鉄板屋「龍驤」   作:餅煎餅

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06話

 

 翌朝。

 ゴーヤに海上営業してもいいと言ってもうた以上、それの準備をせなアカン。今回は料理ばかりであまり呑んでいなかった為、そこまで頭は痛くない。さっさと準備を始めてしまおうか。

 外に出て“本日臨時休業”と書かれた看板を出す。ここに来る艦娘たちの都合を考えると“本日海上屋台営業中”という看板を作ったほうがいいかもしれない。遠征帰りにちょっと立ち寄るかもしれんし。ま、海上経営をホンマにやるときになってから考えるけどな。

 昨日屋台らしきものが置いてあった場所を見ると、依然変わりなく屋台が鎮座していた。まぁ鎮守府に取りに行くよかマシやなと考え、携帯を取り出して明石に電話をかける。プルルルルとコール音が鳴るまでもなく、明石が電話に出てきた。早すぎや。

 

「あ、明石か? ちょいと用事あるけどええか?」

「お話はゴーヤさんから伺っております。海上屋台ですね?」

「話が早いな」

「まず、龍驤さんの店の近くに置いたのは水陸両用屋台です。艤装のようにリンクさせることで陸上営業と海上営業を切り替えることができます」

 

 屋台に手を当て、艤装のようにリンクさせる。艦娘は自分の名の元となった艦をモデルにした艤装を自らにリンクさせることで、艤装を操ることができるようになり、深海棲艦と戦う力を得る。この屋台も艤装と同じ機構を採用しているようだ。つまり、この屋台は“龍驤”をモデルにした屋台型艤装である。なんや屋台型龍驤って、バカにしとんのか。まぁこれから使うんやけど。

 

「屋台の下の部分に変形機構があるので変形させてみてください。命じるだけで構いません」

「お、車輪がでっかい浮き輪になったで。なんや海上やとめっちゃ揺れそうやな……」

「屋台を水平に保つ自動制御機構も導入していますので大丈夫です」

「流石やな」

「もっと褒めてください」

「嫌や」

「ですよね」

「移動は?」

「自分で引っ張りましょう」

「ウチもう引退したんやけど」

「そういえばそうでした。でも、そちらに島風さんがいますよね?」

「なんで知ってんねん……いや、ゴーヤか」

「ご名答です。ゴーヤさんから聞きまして」

「まぁこれならなんとか営業できそうやな」

「それではご健闘をお祈りしますねー」

 

 

・・・

 

 

 屋台と言う名の艤装とのリンクを解除して店の中へ戻ると、島風と龍田が起きていた。古鷹と電はまだお休み中である。あと一人の古参である響がいないのがちょっと残念だ。まぁしゃーないな、あいつ忙しいし。

 

「シマ、ちょっと連装砲ちゃん貸してくれへんか」

「りゅーさんどしたの? というか久々にシマって呼ばれた」

「そか?」

「りゅ~じょ~ちゃんってば~、いつも社長呼びだもんね~」

「そか」

「なんに使うの?」

「海上屋台の移動にと思てな」

「海上で屋台するの~?」

「なにそれ行きたい」

「あのサイズやと定員3名や」

「社長権限を使用して貸切ります」

「しまちゃん私の分もよろしくね~」

「……まぁ席ひとつ空けておくなら問題あらへんな」

「問題大有りなのです」

「あら~。おはよう電ちゃん」

「おはよう電ちゃん」

「おはようございます皆さん」

「……古鷹は起きひんか」

「このまま寝かせてあげるのです」

「そうしましょ~」

「それはそうと、海上屋台というのは聞き逃せないのです」

「あら~、眠ってて良かったのに~、うふふっ」

 

 その後、電ちゃんと龍田の間で勃発した仁義なきじゃんけん合戦は、20秒に及ぶあいこ合戦の末、裏の裏を読んで表に敗北した電ちゃんの負けとなった。ホンマすまんな、この屋台、3人用なんや。珍しくはしゃいでいる龍田を横目に、悔し涙を流す電ちゃんを見て、次にやるときは連絡を入れるようにせんとアカンなと考えていると、唐突に店の入口が開かれた。

 

「おはようございまーっす龍さーん! 青葉新聞でーっす!」

「ウチは新聞はとらんからはよ帰れや、あと静かにせえ」

「開口一番ひどいですねぇ!? 洗剤も持ってきたのに!」

「ウチはそんなもんで釣られへんで? あと静かに」

 

 入ってきたのはサボリ重巡こと青葉。あれ、直々にシバかれに来たんかな?

 

「鉄底海峡に釣られたのは誰かなぁ?」

「それは釣られざるを得んねん」

「あれ? そのお姿は……ってえええええなんですかこのレジェンドの集いは!?」

 

 辺りを見回し、店にいる面子を理解した青葉が騒ぎながらもカメラを取り出すが、一瞬で撮られると理解した島風が目にも止まらぬ速さで青葉のカメラを奪い、これまた一瞬で龍田が現役時代に使用していた薙刀を取り出して青葉の首筋に刃を当てる。突然の出来事に硬直した青葉を電ちゃんが羽交い絞めにして終わりだ。正確には、身長差の問題で羽交い絞めになってないけど、電ちゃんのパワー的に青葉は動けないだろう。現役時代で最も錬度が高かったのは電ちゃんやしな。なおゴーヤは殿堂入りなので除外する。

 

「肖像権侵害はぁ、よくないわよ~?」

「…………あれ? 今何が起きました? 青葉全然理解できないんですけど」

「おう青葉、カラシたこ焼きの味はどないやった?」

「ダメージがでかくて寝られません! 徹夜ですよ徹夜!」

「……んぇ、青葉?」

「あ、古鷹さんが起きてしまったのです」

「起きちゃったね」

「ふるちゃんおはよう~」

「さて青葉。疲れて眠っていた古鷹を起こしたわけやけど、なんや遺言はあるか?」

「ああこれ青葉散るんですね、敵ジャナイ、アレ味方デス、ワレアオバ」

「それが遺言でええんやな?」

「横須賀鎮守府のレジェンドが集っていたら撮りたくなりますって」

「ここに深夜のノリで誕生してもうた、だれも食べようとしないコゲたたこ焼きが1つあるんやけど」

「見るも無残なほど真っ黒なんですが」

「ん~? 青葉それ食べるの? 頑張ってね~」

「寝ぼけてないで起きてください古鷹! 今はあなただけが頼りなんですが!?」

「そのたこ焼きはワサビたっぷりのたこ焼きなのです」

「ロシアン~って言いながら酔った龍田がワサビをガッツリ入れたの覚えてるよ」

「そうだったかしら~?」

「青葉が何をしたっていうんですかぁ!?」

「古鷹が完全に覚醒する前にやってまうか」

「そうしよう」

「いやあぁぁぁ! たすけてくださいふるたかぁぁ!!」

「余計なこと言うと~、その口縫い合わすぞ~?」

「ひぃっ……」

 

 今だダメージの残る口の中に再びワサビの火薬庫を突っ込まれる青葉。サボるのやめてマジメに仕事しよう、サボリ魔がそう心に誓った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 カラシの砲撃により口内が大破していた青葉がワサビの雷撃で床に轟沈した後、一旦解散することに。古鷹は青葉の惨状に気づかず、また寝始めた。まぁ疲れているやろし寝かせておこか。島風は今この場にはおらず、ウチの家の中で会社に連絡している。ホンマご苦労やな。

 

「では今度海上で営業するときは教えて欲しいのです」

「当然や、最優先で連絡するで」

「それではお先に失礼するのです」

「電ちゃんまたね~」

「はい、またなのです」

「あ、またねー電ちゃーん」

「島風さんもお元気でー」

 

 電ちゃんを見送った後、本日の海上屋台営業のために必要な材料を準備する。ここ最近たこ焼きと海鮮ばっかりやし、お好み焼きにでもしよか。

 

「龍ちゃん、なにか手伝う~?」

「あ、今日はお好み焼きにするからキャベツ2個くらい切ってーな」

「了解~、あははは♪」

「りゅーさーん、こっちの用事は終わったけど何かすることなーい?」

「せや、豚肉がなかったから買うて来てもらえるか」

「了解! 行ってきまーす!」

「龍ちゃん、全部切り終わったわよ~?」 

「早すぎや」

「他にやることないかしら~?」

「……もうタネも作ってもうたし、シマが戻るまで待つしかあらへん」

「龍ちゃんも早いわね~」

「龍田ほどやないわ」

 

 

・・・

 

 

 海上に変形した屋台を浮かばせ、手配した連装砲ちゃん2体の砲身に引き手を引っ掛けていざ出発。今まで艦娘としてしか海上に出たことのない身としては、何かに乗りながら海に出るというのはとても新鮮だ。船でなく屋台で海にでたのはウチらが世界初やと思う。普通考えへんやろこんなん。

 

「じゃあ出発するでー」

「連装砲ちゃん、一緒に行くよ」

「一緒どころか先頭やけどな」

「出撃しま~す。死にたい船はどこかしらぁ?」

「なんやこれウチも行ってみようって言わんとアカンのか」

「それにしても海に出るのは久々かしら~」

「私はちょくちょく出てるけどね」

「ウチも久々や」

「しまちゃん仲間ハズレ~、うふふっ」

「なんで!?」

「揺れるから騒ぐなアホ」

「なんで?」

「流石に小さすぎるわよ~」

 

 

 

 

 

 

 どこかの海で。

 尻尾に大きなマグロをくわえさせた深海棲艦と、艦娘であろう銀髪の少女が対峙していた。深海棲艦は黒いパーカーを来た悪名高き最強の深海棲艦、対する艦娘少女はその体格から駆逐艦の艦娘と思われる。もし、この場に艦娘か提督などの状況を分かる人物がいたら、あまりの戦力の差に絶望するだろう。しかし、実際は深海棲艦が艦娘の砲撃をよけながら逃げているという状態である。もし、この場に他の深海棲艦がいたら、逃げてないで攻撃しろと言っているだろう。強者が弱者に追われているという異様な光景である。

 

「干物OK、缶詰OK、アト何ガ残ッテルト思ウ?」

「君は何を言ってるんだい」

「ソンナコトヨリ砲撃ヤメテクレナイカナ? セッカク捕ッタマグロガ駄目ニナルンダガ」

「私が止めないと密漁し続けるだろう?」

「確カニ、漁ノ許可ハデテネーシ、密漁ッチャ密漁ダナ」

「大湊はちゃんと許可を貰ってるから、君も貰えばいいんじゃないかな」

「ハァ? 個人ノ遠洋漁業ガ許可貰エルワケネーダロ」

「それもそうだね、すまなかった」

「ンデモ攻撃ハヤメテクレナイノナ」

「それが私の仕事だからね、君も早く当たってくれないかな」

「マーマーゴ苦労ナコッテ。ア、ソウイエバマルイ奴ガ言ッテタンダケド」

「……なんだい?」

「リュッチ……イヤ、オ前ノ知ッテル龍驤ガ、今カラ海上屋台ヲ営業スルラシイカラ、暇ナラ覗イテミレバ? 横須賀近海ニイルト思ウゼ」

「私は暇じゃないんだけど」

「ナァニ、コレカラ暇ニナルサ」

「……一体何をするつもりだい」

「逃ィゲルンダヨォォオ! アーバヨートッツァーン!!」

「待っ」

「ワガレ級ノ速力ハ世界一ィィィ!! ヨシンバ2位ダトシテモ世界一位ィィィ!!」

 

 尻尾がマグロを一飲みし、気にするものがなくなった深海棲艦は猛スピードで戦場を離れていく。突然の加速に対応できなかった艦娘の少女は、ポツンと残されてしまう。密猟者を逃がしてしまったことを理解した少女は呟く。

 

「……そうだな、たまには顔を出してみようか」

 

 龍驤の鉄板料理を思い出してよだれがたれてしまった少女は、手の甲で口のあたりをふきながらハラショーと呟きを残し、先ほどの深海棲艦ほどではないものの、高速で横須賀近海へと向かった。

 




後書きに書こうと思ってたセリフが本文に残っていた件
「設定作ルト過去編書キタクナラナイ?」
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