鉄血の少年と魔法少女   作:さっちゃん☆

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マジでTSの方詰まったので息抜きに


鉄血の少年と魔法少女

 「いやぁぁぁぁ!!」

 病室の中、はやての慟哭が響き渡る。

 望んで願ってもがいて、ようやく手に入れた家族(幸せ)を取り上げられた少女は、この世の全てに絶望したかのような絶叫をあげ。大粒の涙を流す。

 絶望は闇となり少女を覆い尽くし、急激な速度で主を飲み込んでいく。

 この絶望しかない、不幸せしかない、たった一つの幸せすら奪われてしまうこの残酷な世界から主を一刻も早く救いたいと言わんばかりに。

 「はやてちゃん…!」

 「はやて…!」

 なのはとフェイトは闇に飲まれるはやてに手を伸ばすが、強烈な力で弾かれてしまう。

 2人は飛行魔法で体制を立て直し、パワーアップしたレイジングハートとバルディッシュを構える。

 「また…全てが終わってしまった…」

 闇の中から現れたのは、銀髪赤目の女性。おそらくこれが闇の書の管制人格なのだろう。

 「まだ終わってない! それどころかまだ始まってすらないよ!」

 管制人格である女性のそんな悲痛な呟きに、なのはは歯を食いしばって涙をこらえて叫び返す。

 まだ終わらせない。こんなひどい終わり方なんてごめんだ。己が望むのは皆が笑って終われるハッピーエンドだ。決してこんな悲しみの涙で濡れた結末ではない。

 自ら望んだ結末を手にするために、己の相棒のレイジングハートを強く握りしめ魔力を流し込む。

 「そうだよ…!絶対にこんなところで終わらせたりなんかしない!」

 なのはに続き、フェイトもバルディッシュを強く握りしめ、己を鼓舞するように叫ぶ。

 まだ魔力は十分に残ってる。自分をずっと支えてくれた頼りになる友達がすぐそばにいる。だからまだ諦めるには早いのだと自らを奮い立たせていく。

 「闇に染まれ……『ディアボリックエミッション』」

 2人の魔法少女が立ちはだかる。しかも両方が管理局の中でも上位にくい込むほどの実力者だ。守護騎士達と何度も戦い引き分けた実力は伊達ではない。

 しかし、その2人をまるで塵芥のように気にもとめず、ただ1発の魔法を発動させる。

 「空間攻撃っ!?」

 「レイジングハート!」

 『Round Shield』

 瞬間その空間一帯は闇色に染まる。フェイトの声に反応し咄嗟に発動したラウンドシールドでは衝撃までは防ぎきれない。

 防ぎきれなかった衝撃がなのはと、フェイトを襲う。

 シールドで衝撃を抑え、この攻撃が終わるまでと耐え忍んでいると、鉛色の線が目の前を横切る。

 衝撃が迸る闇の空間の中、ゴリ押しで彼女の元までたどり着き、そのまま片手に持ったソードメイスを振るう。

 「っ…! 防げ…」

 管制人格は新たな魔法を構築、目の前にシールドを貼り叩きつけられたソードメイスを防ぐ。

 ガキンと嫌な音を立て、シールドとソードメイスがぶつかる。互いに押し込みあい、ギリギリと音を立てるが片方の魔導師が力を緩め、管制人格のシールドを足場のように使い、飛び退く。

 その間に1発の砲撃を食らわせたが、大したダメージにはなっていないようだ。

 「ふぅん…こいつが敵?」

 「三日月くん!」

 「あ、なのはにフェイト」

 管制人格に向かっていった魔導師の正体は、半年ほど前にPT(プレシア・テスタロッサ)事件で共に傀儡兵と戦った少年、【三日月・オーガス】だった。

 「どうしてここに!?」

 「オルガの命令でこの闇の書って奴を止めに来た」

 三日月は淡白な答えを返し、ゴキゴキと肩を鳴らす。彼はPT事件の時に大きな弊害を発症し、自らのデバイスである【バルバトス】を展開していなければ右目と右腕が機能しなくなっている。

 そのため、使い慣れない右腕を動かす時は少し体を慣らさなければならない。

 「オルガくんに頼まれたからって…三日月くんの体が壊れちゃうよ!?」

 「大丈夫、それより…来るよ」

 「えっ…きゃあ!?」

 三日月はなのはにいらぬ心配だと手を振り、再び管制人格へと向き直る。こちらが会話しているからと言って相手が待ってくれる道理はない、少し気が抜けていたなのははそう言った三日月に突き飛ばされる。

 その後なのはが先程までいた場所に血のように真っ赤な色をした短剣が複数通り抜けたのを見て、体が震える。

 フェイトは持ち前の機動力でなんとか避けていたが、後一歩遅ければ直撃していただろう。

 「行くぞ…バルバトス…!」

 攻撃を避け、三日月はすぐさま攻撃態勢に移る。

 空中を滑るように飛び、目の前から向かってくる血濡れの短剣(ブラッディ・ダガー)を右に左へジグザグに飛び回り回避していく。

 そして再び懐に飛び込み、ソードメイスを大きく振りかぶる。

 「防げっ…!」

 先程の再現がごとく、目の前に貼られたシールドにソードメイスがぶつかり甲高い音を立てる。

 三日月は弾かれた時の勢いを利用して回り込みもう一度ソードメイスを振るう。

 しかしその攻撃もシールドによって防がれてしまう。が、三日月はまたその時の勢いを利用し回り込む。

 ソードメイスを叩きつけ防がれ回り込みまたソードメイスを振るう。怒涛の猛攻撃に管制人格も防戦一方になってしまい、心なしか辛そうに感じる。

 「三日月が抑えてくれてる今ならっ…!」

 「ダメ!今攻撃したら三日月くんに当たっちゃうかもしれない!」

 フェイトは三日月を援護しようとバルディッシュを構えるが、すんでのところでなのはに止められる。

 今の三日月は管制人格の回りを動き回り、至近距離で攻撃をぶつけている。

 もしシューター等での援護が誤射に変わってしまった途端にこの拮抗は崩れてしまうだろう。

 だからこそ、2人は今軽率に手を出すことが出来なかった。

 「防げっ…!」

 「甘いよ」

 数十に渡る攻防を繰り返し、その拮抗がようやく崩れた。

 叩きつけたソードメイスを防がれた瞬間、三日月は両手に小型のツインメイスを展開、衝撃から解放される刹那の時間に三日月は横から抉り込むように管制人格にメイスを叩き込む。

 「ぐっ…!」

 「もらった…っつ!?」

 ついに体制が崩れた管制人格に追撃を叩き込もうと、また1歩三日月が踏み込んだ。その瞬間三日月の鼻から鮮血が噴き出す。

 「「三日月(くん)!?」」

 原因不明の出血により、意識を失った三日月は重力に引かれて真っ逆さまに地面に向かう。バリアジャケットも解除され元の鉄華団のマークが付いたコートに戻る。

 「貴様は……危険だ…!」

 単身で己に刃を届かせるこの男は危険だと、体制を立て直した管制人格は頭の中で警鐘が鳴る。このまま地面に落ちるだけで死ぬとは思うが、それでも念を入れてブラッディ・ダガーを三日月に向けて発動する。

 「危ないっ!」

 三日月に短剣が直撃する寸前、フェイトが三日月を抱き抱えて離脱。黄色い閃光が尾を引き、戦場から離れていく。

 「闇に染まれ…」

 しかし、それを黙って見逃すほど管制人格は愚かではない。ブラッディ・ダガーが当たらないのであれば空間攻撃に切り替えるまでだと、闇の書のページを捲り別の魔法を発動させようとする。

 「チェーンバインド!」

 「邪魔はさせないよ!」

 それと同じように、こちらもそれを黙って見逃す理由もない。ユーノとアルフがバインドをかけ、少しでも時間を稼ぐ。

 「いくよ…! シュート!!」

 バインドによって動きが止まっている管制人格になのはは自分の自慢の砲撃魔法をお見舞いする。

 クロノくんやヴィータちゃんのお墨付きの砲撃だ。直撃すれば決してタダではすまない。

 「砕け」

 砲撃が直撃する前にバインドが破壊される。

 「防げ」

 バインドを破壊した後、その一瞬でシールドを展開なのはの渾身とは言えないが、それでも十分に力を込めた砲撃は防がれてしまう。

 「そんな…」

 絶望の二文字がなのはの脳裏を過ぎる。だが、こんなもので折れてしまうなら最初からはやてを救おうだなんて考えない。

 「でも…まだ諦めない!」

 絶望の二文字を希望の二文字に書き換えて、再び相棒を構える。

 なのはは絶対に諦めない。この女の子は魔法少女になったその日から不屈の心を胸に宿しているのだから。

 

 ■ ■

 

 「オルガ…! 三日月が!」

 戦場から一時離脱したフェイトはアースラに戻り意識を失った三日月を送り届けた。

 「ミカ…!」

 三日月は先程の戦闘時とはうって変わって死んだように眠っている。オルガは力なく横たわるミカの体を揺さぶり起こそうとする。

 いつものオルガなら倒れた人間を揺するのは良くないと、冷静になれただろうが、いつも自分の隣にいた三日月が倒れたとあっては冷静なままではいられなかったのだろう。

 「オルガ!そんなに揺らしたら三日月が!」

 「っ!すまねえ…!」

 慌てていたオルガはフェイトの言葉で我に返る。

 全く自分は何をしているんだ。こういう時に冷静になって次に導くのが団長としての役目だろうに。

 一度深呼吸をして頭を冷やしたオルガはとりあえず三日月を背負う。

 「フェイト、助かった。三日月は大丈夫だ、お前はリンディ艦長に従ってくれ」

 「うん、じゃあ私はなのはのところに戻るね」

 三日月をオルガに託したフェイトは、再び闇の書に立ち向かうためアースラから離脱。

 オルガは三日月を担いで医務室に連れていく。

 「ミカ…」

 オルガはできるだけ三日月に負担をかけないように医務室のベッドへ下ろし、寝かせる。

 中で待機してくれていた職員が三日月の体を検査し、何が起こったのかを確認していく。

 「どうだ…何か分かったか?」

 「…三日月のバルバトスは正確にはデバイスではなくロストロギアであることは分かってるよね…?」

 「それがどうした…?」

 オルガは疑問の声をあげる。

 確かに三日月のデバイスであるバルバトスは、ロストロギアと呼ばれる代物ではある。

 詳しい話はあまり覚えていないが、昔禁忌兵器と呼ばれていたロストロギアを真正面から打ち砕くために作られた言わばストッパー、抑止力だ。

 ロストロギアを破壊するロストロギア、それがこの三日月の使用するバルバトスの正体だった。

 だが、それと今の三日月の症状になんの関係があるのかが分からない。

 「調べた結果、バルバトスとあの闇の書はただならぬ因縁があるみたいでね、あれと対面する時間が長ければ長いほど、バルバトスの中のリミッターが外れていくんだ。しかも半年前と違って自分の意志とは関係なくね」

 「まさか…!?」

 "半年前"その単語を聞いてオルガの顔色が変わる。半年前と言えば、大量の傀儡兵に囲まれ万事休すという状態の時、意図的にバルバトスのリミッターを外した三日月が戦いの後右目と右腕の機能が無くなってしまった時のことだ。

 つまり、これ以上三日月を闇の書と戦わせれば次は右目、右腕だけではすまないということなのかもしれない。

 「そう、これ以上三日月があれの相手をすれば半年前と同じことが起こってしまうかもしれない。下手をすれば全身が動かなくなってしまうかもしれないよ」

 「そうだな……ならこの作戦からミカは外さねえと…」

 「……なに? どうしたのオルガ?」

 医務室の職員と話し込んでいると、意識を戻した三日月か勢いをつけて上半身を起き上がらせる。

 「ミカ!?」

 「大丈夫…それよりアイツを見てからバルバトスがおかしいんだけど?」

 自分が倒れたことなどなんの気にも止めず、ただ淡々と質問する。そんな三日月の態度にオルガはモヤッとした気持ちを抱くが、何かを言うことはなかった。

 「詳しい話はそいつに聞いてくれ、あと今回はお前の出番はなしだ」

 「…ふぅん? 俺が出なくても大丈夫なの?」

 「あぁ、なんの問題もない」

 嘘だ。今だって戦況はギリギリでいつ崩れるかわからない。あの管制人格をなのはやフェイトが説得することが出来れば何とかなるかもしれないというくらいだ。

 しかも説得が上手くいく確率など0に等しい。今の状況は酷いくらいにこちらの敗北の色が濃厚だった。

 だが、それを伝えれば三日月は間違いなく戦場に戻る。そんな確信がオルガの中にはあった。だから嘘をついた。

 「ならいいや」

 オルガの嘘に騙されたのか、それとも嘘だと分かっていて騙されてくれたのかは分からないが、三日月はとりあえずといった形で力を抜き、再びベッドに横たわる。

 「頼むぞ…お前ら…!」

 オルガに出来るのは三日月の代わりの人員を向かわせること、そしてこうして三日月が出撃しなくてもいいように祈ることしかできなかった。

 

 ■ ■

 

 「はぁっ…! はぁっ…!」

 「ディアボリックエミッション」

 「レイジングハート!」

 『Round Shield』

 なのはは、フェイトが抜けた穴を補うために必死に管制人格へと立ち向かっていた。

 しかし、二人がかりでも押されていたのに片方が抜ければさらに押されることは必然だろう。

 なのははこれで何度目になるか分からない攻撃を耐え続けていた。

 「武装を解除して!投降してください! こんなことはやてちゃんは望んでないはずだよ!」

 「ブラッディ・ダガー」

 「お願いです!投降してください!」

 なのはの叫びも虚しく、管制人格は血濡れの短剣を展開。何十、何百といった真紅の短剣がなのはへ向かって飛んでいく。

 その短剣を上下左右、立体的な機動で避け続けるも、これだけの密度だと避けきれない部分も出てくる。

 肩や足を浅く切り裂かれ、痛みのせいで少しずつ動きが鈍る。

 「終わりだ…」

 「っ!」

 そしてついに血濡れの短剣がなのはの正面を捉えた。

 来るであろう痛みに備え、力いっぱい歯を食いしばって目を瞑る。

 「なのはぁ!」

 だが、その瞬間にフェイトが駆けつけた。

 持ち前の機動力でなのはの所まで一直線に突撃、そのままなのはの体を抱き抱え短剣の攻撃範囲内から飛び出す。

 「フェイトちゃん!」

 「戻ってきたよなのは!」

 頼りになる友達が、仲間が戻ってきたことによりなのはの目に再び光が宿る。

 魔力はさっきよりも減ったし、怪我だって増えた。

 でも、それでもさっきより俄然力が湧いてくる。

 「行くよフェイトちゃん!」

 「行くよなのは!」

 まだこの胸に不屈の心が宿っているなら、まだ戦える。まだ立ち向かえる。

 絶望なんかしてやらない。この世界の光が闇に負けることなんて絶対にないことを証明するために再び杖を握った。




好評ならちょっと続く






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