……や、やってしまったぁ~。
黒鉄さんとの模擬戦で吐血して早一時間が経っていた。
俺は吐血しても慣れているおかげで、すぐに復帰出来たが、黒鉄さんはまだ安静のために睡眠を取っていた。
その黒鉄さんを、俺は診ていた。
黒鉄さんは青白い顔で横たわっていた。……微かな息が聞こえなければ死体と見紛うほどに、彼の全身からは生気が抜け落ちている。
これが、《一刀修羅》の副作用。
人間が本能的に持つ生存本能を意図的に破壊することで、本来使えない力を一分間に出し尽くし、一分間だけなら黒鉄さんは誰にも負けない修羅となれる。故に、その副作用は、それだけ絶大。
使えば、一分後にはまともに呼吸すら出来ないほどに衰弱する。
こうなるのは、当然の摂理と言えた。
しかし、彼はどうして、こんなに傷ついてでも、魔導騎士になりたいんだろう?
いや、彼の根源は本を読んで知っている。けれど、第三者視点から見て、知ったかぶりになるのはどこか違う気がする。
一回、ちゃんと彼に聞いてみたいな。
……だがしかし、本当にやってしまった。
何だっけ俺は黒鉄さんの実力を皆に知らしめるために、ある作戦を実施したんだっけ。
題して『沖田さんと模擬戦させることで、黒鉄さんが実は強かったんだと思い知らせる――大作戦~! 』
出来るだけ、黒鉄さんを強いと思わせるように加減しようと思っていたんだけど、なんか無理だった。
別に心理的な理由じゃない。
所詮は人殺しの技術だ。俺は別に黒鉄さんのように剣の技術に誇りを持ったことは無いし、ただ沖田さんに近付くための手段だと割り切っている。
だから、戦士に手加減は出来ないなんて――そんな武人らしいこだわりは持っていない。
沖田さんの言葉じゃないが、戦場に主義主張とか、そんな綺麗なモノなんて、必要ないからね。
生きるか死ぬか、それだけだよ。
まあ、そういう訳だから、俺は当初黒鉄さんに手加減するつもりだった。
しかし、俺は気づいてしまった。
……あれ? 俺、手加減とかしたことあったっけ?
手加減ってどうすれば良いんだ?
いや、別に黒鉄さんに負けることは簡単だ。隙を作れば、黒鉄さんなら逃すことは無いだろう。
けれど、俺は自分で言うのは何だが、不器用なんだ。負けようとしたら、動きの精彩が悪くなるのは目に見えていた。
そんなことを考えていたら、何だか考えるのが面倒になって、普通に適当にやってみた。
黒鉄さんなら、受け止めてくれると信じて。
いや~、さすが黒鉄さんだね。俺の動きに目が追えなくても、俺の居合いを避けるなんて、さ。
オリジナル沖田さんの居合いは、彼女を舐めきっていたとは言え、彼の騎士王すらも飛頭蛮状態にしたのに。
俺もまだまだ鍛練が足りないなぁ。俺の求める理想は、まだ遠いということか。
ていうか、沖田さんを舐めてた騎士王……死ね。
とにかく、まあ、俺としては満足出来る試合だったのだが……観衆から見て黒鉄さんの回避は無様に映ったらしくて、なんか黒鉄さんの株が下がって、その黒鉄さんを翻弄した俺の株が上がってしまった。
……あれ? こんなつもりじゃなかったのに。
いや、ホント、どうしよう?
やっぱり、黒鉄さんにはちゃんと謝罪しておかないとな。やっぱり土下座かなぁ……。
「……ん、っ」
お、黒鉄さんが覚醒したようだ。
さて、どうしようかなぁ。