陸軍の換装式アンモナイト自走対空砲、ケプラー自走対空砲などが、一斉に空に対空砲弾を撒き散らし、次々とガンシップを鉄屑に変えていく。

 街全体、首都圏全体が対空要塞と化したこの様相に、兵士たちは浮足立ち、人類は、アメリカ軍は決してフォーリナーなどには屈しないのだという事を確信した。

 

 しかし、フォーリナーとの戦争はそう甘くはない。

 100隻以上のレイドシップ船団が海上からハッチを開き、ガンシップの増援を発艦させる。

 同時に、別の船団は巨大生物を海中に投下した。

 その中には新種であるβ型も含まれており、やがて海上から大群が上陸した。

 海岸線には、C型地雷原がEDF陸軍工兵隊によって敷設されており、スカウトチームによる観測情報を得て工兵隊が随時起爆を行った。

 最大効果を発揮する地点での起爆は、センサーやAIの判断では務まらず、それを人の手によって行う事で大量の巨大生物を爆破に巻き込むことに成功し、多くを撃破した。

 

 それを突破する巨大生物群には、EDF陸軍工兵隊が設置したセンサー式自動砲台ZE-GUN型や、対巨大生物用に火炎放射器を搭載したFZ-GUN型も試験的に導入されており、EDFスカウトや工兵隊が撤退した後も無人で戦い続けた。

 

 特にFZ-GUNは巨大生物の”怯み”習性を利用し、多くの巨大生物の足止めに貢献した。

 先頭が詰まれば、後続も詰まる。

 詰まった後続にはビル屋上に設置された自動ロケット砲ZEランチャーの小型ロケット弾や、後方の砲兵陣地に鎮座するEDF・アメリカ軍砲兵隊の面制圧砲撃が容赦なく巨大生物群を叩き潰す。

 

 その炎と破壊の地獄の上をレイドシップは悠々と通過し、海岸線を越えて都市部へと侵入しつつ、自動砲台陣地の奥へと巨大生物群を投下する。

 海岸線に兵士を配置しなかったのは、まさにこのレイドシップによる投下挟撃を警戒しての事だった。

 昨年10月に行われたフランス・ノルマンディー上陸阻止作戦の戦訓がここに生かされたのだった。

 

 EDF工兵隊の敷設した自動砲台は巨大生物の物量によって次々と機能停止・破壊され、さらにその後海底から上陸した多脚歩行戦車ダロガによって一帯を完全に破壊され、全滅した。

 ダロガ揚陸艇はイージス・アショアの管理する対空迎撃によって大半が落とされたが、海底に墜落した後ダロガは起動し、歩行していたのだ。

 

 ダロガ揚陸艇70機、つまり合計420機ものダロガがワシントン首都圏に向けて上陸を続けていた。

 ダロガが放つ大量のエーテル粒子砲弾によって沿岸部は余すところなく制圧された。

 

 エーテル粒子――ダロガの放つ触覚型砲身から放たれる砲弾を形成する粒子の暫定呼称である。

 青白く発光し、着弾すると爆発する事から未知のエネルギーではあるが、ウイングダイバーの扱うプラズマエネルギーに近しいものと推察される。

 が、詳細な分析は不可能であり、形成体が縦長であり、弾道軌道を取らず比較的直進する性質を持つ事からプラズマではなくエーテルと呼ばれる事となった。

 

 ――のちに出現する事となる歩行要塞エレフォートや、軌道降下戦機ディロイの持つ砲台は、その特性からプラズマ兵器に分類されている。

 しかし前述の通り詳細な科学的分類を行った訳ではなく、専門家の間では諸説あり呼称は分かれる事となる。

 それは科学者が行う事であり、軍事的には暫定呼称で十分だった。

 

 沿岸部を完全に制圧されたEDFは、四個戦車連隊、二個コンバットフレーム連隊から成るEDF機甲師団を投入。

 E551ギガンテスと、CF-11BニクスB型、BM-03ベガルタM2などの機甲戦力が一気に迎撃へと投入され、ダロガとの大規模戦闘が始まった。

 同時に侵略性巨大外来生物αや、β、それに新たに確認された固い甲殻を持つα型亜種などが市街地へ流入する。

 EDF陸軍は陸戦歩兵師団を多数投入し、歩兵戦闘車キャリバン、装甲戦闘車グレイプ、自走迫撃砲ブラッカーなど戦闘車輛が前線で陸戦歩兵と共に活躍した。

 その他工兵隊によって張り巡らされた自動砲台がここでも起動し、戦闘部隊の援護を行った。

 

 また、空中で侵入したレイドシップに関しては、少数機動接近戦術(ストームバンガード)用に編成されたタスクフォースG小隊の先進歩兵四兵科が独自に戦闘行動を行い、犠牲を出しながらも次々とレイドシップを撃破してゆく。

 こうして、ワシントン首都圏での戦いは一時的な膠着状態へと陥っていく。

 

 ――2月21日。

 ワシントン決戦から7日。

 大きな敵の流入が収まり、戦況は膠着状態に陥っていた。

 この流れを想定し、待って居たEDF北米軍は次なる一手を打ちに行く。

 

 待機させていたEDF地球規模戦略軍の秘密兵器、セイレーン級潜水母艦が浮上した。

 EDF地球規模戦略軍とは、陸海空軍、または海兵隊や軌道宇宙軍よりも上位の戦力を持った、地球防衛の要に当たる軍種である。

 EDF総司令部が直接の指揮権をその権限はEDF戦略情報部と同等である。

 

 そのEDF地球規模戦略軍が進めている”決戦要塞計画”。

 その計画兵器のナンバー1にあたるのが、決戦要塞X1――セイレーン級原子力潜水母艦である。

 

 全長1000m超の超巨大潜水母艦セイレーン級は、多数のVLSや魚雷発射管に留まらず、二連装六基12門の224mm艦砲や対空防御兵装も備わっており、戦艦と潜水艦の複合艦として設計された。

 しかしその神髄は純粋な戦闘能力ではなく、来襲するプライマーに対するカウンターとしての役割があった。

 

 宇宙から飛来するプライマーは、海中への攻撃能力を持っている可能性は少ないと考えられており、現に海中で活動可能なプライマー戦力は確認されていない。

 それを見越して計画された決戦要塞計画の第一号である潜水母艦には、戦闘兵装の他に大量の武器弾薬、食料や衣料品、通常の艦には積み込めない程の燃料や大型の機材を積み込み、直接戦闘以外にも激戦区や後方地への兵站支援を行えるよう設計された。

 更には植物の種子や生命体の遺伝子情報なども詰め込み、大戦後の人類再生を担う役割も任される人類生存の生命線だ。

 

 本来ならば兵装は飽くまで自衛用とし、深海ドッグで人類の最後の希望として温存されるべき戦力ではあるが、プライマーの来襲を受け二番艦パンドラが早くも進水し、三番艦エピメテウスの建造も予定より早く進行したことを受け、EDF戦略情報部が北米戦線での投入を打診したのだ。

 決戦要塞計画第一号であるセイレーン級は全三隻建造予定であり、その内の一隻でも大戦終結まで生き残れば、人類再興の中心としてその役割を全うできる。

 ゆえにEDF地球規模戦略軍は、セイレーン級一番艦の例外的前線投入を決定した。

 

 EDF地球規模戦略軍は、セイレーン級潜水母艦一番艦セイレーンを中心とし、複数のネプチューン級潜水艦で構成された戦略潜水打撃群をこの戦場に投入した。

 

 セイレーン級潜水母艦は、本来水中発射型弾道ミサイル(SLBM)を多く所有するが、今回中近距離での火力支援という事で武装を全て中距離多目的ミサイルであるAH巡航ミサイルに換装し、更に最大火力を発揮する為敢えて危険を冒し浮上した。

 

 二連装六基12門の224mm艦砲が高サイクルで放たれた。

 EDF弩級戦艦であるゼウス級やオーディン級の500mmクラス、戦艦ポセイドン級やエーギル級の400mmクラスの巨砲には遠く及ばないが、特筆すべきは砲塔の多さと速射性であり、戦艦を遥かに超える巨大さでありながらエアレイダーの指揮によって、精密な火力支援能力を持つ。

 

 またそれ以外のネプチューン級潜水艦は浮上せず、水中発射型のミサイルで対地火力支援を行い、ワシントンDCの巨大生物群やダロガを次々と撃破していった。

 しかしまた、地上部隊の限界も迫っていた。

 

 当初猛威を振るわせたイージスアショアを筆頭とする対空陣地や無人砲台は悉く壊滅し、ワシントンDCを含むアメリカ首都圏は激しい地上戦の舞台となっていた。

 海上からの火力支援は受けられるもののそれ以上に激しい敵の攻撃で、地上部隊の損耗が加速度的に増えていった。

 

 またアメリカ国防総省・国務省及びEDF戦略情報部は、2月13日時点で大幅な海外駐留軍の撤退を行っており、海外から帰還した部隊は現在補給・再編成中だった。

 しかしワシントン決戦への投入は、準備不足や彼我の戦力差を鑑みて見送る方針で決定し、同時にワシントンDCの放棄もほぼ確定となった。

 

 ――2月28日。

 在日米軍の撤退に端を発す劣勢により、日本国はEDF総司令部により陥落判定を受けた。

 通常戦力のみならず、四足歩行要塞エレフォート、超抜級怪生物”雷獣エルギヌス”、二つのインセクトハイヴにより国土の大半が失われる状態となる。

 

 また同日、主力を務めていたEDF北米軍第23機甲師団の壊滅と、首都圏総面積の六割を失った事を鑑み、EDF北米軍司令部は撤退及びワシントンDCの放棄を決定した。

 アメリカ本土防衛軍(旧アメリカ北方軍。北アメリカ地域を担当する統合軍であり、フォーリナーの北米侵攻開始を受けて名称変更)の将校は、涙ながらに抗議を行ったが、戦況はそれを許さず、アメリカは建国以来の首都を失った。

 

 ――3月1日。

 ワシントンDCの陥落の翌日。

 アメリカ西海岸北部、ワシントン州シアトル近海に、四足歩行要塞エレフォートが出現。

 海上から姿を現した歩行要塞は、巨大プラズマ砲を発射。

 10kt超の出力規模で爆発が起こり、シアトルの中心部は核攻撃に会ったかの如くに破壊された。

 歩行要塞は数十秒毎という恐るべき短間隔で巨大プラズマ砲を連射し、瞬く間にシアトル周辺の街は徹底的に破壊し尽くされた。

 特にシアトル都市圏内ブレマートン市にあるビージェットサウンド海軍造船所が破壊された事は、アメリカ海軍にとって大きな痛手となった。

 

 犠牲者は100万人以上に上り、その中には東海岸の激戦を受け移転された首都機能の一部や政府高官・高級軍人も含み、アメリカ合衆国にとって甚大な被害をもたらした。

 またシアトルに所在するEDF北米第二工廠も、プラズマ砲の直撃を受けその全てが崩壊。

 大型攻撃機DE-202や輸送機ノーブルなどの生産ラインが世界最大規模で揃っていた北米第二工廠の喪失は、世界戦略にとっては大きく痛手であり、

 それらのみならず航空・宇宙産業の世界的代表であるボーイング本社やマイクロソフト、アマゾンなど多くの企業の拠点が跡形もなく消え去った。

 

 分散首都防衛の任務を受けていたアメリカ州軍や本土防衛軍または予備役なども成すすべなく消失し、そんな無防備な廃墟の街となったシアトルに、歩行要塞は悠々と上陸した。

 歩行要塞はその後、オレゴン州ポートランドを目指して南下した。

 

 ポートランドも分散首都機能の移転地の一つであり、周辺都市圏は人口200万人規模の大都市だ。

 また、離れてはいるが西海岸にはサンフランシスコやロサンゼルスなどのアメリカを代表する巨大都市が存在する為、当然ではあるが無視できない問題であった。

 

 ――3月2日。

 シアトル壊滅から翌日。

 EDF太平洋連合艦隊第四艦隊は、直ちに歩行要塞との砲撃戦を繰り広げた。

 極東戦線・日本での戦闘で歩行要塞の巨大プラズマ砲を一時的に機能不全に追い込んだとの情報を元に砲撃を行うが、成果は得られない。

 陸軍空軍も連携し、足止めの為の総攻撃を行うが、元々が主力の大半を東海岸に配置していただけあって、歩行要塞の下部対地砲台や投下されたダロガ、巨大生物によって戦力は急速に減っていった。

 西海岸の部隊は、元々が予備役や旧型兵器で構成されており、対フォーリナー戦に於いての実戦経験も、全土に降り注いだレイドアンカーの処理くらいしか積んでいなかった。

 その為、兵士も指揮官も、練度不足が目立つ上、規格外の相手というのも会って、恐ろしい速度で損耗うが増えて行った。

 それでもEDF艦隊の艦砲射撃により歩行要塞の侵攻速度を低下させるかつ砲撃を引き付ける事に成功し、シアトルから200km余りのポートランドまで、二週間もの時間を稼いだ。

 その代償は大きく、僅か三日間でEDF北米陸軍四個師団壊滅、EDF空軍二個飛行師団全滅、EDF海軍戦艦二隻、巡洋艦六隻、空母二隻、駆逐艦7隻が失われた。

 しかしその甲斐があり、ポートランド市民は殆ど避難が完了し、少なくとも民間人の無用な犠牲は避けることが出来た。

 鉄鋼業とハイテク産業に支えられ、アメリカでも上位の治安の良さと住みやすさであり、随所にあるバラ園から「バラの街」としてアメリカ国民に愛された優しい街は、3月16日を以って都市機能を停止させ、全域が地獄の戦場へと変わってしまった。

 

 ――3月16日。

 ポートランド侵攻阻止戦が始める。

 壊滅したEDF第四艦隊は応援として派遣された第五艦隊と統合され、再び艦砲射撃を行うが、歩行要塞に損傷を与えられた形跡はない。

 陸軍・空軍も周辺都市からかき集めた戦力で阻止攻撃を行う。

 撃破出来る見込みは相変わらずなかったが、少しでも侵攻を阻止すべく全力で彼らは戦った。

 

 その目的は、既に無人となった都市ポートランドの防衛ではなく、歩行要塞撃破に向けての確かな布石だった。

 EDF地球規模戦略軍は、レイドシップの残骸を使った新型砲弾の開発に成功していた。

 レイドシップなどの白銀装甲を構成する仮称原子”フォーリニウム”を使用したフォーリニウム装甲貫通弾”グラインドバスター”である。

 しかしテストの結果、地上からの発射では貫通できるエネルギーを生み出せないことがすぐに判明。

 EDF先進技術開発部の総力を挙げた結果、衛星軌道からの軌道爆撃で理論上貫通可能な速度を生み出せる事が分かり、EDF北米第七工廠オースティンの軍事衛星製造ラインで攻撃衛星”レーヴァテイン”を設計・製造し、直ぐ打ち上げを行う予定だ。

 その後、最適な周回軌道への軌道修正とグラインドバスターの装填・砲身の整備・照準の調整などを行わなくてはならない。

 実際に砲撃可能になるまでに、あと約三週間はかかる見込みであった。

 

 ――3月20日。

 ワシントンDC・フィラデルフィア・ニューヨーク・ボストンを丸ごと失った北米東海岸戦線はその後方六都市で構成される東海岸第二防衛線へと主戦場が移っていった。

 北から、

 東海岸メガロポリスの最北端『ニューハンプシャー州マンチェスター』(都市圏人口40万人)、

 自然と調和した医療福祉の街『ニューヨーク州オールバニ』(都市圏人口110万人)、

 かつて炭鉱の町として栄え今ではその名残を観光名所とする『ペンシルベニア州スクラントン』(都市圏人口58万人)、

 アメリカ建国史上重要な都市のひとつであり、工業都市でもある『ペンシルベニア州ハリスバーグ』(都市圏人口68万人)、

 ビクトリア様式の建築物が200棟以上並び、有名大学がキャンパスを多く構える大学町『バージニア州スタントン』(都市圏人口12万人)、

 全米有数のバイオテクノロジー研究地として知られ、EDFの人工筋線維研究機関も設置されている重要都市『バージニア州リッチモンド』(都市圏人口123万人)。

 

 上記六都市が、ニューヨークを中心とした東海岸部から広がるフォーリナーを封じ込める段階へと移行した。

 その目的は、アメリカ本土防衛もさることながら、二つの都市にあるEDF工廠を一秒でも長く維持する事である。

 大西洋沿岸部に位置し、EDF海軍第五工廠が存在する『バージニア州ノーフォーク』(都市圏人口180万人)、

 ワシントンDCと五大湖のひとつエリー湖を結ぶ線の中間地点に位置し、EDF第六工廠のある『ペンシルベニア州ピッツバーグ』(都市圏人口285万人)だ。

 二か所ともEDF工廠があるだけではなく、アメリカ本土防衛にとっても重要な拠点になっている。

 

 ノーフォークにはEDF以外で世界最大の海軍基地『ノーフォーク海軍基地』が存在し、その中にはアメリカ海軍大西洋艦隊司令部、アメリカ大西洋海兵隊司令部、NATO大西洋連合軍司令部が設置されている。

 そのほかにもノーフォークは東海岸有数の港湾都市であり、ニューヨーク、ワシントンDCなどメガロポリス群が軒並み陥落した今となっては、東海岸最後の巨大玄関口である。

 

 ピッツバーグは、かつて鉄鋼業の街として栄えたが公害問題やオイルショック・安価な輸入鉄鋼の出現により一時衰退を辿ったが、事業をハイテク産業や教育・金融・サービス業を中心に活動する事で再び盛り返す。

 しかし、1990年代にEDFが設立されると、その強硬な軍拡によって鉄鋼業の需要が急激に増加し、ピッツバーグの廃鉱山群は大規模に再開発されることになり、EDFによる惜しみない経済支援が行われた。

 結果ピッツバーグは再びアメリカを代表する鉄鋼業の街に返り咲き、街には巨大なEDF第六工廠が建造された。

 

 そんな二つの都市は共に『EDF指定戦略重要都市』に分類されている。

 EDF戦略情報部の規定により、地球防衛戦略に於いて死守すべき重要都市に指定された都市の事だ。

 これを失う事はその地域や国家のみならず、地球防衛戦略全体の大きな損失であると位置づけられ、戦況が許す限りの徹底防衛がEDF総司令部より全ての戦力に厳命される。

 

 また、先の『バージニア州リッチモンド』もEDF先端科学研究局リッチモンド支部が所在する為、EDF指定戦略重要都市に分類されている。

 EDF先端科学研究局は、EDF先進技術研究開発部の下部独立組織であり、バイオテクノロジーを駆使した研究が行われている。

 そのうちの一つに、β型の筋線維を利用した人工筋線維スーツの開発が行われており、完成間近のこの研究はのちにアーマースーツの追加機能『アンダーアシスト』や、コンバットフレームの関節・脚部跳躍機構に利用されるなど、戦略的に価値を上げていく事になる。

 しかし変わり者のEDF開発部から更に弾かれた研究局は頭のネジが外れた集団であり、後に巨大生物が街の直前まで迫った時も「サンプルがいっぱいとれる!」とはしゃいで退避勧告を無視し、現地指揮官の胃を痛めつけたという。

 

 ――3月25日。

 東海岸第二防衛線での戦いが激化する。

 人類の思惑を読んでか、或いは単に人口の多さに惹かれてか、フォーリナーの侵攻方面の主力はピッツバーグ方面とリッチモンド方面に分かれ、特にリッチモンドでは市域を巻き込んで大激戦となった。

 一方、アメリカ国防総省ではニューヨークの北米インセクトハイヴ第二次攻略作戦が計画されていた。

 アメリカの強い要望にEDF北米軍は難色を示しつつも賛同し、EDF南極総司令部直轄の最高機密宇宙戦力『原子力攻撃衛星ライカ』の運用に踏み切った。

 しかし出来るのは地上構造物と地下構造表層部の破壊のみであり、完全な制圧にはやはり地上部隊が必須となる。

 アメリカ本土での侵攻の激化により、通常戦力をニューヨーク攻略に大規模動員数るのが難しくなりつつあった。

 

 ――3月28日。

 ニューヨーク攻略への戦力抽出を難しくする要因は、アメリカ東海岸の侵攻激化と共に、西海岸にもあった。

 沿岸部を南下し、最も多い時で数十数秒間隔でプラズマ砲撃を放つ四足歩行要塞エレフォートの事だ。

 28日現在、歩行要塞はカリフォルニア州に侵入し、レディング市をクレーターの街にし、残った建物もその巨大な足で粉砕した。

 サンフランシスコ大都市圏までの距離、凡そ300km。

 ニューヨーク攻略作戦の為に世界中から撤退させた在外米軍の殆どは、歩行要塞侵攻阻止に投入され、そしてその殆どが無残に散った。

 しかしその甲斐あって、要塞出現から計算すると侵攻速度は一日僅か1km程度と非常に遅滞作戦が効果的だったことが伺える。

 ただし日本の歩行要塞は縦横無尽に迷走・停止しロシアは5日間足らずで集中核攻撃を行った為比較対象は存在しない。

 しかしその巨体故に阻止する戦力が無ければとうにサンフランシスコは廃墟になっていただろう事は、想像に難くないだろう。

 

 ――4月1日。

 EDF南極総司令部の国家陥落認定に背き、国際支援を断ち切って単独抵抗していたEDF極東軍が、京都防衛戦に勝利し、軍団規模のフォーリナー群を殲滅したと戦略情報部が発表した。

 当初の戦略情報部の分析によると彼我の戦力差から勝利する確率は二割程度との予測だったが、見事に覆された形になった。

 更にイギリスに出現し欧州大陸に上陸し猛威を振るっている超抜級個体バゥ・ロードも出現から僅か数時間足らずで撃破したと報告があり、EDF南極総司令部の高官は日本が支援欲しさに虚偽の報告をしているのかと多くの人間が報告を疑った。

 しかし日本国内には未だ健在である歩行要塞とエルギヌスが存在し、「今回の勝利は驚嘆に値するのは確かだが、日本戦線の決定的不利を覆すものではない」という見方が主流であり、南極総司令部の扱いも変わるものではない。

 

 ――4月3日。

 EDF北米第七工廠オースティンが、グラインドバスター搭載型攻撃衛星レーヴァテインの打ち上げに成功した。

 テキサス州オースティンにある第七工廠は、別名オースティン宇宙軍工廠とも言われ、EDF製軍事衛星製造の拠点となっており、打ち上げ施設も兼ね備えた大規模工廠だ。

 予定より早い完成となっており、今から一週間ほどで調整が完了し、発射可能となった。

 このタイミングで、全部隊にグラインドバスターによる歩行要塞攻略作戦『オペレーション・オービタルストライク』の作戦開始時期が布告された。

 作戦開始は、4月10日の正午。

 西海岸の趨勢を決める戦いが迫っていた。

 




あの、具体的に言うとですね、前話までの「衛星はすぐ撃ち落とされるので使えない」という設定やめようかと思いまして
なのでグラインドバスター搭載艦グレイジャーが攻撃衛星レーヴァテインに変更されております
理由は、やっぱ上から降った方が原作準拠に近くね?っていうのとグラインドバスターを衛星砲にするというのにロマンを感じたからです
でも実は最終的には歩行要塞や武装したレイドシップと艦隊戦などやってみたいという思惑がありますので、グラインドバスター搭載艦はいずれ出そうかなぁと。
そんなわけでムチャクチャやっておりますが今後ともよろしくお願いいたします……!

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