鉄板屋「龍驤」   作:餅煎餅

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10話

 

 

 鉄板屋龍驤、海上屋台支店。真夜中の海上にひっそり灯る屋台の光。端から見れば深夜の海上に屋台とかホラーでは? ウチは訝しんだ。

 搭載されていた屋台用艦載機が近くを偵察している中、ウチと響は出来立てのたこ焼きを食べていた、優雅やな。

 いや、屋台用艦載機ってなんやねん。ワケ分かんないで。なんで爆弾の代わりに搭載してんのたこ焼きやねん。

 

「客引き用屋台艦載機だよ。直上からの急降下でたこ焼きをお見舞いして鉄板屋を宣伝する目的で作られた艦載機だよ。宣伝に全てを費やしたために攻撃力が皆無になった産廃艦爆の通り名もあるよ」

「たこ焼きに攻撃力あってたまるか」

「制作者は正気と狂気の狭間で兵器開発をする横須賀の工作艦明石という説が有力かな」

「変な肩書ついとるなアイツ」

「それよりも私が屋台引いて大丈夫だろうか」

「ええで、ウチより機動力あるからむしろ適任やろ」

「スパシーバ」

「最終確認やで。ウチらは攻撃したらアカン。艦娘としてではなく、鉄板屋として来てるからな。せやから相手の息切れを待つ作戦で行こか。やることは簡単、避け続けるだけや」

「"目"は頼んだよ」

「ウチに任しとき。あ、見つけたわ、移動するで」

 

 

 

 

 艦載機からの情報を元に、相手の進軍ルート線上に移動し終える。たこ焼き式艦爆はまだ空を飛んだままだ。

 

「響、あの辺に照明弾」

「ダー」

 

 響が指示通りに照明弾を撃ち込むと、捕縛目標である艦娘の姿が照らされる。彼女は焦りながらもこちらの屋台の光に向かい、持っていた砲塔を向けた。

 

「……来たな、回避するで。前進」

「ダー」

「突っ込むのは最後や。乗り切るで」

 

 

 

 

 

「取り舵後前進や」

「……照明弾の時の反応も合わせるとずいぶん練度が低いね。経験すら積んでないんじゃないか」

「指示出してる奴が戦い上手なら練度の差なんて覆せるで、警戒して行こか」

 

「止まれや」

「単調だね、いいから撃て撃てって感じがするよ」

「油断させておいての手があるかもしれへんで?」

 

「あー適当に前進……バカスカ撃ってきたわ」

「さっきまで深読みしていた龍驤はどこに」

「夜戦なのにバカスカ砲だけ使って魚雷使ってない時点でお察しやで」

「今さっき思ったんだけど、彼女の司令って"シーグース"の誰かになるはずだ。元提督とかいたりするのだろうか」

「いたらこんな適当な戦い方せんやろ。とにかく撃て撃てって経験のないやつに指示するのが間違うてる……あ、魚雷発射しおった。ひーびき♪ 被弾したら材料が全部吹き飛ぶでー♪ 自力で避けえや♪」

「舐めプはよくないよ」

「正直ウチ必要ある?」

「ない」

 

 

「お、頃合いやな。突っ込んで確保するで」

「全速前進ダー!」

 

 

 

 

 

 先ほどまで攻撃していた艦娘のもとにつくと、見るからにうなだれていた。

 いくら経験がないとはいえ、弾切れするまで一切攻撃があたらなかったのも相当キているんやろ。

 

「弾がねえのにどうしろってンだよ……」

「ドーブライヴェーチェル。海上屋台支店だよ。屋台と言えばおでんが食べたくなるよ」

「検討するわ。ところでアンタが江風で間違いないな?」

「江風? それが私の名前なンですか?」

「……ふむ、君はどこの鎮守府所属だい?」

「分からねぇ、説明されずここに来てアンタらを攻撃してたンだ」

「…………ほほう。なるほどなるほど」

「なんかわかったんか」

「うーむ、今ここでは話せない、許してくれ」

 

 響は難しい顔になったし、それほど深い問題なんやろな。しゃあないし今の状況を考えよか。江風を無力化して確保したんはええけど、これからどないしようか。

 そう考え始めた矢先、レ級から受け取っていた無線機から通信が入った。

 

『リュッチ、今スグソイツカラ離レロ!』

 

 いつになく慌てた様子のレ級の声が聞こえた。言うてイヤホンしてるウチにしか聞こえてない。

 

「え、どないしたんや急に」

『ソイツノ艤装ニ爆弾ガ仕掛ケラレテル!』

「艤装に爆弾が仕掛けてあるやと!?」

「なンだってぇ!?」

「なんだって!?」

 

 思わず江風の艤装に手を伸ばす。確保されたとなれば起爆シーケンスに入っているかもしれない。艤装の接続を解除すれば間に合うかもしれない。そう願って。

 

 

 

『危険信号感知、MIフィールド展開』

 

 しかし、それよりも早く無機質のようで聞きなれた明石の声が屋台から鳴り響いた。それと同時、屋台のあちこちから白い煙のような何かが吹き出して屋台を覆い始める。

 

「なんやなんや急にぃ!!」

「何が起こってるンですか!?」

「ウチにわかるわけないやろ!!」

「二人とも一旦落ち着こうか。素数だよ、落ち着いて数えるために早見表を作っておくといつでも慌てられるよ」

「こんな状態でボケられても困るでぇ!?」

 

 やがて、霧が屋台を覆うとこの状況を作り出したであろう張本人(明石)の声が屋台柱のスピーカーから鳴る。さっきのもここやったのか。

 

『どーもどーも! 皆さんご存じ"最も龍驤さんに近くて妬ましいランキング"王者の明石です!』

「なんやねんそのランキングゥ!」

『今適当に作りました』

「皆さんご存じなワケあるかァ!!」

『あ、これ録音したのを再生しているだけです。先ほどの発言は不自然ですが、龍驤さんがツッコんでくれると信じてます』

「ウチのツッコミ読みィ!!」

 

 明石が録音した音声を再生しているだけなのになんでこんなウチは疲れるんやろか。パニックが一周周って落ち着いてしまった。

 

『この屋台は龍驤さんを守るために、接続されている状態だとマイナスイオン粒子、略してMI粒子を放出しています。MI粒子が危害を加えそうな信号を感知すると屋台から粒子を一斉に放出させ、信号の伝達をさえぎることができます。他にも無線が通じなくなったりレーダーから映らなくなりますがオマケですね』

「マイナスイオンってなんやろな」

「江風に言われてもわかンねえ」

「マイナスイオンだよ。和製英語だよ」

「そういうことやなくってな」

『まぁでもこのメッセージが流れるという事は、今店内には遠隔起動の何かしらがブロックされたってことですね! ねえどんな気持ち今どんな気持ち!?』

「録音で煽んなや」

『……はぁ、はぁ、録音なのに屈伸煽りしても意味ないですね。疲れました』

「無駄の極みが過ぎるわドアホ」

「わざわざ律儀に突っ込むんだね、龍驤」

『あ、龍驤さんが屋台との接続を切るまではイオンが出続けます。爆弾抱えてたら処理してくださいね。以上録音メッセージは終了です』

「……とりあえず明石んとこ行こか、響」

「ダー。久しぶりの鎮守府だよ」

「江風はどうすりゃいいンですか?」

「とりあえずこのまま席に座っとれ……うわマジや、アイツに通信繋がらへんわ」

「マイナスイオンってなンですか?」

「ホンマなんなんやろな」

 

 明石ならたぶん何とかしてくれるやろ。それにしてもこの艦娘……これからどないしようか。

 自身がどこ所属かわからず、あげく、自分の名前すらもわからなかったんやからなぁ。たぶんやけど、保護したのがウチになるからウチが面倒見んとアカンのやろなぁ。

 

 

☆ 

 

 

 無線機がフッと切れる。リュッチに切られたのだろうか、すぐに通信しようとするが反応がない。

 

 

「…………」

「ハハハハハッ! これで貴様の仲間は海の藻屑だぁ! 残念だったなぁ、深海棲艦!!」

「…………」

「人間ってのは欲汚ねぇ生き物なんだよ! 買収に応じないあいつらもそうなんだ。お前は人間ってやつをわかっちゃいねえ! あいつらは便利なお前を利用しているだけなんだ!」

「…………」

「なぁ、お前は金が欲しいんだろ? わざわざ高級食材取ってきてそれをあいつらの魚市場で売りさばいている! あそこだけじゃなくいろんなところで売りさばけば更なるお金が手に入ったんだ!」

「…………」

「それを俺たちが手伝うって言ったのに断った! 今爆発したお前の仲間はその代償だよ! ハハハハッ!!」

「……自爆装置ニ、所属ト自身ノ判別不可能ナ記憶処理。裏ガ確定シタヨ。アリガトウ」

「は?」

「イヤハヤ、残ルハ証拠ダケドモ、現行犯ジャナイ限リ難シイナー。ア、タカガ組織ノ一員デアル君ニハ……イヤ、組織ニ関係ナイ話ダネ」

「ハッ、意味が分からないことをごちゃごちゃと」

 

 他の密猟者は皆沈んだ。残るはこのギャーギャー喚くコイツだけだ。起爆装置を握りしめているそいつの襟を尻尾で加えて持ち上げる。

 これから沈むだろう彼の表情は勝ち誇った笑みのままだ。恐怖なんてものは感じられない。つまらん。

 

「オ前達コソ、深海棲艦ヲ何モ分カッチャイナイ」

「冥土の土産にぜひとも聞かせてくれっ!!」

「ドッカニ無線機繋イデル人間ニ聞カセルワケネーダロバーカ、沈メ」

「ごふぇっ」

 

 最後の1人が海に沈んでいったのを見、周囲に誰も残っていないことを確認した私はぼそりとつぶやく。

 

  

「コレハレッチャンノ身の上話ナンダガナ……」

 

 ()()ハ金ナンテイラネエ。帰ル場所ガ欲シカッタダケヨ。受ケ入レテクレタダケデ十分ナンダワ。

 

 

 

 

 

 

 横須賀鎮守府工廠。途中で勘が発動した響が例の海域に戻ったので、ウチが屋台引いて鎮守府に到着。

 現在、MI粒子を振りまいている屋台付近で、江風の記憶処理と爆弾解体が明石の手により進められている。明石の手により常時放出モードに切り替えたことで接続し続ける必要のなくなったウチは岸壁に立って海を見続けていた。響は大丈夫やろか……。

 勘が働いてる時の響は大丈夫や。問題は勘が退勤した後。いつもの響になってまうんよ、ウチはそこがどうも心配や。そんなことを考えながら佇んでいると、無線機から通信が入った。遮断されててすっかり忘れてたわ。

 

『ザザザーッ、リュッチーザザッ、ドンナザザッ、感ジデッシャロカー、ザザッ、応答セヨーザザザッ』

「わざわざ声でノイズ再現せんでよいわ」

『ザーッ、ザザザッ、ザッザザザー!!』

「せめて言葉を話そか」

『ソノ様子ダト無事ミタイダナ、ドウヤッタカ知ランーケードー』

「ウチもよう分からんねん。せやけど、感謝したくないやつに感謝せなアカンのが苦痛や」

『ツンデレサンヨナ。ツインテハツンデレニ限ルゼ全クヨォ』

「いやアイツが調子乗るとロクでもないことになるからなんやけどな……」

『……リュッチ』

「お、なんや急に」

『アノ時逃ガシテクレテアリガトウ、オカゲデ今ノ私達ガココニイル』

「どういうことや? そもそもウチ現役時代にレ級を逃がしたどころか戦ったことないで」

『アルヨ、貴様ガ覚エテナイダケダズェ』

「アンタみたいなぶっ壊れ深海棲艦やったら覚えてるはずなんやけどな……まぁええか」

『今ハ昔ダカラナー、ハッハー!!』

「そか。で、江風は」

『ソチニ任セルデオジャル。ワタクシハトットト帰リマシテヨ。サラダバー100人前』

「ワケ分からん言葉で締めるのやめてくれへん……? あ、切れてるわ」

 

 過去にウチが戦ったことがある……?

 深海棲艦を撃沈まで持っていけなかったことは多々あるけど、あんなぶっ壊れが敵におったら刺し違えても沈めるで?

 いったいどういうことやろか。

 

 

 

 

 

「……なぜ貴様がここにいる?」

「契約違反だって? 私はただ頼まれた通り"密漁者を捕まえているだけ"に過ぎないのだが?」

「話が違うぞっ、お前は協力者じゃなかったのか!?」

「私はいつから犯罪者の協力者になっていたんだい?」

「くそッ、化け物めッ!!」

「密漁と盗難を繰り返す君たちの方が化け物だよ。さて、出頭の時間だ。言い残すことはあるかい? 30秒当たり78円だよ」

「国際電話かッ!!」

 

 

 





続きはまた夢を見たくなったら書くでち。
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