女性型ヴァンデルにTS転生した俺は…   作:小豆団子

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14話 修行期間の日常

 アンクルスの里を旅立ってからそろそろ1年が経つだろうか。

 俺は今、黒の地平にいる。

 と言ってもたまに港町レドウに戻り情報を集めたりユーリィ達に手紙を送ったりもしているが。

 

 黒の地平は既にかなり酷い有り様だ。2年後、原作ビィトのトロワナが滅びず持ちこたえていたのは割と奇跡だろう。

 

 そんな中俺はちょっとした旅商人をしてお金を稼いでいる。

 星呑みしていなければモンスターに襲われる事もないので町の外で薬草等の物資を回収したり、トロワナで不足している物をレドウで買って届けたりだ。

 護衛のバスターを雇う必要もないのでボロ儲けだ。

 

 情報収集は全く成果無しだけどね…。

 

 

 

 修行の方はそこそこ順調にいっている。修行相手はその辺を歩いてたモンスター達が主だけどな。

 

 星呑みに関しては寝ている時や驚いた時も解除することなく、一日中星呑みを持続させる事が出来るようになっていた。

 そのお陰で未だヴァンデルとバレる事無く人里に出入りできている。修行した甲斐があるというものだ。

 

 冥撃も適正が高かったらしく『魔属性』以外の下位冥撃は全属性既に習得している。

 中位も使えはするが精々不意討ちで最初に使うのが精一杯で、実戦で使うには隙が大き過ぎた。

 そのため速射性に優れた下位冥撃の精度や発動速度を鍛えている。

 この調子で中位や、できれば上位の冥撃も速射できるようになりたい。

 

 使っている属性は専ら水・風・雷だ。

 水は水流を叩き込み、その質量と勢いでもって姿勢を崩すのに使っている。

 風も水と使用目的は似ているが弾速が速く不可視で、範囲も広くしやすいので使い分けている。衝撃力(ノックバック)だけ高く威力ゴミな天烈掌みたいなものだ。

 雷は言わずもがな、ほぼ回避不可能な弾速と電流による麻痺のお陰で起点としてかなり使い勝手がいい。相手がデカかったり、冥力が高いとほとんど効かなかったりするけどね。

 火も得意ではあるが人に向けるには加減がきかない。樹や虫のモンスターを一掃するのに使ったりするが、それくらいだ。

 

 体術に関してだが、俺は並のヴァンデルと比べてパワーもリーチも無い。だから相手の力や身体の構造、骨格を利用した自己流合気道と下位の近接冥撃を組み合わせて戦っている。

 相手の足場を崩したり目潰ししたり、届かない掌底を風で飛ばしたり電撃で一瞬麻痺させたり、とやってることは狡いが俺としては中々の良い線いってる気がする。

 勝てばいいのだ。

 

 

 

 そう、勝てば。

 

 長々と説明(現実逃避)していたが俺の目の前にはヴァンデルがいた。そう、モンスターではない、ヴァンデルだ。

 

「貴様ぁー!!この俺様が集めた最強軍団をっ!よくも!よくもぉ!!」

 

 どうやらこいつの配下のモンスターを狩りすぎたらしい。

 せっかく買ったモンスターが居なくなっては領土を増やせず収入も無い。そしてモンスターを買ったから手元に金も無い。詰んでるな。

 そりゃキレて原因潰しにくるわ。

 

 なんか三流っぽいことを叫んでいるが三ッ星だし普通に強そう。

 やけに肥大した筋肉質の上半身に、それと比べれば弱々しい下半身。バランス悪そうだなぁ。

 

「何か言ったらどうなんだぁっ!!」

 

「ごめーんね☆」

 

「ぶっ殺す!!!」

 

 てへぺろしながら上目遣いで可愛らしく謝ったのに、何が不満なのか、襲いかかってきた。

 

 激情からか何も考えていない突進からの大降りな一撃。こいつ心理戦弱いな。

 

 俺の頭を狙った横振りのパンチを前に出ることでかわし、突き出された腕に手を添えつつ相手に背を向ける様に身体に巻き込む。更に掌から電流を流し身体を硬直させた。それにより突進の勢いからつんのめった相手の足を払い腰に乗せ、その勢いのまま脳天から地面に叩き落とした。

 俺流背負い投げだ。

 更に冥力で強化した震脚を御見舞いし、ついでとばかりに火の冥撃を叩き込んだ。

 

 我ながら綺麗に決まったものだ。

 

 ただ相手は腐ってもヴァンデル、燃えていて良く見えないがまだ襲いかかってくるかもしれない。おかわりで中位冥撃もプレゼントしておこう。

 

 中位冥撃を撃とうと溜めの動作に入ろうとしたところ、炎の中から冥撃が飛んできた。

 急いで下位冥撃に切り替え相手の冥撃を逸らす。

 

 今のでまだ冥撃を撃てる元気があるとは…。流石ヴァンデル、無駄にタフだ。

 

「このぉ腐れバスターがぁ!!俺様を虚仮にしやがってぇ!」

 

 どうやら俺をバスターだと勘違いしているようだ。

 冥撃まで見せているのに俺がヴァンデルだとわからないとは観察眼ないな。戦場じゃ長生きできなさそうだ。戦場に立ったことは無いけどな!

 

 一度投げられて警戒しているのか、なかなか攻めてこない。

 もう一回挑発してみるか…?

 

 そんなことを考えていたら相手が動いた。

 

「死ねぃ!」

 

 その長い腕を使い地面を殴り付け、土砂を飛ばしてきた。

 どこのウヴォーさんだてめぇ!

 

 咄嗟に風の冥撃を纏うことで土砂を逸らす。冥撃も飛んできたので自分に突風を当てその場を離脱する。

 風の下位冥撃は威力は控え目だが自分の動きを速めたり、空中で方向を変えたりと色々応用がきいて便利だ。

 流石に天空王の様に自由に飛び回るのは無理だった。試して解ったがあれはおかしい。ヴァンデルは冥力を大地から取り込む、にも関わらず大地から離れて空をビュンビュン飛び回るとかどんな燃料タンクとエンジンを積んでるのか…。

 それはそうとして。

 

「何処行きやがったぁ!!」

 

 アイツは俺を探しているようだ。馬鹿だ、自分の攻撃で相手を見失うとか…。やっぱウヴォーさんの足下にも及ばんわ。

 

 折角の機会なのでこれで終わらせようと思う。

 星呑みを止め、冥力を解放する。火の中位冥撃を作り出し限界まで冥力を注ぎ込み圧縮する。

 

「そっちかぁ!」

 

 冥力の放出によって俺の位置を覚り、突進してきた。

 そちらへ向け火の中位冥撃を盾の様に構える。

 

「そんなノロマな冥撃当たらんわぁ!」

 

 あっ、やっとこちらの正体が解ったんですね。

 相手が飛び掛かると同時に圧縮していた火の中位冥撃を放ち、間髪入れずに風の下位冥撃を後ろからぶち当てた。

 解放された爆炎が風によって指向性を持ち、勢いが増す。

 避けるタイミングをずらされた相手はそのまま爆炎に呑まれ、消えていった。

 

「………」

 

「ふぅ」

 

 周りに気配は無い。ちゃんと倒せたようだ。

 

 最後のは上位冥撃を制御できないなら相性の良い冥撃同士を組み合わせ、それに匹敵する火力を出そうという発想から来たものだ。

 火の中位冥撃もポアラのバーストエンドを参考にしたものだが、あの威力と圧縮率には全く届かなかった。ただ、火の持続時間は長かったのでそれを風で煽り指向性を持たせ、広い範囲に高温の炎風を押し出すことには成功していた。冥撃版クレイモア地雷の様なものだ。

 

「実戦で成功してよかったぁ…」

 

 星呑み状態バージョンを不意討ちで使った事は有ったが、実戦の最中、冥力を解放して使ったのは今回が初めてだった。

 使わなくても倒せたかも知れないが、最初の一合で倒し切れなかった時点で火力不足だと解った。

 正直長期戦はしたくない。冥力や冥撃の制御は神経を使うため、戦闘が長引けば長引くほどこちらがミスする確率が高くなっていくからだ。

 呼吸をするように無意識に制御できればいいが、俺は未だその域に達していない。

 

「まぁそれで一か八かの賭けをするのもどうかとも思うけどな…」

 

 なんにせよ勝てて良かった。

 

 疲れたし今日はもう帰って寝よう。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、割と充実した毎日を送っています。




ハルカ強くし過ぎかなぁ。
まぁ、もしヴァンデルということを隠しつつビィト達と旅することになったら、冥撃使えないのでただの体術馬鹿になっちゃいますが。
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