12月半ば、いつもの通りのんびりしている直哉達の元に、クリスマス・イヴの招待状に加え、『子供が出来ました』と言う、写真はがき付きの封筒が届いた。
高菜家には、子日を含めて全員に届いており、子供ができた?日数おかしくないか?と、推定容疑者の明石を締め上げたところ、レ級が霊子結晶を与えてブースト出産させたことが判明して、何だそう言うことか、と安堵した。
その会話で、郷里二佐が霊子結晶とアルティメットいなづまちゃん細胞で人外化した話も、明石から聞き出した。
「郷里をあれ以上強くしたら、それこそ核兵器でも持ち込まないと殺せないんじゃないか?5.56㎜弾を筋肉で弾くって……まあ、花梨ちゃんが未亡人にならなくて済むのは、良いことだがね」
とは、直哉の感想である。
因みに、熊崎准将補はこの旅行の為に、40日フルに溜まっている年次有給休暇を全て取得して、一月末まで北海道を留守にする計画だ、と聞かされている。
元々旅が大好きで、コツコツ貯金をしていたお金と今年の賞与で、東北各地を見て回る計画なんだそうだ。
昨日LINEに、『宮戸島には年末に行くよ、ちょっと岩手・青森に行って来るからね』と連絡が入った。
熊崎提督の話によると、気仙沼と女川での交流は、楽しい一時だったよ、と付け加えられていた。
「さて、どうやって移動するかだね。私のハイブリッドカーで行けばいいか?」
等と算段をしている。
「今回は、薄雲と直哉と電が、代わりばんこで運転すれば良いのです」
「そうだぴょん」
「そうですね」
「電ちゃんも自動車学校終わって、免許取れたもんね」
そう。電は、11月からこっそり自動車学校に行き始め、この度自動車免許を取得したのだ。
宮戸島鎮守府で二人目の、艦娘の免許保有者である。
これで、直哉はより運転をしなくなったのだ。出掛ける先で飲酒をしては、運転を薄雲や電に押し付ける。
そんな算段をしていると、圭一と愉快な仲間達が揃ってやって来た。
「おっす、師匠。花梨さんから、俺達にもクリスマス・イヴの結婚式の招待状来たんだけど?」
「何だ、君達にも来たのか…………」
直哉の計画は、音を立てて崩れ去った。
直哉達五人に加え、圭一に史絵、寛太に優花、慎にギャルズの望、奈緒子、櫻子の13人である。
「そうなんだよ。俺達、行きたいのは山々なんだけど……アシが無くてさ」
そこで、お金持ちの直哉に相談に来た訳である。
「なるほどね。まあ、移動のことは私が考えてあげよう。君達は、ご祝儀とあっちで遊ぶお小遣いだけ、持って来ればいいさ」
「おお!さすが師匠!」
「良いんですか……?確かにこの間の圭一の統一模試、偏差値70行きましたから、少しお休みでも、と思ったんですけど……」
圭一が喜んで、史絵は恐縮する。
「優花はぁ、花嫁の叔母さんだからぁ、ママから交通費出してもらって、新幹線で行くつもりだったよ?」
「僕も出してくれるってことでしたので」
優花と寛太も答える。
「師匠、こんなに大勢いいのか?」
「いいじゃん、慎。お言葉に甘えようよ?」
「それな」
「だね」
いつもの慎と、ギャルズ達である。
「と言う訳で、折角だから全員お邪魔させていただこうか?」
『はーい!』
と言うことで、急遽追加招待された倉田めぐみ医師を加えた14人を、どうやって土佐に向かわせようか悩んでいた直哉だったが、先にお車代として、羽田までの往復電車切符と往復新幹線切符、羽田・高知龍馬空港間の往復航空券が同封された直筆の手紙が全員に届いた為、その悩みは杞憂に終わった。
「しかし、大盤振る舞いだなあ」
航空券を眺めながら、ふっと笑みを零して、直哉は旅館の手配だけを行った。
結婚式前日の朝。
仙台駅で岩沼鎮守府の面々とも合流して、合計22人での大移動である。
「何だったら、あのまま土佐にいればよかったですね?」
「全くだ。まさかクリスマスに結婚式をするとはなぁ」
二人の将官が、隣り合って航空機に乗っている。妊婦の紗花は、産科医のめぐみが同伴する、と言う条件で航空機の搭乗が許可された。
「もし心配事があったら、隣に座ってますので、声を掛けてくださいね?」
「はぁい、ありがとうございますぅ」
ニコニコ笑いながら心配するめぐみに、笑みを浮かべる紗花。
そんな中、航空機が初めての中学生の面々は、目をキラキラさせている。
「おお、飛んだぜ」
圭一が、窓に齧り付いて離陸の瞬間をバッチリ目に焼き付けている。
「そりゃ、飛行機ですから飛びますよ」
その隣にいる史絵は苦笑いしながら、持ち込んだMacBookで執筆をしている。
「落ちないかなぁ……?」
心配する寛太。飛行機はあまり得意ではないらしい。
「大丈夫、落ちたら死ぬから~」
そんな寛太に、だいじょばないフォローをするのが、天然の優花。
「優花、縁起でもねえ」
「そうだよ」
「それな」
「うん」
突っ込む慎に、同調するギャルズ達。
そんな様子を見て、電はジュースを片手に優雅に、
「ふふん、番長ズは子供なのです」
と鼻で笑っているのを、通路を挟んだ隣の薄雲が、トントンと肩を叩く。
「どうしたので……」
薄雲のその隣を見ると、窓に齧り付いて見ている、卯月と子日。
「…………」
「もう二人ほど、いました」
「なのです」
大きな溜め息を吐いた、電と薄雲だった。
そんなことを気にせず、卯月と子日は大燥ぎである。
「飛んだぴょん!」
「空飛んでるぴょん!」
「しかし、こうやって皆の往復航空券を出していただいて、良かったんでしょうか?」
眞一郎の隣に座った妙高が、心配そうに問う。
因みに、三列シートずつで一番前から、
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直哉・眞一郎・妙高 足柄・めぐみ・紗花
圭一・史絵・寛太 優花・慎・望
那智・羽黒・扶桑 山城・奈緒子・櫻子
子日・卯月・薄雲 電 ・他の客・他の客
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こんな感じで乗っている。
「気前よく22人分の往復航空券・新幹線代だからね。申し訳ない気もするが」
「まあ、私の方からも、この間出産祝いとして纏まった額を渡してある。慰謝料代わりにな」
申し訳なく思う直哉に、悪びれずに言う眞一郎に、ふふっと笑う妙高。
「あらあら、提督。この日の為に何年も貯めておいたお金でしょう?結婚資金にって」
「そうだったんですかね?准将殿」
それに食い付く直哉に、眞一郎も苦笑いを浮かべる。
「そうだ、と言うのも癪だからな。溜め込んでおいた分だけくれてやったさ。養育費ではなく、慰謝料としてな」
「全く、素直じゃないですね?准将も」
「フッ、素直じゃないから、今まで生き残って来たんだよ」
「全く、孫を持ったら、もう少しは丸くなるものですよ?」
「ふん。私は後100年は生きる予定だ、取り敢えずは今のままでいいさ」
そんな皮肉や揶揄の応酬に、妙高が口元に手を当てて笑っている。
「史絵さん、いえ、咲花先生」
羽黒がぼそっと、前の席の史絵に囁く。
「えっ?」
「『金銀龍』読みましたよ。とっても良かったです」
ふふっと、笑みを零しながら囁くと、後ろから画面を覗き込む。
「執筆中ですか?」
「はい、次作のプロットを提出しないといけなくて……」
「大変なんですね、ふふっ」
そんな会話をしている間も、圭一は窓に齧り付いて空を楽しんでいる。
「ふっ、陸の番長も空ではただの中学生だな」
後ろの席で、窓の外を眺めながら前の席の圭一の様子を、那智が笑いながら見ている。
その後ろで、子日と卯月がずっと窓に齧り付きのままで眺めているのを、薄雲が流し目でふっと笑いながら見て、
通路を挟んだ隣の席では、電が偶々隣り合った親子と親しくなって、楽しくお喋りをしている。
それぞれが空の旅を楽しんで、高知龍馬空港に降り立った。
「お久しぶりです!!」
「元気だった!?」
「皆、ジレーネ戦役以来ね」
「こんにちわぁ」
愛と健太と燿子と真愛が、出迎えに来ている。
赤ちゃんの世話は、相変わらずリーヴェが一手に引き受けている。
「おっす!健太、お前の言葉、突き刺さったぜ」
「うんっ!圭一くん!」
がしっと、拳と拳を合わせる二人
「愛ちゃんも元気そうだね…………ってこの子は?」
「真愛ですよ。真愛、この人が直哉おにいさんだよ」
「えっ?大き過ぎないかい?」
「実は、皆から霊子を欲しい欲しいして育っちゃったんですよ。つまりは口移しで」
「ちゅーか………?」
「はい」
直哉と愛は、そんな会話をしながら真愛を抱き上げる。
「おじちゃまこんにちは!」
「……………」
「真愛、直哉
「あきやさまが、さんじゅうすぎたらおじさんだ、ってゆってた」
「足立め…………」
ぼそっと、同期への恨み言を呟くと、電が加わる。
「30過ぎで結婚したら、もうおじさんなのですよ」
「ちょっと待ってくれ電、私は好きで40になる訳じゃないぞ?」
「はいはい。愛ちゃん、電なのです」
「いなづまおばちゃ……」
「あ゛?」
「いなづまおねえちゃん、こんにちは!」
真愛ちゃんは、電に恫喝されてもにぱっと笑って挨拶する。将来大物になるに違いない。
「ところで、花梨と剛くんはどうしたのかね?」
眞一郎がこの場にいない二人を問うと、愛は苦笑いを浮かべる。
「式の準備で忙しいんですよ。急な結婚式で前日まで打ち合わせなんです。それでお出迎えを私達が」
そう愛が言うと、燿子が思い出したように、
「羽佐間准将と岩沼の皆さん!ゆっくりしてる暇、ないです。ご両家顔合わせですので、外のマイクロバスに乗ってください!」
「やれやれ、
燿子の案内で、眞一郎と紗花と岩沼の艦娘達とめぐみが、バスの方へと向かって行く。
因みに、全員荷物は既にホテルに発送済みで、手荷物しか持っていないのである。
「私達も仲人なんで、失礼します」
「真愛、行くよ?」
「あい」
真愛は、直哉からぴょんと飛び降りると、三人手を繋いで眞一郎達を追い掛けて行く。
それを見送る、直哉と愉快な仲間達。
「さて、旅館から迎えが来る筈だから」
「高菜様ですか!?」
「ああ、はい」
旅館の法被を着た、ワイシャツネクタイのおじさんがやって来る。
外にはマイクロバスが停まっており、旅館の人の案内の下、旅館へと向かうのだった。
――――――――
旅館の部屋割りは、一応三部屋確保してあったが、直哉の独断と偏見で、
直哉と艦娘達、圭一と寛太と慎、史絵&優花&ギャルズに決まった。
以前の浜松の旅で、愛と健太が
「まあ、どっちの部屋に入るのも自由だけど、明日が本番だから、羽目を外さないようにね?食事は、大広間で皆で摂ることになるよ」
そう言い残すと、艦娘達を連れて早々と部屋に入って行く。
男子達は男子達でゲームに夢中で、女子達はガールズトークに花を咲かせているだろう。
「ふう、やれやれだねえ」
早速、スーツケースに仕込んで来たブランデーを取り出すと、湯呑にとぽとぽ入れて飲み出す直哉。
「提督、私にもいただけますか?」
「電ももらうのです」
「うーちゃんももらうぴょん」
「子日も飲むの!」
早速、アルコールが入る宮戸島鎮守府の艦娘と司令官である。
もちろん、その後の夕食でも日本酒を飲むのは言うまでもない。
なんか直哉達が来るとゆるい感じになるのは何故だろう。