城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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 【聖都の獅子王】 白② 
Lion king of Holy city
ワールド・エンチャント。
 各プレイヤーはアップキープの開始時、そのプレイヤーが選んだ自パーマネントは場に出ているいずれかの土地のコピーとしてタップ状態で再び場に出る事を選んでもよい。聖都の獅子王が場にいる限り、それらは破壊されない。

――君がいたあらゆる場所。
 






最終話

 

 

 

 サー・アグラヴェインが階段をかけ上がると、そこには光に満ちた玉座の間と、彼が主君と仰ぐ王が居た。

 

「陛下・・・、御無事ですか」

 

「ああ。貴公は満身創痍だな」

 

 玉座の間を流血で汚すまいと、鉄の騎士は全身に力を込めた。

破れた血管は急速に収縮して出血が止まる。その時視界の片隅に見慣れた槍の欠片が見えたが、騎士は気にとめなかった。

 

「不埒者に、少々手こずりました。しかし倒れてなどいられませぬ。・・・まだまだやる事は、山積みで」

 

「…もう良い。ゆるりと休むが良い」

 

「御冗談とは流石陛下、全霊ですな。しかし現実が、ここまででも。私は最期の最期まで・・・、」

 

「許す。もう休め。 働きすぎなのが貴公の唯一の欠点だった」

 

「・・・・。 はは、まさか。貴方に比べれば、私など―――」

 

 

 

 

 

 

「勝ったか。この闘い、マスター達の勝利のようだぞ。三蔵」

 

「ええ、やったわね」

 

「おい離せ!俺は親父の仇をッ!!!」

 

「お主は眼を瞑っておれ。眼を開ければ、お主の父は近くにおるよ」

 

「冗談抜かすな!!!そんなことが有り得るか!」

 

 ワーギャー騒ぐ、せっかくの決闘を邪魔した青年を、アーチャー・俵藤太はその剛腕で押さえた。この特異点が修復されていくのを肌と霊基で感じ取った彼は、同時にかの兵士の敗北も悟っていた。

 

「それが有りえるかも!」

 

「・・・。なあ三蔵、お主こうなる事が分かっておったのか?」

 

「何が?」

 

「御仏の導きという奴よ。かの兵士の運命を。――違うか?」

 

「うーん、そうねえ……」

 

 キャスター・玄奘三蔵は少し逡巡すると、口を開いた。

短刀に刺されたあの兵士が、まるで何事も無かったように一目散に王城に向かって行ったのを最後に想い、そして迷い無く言った。

 

「兵士君の運命は分からないけど、きっとこうなるって思ってたわ。だってあの人、マシュちゃんの盾を懐かしそうに見てたものっ!ずっと!」

 

「・・・。あの兜の下が見えていたのか?」

 

「あったり前でしょ? あたしを誰だと思ってるのトータ!」

 

「―――流石はお師匠様だ。 ハハハハハ!」

 

次に逢った時はもう少し敬意を払おうか。英霊・俵藤太はそう思ったのだった。

 

 

 

◆ 

 

 

 

最終話 『It is everywhere you've ever been.』

 

 

「――おい。無事か、ビナー1」

 

「――……。ケテル1か」

 

「――・・・、もう終わりだな」

 

「――……ああ」

 

「――もう声は聞こえない。ローナルド師は、もうこの城には」

 

「――……あの人は、知らなかったのだろうな」

 

「――ああ。王からギフトを授けられた者と我ら粛正騎士に、心の声が聞こえていた事は最期まで知らなかっただろう」

 

「――あの人は本当、生前から変わらない」

 

「――・・・心と言動が一致している。偶にぽっと出る例え話には笑っていいものか困ったがな」

 

兜にひびが入る。それは今生の彼らの終わりの証。

 

「――…あの人はずっと、母から聞いた話の通りだった。毅然としながらも、時より童みたいな事をする」

 

「――男ってのはそういうもんだろう?」

 

「――。…そうみたいね」

 

 粛正騎士の兜が割れ落ちる。

全盛期、若く猛々しい、全ての兵士の顔が暖かい風光の祝福を受けた。

 

「・・・・お前、その顔」

 

「獅子王陛下、ありがとうございました。若い姿で現界させて頂いて。この姿であの人に、逢わせて頂けて」

 

 

 

 

『…もうこれだけになってしまいましたね。 フスカルさん』

 

『そうだな。ビルギット』

 

『なあに、もうすぐ王が帰ってこられる。生き残っている騎士様も。 帰る場所が無ければ誰も帰ってこられないのですから、正門兵たる我らは我らの仕事を』

 

『ビルギット!よく言ったァ!!』

 

『了解!』

 

『了解!』

 

『・・・。その事なんだが』

 

『?』

 

『お前ら、生きろ』

 

『………はあ?』

 

『何を言ってるんです?冗談きついですぜローナルド殿』

 

『俺は冗談が苦手だ』

 

『―――。 本気で言ってるんですか』

 

『実はこの円卓の間な、緊急の脱出口ってのが有るんだ。一回こっきりの使い捨てのな』

 

『そんな事は聞いてません』

 

『昔勝手に俺が作ったからな。・・・考えてもみろ、何も全員が全員ここで死ななくてもいいだろう?誰かが守り続ければいいんだから。そしてそれは俺だ。だって、ほら、俺は耄碌した老兵だから』

 

『言っていい事と悪い事の区別も出来ないくらいボケたんですかフスカルさん!!!!!』

 

『ツバ飛びすぎ・・・』

 

『死んだ戦友達を置いて逃げろと!? しかも一体どこへ行けばいいんですか!?!?ローナルド殿、俺たちの家はここですよ!!!!!』

 

『西に行け。そこに俺の故郷がある。俺の家族はもう死んでるだろうが、俺の名前と族長の父・オスカーの名を出せば悪いようにはしない筈だ。行け』

 

『・・・いかれてるッ!!!』

 

『誰かが生きて、王と騎士様方の話を後の世に伝えなきゃいけねえだろうが。それはお前らにしかできねえ仕事だ。よろしくどうぞ』

 

『・・・・そんな』

 

『――、フスカルさん』

 

『あん?』

 

『口が悪いのは、それが素だからですか?』

 

『まあね。育ちが悪いから』

 

『…私の母も、貴方と同じような人でしたよ』

 

『そりゃ光栄だ。何て名だ?』

 

『マリアといいます。年老いて私を産みましたが、ずっと綺麗な人でした』

 

『へ~、奇遇だな。俺の妹と同じ名前だ。もうずっと会ってねえが』

 

『剣がとても上手で、槍みたいに振るう人でした』

 

『そうかい、けど思い出話はまた逢った時でいいだろ。分かったから早く行け』

 

『―――大事なのは間合い、そして退かぬ心だ』

 

・・・・・。

 

『・・・・お前それ、』

 

『母から教わったこの教えと共に、私は伝え続けます。何処へ行っても、たとえ海の向こうに辿り着いても。…幾つになっても』

 

―――さようなら、伯父さん。私は強い人間です。決して貴方の事は忘れません。

 

「そして、私は弱い人間です。貴方の事は忘れられません」

 

 粛正騎士ビナー1。またの名を兵士ビルギット。

本名ブリジット・ローナルドはゆっくりと、この特異点と共に目蓋を閉じた。

 

あらゆる輝かしい想い出は、彼女をいつも包んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・。

 

・・・・・。

 

・・・・・。

 

「・・・・」

 

 ?

ここ何処だ?暗い部屋だし、しかも程々に狭い。でも何か逆に落ち着くここは一体・・・・。

 

「やったっ、やったよわたし!」

 

「・・・・?」

 

「聖杯の力ってすごいなあ…。――城を守る誰か!来い!具体的にはわたしの聖域を部屋の前で護ってくれる誰か!!お願い!!!って念じたらちょっぱやでポンだよ! これで姫(わたし)はずっとここに引き篭もってられる……!」

 

「・・・・」

 

ゑ。あの、貴女は? 

 

「あれ? 無理くり召喚したから酔っちゃった?意識混濁とかしてない…?」

 

「いえ召喚酔いとかでは無く。・・・あ、声が」

 

「わ!渋い声! 生前は幸運が重なって意外と長生きしたタイプと見たよ!」

 

声が出た。何だかよく分からんけど嬉しい。

 

「どうかした?姫。そろそろ祭りを始めるわよ。 ……あらあなた新顔ね、名前は?」

 

「・・・フスカル・ローナルド。霊基種別はランサー?のようだが」

 

「よぅし、これでバッチリだね。じゃ、祭りを始めちゃおう!ずっとずうっと、永遠に終わらないくらいに!!!」

 

「それはさて置き、ようこそオールドマン。とりあえずこのカボチャの被り物とこの鎧具足を着て頂戴。それがここの城兵の正装よ」

 

「・・・分かった」

 

 なあにこれ。めっちゃごつい。めっちゃゴテゴテしてる。

あ、マイ槍はちゃんとあるね。・・・しかし何だか妙に懐かしい気がするなあ、この姿。こんな物は頭に被ったことないけど。

 

「なあ、教えてほしいんだが」

 

「うん?何かしら」

 

「ここは何処だ。というかアンタ誰だ」

 

「――後輩。私はあなたより先にこの城に来てるの。先輩に対する口の聞き方がなってないわよ? まあ、この怠け姫はどうでもいいけれど」

 

「ひどい!」

 

「・・・・。すいません先輩。どうか私に教えて頂きたいのですが、貴女達は誰で、ここは何処なのですか?」

 

「よく出来ました。私はメイガス・エイジス・エリザベート・チャンネル。メカエリチャンと呼んでくれて構わないわ」

 

「わたしは刑部姫。あなたを無理やり、ゴホン、召喚したマスターです。そしてここは姫(わたし)のお城」

 

「でも、ただの城じゃあないわ」

 

「・・・というと?」

 

眼前のマスターはやや引きつった顔で、先輩は嬉々とした顔で言った。

 

「ここは姫路城。我が麗しき、チェイテピラミッド姫路城よ!!!!!」

 

「――――」

 

 絶句した。 生前は色んな城を見てきたが、まさかそんな絶句物な色物があるなんて思いもよらねえ。

 

 城を枕に死んだからここに呼ばれたのか?

 

 城を守る事に起因して、ここに俺は来れたのか?

 

 だからこんな間抜けな顔を浮かべているのか?俺は?

 

―――もう分からん。でも今度は飯食えそうだし酒呑めそうだし、何だか楽しそうだ。 

 

?・・・今度って何だ?

 

 よし、もうこうなったら呟くしかないな。誰だってそうしてる。俺だってそうする。―――そして今回もきっと、きっと良い出会いが有るだろうと槍の女神様に祈願して。

 

 

 

 

「城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おしまい。


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