あの人を重ねて   作:kwhr2069

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大変遅くなってしまいました、すみません!

今話で、HBP第三弾も終わりとなります。
よろしくどうぞ。

鞠莉ちゃん、Happy Birthday!!


鞠莉side

「ふぅ~、やっぱりマイホーム、というのは落ち着くわねぇ~」

 

 自宅、もといホテルオハラの自室。

 

 アメリカからの帰国後、荷物を置いてバルコニーから海を眺め、そう呟く。

 

「…Beautiful...」

 

 久しぶりに見た景色に、思わずそう言葉が零れる。

 

 

 ふと。

 昔の記憶がよみがえる。

 

 港の方から一筋の光が照らされ、嬉々として家を出ていたあの頃の記憶。

 そう、ワタシが今でも忘れることのできない、あの二人と過ごした日々の記憶。

 

『この空は繋がってる、どんなに遠くてもずっと』

 

 ワタシが果南に言い、言い返されたそのセリフが、ふっと思い浮かぶ。

 

 

 空を見上げるとそこには、向こうではなかなか目にかけることがなかった満天の星空。

 

 どの星がどの星座とかは分からないけど、昔、色々教えてもらった記憶が浮かぶ。

 

「やっぱり、ワタシにとっては、この場所が...」

 

 

 と、その時、コンコン、と部屋の扉が叩かれる。

 

「鞠莉お嬢様、お母様がご帰宅されました」

 

「あら、そう。OK~、すぐ下に向かうわ」

 

 そう答えて、自分の荷物を整理することに。

 下に向かうついでに、色々買ってきたものを持っていくのだ。

 

 

 そこで、何となくふと思いつく。

 久しぶりに、淡島神社へ行ってみようと。

 

 最後に行ったのはいつだっけ。

 

 まだダイヤは東京にいるみたいだし、果南はいないし。

 せっかくの機会だから、いろんなトコに行ってみよう、誰も連れず、一人で。

 

 

 明日は...雨が降るかしらね?

 

 

*  *  *  *

 

 果たして。

 

 天気は、見事な晴れだった。

 

「やっぱり、ダイヤか果南なんだわ、Rainy girlは」

 

 これまた、高校時代の記憶がよみがえってきた。

 

 あれは確か、浦の星でやった閉校祭の、少し前くらい。

 

 卒業後どこに行くかを、初めて三人で話した日。

 ずっと皆一緒にいられますように、と星に願った日。

 

「結局、今は皆もう離れ離れ...。やっぱり神様はカンドー、ね」

 

 ここにいると、昔の記憶がいっぱい頭の中に流れてくる。

 ワタシにとっては、それが懐かしく、また少しだけツラい。

 

 

 そんなことを考えながら歩いているうちに、神社の入口のところに来た。

 目の前には、懐かしい階段が、上まで続いている。

 

 いつぶりなのかしら、と思いながら、ワタシは階段を昇り始めた。

 

 

 

 久しぶりだったからなのか。

 階段は、思っていたよりもキツかったが、ようやくもう少しで終わりが見えてきた。

 

「(…あれ、でもワタシ、どうしてここに来ようと思ったのかしら?)」

 

 今になって浮かぶ疑問。

 

 しかし、それも束の間。

 階段の最後の一段を昇り、ワタシは無事に頂上へ着いた。

 

 達成感に浸っていると。

 

 目に入ったのは、一人の女性。

 

 その姿は、どこかで見た覚えがある。

 もしかして、

 

「…か、果南?」

 

 いや、違う。

 果南とは違う、でもなんだか似ている。

 

 そう、あのヒトは。

 

 

「…ノゾミさん?」

 

 手を合わせ、お参りをしている人にそう尋ねる。

 

 礼を終え、頭をあげてこちら側を向いたその人は。

 紛れもなく、イタリアで出会ったその女性だった。

 

「マリ、ちゃん?なんでこんなとこに?」

 

 驚いた顔でそう聞いてくるノゾミさん。

 

「いえ、それは、コッチのセリフ...ノゾミさんこそ、なんでココに?」

 

「私?私は、まあ...気分転換、てとこかな」

 

「気分転換?」

 

「うん、パワースポットって言われるようなとこに行って、気分転換するん」

 

 ウーン、分かったような、分からないような。

 

「それで?マリちゃんはなんでココに?」

 

「ワタシは、元々の自宅がこのあたりなので...」

 

「あっ、そうやったんやね、それはなんや、えらい偶然やね」

 

「ノゾミさんは、たまたまココを選んだっていうことですか?」

 

「まあ、そういうことになるね」

 

 

 …なんだかワタシは、大変な偶然にあってしまったみたい。

 

 

*  *  *  *

 

 地元の人なら、と、ノゾミさんの提案で、淡島のことを色々教えながら歩いて回ることに。

 

 ワタシ自身久し振りのこの場所なわけだけど、ホントに懐かしいトコばっかり。

 

 

 その後、少し歩き疲れたのもあって、ホテルに戻ることにした。

 自宅がホテルと言った時のノゾミさんは、驚きと納得とが入り混じった顔だった。

 

 

 入るとメイドに、お客が来ていると言われた。

 

 

 そのお客は、ダイヤだった。

 

 もう少し遅くなる、と言ってたからチョット予想外だったけど。

 久々に見たその顔は変わってなくて、なんだか、すごく安心した。

 

 そして、ノゾミさんと対面したダイヤは驚きの新事実を言い放った。

 

 なんと、ノゾミさんは、あのμ’sの東條希さんだというのだ。

 

 え?、と思った。

 かなりビックリした。

 

 ノゾミさんも、隠す気は無かったけど、聞かれなかったから、と。

 

 

 その後は、ダイヤを落ち着かせるのが大変だった。

 なんだかソワソワしてて、フツーにワタシとノゾミさんが話していると、ワタシのことをなんか咎め始めた。

 

 

 昼食後、ワタシがバルコニーでのんびり過ごしていると。

 

「ダイヤちゃん、可愛らしい子やね」

 

 ノゾミさんが話しかけてこられた。

 

「それ、本人に言っちゃダメですよ、調子乗っちゃいますから」

 

「え~、いいやん、別に」

 

「色々言われるワタシの身にもなって下さいよ...笑」

 

「ふふっ、そうやね」

 

 そんな、とりとめもない話をして。

 

「そうだ、鞠莉ちゃん」

 

「何ですか?」

 

「ちょっと今更やけど、言っとこうと思って。

 あのさ、ロシアに連れてってもらったの、感謝してるんよ」

 

 突然、そんなことを話し出すノゾミさん。

 

「でも、友達は見つからなくて、結局行くだけムダだったんじゃ...」

 

「いや、意味はあったよ。私自身、おかげで気持ちが晴れた」

 

「そう、ですか。それなら、良かったですけど」

 

「それにな、実は――、」

 

 

 

「ええっ?!嘘!!」

 

「そうなんよ、びっくりやろ?

 その子のことを気にするのをやめて、途端に連絡が来るんやもん、驚いたで。

 言うなれば、鞠莉ちゃんは、さしずめ幸運の女神、ってとこかな?」

 

「いえいえ、ワタシはそんな、何も...」

 

「…ねえ、鞠莉ちゃんは、悩みとかないん?」

 

「ワタシの悩み、ですか?」

 

「うん。イタリアで、私の悩み聞いてくれたやろ?やから、そのお礼」

 

 お礼、なんて。

 

「…ツマラナイと思いますよ?」

 

「私の悩みも、十分つまらんもんやったやん?」

 

 

 そう言われ、改めてノゾミさんの顔を見る。

 その真剣な眼差しを見て、ワタシは、自分の悩みを打ち明ける決心をした。

 

 

*  *  *  *

 

「…なんや、悩み、ちょっと似てるかもなあ」

 

 ワタシの話を聞いたノゾミさんは、そう言った。

 

「そう、ですかね」

 

「ウチら、実は似た者同士なんやない?」

 

「ウ~ン...どうでしょう?」

 

「ちょっと。そこは、そうですね、やろ?」

 

「そうですか?」

 

「そうやで」

 

 悩みを打ち明けると、心が軽くなったような気がする。

 

「鞠莉ちゃん、これからのこと、占ってあげよか」

 

「占い?」

 

「うん、ウチ、こう見えても大の得意なんよ」

 

「じゃあ、せっかくなので...」

 

「オッケー!ちょっと待っててな、確か、ここに...」

 

 そう言ってノゾミさんが取り出したのは、

 

「タロットカード?」

 

「お?知ってるん?」

 

「後輩に一人、そういうのが好きな子がいたので」

 

「なるほどね~」

 

 

「よし、準備完了!ほな、いくで!」

 

 

 ビッ、と勢いよく束の中から取り出されたのは、

 

「太陽...?」

 

「…うん、太陽の、正位置やね」

 

「それで、意味は?」

 

「…知りたい?」

 

 うんうん、と首を縦に振って応える。

 

 

「…教えな~い」

 

「チョット、どういうことですか?」

 

「気になるなら、後で自分で調べてみて」

 

「ノゾミさ~ん」

 

「いいやん?せっかくなんやし、自分の結果は、自分で確認するんが一番やって」

 

 そう言いながら、なぜか荷物を片付け始めるノゾミさん。

 

「もう、帰っちゃうんですか?」

 

「うん、もうちょっと居ても良かったけど、長居するんもあれやし、ね」

 

「そうですか...」

 

「鞠莉ちゃん。…友達、大切にしてな。いつまでも、仲良くするんよ」

 

「ハイ、モチロンです!」

 

「うん、良い返事やね。

 …そうや、これだけは最後に言っとくわ」

 

「...?」

 

「実はな、この旅行の前にも、タロット占いしてん。

 それが、さっきと同じ結果やったんよ。…やっぱりウチら、似た者同士なんやない?」

 

「…そうですね、きっと!」

 

 そう言うと、ノゾミさんは満面の笑顔をワタシに向けてくれた。

 

 

「…じゃあね、鞠莉ちゃん!」

 

「はい、またいつか、ノゾミさん!」

 

「うん、バイバイ」

 

 

 そうして、ノゾミさんは淡島を後にした。

 

 

 一枚のタロットカードを、ワタシに渡したまま。

「(そうだ、このカードの意味...)」

 

 スマホを取り出して、検索する。

 

 すると。

 

「……!!」

 

 その結果は、予想外なはずなのに、なんとなく考えていたもので。

 

 気付けばワタシは、ふっと顔をあげ、ノゾミさんが去って行った後を眺めていた。

 

 

 

 そして、そんな時。

 

 スマホに入る、着信音。

 

「(この音楽は、まさか...)」

 

 恐る恐る、電話をとる。

 

 もしもし、と、久しぶりに聴いたその親友の声は。

 何故か、久しぶりという感覚はなく。

 

 つい昨日のことのように思い出せる親友たちとの記憶が、頭を駆け巡る。

 

 

 

「…ワタシにとっての幸運の女神は、間違いなくノゾミさん、アナタだわ」

 

 そう、自然と言葉が漏れた。

 




綺麗に終わらせるのに時間がかかってしまいました...。
(かといって、これが綺麗な終わり方なのかどうかはわかりかねますが。)

タロットの意味、気になるという方は調べてみてください。
私の考えた意味が、出来るだけ多くの方々に伝わると嬉しいです。

また、前話で言及していた鞠莉視点の書きにくさについてですが、結局、推敲する暇はなく、出来るだけ読みやすいように、それでいてマリーらしさが出るように心がけました。皆様が納得できるような形になっていれば幸いです。

と、いうことで。HBP第三弾、いかがだったでしょうか。
のんたんとマリーの誕生日を祝う小説として、読者の方々に満足していただけていれば、私としても書いた甲斐があったというもの。
読んで下さるだけでも嬉しいですが、折角なので感想とかくれたら、もっと嬉しいです笑。

一つ心残りなのが、ラブライブ!の楽曲を使う場面がなかったことでしょうか...。
他の二つのHBPではやっていただけに、もう少し構成を練るべきだったのかもと少し反省しております。

次回は、一ヶ月後...になるといいですが、アイディアが浮かばなければ先送りという可能性も...笑
とにかく、形にできるように頑張っておきます!

では、これにて、のぞまりHBPは終了とさせてもらいます。
今回は、本小説を読んでくださいまして、誠にありがとうございました!!

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