――何故あいつが? そう思い嫉妬した。
だってあいつは落ちこぼれで、落第騎士だ。そもそもあんな奴に破軍学園に入学する資格があるかよ。
だから。
あんな奴で良いのなら、僕だって――
「え? 告白ですか? あー、すいません。私は誰とも付き合うつもりは無いんですよ」
――なら、何で黒鉄といつも一緒にいるんだ?
「はい? 何でいきなり黒鉄さんの話になっているんですか? まあ、良いですけど」
「黒鉄さんですよね。黒鉄さんは私の初めて出来た友達なんです。えへへ~、良い人ですよ黒鉄さんは――私の自慢の友達です」
――そんなことはない! 沖田さんは黒鉄に騙されている!
「……あの、流石に私の友達を馬鹿にされては、器の大きい沖田さんでも怒ってしまいますよ。黒鉄さんに騙されているかどうかは、私が決めます。他人のあなたが気にする必要はありません」
――だけど!
「話は終わりですか? それなら沖田さんは帰らせて貰います」
――……あぁ。
……違う。
沖田さんは黒鉄に騙されているんだ。だけど、沖田さんはそれに気づいていない。
なら、黒鉄の化けの皮を剥がしてやる。そうすれば、自ずと沖田さんも気づくだろう。
皆も同じ気持ちだと賛同してくれた。だから、僕は間違っていない。
黒鉄が気絶した時、一瞬罪悪感がわいたけど、それは気のせいだ。
だって、僕は悪くない。悪くないんだから。
沖田さんを騙した黒鉄が悪い。 落第騎士の落ちこぼれのくせに、沖田さんにまとわりつきやがって。
絶対に許さない。
これからも黒鉄を嬲り続ければ、絶対に化けの皮は剥がれる。僕は間違っていない。絶対にだ。
そして、沖田さんから手紙が届いた。
● ● ●
第十二訓練所。
覇軍学園は、今は落ちこぼれとは言え、それでも名門中の名門校だ。
当然、施設も充実している。
訓練所は全12個まであり、更に夜12時まで開かれているのだ。
今の時間は、夜10時。
夜12時まで開かれると言っても、そんな時間まで練習する者はそういない。
当然のことだが、夜10時でも練習する者は少ない。しかも第十二訓練所は、寮からかなり遠く、平時でも使おうとする者は中々いなかった。
だがしかし、夜10時――空は暗く染まり、月が暗闇を照らす時間。
そんな時間に、集まる者がいた。
一人の目見麗しい少女と、それに群がるように立っている男達。
当然、少女が告白で複数の男の何股をしている訳ではない。むしろ、少女はかなり一途だ。
前世でも、作り物とは言え、ただ一人の少女を追い求めていた。
それは、今世でも同じだ。アレは恋人に尽くすタイプだろう。
と、そんなことを言っている場合ではなかった。
何故なら、その少女と男達の雰囲気は――かなり険悪であったから。
凍えるように寒い空気なのに、どこか熱い。気がつけば、体がヒリヒリと焼けるようだ。
重苦しい。すぐにここから逃げ出したい――
――そんな空気の中で、少女が口を開いた。
「……まったく、最初、学園長の言葉を聞いた時は、驚きと呆れを隠せませんでした……」
そして、同時に悔恨も湧き起こったものだ。
少女――沖田の前世の記憶の通りなら、この事件はもう少し後に起きるモノの筈だった。
しかし、沖田が考えるより、ずっと早く起きてしまった。
暴走――と言うのだろう。この場合は。
「なんせ、黒鉄さんが反撃出来ないことを良いように、散々虐げてきた者たち全員が――私に告白し、フラれた者なのでしたから」
その言葉に、沖田の前に立つ男子達全員が顔を逸らす。それは、あの桐原でも例外ではない。
「……私に彼を責める権利は無かったんですよ。この状況は、私の浅慮が招いたものでしたから……」
沖田は自嘲するように笑った。
まるで壊れたような笑みだ。無理もない。激怒した本人が、この事件を招いた元凶だったのだから。
それは、壊れたくもなる。
今の沖田は何もしたくないと言う虚無感に襲われていた。膝を抱えて、現実を断っていたかった。
……何も考えたくなかった。
しかし、それは出来ない。これは自分が招いた状況なのだから、その始末も自分が付けなければならない。
「ち、違うんだ! 沖田さ――」
「黙ってください……! 」
「――ッ! 」
弁明をしようときた桐原を、沖田は一喝して黙らす。
そこから盛れ出る殺気は、桐原はおろかこの地に立つ人間全てを恐怖で縫い止めていた。
「……確かに、この状況は私の浅慮が招いたことです。えぇ、それは認めましょう。ですが、実行者はあなた達です。未だ私が彼のために怒る資格があるとは思えませんが、しかしこの手――血に染めましょう」
露出過多な忍装束だった彼女は、この場所で初めて浅葱色の羽織を纏った。
その瞬間、凍えて震えるような――逃げ出したくなるプレッシャーが男達に襲いかかる。
しかし、逃げ出すことは、彼女から溢れるプレッシャーそのものが許さなかった。
男達は、理性ではなく本能――全ての生物が持つ生存本能とでも呼ぶようなモノが無意識に、霊装を出現させた。
即座に構える。
だが、
「き、君は霊装を使わないのかい……? 」
そう、彼女は羽織は纏ったが、主武装である刀を手に取らなかった。
これでは、男達も手が出せない。
彼等は無抵抗の男を嬲るような人間のクズであったが、一応惚れた女が無手の状態でも手を出すような――性根の腐った外道ではなかったらしい。
これには、沖田は少しだけ意外そうな表情をする。
まあ、無抵抗の者に手を出した時点で、修正は困難なクズであるのだが……。
「使いませんよ。あなた達程度に抜けるほど、私の刀は安くないんです」
この言葉には、流石に男達も怒った。ようするにキレた。
こんな良家の虚弱そうな見た目の少女に馬鹿にされたのだ。男なら誰だって怒るだろう。
「それに、《コレ》なら本気を出しても、相手が壊れることはないですから、好きなだけやれます」
そう言って沖田は、拳をかざす。
「覚悟して貰います。今宵、あなた達の性根は、修正し過ぎるまで修正し尽くしましょう! 」
今作の桐原さんは、沖田さんに恋をしています。
本人は認めるつもりはありませんが、完全にお熱です。
《PS》
桐原さんって某運命のワカメさんに似ていると思いませんか?