キリトがヒースクリフとの対決に敗れた場合、明日奈がどう彼の死を乗り越えていくか、を想像して書いてみました。

前、こちらに投稿し、一度削除した作品の再投稿です。

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私がこの世界を終わらせるから

茅場明彦の宣言から三年。

キリトよう、お前の仇、もうすぐとれるぜ

クラインは、はじまりの街で、名簿の碑を悲しげな表情で見て、一人ごちた。

 

あの対決からちょうど一年。

キリトが茅場に殺された命日だ。

クラインの横では、アスナが、目を閉じ、手を合わせ、弔っている。

エギルは、前線から幹部プレイヤーが全員いなくなるとまずいので、前線に残っている。

交代で、明日、墓参りに来る予定だ。

アスナは、何もできない自分の目の前で恋人を殺されたショックで、三日三晩泣き暮らし、

その後、一月ほどぼんやりとしていた。

今では、茅場への復讐心を燃やして、茅場が去った血盟騎士団をまとめている。

ヒースクリフの正体は、血盟騎士団を壊滅寸前にした。

だがそれを、アスナが、ゲームクリアと茅場への復讐を説いて再建したのだ

 

「きゃぁぁぁー」

突然、聖堂の外で叫び声がした。

「何だ!?」

クライン達は、刀を押さえ、建物の外へと走り出る。

 

建物前の道

「キィィィンッ!」

ゾンビが、ソードスキルを使って、剣でプレイヤーを斬りつける所だった。

ボロボロの服。人型プレイヤーそっくりだが、カーソルはモンスターを示す赤。

「あぁぁぁ!」

恐怖の表情を張り付かせた女性プレイヤーの身体が、ガシャンっと四散した

 

「圏内なのに、モンスターが入ってきやがる!」

クラインは、シュッと刀を抜く。

「圏内コードが解除されたのよ!」

アスナが言う。

 

「しかも、あのゾンビ、死んだプレイヤーのアバターをモデルにしてるみたい!」

アスナが嫌そうに言った。

 

「ああ。しかも、プレイヤーが死んだときのレベルがそのまま反映されてるみたいだな」

一部のゾンビが、一撃で、プレイヤーを屠っているのを見て、クラインは言った。

 

二人は、はじまりの街に閉じこもっていたプレイヤー達を救うべく、ゾンビたちと交戦した。

はじまりの街に籠もっていたプレイヤー達は、一度もレベル上げをしたことがなく、ほとんどが、レベル1なのだ。

ゾンビの中には、かつての前線組の死んだ仲間が多く居た。

そして、交戦開始から十分ほど経った時、『彼』に出会った

 

現れたのは、既に死んだキリト、をモデルにしたアバターだった。

「嘘、キリト…クン?」

アスナは、呆然と呟く。剣を握った腕が、下へと下がる。

しかし、彼のアバターはボロボロで、カーソルはモンスターを示す赤だ。

「アスナ!そいつは、キリトじゃない!モンスターだ!」

クラインは、別のゾンビモンスターと斬り結びながら、叫ぶ。

アスナの細剣の剣先が震える。

「でも…やっと会えたのに…。

 そう、キリト君なら、モンスターになっても、私を覚えていてくれるよ…」

アスナの手から細剣が滑り落ち、石畳にぶつかり、ガチャンッと音を立てる。

「ねぇ…、キリト君…。私だよ、アスナだよ。私達の所へ戻ってきて…」

アスナは目に涙を浮かべながら、ゆっくり一歩ずつ、『キリト』へ歩み寄っていく

キリトの姿をしたゾンビは、近づいてくるアスナをターゲットする。

あの懐かしい長剣を構え、ソードスキルを発動させる。

長剣の刀身を青い光が包むのが、スローモーションで見える。

「お願い、キリト君。戻ってきて…。」

アスナの懇願に、返されたのは、剣の攻撃だった。

キィィィンッ!

ズドッズドッ

鈍い音を立てて、アスナの身体が吹き飛ばされる。

「ウソ…、キリト君…」

アスナのHPゲージは、八割以上削られている。

刺されたところの鈍い痺れと共に、アスナは、恋人の死を強く思い知らされた。

 

キリトのアバターは無表情に、座り込むアスナへと、剣を振り上げる。

「うぉぉぉぉっ」

クラインの攻撃が、横から、キリトの斬撃をガッと弾き飛ばす。

「今のうちに、逃げるんだ!」

クラインがアスナに叫ぶ。

 

「うぉっ!」

クラインは、キリトに、じわじわとHPゲージを削られる。

 

このままじゃ、クラインが殺されちゃう

もう、キリトクンは、死んだのよ。

あれは、キリトクンじゃない!

アスナは、落とした細剣をサッと掴んだ。

 

「キリトクン…、ゴメンッ!」

アスナが、キリトのアバターに、背後から、刺突を浴びせる。

 

キリトのゾンビは、身体を硬直させ、ガシャンっと四散した。

 

キリトのゾンビとの戦いが終わった頃には、

街に侵入したゾンビはあらかた片付けられたようだ。

 

「おい、アスナ。大丈夫か?」

クラインは、アスナの肩に手を置く。

アスナは、クラインを見る。

アスナは、両目を見開き、握った拳は震えていた。

「わた…、わたし…」

アスナは、パッとクラインの胸に飛び込み、縋りつくようにして泣き始めた。

「何で!何で私が、キリトクンと戦わなくちゃいけないの!

 もう、こんなの嫌!」

肩を震わせて泣くアスナ。

クラインは、アスナをぎゅっと、抱きしめた。

 

はじまりの街コード解除事件から、数週間後。

リズベット武具店に、アスナとクラインが来た。

 

アスナは、恥ずかしそうに、リズベットへ、小声で言った。

「実は、クラインと付き合ってるの。」

アスナは、クラインの片腕を抱き、彼に寄り添っている。

「良かったあー。

 あいつが死んだ後、アスナの事心配だったけど、

 回復したみたいでホントに良かった」

 

96層フロアボス戦

「アスナ!」

アスナはダンッとクラインに突き飛ばされた。

一瞬後、アスナの居た場所を、巨大な刀が、クラインを巻き込んで、通過した。

「クラインッ!」

床に叩きつけられたクラインのアバター。

アスナが駆け寄る間にも、HPゲージは、急速に0へと近づいていく。

アスナは、クラインを抱き上げた。

「ア…スナ…」

クラインは、アスナの腕の中で、微笑んだ直後、アバターを四散させた。

「クラインーー!」

 

 

 

 

 

 

 

第百層

ここは、一面の広場だ。

アスナとヒースクリフが一対一で、向かい合っている。

 

アスナは、冷たい表情で、剣を構えて、ヒースクリフを見据えた

 

「久しぶり。アスナ君。」

ヒースクリフは、落ち着いた態度で微笑した。

 

「私は、キリトクンとクラインを奪ったあなたを許さない。」

アスナは、同じ無表情だ。

クラインの死以降、アスナは、冷徹な性格に様変わりしていた。

シャッとレイピアを鞘から抜く

 

「では、始めよう」

ヒースクリフが宣言と同時に、アスナは突進した。

 

激しい戦闘後。

ヒースクリフのアバターに食い込んだ細剣。

直後、ヒースクリフのアバターはガシャァンっと四散した。

 

アスナは、レイピアを床に捨てると、百層フロアの端まで歩いて行った。

最上層は、面積が非常に狭い。

 

ここで飛び降りれば、キリトとクラインの居る世界に留まれる。

アスナは、首を振って、その誘惑を振り払った。

 

直後、アスナは、別の場所へ転送された。

 

その場所からは、アインクラッドが見えた。

 

空飛ぶ城、アインクラッドは、下から崩壊していく。

そのダイナミックな景色を、どこか悲しげな表情で見ているアスナ。

キリトとクラインが死んだ地であると同時に、彼らとの思い出が詰まった場所でもあるのだ。

 

 

 

デスゲームはクリアされた。

 

                 ――完――

 


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