あれから更に半年以上が過ぎた。
未だ異変を終わらせられずにいるが、何が原因かは調べがついている。
死人沼の策士ムガイン、そして黒き剛爪ガイクスの2人によるものだ。
手を組んでいるのか別々の勢力なのかは解らないが、それぞれがアンクルスの里とヴォルハ村を攻めているようだ。そのせいで僕もポアラさんも拠点を離れられず、バスター同士で協力し合えない状況になっている。
二つ名からして死人沼の策士ムガインが糸を引いていそうだ…。
不幸中の幸いだが半年前からモンスターの数はそれほど大きく増えていない。増殖速度が上限に達したのか…。それでも消耗戦となればこちらが不利だ。
少し前にはハルカがこちらに帰ってくるという手紙も貰った。危険だから港町レドウで待つように手紙を返したが本人に届いているかはわからない。遅くても数ヶ月、早ければ数日中には帰ってくるだろう。
出来ればそれまでに片を付けたい。
そして今、僕はガイクスの居城が見える位置にまで来ている。
今夜、ガイクスを倒す。そのためにこの半年間準備してきたのだ。失敗はできない。
半年かけ防衛設備を整え、半年かけて天力を込めた結界装置を準備した。多少の防衛戦ならこなせるだろうし、もしもの時は村長の家に避難し結界を作動させれば数日は持ちこたえられるだろう。
夜になるのを待つ。単独での侵入なら闇に紛れた方が成功率も高まるはずた。
「よし、行くか…」
城の外壁に上がる。今晩は新月だ。影も落ちないだろう。
外壁の上を移動しながら複数箇所で毒草を燻し毒煙を発生させる。ガイクスの配下は狼や猪に似たモンスターが多く鼻も利く。先ずは毒煙で鼻を潰し弱らせる。この暗闇なら毒煙が充満するまで分からないだろうし侵入経路の特定も難しいだろう。
煙が引いたところで自らも侵入し、弱っているモンスターに止めを刺していく。
流石にこの数のモンスターを同時に相手するのは無理だ。闇に紛れ少しずつ相手の戦力を削ぎ取っていく。
この先は本邸だ。
今まで以上に注意してモンスターを処理していく。
「………」
この部屋の中に何かがいる。
モンスターに比べるとかなり強い気配を放っている。ヴァンデルだろうか?
ここに来て初めてダガーナイフを
この部屋の扉はここしか無さそうだ。気付かれずに侵入するのは難しいだろう。
「それなら…」
豪奢な扉に火の天撃を叩き込む。その爆炎に紛れ部屋に飛び込み、気配の有った場所にも天撃を放つ。更に間髪入れずダガーでも斬りかかる。
ギャィンッ!!
防がれた…!
直ぐにバックステップでその場を離れる。
数瞬前まで僕がいた場所を何かが通りすぎた。
黒い…爪!
全身強靭な筋肉と黒い毛皮に覆われ、身体の半分は有りそうな黒い爪を生やした虎顔のヴァンデルが立っていた。
二ッ星か……。
「貴様一人か?この城に単独で侵入してくるとは良い度胸だ…!」
「一応聞いときますけど、貴方がガイクスですか?」
「いかにも、我輩が黒き剛爪ガイクスだ」
なるほど、二つ名に違わぬ容姿をしている。これが僕達の敵!
「そうですか、では…大人しく倒されてください」
「図に乗るな小僧!」
向かってくるガイクスに煙幕代わりに袋に入った毒粉を投げつけ、部屋から逃げ出す。
「ぐぅっ、待て!」
狙った通り袋を爪で弾いた事で袋が破れ毒粉が飛び散る。顔の近くではぜたので相当量の毒粉を吸い込んだはずだ。
そのまま城の外へ向けて駆け続ける。
時折冥撃が飛んでくるがそれを避け、こちらも天撃で牽制する。
威力は要らない、目眩ましになればそれでいい。
城から森の中とへ駆け込む。
「逃げるか、腰抜けがぁ!」
「そんな安い挑発、買ってあげないよ」
勝ち目が薄い戦いに何も手を打たず赴いて死ぬのは馬鹿のやることだ。少しでも自分に有利な条件で戦おうとするのはごく普通の事だろう。
森の狭い木々の間ではヴァンデルの大きな体格が仇になり本来の力も速度も出せていない。
これならそう簡単には追い付かれないはずだ。
「むぅ、何処へいった!」
僕は物陰に隠れ気配を消す。
そして相手の死角から天力を込めた毒矢を放つ!
「ぐぅっ…、闇討ちとは卑怯だぞ!」
知らないよ。
僕はバスターではあるけれど、戦士の前に狩人なんだ。獲物を仕留められればそれでいい。
「そっちかぁ!」
向かってくるガイクスに天撃を放ち、その爆炎に紛れ移動する。
「またかぁ!隠れてないで出てこい!」
嫌だね。
もう一度死角から矢を放つ………命中だ。
後はこれの繰り返し。
何も考えずこちらのフィールドに出て来てしまった以上、そちらの負けは確定している。
ここで戦って死ぬか、逃げ延びるか。まぁ毒で弱ったヴァンデルを逃がすつもりも無いけれど。
何度繰り返しただろう?
やはりヴァンデルはタフだ。なかなか毒が回りきらない。ヤツの身体には何本も矢が突き刺さっている。
「………ぅ、…………っ」
遂に膝をついた。
そろそろか…。
僕は感知されることも厭わず天力を高める。
高めた天力を炎の天撃へと変換し矢に纏わせる。
そして弓を限界まで引き絞り、その矢を相手の眉間に打ち込んだ!
相手の頭部が弾け飛び、上半身が炎に包まれる。
「………終わった、かな」
気付けば東の空が白み始めている。
「帰ろうかな…」
僕は疲れきった身体を引きずる様にして、ヴォルハ村へと帰るのだった。
少年漫画の主人公側のキャラとしてこの戦い方はどうなのだろうか。
作中で出てきた結界発生装置ですが、門と同じ様な効果の結界を張れるという設定です。門と違い恒常的に展開しているものでは無く天力を溜めておいて緊急時のみ展開する感じです。