戦艦レ級の朝は早い。深夜帯から一日が始まる。
「貴様ラトノ点差ハ40000点以上! シカモオーラスデ逃ゲ切リ目前! ソシテコノ5巡目ダメ押シリーチデドーデショウ勝負デ勝ッタ勝負快感!!」
「ネ級モ追ッカケルワネ、リーチ」
「まるゆもテンパイしました。リーチしますね」
「……ッチ、北カ。一発ツモハナイガ風前ノ灯火タル貴様ラニ勝チ目ナゾ――」
「ロン、立直一発北ドラ1で満貫ネ」
「ロンです、リーチ一発字一色小四喜で96000ですね」
「イ゛ヤ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
「ダブロンアリデ-104000、アンタハコ割レ。負ケネッヘッヘッヘ!!」
「オ"ア"!? オ"ア"ア"!? ホ"ア"ア"ア"ア"!!!! YES! GET! LOST!」
「そういえばレっさん、こういった情報を手に入れたんですが……」
「先生、ダイスキ…………アー、コレマジ?」
「まるゆ392号が目撃、あとは23号と33号が裏取りしました。確かです。その紙はお渡ししますね」
「コレハアタイダケジャ無理ダナ。他ニ協力者探サナイト」
「一瞬デ戻ルノ草」
「タダデ教エテヨカッタノカネマルユ君? 割トヤバイ情報ダゾ?」
「負け続けのまるゆに大きい手を上がらせてくれたお礼です」
「嫌味カ貴様」
☆
賭場で稼いだチップと燃料を交換し、一気飲みするところから一日が始まる。
「マタ麻雀デ溶カシタノ?」
「70000点行カナイ程度ニ点棒アッタノニ、ソコカラハコ割レスルナンテ思エナイジャン。燃料一杯クレ」
「ヲー……ハイ、燃料1ツ、ヲ疲レサマ。ドウセイキッテ負ケタンデショ?」
「芸人タルモノ大勝デ終エナイヨウニ爆散シナキャダメヤロ」
「モッタイナイナー」
☆
燃料を補給した後、明け方に自らの活動する海域のパトロールを行う。"前マデハニギヤカダッタンダケドナー"とレ級は語る。
日本が制海権を深海棲艦から取り戻した後、操業を再開した漁業を狙う犯罪組織が現れた。
"シーグース"と名乗る奴らは深海棲艦の出現により高騰した海産物を狙い、ありとあらゆる漁場で乱獲の限りを尽くしていた。さらに、養殖海産物の盗難も相次いで発生している。許可を取っていない彼らがしていることは密漁に他ならない。
レ級のいるこの漁場も例外ではなかった。"海ノ物ハ全テ私ノモノ"と豪語するレ級がそんな暴挙を許せるわけもなく、組織の人間を見つけては片っ端から吹き飛ばしていた。
深海棲艦に
結果、レ級のいる海域には組織の人間は現れなくなった。しかし、それはここの海域に限った話である。他の海域では未だに組織の犯行は続いている。答えは簡単、警備できていないからだ。
さらに、警備しようにも深海棲艦に襲われ命からがら逃げ切った事例がある。安全面を考慮して深海棲艦への対応ができる無所属の艦娘を雇う他ないのだが、乱獲による漁獲量の減少や盗難で雇う金の余裕ができていないのが大半。
現在は安価で警備を依頼できる"株式会社シマちゃん"の連装砲ちゃん警備サービスが普及し始めているものの、需要に供給が追い付いていない状態である。
「ッチ、何ノ新シイ情報モナイナ……モドレ、艦載機」
『ウチは今日本で最大の養殖漁場だぁ。前まで来てたってのになんで来ねんだ?』
「私ノ存在ガ邪魔ナンダロウネ、フリー艦娘ノ別府チャンヲ刺客トシテ差シ向ケタ位ダシ。アト訛リヤメテイイヨ。タマニ分カラナイカラ」
『……一度パトロールやめてみるか?』
「賛成。ヤメルダケジャ奴ラハ来ナイダロウカラ、奴ラガ狙イソウナ別ノ漁場ニ実際ニ姿ヲ出ストカ?」
『お前さん思い当たる漁場はあるか?』
「イクツカアル」
『お前さんが行ってる間、ウチの漁場はどうすんだ』
「大丈夫、私ニアテガアル。任セテチョウダイナ」
『おう、任せた。どこの漁場に行くか決まったら教えでけろ。オラが説明しておくっけぇ』
「アリガト、助カルヨ、ジッチャン」
『感謝はいらねーからさっさとあいつらの犯行をやめさせてくれ』
「ソダネー、切ルヨ」
『頼んだぞ、レ級』
レ級は通信機を切って再び艦載機を飛ばすと、陸へと向かって歩を進めた。
☆
ウチが魚市場で置いてけぼりにされた翌日、鉄板屋「龍驤」。
なんや朝っぱらから来たレ級が話ある言うたから特別に貸し切りにしたんやけども。
「トイウコトデ今回ハ、オ好ミ焼キヲ作ッテイクワネ」
「作るのウチやけどな」
「頼リニスルワ。オ頼リスギテオ手紙ガ届イタワネ」
「へぇーどんなんやーきになるわー」
「『仕事がたまりすぎたせいで仕事にいきたくありません、応援メッセージください』」
「一番は無茶せんでな? 1人でため込まずに周りの手も借りよか、抱え込んで身が壊れてもうても会社は救ってくれへんからな」
「『PN;ワレアオバ』」
「青葉ワレェ!! 働けェ!! お前は壊れろォ!!」
「『P.S.ウチの鎮守府に連装砲ちゃんが常駐するようになって常にこちらの口に砲身を向けてくるのですが』」
「知らんわ!!」
「手ノヒラマワッタワネ、マワリスギテ…………今日ハコノクライニシトイテアゲルワ」
「あぁ、言葉が出なかったんやな」
焼けてきたお好み焼きを勢いよくひっくり返す。ちなみに、今回はイカ玉のお好み焼きである。レ級がショバ代と称して持ってきたイカを使わせてもらった。
さて、おふざけはここまでにして本題に入ろか。焼きあがったお好み焼きを半分に切り、片方をレ級に渡す。
「んで、今日はなんで来たんや」
「昨日ノ話ダケド、諸事情デ龍驤ヲ巻キ込ム事ニシタイ」
「話だけは聞いてやるで」
「イヤネ、ウチノ漁場ノ話ナンダケドサ――――」
☆
レ級から漁師を脅かす密漁シンジゲートの話を聞いた。レ級のせいで市場価格狂ってるけども、海産物は高級品やからな。そういう組織があってもおかしくはないんやろな。
「へえ、そんな組織が発足してたんやな」
「ソウソウ、デ、アイツラ来ナクナッタカラ、コッチカラ行コウッテワケヨ」
「まるゆネットワークやったっけか、それから情報得れへんのか?」
「マルユハアクマデ海限定ダカラネ、陸上ノ情報ハ集マリニクイ」
残り一口分のサイズになったお好み焼きを口に入れる。ウマイものにウマイしか言えないから上手なことは言えんけど、以前より上達したと言える。なお、レ級は最初の一口で丸のみしていた。奴なりの味わい方らしい。
「んー、何でウチなん?」
「今朝ナー、新タナ情報ガ入ッタンダナー」
そういってレ級は1枚の紙を渡してくる。解体済みと大きな赤い印の押されたその紙には、ある駆逐艦の艦娘の情報が載せられていた。所属は呉、解体日時は……2カ月前か。レ級がなぜこの書類を持っているかは考えないことにして。
「ソイツァコピーサネ」
「心を読むな心を」
「聞キタソウナ顔シテタリュッチガ悪イ……コホン」
ケラケラ笑っていたレ級は咳払いをすると、ヘラヘラしている顔を引き締め、いつになくマジメな顔つきで話し始めた。
「"シーグース"ガソノ艦娘ヲ手ニ入レタソウデ」
なんやと。
「オ、ヤット真面目ニ聞ク態度ニナッタナ。トリアエズ席ニ着ケィ」
「ええからはよ説明せえや」
「マァエエカ。アル鎮守府デナァ、解体サレル艦娘ヲ解体セズ秘密裏ニ売ッテルラシイゼ。当然ナガラ違法ナンダガ証拠ガ無イノヨネー」
「それ呉やないの? 提督がカジノで摩ってるって」
「呉ノ提督ハ回収率1超エテルゾ、ボーキハ0ニ近イケドナ。呉ノ提督ハ白ダ」
「……そか」
「話ヲ戻スワネ。"シーグース"ハ、コノ艦娘ヲ我ノイル海域ニ攻メ入ラセル準備ヲ進メテイルソウヨ」
「…………え、駆逐艦でレ級に勝つってまず無理やろ」
「艦娘サエ居レバ深海棲艦ハドウニカナルト考エテルンダロ。アタイ最強ナンダケドナー」
何級だろうが一般人だけで深海棲艦に遭遇したら死であるからか、深海棲艦のそれぞれの名前とか強さは一般には知られていない。わざわざクソ強いやつを紹介して国民の混乱を引き起こしてしまっては面倒になるというのが本音である。
「デ、アタシャ他ノ海域ヲ防衛シテクルカラヨ、龍驤ニハコノ艦娘ノ対応ヲオ願イシタイ」
「ええけどウチ引退した身やから装備はないで?」
「何言ッテルンダネリュッチ、君ニハアレガアルジャナイカ」
レ級は立ち上がってリヤカーを引くしぐさをする。ウチにあるリヤカーのようなものって……。
「海上屋台とか言わんよな」
「ソレダヨソレソレ。戦意削ゲバワンチャン」
「ええ、マジか……」
こんな形で海上支店を営業することになろうとは一切考えてなかった。戦意削ぐで思い出したけど、屋台から発せられるマイナスイオンでどうにか……いやならんやろ、マイナスイオンってそういうものやない。
「ふむ、話は聞かせてもらったよ、やはり海上屋台か、いつ出発する、私も同行する」
「別府ヌ院」
「響やけどな?」
店の奥から現れたのはウチが貸したパジャマ姿の響。響は昨日、じっちゃんとレ級との対談を終えた後、滅茶苦茶意気消沈していたので連れ帰って泊まらせていた。
帰り道で道に迷って営業が遅れたのはいい思い出や。もう響の言う通りには進まん。
「龍驤、私から言っておきたいことがある。そこのレ級には昨日伝えたが、私にレ級の逮捕を依頼したのは呉の副官なんだ」
「なぁレ級、まさかある鎮守府って呉かいな? 提督は白やったんやないんか?」
「提督ハ白ダ、提督ハナ。副官ハ別ダゾ。サテ龍驤、海域防衛ドウスル?」
「不安なら私が護衛するよ。報酬はお酒とツマミでいいよ」
「ああもうええよ。やったろうやないかい」
☆
以下あとがき
「ボツネタ供養ゾーンへよく来たでち、ゴーヤだよ。本編では起こってない事柄だから注意してね」
ガレージ。
(マズいマズいですよ明石さん、龍驤さんが深海棲艦とつながってました、しかもあの姿、悪名高いレ級ですよ)
(そんなことより青葉さん)
(そんなことで流されたぁ!)
(この屋台はマイナスイオン粒子で深海棲艦かどうかを判定しています)
(マイナスイオンってそういうものではないですよねぇ?)
(もし感知したら、マイナスイオン粒子を全開にしありとあらゆる機器を無力化した上で、屋台に仕込まれた45口径の46cm三連装砲2門をフルバーストする機能がついています)
(なんでそんな殺意高いものを仕込んでるんですかぁ!? あとマイナスイオンの可能性ぃ!)
(そしてこの位置でフルバーストすると鉄板屋が崩壊して龍驤さんの怒りを買います。私たち終わりですね!)
(レ級とか大和砲フルバーストとかがかすれてしまうほどの殺意が襲ってくるじゃないですか!! こんなところでくたばりたくないです!)
(しっかし反応しませんねぇ、故障でもしたんでしょうか)
(反応してたら今頃私たちこんな会話できてませんよ!)
「なんや聞こえる思て来てみたらお前ら……」
「ドシタノドシタノー」
『脅威感知、深海棲艦レ級です。迎撃を開始します』
「「あ」」
『斉射』
鉄板屋龍驤が爆発炎上したその日以降、明石と青葉の姿を見たものは誰もいなかった・・・。
BAD END「青葉とばっちりなんですけど」