沖田総司という名前に聞き覚えはあるだろうか?
少なくとも、日本人なら十人中十人が知っている名前だと思う。
幕末の京都を中心にした治安を守る組織、新撰組の一番隊隊長である。
若くとも最強の天才剣士として謳われていた人斬り。
しかし、幼い頃から病を患っており、年の頃二十代というあまりに若い年でこの世を去った。
病弱の天才剣士というネームバリューに惹かれて、多くの人が創作物のキャラクターとして登場させてきたのだが、その中には、実は女性だったというぶっ飛んだキャラクターが存在していた。
『fate』
詳しく説明すれば長くなるので省くが、魔術師が古代の英雄を召喚して、互いに殺し合うという超人気作品。
その作品には魅力的なキャラクターが多数存在している(エミヤさんやアルトリア、それに岸波白野も最高)なのだが、その中でも最高に好きなのが――沖田総司だ。
何故好きなのか?
その疑問に一言で答えるなら――滅茶苦茶可愛い。その一言で足りる。
容姿は、ハイカラな和装を身に包んだ、薄い桜色の髪の美少女で、今までの沖田総司像に真っ向から立ち向かっている。
第一印象は、
「和服を着こなし、物腰柔らか、かつ謙虚」という絵に書いた大和撫子。
もうね、これだけで惚れるのは簡単なんだよね。
しかし、戦いとなれば、冷徹な人斬りに変貌するのだが……それが普段のお茶目さのギャップになって更に可愛く見えてしまう。
しかも、史実通り体が弱く、無理に動けば吐血し、その病のせいで仲間達と戦えない事に気を病んでしまい、ちょっとしたミスで凹み、吐血してしまう、という虚弱さに、なんだか庇護欲を煽られる。
更には、仲間と共に戦えない事を悔やみ、次叶うなら最後まで戦い抜きたいという健気っぷり。
もうKO寸前です。
しかも、二十代半ばで早世したという若さでありながら、その剣の腕前は現代の達人を軽く凌駕している。
沖田さんの代名詞『無明三段突き』なんて理解不能。
平晴眼の構えから全く同時、全く同じ場所に放たれる三つの刺突。
ここで注目して欲しいのが、ほぼ同じ――ではなく全く同時という点についてである。
剣をかじった事の無い素人でも分かると思うが、不可能だ。
剣を突く、そして戻す、また剣を突く。
それを同時にするなんて、矛盾している。
しかし、沖田総司はそれを可能にしてしまった。
絶技――そんな言葉でさえ足りない。もはや神業だ。
可愛い上に有能とかね、もう神かよ、と。
正直、傍目から見て気持ち悪い言われるほどに沖田さんというキャラが好きだった。ホント、どうしようもないくらい好きだ。大好きだ。
沖田さんのグッズは必ず購入して、沖田さんの二次創作を作ったり、友達全員に沖田さんの良さを普及したり、とやりたい放題にしていた。
だからなのか、俺は死んだ。
原因はハッキリと覚えていない。思い出そうとすると頭が痛む。自分が死んだ事を思い出すのを体が拒否してしまう。
だけど、そんな事はどうでも良かった。
もっと大切な事があったのだ。
それは――あの沖田さんに転生してしまった事。
俺は最初、Fate世界に沖田さんとして幕末の時代に産まれたのかと思ったのだが、どうやら違う世界らしいのだ。
現代社会に『伐刀者』という自分の魂を固有霊装として顕現させ、戦う異能者が存在し、銃などの現代兵器では無く、剣や槍などの近接武器で戦争をする世界。
前世ではオタクだった俺は――ピンッ! と閃いたね。
つまりこの世界は『落第騎士の英雄譚』の世界だ。
……正直意味が分からないです。
いや、なんで? なんで沖田さんの姿なのに違う世界? 接点なんてほぼ無いじゃん! しかもこの世界、割りと危ないし!
まあ、取りあえず剣の腕を鍛えますか。
目標は『無明三段突き』を出来るようになることで!