立てば石楠花、座れば牡丹、戦う姿はゴリってる!!! 作:九十九夜
じゃ、じゃあ。二話目、い、いってみよー、かー?
こんにちは皆さん。元気に騎士()やってるコンラッドです。
ま、騎士っつっても円卓には入ってないんだけども。
そう、俺は騎士になったはいいがあくまでも城内でそれとなく動けるように、なんであって表立って尽くせっていう訳じゃない。逆にこれからのことを考えるとむしろ目立たないほうが好都合だろう。
そう思っていたのは俺だけではなかったようで父も快く頷いてくれた。
だからその、俺の表向きの設定はロット王に仕える名門貴族のへなちょこ息子が女の子で言う行儀見習いをしに奉公に来ている的なナヨッともやしっ子設定になっている。
・・・なっているんだが。
「コンラッド。いいところに、王にお出しする軽食を作ったのですが、その、作りすぎてしまいまして。よろしければお食べになりませんか?」
心なし恥ずかしそうに微笑む目の前のゴリラに溜息を吐きたくなる。
会いたくねえ奴に、会いたくねえタイミングであっちまったよ・・・。
「い、いえ。あの、お気持ちはうれしいのですが自分はもう・・・」
言いかけて、ゴリラ越しに部屋を覗くと震えるギャラハッド卿と目の死んだ父上が椅子に座っていた。
どうやら運悪く捕まってしまったらしい。
取り敢えずとんずらだと思っていたら二人と目が合ってしまった。
父上に関しては首を振ってくるなと言っているが、ギャラハッド卿はまるで地獄に仏と言わんばかりに涙を溜めた顔を破顔させる。
「さあ、どうぞこちらへ!!」
グイっと腕を引かれて室内へ。
ヤバい。逃げるタイミング逃した。
放しやがれええええっゴリラゴリラゴリラああァッ!!
あっ、ああああああ!?――――
***
ひ、ひどい目に遭った。マッシュはもう、もう・・・。
取り敢えずあの後、ギャラハッド卿とはマッシュ被害者の会を結成した。
イエスポテト、ノウマッシュ!!
固い握手を交わした後、今度は口裏合わせようねとかと約束して別れる。
・・・今度何か手料理持ってってやろう。
フラフラのギャラハッド卿の後姿をみてそう思ったのは此処だけの秘密である。
ちなみに父上は食べ終わったと同時に執務があるからとすぐに戻ってしまったが俺は知っている。
「クローディアの手料理が食べたい・・・。生姜焼き、味噌汁、卵焼き、豚汁、カレー、ハンバーグ・・・。」
とブツブツとまるで呪詛の様にかーちゃんの作る料理名を言っていたことを。
がんばれとーちゃん!あと一か月の辛抱だ!!
現代社会出身としてはちょっとどころではないくらいアレなのだがここはブリテンである。
残念なことに騎士のほとんどが脳筋だったり癖が強すぎる奴がほとんどで書類仕事ができる奴がいない。
文官もいるが現場に出るわけではないのでどうしても足りないことが出てくる。
だからそのぶんとーちゃんの様に両方できる奴は貴重なのである。
俺?俺はほら、いいとこのコネ坊ちゃんだからさ。
いやあの・・・だからさ。話は戻るけど・・・あの、ゴリラ卿?俺間違っても円卓の候補にすらなれねー奴だから・・・さ。あの、構ってほしくないんだけど・・・。
つか、こっちこないでえええええええっ!?
何なんだ奴は!おかげで碌に探れやしないんだけど!?
何なの?あんたは直感B+でも持ってんのか!?
エンカウント率高すぎんだけどおおおおお!!
・・・俺はまだ知らない。
俺の手料理を食べたギャラハッド卿が(食の)安全地帯として割とエンカウント率高めになることを・・・
そして、そんな息子と関わりの深い俺にランスロット卿が関わりを持とうとしてこちらもエンカウント率高めの案件になるという事を・・・